賃貸管理 読了 14分

入居審査マニュアル|確認する項目と書類、本人確認の方法、個人情報保護法と差別禁止の注意点

入居審査は、確認する項目と判断の基準を先に決めて書面にし、申込者の個人情報は目的を示して必要な範囲だけ集めると、判断のぶれと法令上のリスクを減らせます。本人確認、保証、断るときの伝え方まで、条文と公的資料で確認します。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
入居審査マニュアル|確認する項目と書類、本人確認、個人情報と差別禁止の注意点
目次

入居審査は、確認する項目と判断の基準を先に決めて書面にし、申込者の個人情報は利用目的を示して必要な範囲だけ集める、という順で組み立てると、担当者による判断のぶれと法令上のリスクを減らせます。この記事では、確認する項目と書類、本人確認、個人情報保護法、保証人と家賃債務保証業者、差別に当たる扱いの避け方を、条文と国土交通省の資料に沿って整理します。

入居審査で決めておくこと

入居審査で何を確認しなければならないかを定めた法令は確認できませんでした。だからこそ、各社が自分で基準を決め、書面にしておくことが大切です。基準が担当者の頭の中にしかないと、同じような申込みでも結果が変わり、断られた人から理由を問われたときに説明できません。

役割を分ける

  • 貸主(オーナー):入居を認めるかどうかを最終的に決める人。
  • 管理会社:貸主から任された範囲で、申込書の確認、本人確認、保証会社とのやり取りを行い、判断の材料をそろえる。
  • 家賃債務保証業者:保証を引き受けるかどうかを自社の基準で判断する。

オーナーと管理会社の間では、どこまでを管理会社が判断してよいか(例:保証会社が承認し、書類に不備がなければ管理会社の判断で進めてよい)を、管理委託契約か覚書で決めておくと、連絡の往復が減ります。

確認する項目と、確認に使う書類

審査で見るのは、家賃を払い続けられるか、契約の内容を守って住めるか、連絡がとれるか、の3点に集約できます。次の表は、項目と書類の組み合わせの例です。

確認したいこと確認する項目(例)書類・方法(例)
本人であること氏名、生年月日、現住所運転免許証、在留カード、パスポートなどの写し
家賃を払い続けられるか収入、勤務先・勤続、家賃との釣り合い源泉徴収票、確定申告書の控え、課税証明書、内定通知書など
保証保証会社の承認、連帯保証人の意思保証会社の審査結果、保証契約書(極度額の記載)
契約の内容を守れるか入居人数、使用目的、ペット、楽器など申込書、契約条件の説明と確認
連絡がとれるか電話番号、メール、緊急連絡先申込書、緊急連絡先本人への確認

項目ごとに「何がそろえば可」「何があれば貸主に相談」を決めておくと、判断の理由を記録しやすくなります。年収の何倍といった目安を使う場合も、それを唯一の基準にせず、預貯金や同居人の収入、保証の内容と合わせて見る、と書いておくと実態に合わせやすくなります。

本人確認の考え方

犯罪収益移転防止法との関係

宅地建物取引業者が犯罪収益移転防止法の取引時確認を求められる「特定取引」は、宅地・建物の売買契約の締結又はその代理若しくは媒介です(国土交通省 事務連絡 令和7年6月27日)。賃貸借の媒介は特定取引に含まれていません。ただ、なりすましや名義貸しによる契約を防ぐため、賃貸でも写真付きの本人確認書類で本人であることを確かめるのが実務の基本です。

マイナンバー(個人番号)は集めない

番号法15条は、法律で認められた場合を除き、他人に個人番号の提供を求めてはならないとし、20条は個人番号を含む特定個人情報の収集・保管を制限しています。マイナンバーカードを本人確認書類として使う場合も、個人番号が記載された面は写しをとらず、受け取ってしまった写しは番号を見えないようにして扱います。

外国籍の申込者

国土交通省の「外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン」(平成30年3月版)は、Q&Aで、外国人の身元確認書類として在留カード(3か月を超える在留期間で在留する中長期在留者に交付されるICカード)やパスポートなどを挙げ、部屋探しの際に日本の滞在資格や契約期間などを事前に確認する項目として示しています。国籍で判断するのではなく、ほかの申込者と同じ項目を確認したうえで、在留期間と契約期間の関係のように外国籍の方に特有の事情を追加で確認する、という順番で考えます。

申込書と個人情報保護法

入居申込書は、本人から直接、書面で個人情報を取得する場面です。個人情報保護法の主な条文は次のとおりです。

条文内容入居審査での対応(例)
17条1項利用目的をできる限り特定する「入居審査、賃貸借契約の締結と管理、保証会社への審査依頼のため」など具体的に書く
21条2項本人から直接書面で取得するときは、あらかじめ利用目的を明示する申込書の記入欄の前に利用目的を記載する
18条1項同意なく、利用目的の達成に必要な範囲を超えて取り扱わない審査で得た情報を、本人の同意なく営業の案内などに使わない
20条偽りその他不正の手段で取得しない。要配慮個人情報は原則として本人の同意なく取得しない病歴などは、必要がない限り聞かない
27条1項原則として、本人の同意なく個人データを第三者に提供しない保証会社やオーナーへの提供について、申込書で同意を得る
22条利用する必要がなくなったときは遅滞なく消去するよう努める入居に至らなかった申込書の保管期間と廃棄方法を決める

