外国人の入居の受け入れは、国籍で一律に判断せず、在留カードで在留資格と在留期間を確かめ、日本の賃貸の決まりごとを契約前に分かる言葉で説明することが基本です。国土交通省は「外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン」を14カ国語で公開し、入居申込書や重要事項説明書、賃貸住宅標準契約書の見本も載せています。同省と日本賃貸住宅管理協会の「外国人の受入れガイド」は、外国人であることを理由として入居を拒否すると不当な差別に当たるおそれがある、と注意しています。この記事では、確認、説明、緊急連絡先、退去、審査の手順を順に整理します。
受け入れの基本は「国籍ではなく条件で判断する」
国土交通省と公益財団法人日本賃貸住宅管理協会が2021年(令和3年)12月にまとめた「外国人の受入れガイド《大家さん、不動産事業者のための》」は、外国人であることを理由として入居を拒否すると不当な差別に当たるおそれがある、としています。
また、住宅セーフティネット法は、住宅の確保に特に配慮を要する「住宅確保要配慮者」を定めており、同法の施行規則3条1号で「日本の国籍を有しない者」が含まれています。国の制度の上でも、外国人の入居を支える仕組みが用意されているということです。
実務での考え方はシンプルです。入居審査では、収入、支払いの見込み、保証会社の審査、連絡先、在留期間など、誰に対しても同じ基準で判断します。国籍や出身地域から、生活態度や支払い能力を推し量ることはしません。審査基準を社内で文書にしておくと、担当者によって判断がぶれることを防げます。
在留カードで確認すること
在留カードは、日本に中長期間在留する外国人に、出入国在留管理庁長官が交付するカードです(出入国管理及び難民認定法19条の3)。在留期間が3月以下と決まった人、短期滞在や外交・公用の在留資格の人などには交付されません。
カードの記載事項は同法19条の4で定められています。入居審査で見るのは主に次の項目です。
| 記載事項 | 確認すること |
|---|---|
| 氏名・生年月日 | 申込書、収入を示す書類、保証会社の申込みと一致しているか |
| 住居地 | 現住所として申告された住所と合っているか |
| 在留資格・在留期間の満了日 | 満了日がいつか。契約期間より前に満了する場合は、更新の予定を本人に聞く |
| 在留カードの番号・有効期間の満了日 | カード自体が有効か |
| 就労制限の有無 | 申告された勤務先・収入と整合するか |
在留期間は更新できるため、満了日が契約期間の途中に来ることだけで断る理由にはなりません。満了日が近い場合は、更新申請の予定や、勤務先・学校の状況を聞き、記録しておきます。
偽造・変造への備え
出入国在留管理庁は「在留カード等読取アプリケーション」を無料で提供しています。カードのICチップに記録された身分事項や顔写真を読み取り、券面と照らし合わせることで、偽造や変造を見つけやすくするものです。同庁は、利用するときは本人の同意を得たうえで在留カード等の提示を受ける必要がある、としています。
また、在留カードの番号が失効していないかは、同庁の「在留カード等番号失効情報照会」で確認できます。2026年6月14日からは新様式の在留カードと、マイナンバーカードの機能を持つ特定在留カードの交付も始まっています。
本人確認書類の写しと個人情報
在留カードの写しを取る場合も、日本人の運転免許証の写しを取る場合と同じく、個人情報保護法のルールに沿って扱います。
- 個人情報を取得したら、あらかじめ利用目的を公表している場合を除き、速やかに利用目的を本人に通知するか公表します(個人情報保護法21条1項)。申込書に「入居審査と契約管理のために使う」などと書いておきます。
- 個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)は、単純な国籍や「外国人」という情報は法的地位であり、それだけでは要配慮個人情報の「人種」には含まないとしています。とはいえ、審査に関係のない情報まで集める必要はありません。
- マイナンバーカードの機能を持つカードの写しを取るときは、個人番号を写し取らないようにします。番号法20条は、法律で認められた場合を除き、他人の個人番号を含む特定個人情報を収集・保管することを禁じています。
