国土交通省が2026年9月15日に公表した調査では、2024年に保存登記された東京23区の新築マンションのうち9.7%が、1年以内に売買で所有者が変わっていました。賃貸に出ている部屋で所有者が変わると、賃貸借契約と敷金は新しい所有者に引き継がれますが、管理会社との管理受託契約は自動では引き継がれません。この記事では、公表された数字と調査の読み方を確かめたうえで、貸主が変わるときに管理会社が確かめること、国外に住所がある貸主になった場合の税と登記の確認、入居者への通知の書き方を整理します。
何が公表されたのか
国土交通省は2026年9月15日、「不動産登記情報を活用した新築マンションの取引の調査結果」を公表しました。法務省から受け取った不動産登記情報と民間の価格データを使い、2018年1月から2025年12月までに登記された三大都市圏と地方四市の新築マンション約57万戸(保存登記から分析)と、同じ期間・地域の約150万件の移転登記を調べたものです。
この調査でいう「短期売買」は、2024年12月までに保存登記されたもののうち、保存登記から1年以内に移転登記されたものです。つまり、新築で最初に登記されてから1年以内に、売買で所有者が変わった割合を示しています。
| 地域 | 短期売買の割合(2024年1〜12月に保存登記) |
|---|---|
| 東京23区 | 9.7% |
| 都心6区(千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、渋谷区) | 12.1% |
| 東京都 | 8.8% |
| 東京圏 | 6.6% |
| 大阪圏 | 4.8% |
| 名古屋圏 | 2.4% |
報道発表資料は、直近では大規模マンション(1棟あたりの保存登記数が100件以上のもの)のほうがそれ以外のマンションより短期売買の割合が高いとし、2024年1〜12月で大規模マンションは9.0%、それ以外は2.9%としています。また、中心部ほど短期売買の割合が高い、または増えている傾向が見られるとしています。
短期売買をしているのは誰か
調査の別紙によると、東京23区の新築マンションの短期売買のうち、法人が占める割合は、2018年の93.4%から2024年の81.1%に下がっています。8割以上が法人による取引ですが、法人の割合はここ2年で減る傾向にあると説明されています。言い換えると、個人による短期売買の割合が増えています。
賃貸管理の目線では、法人が買って1年以内に売る部屋は、賃貸に出した状態で売られる(いわゆるオーナーチェンジ)こともあれば、空室のまま売られることもあります。この点は調査からは分かりません(後述)。
国外に住所がある人による取得
調査は、所有者の住所が国外にあるかどうかでも集計しています。別紙によると、2025年に保存登記された新築マンションのうち、国外に住所がある人が取得した割合は次のとおりです。
| 地域 | 国外に住所がある人の取得割合(2025年、新築) |
|---|---|
| 東京都 | 2.5% |
| 東京23区 | 2.8% |
| 都心6区 | 5.9% |
| 千代田区 | 15.4% |
これは登記上の住所が国外かどうかで分けたもので、国籍で分けたものではありません。報道発表では、東京都を中心に国外からの取得割合が高く、増える傾向が見られる地域がある一方、都心6区で国外に住所がある人が2億円以上の高額物件を活発に短期売買している傾向は特に見られないとしています。
この調査から分からないこと
- 売買された部屋が、賃貸に出ていたのか、空室だったのか、自宅として使われていたのかは、登記情報からは分かりません。
- 短期売買の割合は、保存登記から1年以内の移転登記で数えています。2025年に保存登記された部屋は、1年の期間が終わっていないため、短期売買の集計は2024年分までです。
- 国外に住所があるかどうかは登記上の住所によるもので、国籍は分かりません。
このため、「23区の賃貸中の部屋の9.7%で貸主が変わる」と読むのは正しくありません。ただ、新築の分譲マンションを管理している会社にとって、引き渡しから1年以内に貸主が変わる部屋が一定数あることは、業務の手順を見直す理由になります。
