追客漏れの多くは、担当者のやる気ではなく、案件ごとに「次に何を、いつするか」が決まっていないことから起きます。すべての案件に次回対応日を入れ、期限を過ぎた案件を週に1回洗い出すだけでも、漏れは見つけやすくなります。この記事では、よくある7つのパターンと防ぎ方、運用ルールの例、追客で守る法令(宅建業法施行規則16条の11、特定電子メール法、個人情報保護法)を整理します。
追客漏れとは何を指すか
追客漏れという言葉は、人によって指すものが違います。「返信を忘れた」ことだけを指す人もいれば、「内見の後に連絡しなかった」ことまで含める人もいます。まず社内で定義をそろえます。
おすすめの定義は、「進行中の案件のうち、次回対応日が空欄の案件、または次回対応日を過ぎても対応していない案件」です。この定義なら、顧客の一覧を見るだけで数えられます。お客様が他社で決めた、連絡不要と言われたなど、終わった案件は「終了」として理由を残し、進行中から外します。
段階ごとに「終わったら決めること」をそろえる
漏れは、段階が切り替わるところで起きやすくなります。1つの段階が終わったときに、次の行動と期限を決めるところまでを1つの作業として扱います。次の表は例です。
| 段階 | 終わったときに決めること | 期限の例 |
|---|---|---|
| 反響の受付 | 初回返信をする人 | 受付時間の内と外で決めた目安まで |
| 初回返信 | お客様の返事を待つ期限と、返事がないときの次の連絡 | 翌営業日など |
| 内見の日程が決まった | 前日の確認の連絡 | 内見の前日 |
| 内見が終わった | 感想を聞く連絡と、ほかの候補の紹介 | 内見の当日か翌日 |
| 申込みを受けた | 書類の確認と、不足を伝える連絡 | 申込みの当日 |
| 契約が終わった | 入居前の案内と、入居後の連絡先の案内 | 鍵の引渡しの前 |
追客漏れが起きる7つのパターン
1. 初回返信の遅れ
反響への最初の返信が遅れ、その間にお客様が他社と話を進めてしまうパターンです。営業時間外や接客中に入った反響で起きやすくなります。受付時間の内と外で初回返信の目安を決め、未返信の一覧を1日に決まった時刻に確認します。
2. 受信箱が分かれている
ポータルサイトごと、担当者ごとに通知先が分かれていると、誰も見ていない受信箱が生まれます。通知先を共有のアドレスに1本化し、受信した反響はその日のうちに顧客の一覧へ登録します。
3. 内見の後に連絡が止まる
内見が終わると一区切りついた気持ちになり、次の連絡が後回しになるパターンです。内見の当日に、次の連絡日と連絡内容(感想の確認、ほかの候補の紹介など)を決めて登録します。
4. 申込み後の書類不備の差し戻しが遅い
申込書の記入漏れや添付書類の不足を、まとめて後で確認しようとして遅れるパターンです。申込みを受けたら当日中に書類を確認し、足りないものを一度に伝える流れにします。不足を小出しに伝えると、お客様の手間が増え、そのぶん気持ちも離れやすくなります。確認する書類の一覧を作っておくと、確認の漏れも防げます。
5. 物件情報の食い違い
広告と実際の条件が違っていて、お客様の気持ちが離れるパターンです。宅建業法32条は、広告で著しく事実に相違する表示や、実際より著しく優良・有利と誤認させる表示を禁じています。掲載前と掲載中の定期的なタイミングで、空き状況と条件を元付業者や管理会社に確認します。
6. 連絡手段が合っていない
お客様はLINEを見ているのに電話ばかりかける、日中つながらない人に昼に電話する、といったずれです。初回返信のときに、希望する連絡手段と連絡してよい時間帯を聞き、顧客の記録に残します。
7. 担当者が不在のときの引き継ぎ漏れ
休みや外出の間に、期限の来た案件が止まるパターンです。不在の前日に、自分の案件のうち不在中に期限が来るものを副担当に渡します。渡す内容は、後で説明する6項目にそろえます。
漏れを防ぐ運用ルール
ルール1:次回対応日を空欄にしない
すべての進行中の案件に、次回対応日と次にすることを入れます。「様子を見る」場合も、いつ様子を確認するかを日付で入れます。空欄を認めないことが、このルールのすべてです。
ルール2:温度区分で連絡の間隔を決める
案件をお客様の状況で3つに分け、連絡の間隔の目安を決めておきます。次の表は考え方の例で、間隔の数字は自社の人数やお客様の希望に合わせて調整します。