- 写しの保管場所、見られる人、保管期間を社内で決めておきます。
契約前の説明と使える公的資料
入居後のトラブルの多くは、日本の賃貸の決まりごとを知らないまま契約したことから生まれます。敷金・礼金などの初期費用、更新料や更新の手続き、解約の予告期間、退去時の原状回復は、国によって慣習が大きく違います。
国土交通省の「外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン」は、貸主、仲介業者、管理会社向けの実務対応マニュアルです。14カ国語で、契約時に役立つチェックシート、入居申込書、重要事項説明書、賃貸住宅標準契約書(平成30年3月版)、定期賃貸住宅標準契約書(平成30年3月版)の見本が掲載されています。言語は日本語のほか、英語、中国語、韓国語、スペイン語、ポルトガル語、ベトナム語、ネパール語、タイ語、インドネシア語、ミャンマー語、クメール語、タガログ語、モンゴル語です。
ガイドラインの見本には、契約書等の書面は日本語版を使い、他の言語の書面は内容を理解してもらうための参考資料である旨が記載されています。契約の正本は日本語、説明には母語の見本、という使い分けが基本です。
説明しておきたい項目
| 項目 | 説明のポイント |
|---|---|
| 初期費用 | 敷金、礼金、仲介手数料、保証料、保険料など、何に払うお金か。敷金は退去時に精算されること |
| 家賃の支払い | 支払日、方法、遅れたときの連絡先 |
| 更新 | 契約期間、更新の手続き、更新料があるかどうか |
| 解約 | 解約の予告期間(標準契約書の例では少なくとも30日前の申入れ)と、書面での手続き |
| 原状回復 | 退去時に借主が負担するもの、しないもの。国土交通省のページには原状回復の説明資料も14カ国語で用意されています |
| 禁止されている行為 | 無断の転貸や同居人の追加、ペットなど、契約で禁止・制限されていること |
外国人の受入れガイドは、やさしい日本語でゆっくり、はっきりと、なるべく専門用語を使わずに話すことが大切だとしています。「敷金」「原状回復」などの言葉は、そのまま使わずに、何のお金か、いつ戻るのかを具体的に説明します。
入居時の暮らし方の説明
ゴミの分別と出す曜日、夜間の音、共用部分の使い方、駐輪場の使い方は、物件や地域ごとにルールが違います。日本人の入居者でも戸惑う部分なので、外国人の入居者には特に丁寧に説明します。
- ゴミ出しのルールは、自治体が多言語版の案内を出していることがあります。物件の所在地の自治体の資料を確認し、入居時に渡します。
- 国土交通省のページには、外国人向けの「部屋探しのガイドブック」や暮らし方の動画も多言語で用意されています。
- 説明した内容と日付を記録し、本人に確認のサインをもらっておくと、後で行き違いがあったときに経緯をたどれます。
ルールを守らない人がいたとしても、それは国籍の問題ではなく個人の問題です。注意をするときは、日本人の入居者と同じ手順と言い方で行います。
緊急連絡先の確保
外国人の受入れガイドは、家族、友人、勤務先、学校など、困ったときに連絡が取れる先を事前に確認しておくことを勧めています。国内に連絡先がない場合も多いため、次の点を入居前に確認します。
- 日本国内で連絡がつく人(勤務先の担当者、学校の担当者、友人など)
- 本人と連絡が取りやすい手段(電話、メール、メッセージアプリなど)
- 本人が日本語で話すのが難しいときに、間に入ってくれる人がいるか
緊急連絡先が確保できない場合について、同ガイドは地域の居住支援協議会に相談するよう案内しています。家賃債務保証会社の利用も、保証人を立てられない人にとっての選択肢になります。
解約・退去・帰国のときの手順
帰国などで退去する場合、敷金の精算や家財の処分が終わる前に出国してしまうと、連絡が取れなくなり、精算が止まることがあります。解約の申入れを受けた時点で、次のことを確認します。
- 解約の申入れを書面で受け取ります。予告期間と、家賃がいつまでかかるかを説明します。
- 退去の立ち会いの日を、出国日より前に決めます。
- 家財をすべて処分または持ち出すことを確認します。粗大ゴミの出し方も伝えます。