貸主が変わったときに移るもの・移らないもの
賃貸中の部屋が売られたとき、何が自動で新しい所有者に移り、何が移らないかを整理します。
| 項目 | 扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 賃貸人の地位 | 入居者が対抗要件(建物の引渡しなど)を備えていれば、新しい所有者に移る | 民法605条の2第1項、借地借家法31条 |
| 新しい所有者が家賃を請求すること | 所有権の移転登記をしないと、入居者に対して主張できない | 民法605条の2第3項 |
| 敷金の返還債務、費用の償還債務 | 新しい所有者が引き継ぐ | 民法605条の2第4項 |
| 例外 | 売主と買主が、賃貸人の地位を売主に残し、買主が売主に貸す合意をした場合は移らない | 民法605条の2第2項 |
| 管理受託契約 | 前の所有者と管理会社の契約であり、自動では移らない | 賃貸住宅管理業法13条・14条(新たに結ぶ手続き) |
借地借家法31条により、建物の賃貸借は、登記がなくても建物の引渡しがあれば、その後に建物について権利を取得した人に対抗できます。入居者は、新しい所有者と契約を結び直す必要はありません。
管理受託契約の結び直し
新しい所有者が引き続き同じ管理会社に任せる場合でも、管理受託契約は新しく結ぶことになります。賃貸住宅管理業法は、管理受託契約を結ぶまでに、契約の内容などを書いた書面を交付して説明すること(13条)、契約を結んだときに書面を交付すること(14条)を求めています。相手方の承諾があれば、電磁的方法で提供することもできます。
あわせて、前の所有者との契約の終わらせ方も確かめます。前の契約に「物件を売却したときは契約が終了する」といった定めがあるか、解約の申入れの期間はどうなっているかで、引継ぎの日程が変わります。家賃の振込先、修繕の途中の工事、入居者からの相談の記録、鍵の管理なども、引継ぎの一覧に入れておきます。
国外に住所がある貸主になったとき
買主が国外に住所がある人だった場合、管理会社が確かめておきたいことが3つあります。
家賃の源泉徴収
国税庁のタックスアンサーNo.2880は、非居住者などに日本国内にある不動産の賃借料を支払う人は、支払いの際に20.42%の税率で所得税と復興特別所得税を源泉徴収するとしています。ただし、土地や家屋を自分または親族の住まいとして借りている個人が支払う賃借料は、源泉徴収の必要はありません。根拠として所得税法161条・212条・213条、所得税法施行令328条などが挙げられています。
個人の入居者が自分の住まいとして借りている場合は源泉徴収は不要ですが、法人が社宅として借りている場合などは、借主の法人が源泉徴収をすることになります。管理会社が家賃を受け取って送金する形のときの扱いは、契約の形によって変わり得るため、税理士や税務署に確かめてください。
納税管理人
国税通則法117条1項は、国内に住所や居所がない個人などが、申告などの国税に関する事項を処理する必要があるときは、国内に住所などがある人の中から納税管理人を定めなければならないとしています。定めたときは税務署長に届け出ます(同条2項)。貸主が納税管理人を定めているかを確かめておきます。
登記上の国内連絡先
不動産登記法73条の2第1項2号により、所有権の登記名義人が国内に住所を持たないときは、国内の連絡先となる人の氏名や住所などが登記事項になります。急な修繕や事故のときの連絡先として、管理会社も国内の連絡先を把握しておきます。
入居者への通知の文例
貸主が変わったときは、入居者に書面で知らせます。前の貸主と新しい貸主の連名にすると、入居者が本当の通知か判断しやすくなります。
貸主変更のお知らせ
〇〇マンション〇〇号室 〇〇様
このたび、上記のお部屋の所有者が〇年〇月〇日付で〇〇から〇〇に変わり、同日付で所有権移転の登記を行いました。これにより、賃貸借契約の貸主は新しい所有者に変わります。今の賃貸借契約の内容と、お預かりしている敷金は、そのまま新しい貸主に引き継がれます。契約を結び直す必要はありません。