| 区分 | お客様の状況の例 | 連絡の間隔の例 | 連絡の内容の例 |
|---|---|---|---|
| A | 1か月以内に入居したい、内見済み | 2〜3日ごと | 候補物件の紹介、内見日程の調整 |
| B | 1〜3か月以内に入居したい | 週1回 | 条件に合う新着物件の紹介 |
| C | 時期は未定、情報を集めている | 月1回 | 配信の同意がある場合の新着案内 |
区分は一度決めたら終わりではありません。連絡のたびにお客様の状況を聞き、区分を見直します。断りの意思が示されたら、区分ではなく「終了」にします。
ルール3:引き継ぎは6項目で渡す
引き継ぎの内容を毎回考えると、抜けが出ます。次の6項目を決まった形で渡します。
| 項目 | 書く内容 |
|---|---|
| 主担当 | 普段の担当者 |
| 副担当 | 不在の間に対応する人 |
| 次にすること | 電話で内見の感想を聞く、申込書の不足を伝える、など |
| 期限 | 次にすることの日付 |
| 温度区分 | A・B・C |
| 注意点 | 連絡してよい時間帯と手段、断りや配信停止の申し出の有無 |
引き継ぎは口頭だけで済ませず、顧客の記録に残る形で渡します。口頭だと、副担当が忙しい日に忘れても誰も気づけません。
「注意点」に断りや配信停止の有無を入れておくと、副担当が知らずに連絡してしまうことを防げます。これは後で説明する法令の面でも大切です。
ルール4:終わった案件は理由を残して閉じる
進行中の一覧に終わった案件が残っていると、本当に追うべき案件が埋もれます。終わった案件は、次のような理由を選んで「終了」にします。
- 自社で契約した
- 他社で決めた
- 引っ越しをやめた、時期が未定になった
- 連絡を続けてほしくないと言われた
- 何度連絡しても返事がない
理由を選ぶ形にしておくと、後から集計できます。「他社で決めた」が内見の後に多いなら、内見後の連絡に課題がある、といった見方ができます。「返事がない」で閉じる場合も、最後に連絡した日と手段を残しておきます。
追客漏れ率の計算と週次の確認
追客漏れを数で追うときは、次の式を使います。
- 追客漏れ件数 = 進行中の案件のうち、次回対応日が空欄の件数 + 次回対応日を過ぎて未対応の件数
- 追客漏れ率 = 追客漏れ件数 ÷ 進行中の案件数
- 内見率 = 内見した案件数 ÷ 反響の件数(同じ期間の反響を分母にします)
- 申込み率 = 申込みのあった案件数 ÷ 内見した案件数
内見率や申込み率は、反響を受けた月と内見や申込みのあった月がずれることがあります。月ごとに比べるときは、「その月に受けた反響が、その後どうなったか」で数えるか、「その月に起きた内見や申込みの件数」で数えるかを決めておきます。前者のほうが、追客の改善の効果を確かめやすくなります。
仮の数字で計算例を示します
ある週の月曜日の朝、進行中の案件が60件あり、次回対応日が空欄の案件が4件、期限を過ぎた案件が5件だったとします。追客漏れ件数は4 + 5 = 9件、追客漏れ率は9 ÷ 60 = 15%です。翌週に空欄が0件、期限切れが3件になれば、3 ÷ 60 = 5%です(進行中の案件数が同じ場合)。
率だけを見るのではなく、期限切れの案件が誰に偏っているか、どの段階(初回返信、内見後、申込み後)で止まっているかを見ます。段階ごとに数えると、7つのパターンのどれが多いかが分かります。
週1回、30分の確認の例
- 最初の5分:先週の追客漏れ件数と、終了にした案件の数を確認します。
- 次の15分:期限切れの案件を1件ずつ見て、次にすることと期限を決め直します。
- 最後の10分:多かったパターンについて、来週試すルールを1つだけ決めます。
この確認は、漏れた人を責める場にしないことが大切です。責める場になると、期限を遠くに入れて漏れを隠すようになります。
追客で守る法令
勧誘のルール(宅建業法施行規則16条の11)
宅建業法47条の2第3項と施行規則16条の11第1号は、宅地建物取引業に係る契約の締結の勧誘をするときにしてはいけない行為を定めています。建物の貸借の媒介も宅地建物取引業に含まれます(2条2号)。追客で特に意識したいのは次の4つです。
- ロ:正当な理由なく、契約するかどうかを判断するのに必要な時間を与えることを拒むこと