- 敷金の精算方法と返金先(口座)を確認します。出国後の連絡先も聞いておきます。
- 電気、ガス、水道、インターネットの解約手続きも、本人に案内します。
在留期間の満了日は契約の更新時期とは別に動きます。ウルスタくんの物件・入居者の管理と更新が近い契約の一覧を使う場合も、更新の連絡をするときに在留カードの期限もあわせて確認する、と社内の手順に書いておくと漏れにくくなります。
入居審査の基準と断るときの注意
審査の基準は、国籍に関係なく、すべての申込者に同じものを使います。たとえば次のような項目です。
| 審査の項目 | 確認の方法 |
|---|---|
| 本人確認 | 在留カード(日本人は運転免許証など)の原本、必要に応じて読取アプリ |
| 支払いの見込み | 収入を示す書類、勤務先・学校の確認、保証会社の審査 |
| 契約期間中に住み続けられるか | 在留期間の満了日と更新の予定 |
| 連絡先 | 国内で連絡がつく緊急連絡先 |
| 契約内容の理解 | 重要事項と契約内容を、本人が理解できる言葉で説明したか |
審査の結果として断る場合は、どの基準を満たさなかったのかを社内で記録します。申込者に伝えるときも、基準にもとづいた理由で伝えます。「外国人だから」「この国の人は」といった理由は、理由として扱いません。貸主から国籍を理由に断るよう指示された場合は、受入れガイドの考え方を示し、条件で判断するよう話し合います。
よくある質問
Q1. 在留期間の満了日が契約期間より前の場合は、断ってもよいですか。
在留期間は更新できるため、満了日だけで判断するのはおすすめしません。更新申請の予定、勤務先や学校の状況を確認し、保証会社の審査とあわせて判断します。在留期間が限られていることが分かっている場合は、定期借家契約を検討する方法もあります。
Q2. 外国語の契約書だけで契約してもよいですか。
国土交通省のガイドラインの見本では、契約書等の書面は日本語版を使い、他の言語の書面は内容を理解してもらうための参考資料とする旨が記載されています。日本語の契約書を正本にし、母語の見本で内容を説明するのが基本です。
Q3. 在留カードの写しを取ってもよいですか。
本人確認のために写しを取ることはできますが、利用目的を通知または公表し(個人情報保護法21条1項)、保管の範囲と期間を決めて管理します。マイナンバーカードの機能を持つカードの場合は、個人番号を写し取らないようにします(番号法20条)。
Q4. 緊急連絡先を用意できない申込者はどうすればよいですか。
国内の勤務先や学校の担当者を連絡先にできないか相談します。外国人の受入れガイドは、緊急連絡先を確保できない場合は地域の居住支援協議会に相談するよう案内しています。
出典(本文で参照している資料)
- 国土交通省「外国人の民間賃貸住宅への円滑な入居について」(外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン ほか)
- 国土交通省「外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン」日本語版
- 国土交通省・日本賃貸住宅管理協会「外国人の受入れガイド《大家さん、不動産事業者のための》」(令和3年12月)
- 出入国在留管理庁「在留カードとは?」
- 出入国在留管理庁「在留カード等読取アプリケーション サポートページ」
- 出入国在留管理庁「在留カード等番号失効情報照会」
- e-Gov法令検索「出入国管理及び難民認定法」(19条の3、19条の4)
- e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」(21条)
- 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」
- e-Gov法令検索「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(20条)
- e-Gov法令検索「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律施行規則」(3条1号)
この記事は2026年10月7日時点の情報です。