〇年〇月分以降の家賃のお振込先は、次の口座に変わります。(口座の情報)
お部屋の管理とお問い合わせの窓口は、引き続き(管理会社名、電話番号)です。振込先の変更などのご連絡は、この書面か、上記の窓口からのみ行います。それ以外からの連絡があった場合は、お手数ですが上記の窓口にご確認ください。
前の貸主(氏名・名称) 新しい貸主(氏名・名称)
振込先の変更を装った詐欺もあり得るため、窓口を1つに決めて書いておくことが大切です。登記の前に新しい所有者が家賃を請求することは、入居者に対して主張できない(民法605条の2第3項)ため、通知は登記を確かめてから出します。
管理会社が先に決める5つ
1つ目 貸主が変わりそうな部屋を把握する
新築からの期間が短い分譲マンションの部屋や、法人が所有する部屋など、売却の可能性がある部屋を一覧にしておきます。オーナーに売却の予定があれば早めに知らせてもらえるよう、日ごろの報告で伝えておきます。
2つ目 管理受託契約の定めを見直す
物件を売却したときの契約の扱い、解約の申入れの期間、引継ぎの協力について、今の契約書にどう書いてあるかを確かめます。定めがなければ、次の更新のときに入れることを検討します。
3つ目 貸主変更の通知の書式を用意する
前述の文例のような書式を用意し、登記を確かめてから出す手順にしておきます。
4つ目 国外に住所がある貸主の確認の一覧を作る
源泉徴収の要否(借主が個人の居住用か、法人か)、納税管理人、登記上の国内連絡先、送金の方法と通貨、緊急時の連絡の方法を、1枚の確認表にまとめます。
5つ目 オーナーへの報告に一言を足す
「売却を考えるときは早めにご相談ください。入居者との契約と敷金は買主に引き継がれますが、管理の契約は買主と改めて結ぶことになります」といった一言を、定期の報告に入れておくと、売却の情報が遅れて届くことを減らせます。
よくある質問
Q1. 貸主が変わったら、入居者と賃貸借契約を結び直す必要がありますか。
入居者が建物の引渡しを受けていれば、賃貸人の地位は新しい所有者に移ります(民法605条の2第1項、借地借家法31条)。結び直しは必要ありません。
Q2. 登記の前でも、新しい所有者に家賃を払ってもらってよいですか。
新しい所有者が賃貸人の地位の移転を入居者に主張するには、所有権の移転登記が必要です(民法605条の2第3項)。振込先の変更は、登記を確かめてから知らせます。
Q3. 前の貸主が敷金を新しい貸主に渡していなかった場合、入居者は誰に返還を求めますか。
民法605条の2第4項により、敷金の返還債務は新しい所有者が引き継ぎます。売主と買主の間のお金の精算は、当事者どうしの問題です。
Q4. 管理受託契約は、前の貸主との契約をそのまま使えますか。
管理受託契約は前の所有者と管理会社の間の契約なので、新しい所有者とは新しく結びます。賃貸住宅管理業法13条の説明と14条の書面の交付が必要です。
Q5. 貸主が国外に住所がある場合、個人の入居者も源泉徴収をしますか。
国税庁のタックスアンサーNo.2880によると、自分または親族の住まいとして借りている個人が支払う賃借料は、源泉徴収の必要はありません。法人が借りている場合は扱いが異なります。
出典(本文で参照している資料)
- 国土交通省 報道発表(2026年9月15日)不動産登記情報を活用した新築マンションの取引の調査結果を公表
- 同 報道発表資料
- 同 別紙 不動産登記情報を活用した新築マンションの取引実態の調査・分析について
- 民法(e-Gov法令検索): 605条の2
- 借地借家法(e-Gov法令検索): 31条
- 賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(e-Gov法令検索): 13条、14条
- 国税庁 タックスアンサーNo.2880 非居住者等に不動産の賃借料を支払ったとき
- 国税通則法(e-Gov法令検索): 117条
- 不動産登記法(e-Gov法令検索): 73条の2
この記事は2026年10月7日時点の情報です。