- ニ:契約しない意思や、勧誘を続けてほしくない意思が示されたのに勧誘を続けること
- ホ:迷惑を覚えさせるような時間に電話し、または訪問すること
- ヘ:深夜または長時間の勧誘など、私生活や業務の平穏を害する方法で困惑させること
追客漏れを防ごうとすると連絡の回数が増えがちですが、断りの意思が示された案件に連絡を続けることはニに当たり得ます。断りを受けたら日時と内容を記録し、案件を終了にします。迷惑を覚えさせるような時間について、大阪府のページは、個別に判断されるとしたうえで、一般的には午後9時から午前8時までの時間帯が該当すると考えられる、と説明しています。
メール配信(特定電子メール法)
特定電子メール法は、営利を目的とする団体などが広告や宣伝の手段として送る電子メールを「特定電子メール」とし(2条2号)、あらかじめ送信に同意した人などを除いて送ることを禁じています(3条1項)。総務省も、広告・宣伝メールを送る場合は原則として法の規制対象になると説明しています。C区分のお客様に新着案内を送る場合は、配信への同意をもらい、同意の記録を保存します(3条2項)。配信メールには送信者の名称と、配信停止を受け付けるメールアドレスなどを表示し(4条)、停止を求められたら送りません(3条3項)。
個人情報の扱い(個人情報保護法)
追客のために記録する連絡先や希望条件は個人情報です。利用目的をできる限り特定し(17条1項)、取得したときに通知または公表し(21条1項)、その目的の範囲で使います(18条1項)。顧客の一覧を個人のパソコンや私物のスマートフォンに置いたままにしないなど、漏えいを防ぐための安全管理の措置も必要です(23条)。
記録の置き場所を1つにする
7つのパターンの多くは、情報が担当者ごとに散らばっていることから起きます。表計算ソフトでも、顧客ごとに次回対応日、次にすること、温度区分、注意点を1行で管理できます。ウルスタくんの顧客管理でも、お客様ごとの対応の履歴をまとめて残せます。道具を選ぶ前に、どの項目を空欄にしないかを決めておくことが先です。
このテーマの全体像は「不動産CRM完全ガイド|6サービス比較と導入手順」にまとめています。
よくある質問
Q1. 追客は何回まで続けてよいですか
回数の決まりはありません。お客様が契約しない意思や、連絡を続けてほしくない意思を示したら止めます。それまでは、温度区分に合わせた間隔で、お客様の役に立つ情報を添えて連絡します。
Q2. 他社で決まったと言われた案件はどうしますか
「終了」にして、理由と日時を記録します。理由を残しておくと、どの段階で他社に決まることが多いのかを後から振り返れます。
Q3. 次回対応日を入れるのが面倒だと言われます
入力の項目を増やしすぎていないか見直します。最初は次回対応日と次にすることの2つだけを必須にし、それ以外は任意にすると続けやすくなります。
Q4. LINEでの追客にも特定電子メール法は関係しますか
法律が対象とする「電子メール」の範囲は法令で決められており、個別のサービスが当たるかどうかはここでは断定しません。どの手段でも、配信への同意をもらい、停止の申し出を受けたら止める運用にしておくのが無難です。
Q5. 管理会社では、入居希望者のほかにも追客の対象がありますか
管理の相談をしてきたオーナーや、更新を控えた入居者への連絡も、次回対応日を決めて管理すると漏れを防げます。入居希望者と同じ一覧に入れるか分けるかは、件数と担当の分け方に合わせて決めます。
出典(本文で参照している資料)
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第2条、第32条、第47条の2)
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行規則」(第16条の11)
- 大阪府「宅地建物取引業法施行規則の一部が改正され、『禁止される勧誘行為』が明文化されました」
- e-Gov法令検索「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」(第2条、第3条、第4条)
- 総務省「迷惑メール対策」
- e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」(第17条、第18条、第21条、第23条)
この記事は2026年10月7日時点の情報です。