要配慮個人情報

個人情報保護法2条3項は、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実などを「要配慮個人情報」としています。入居審査では、これらを聞かなくても判断できるように項目を組むのが基本です。どうしても必要な事情があるときは、目的を説明し、本人の同意を得て取得します。

SNSなどの調べものは慎重に

申込者の名前をインターネットで調べて判断材料にすることは、利用目的との関係や、要配慮個人情報に当たる情報に触れてしまうおそれがあります。社内のルールとして、審査に使う情報の範囲を申込書・本人確認書類・保証会社の結果などに限っておくと、担当者が迷いません。

保証人と家賃債務保証業者

連帯保証人

個人が賃貸借の連帯保証人になる契約は、民法465条の2の「個人根保証契約」に当たり、極度額を定めなければ効力を生じません。保証契約書に極度額が書かれているかを、契約前のチェック項目に入れておきます。

家賃債務保証業者

国土交通省の家賃債務保証業者登録制度(平成29年10月25日施行)は任意の登録制度で、登録業者の一覧が国土交通省のサイトで公開されています。登録業者は、家賃債務保証業者登録規程により、保証委託契約の締結前に書面を交付し(17条)、締結時にも書面を交付します(18条)。提携する保証会社を選ぶときに、登録の有無と、契約書の内容(解除や明渡しに関する条項)を確認しておくと、入居後のトラブルを避けやすくなります。

保証会社の審査に通らなかった場合、その理由は保証会社の判断であり、管理会社が推測で理由を伝えることは避けます。

差別に当たる扱いを避ける

障害を理由とする差別

障害者差別解消法8条1項は、事業者が障害を理由として不当な差別的取扱いをすることを禁じています。同条2項は、障害者から社会的障壁の除去を求める意思の表明があり、負担が過重でないときは、必要かつ合理的な配慮をしなければならないと定めています。国土交通省の資料によると、この改正法は令和3年6月に公布され、令和6年4月に施行されました。

国土交通省が平成27年11月に策定した対応指針では、宅地建物取引業者の不当な差別的取扱いの例として、次のようなものが挙げられています(対応指針は令和5年11月に改定されています)。

  • 物件一覧表に「障害者不可」と記載する
  • 物件広告に「障害者お断り」として入居者募集を行う
  • 障害があることを理由に、賃貸人や家賃債務保証会社への交渉など必要な調整を行うことなく仲介を断る
  • 「火災を起こす恐れがある」等の懸念を理由に仲介を断る
  • 障害者に対し、障害を理由とした誓約書の提出を求める

国籍・年齢などによる一律の線引き

国土交通省の外国人入居円滑化ガイドラインは、外国人であっても、正しい知識と民間や行政のさまざまなサービスの活用により円滑に受け入れることが可能としています。「外国人不可」「高齢者不可」のように属性で一律に断るのではなく、全員に同じ項目を確認し、契約の継続に必要な事情(在留期間、緊急連絡先、見守りの手段など)を個別に確認するほうが、説明のつく審査になります。

オーナーから属性による一律の制限を求められた場合は、上の指針やガイドラインを示して、確認項目による判断に置き換えられないかを相談します。

断るときの伝え方と記録

  • 結論は、口頭だけでなくメールや書面でも伝える。
  • 理由は、確認できる事実の範囲で伝える。保証会社の判断の場合は「保証会社の審査の結果」と伝える。
  • 国籍、障害、年齢などの属性を理由として挙げない。
  • 社内には、どの項目のどの事実で判断したかを記録する。
  • 申込書類は、決めた保管期間が過ぎたら廃棄する(個人情報保護法22条)。

当社の業務クラウド「ウルスタくん」では、顧客管理と物件・入居者の管理ができ、申込から契約までの書類(賃貸借契約書・重要事項説明書など)の作成と電子サインにも使えます。審査の項目と結果を同じ場所に残しておくと、後から判断の理由を確認しやすくなります。

入居後に滞納が起きたときの手順は家賃滞納の回収マニュアルにまとめています。

申込から結果の連絡までの流れ

次の流れは手順の例です。各段階で誰が何を確認したかを残しておくと、判断の理由を後から説明できます。

段階やること(例)注意点
1. 申込の受付申込書の受領、記入漏れの確認利用目的と第三者提供の同意欄を申込書に入れておく(個人情報保護法21条2項・27条1項)
2. 本人確認写真付きの本人確認書類で氏名・生年月日・住所を照合個人番号の面は写しをとらない(番号法20条)
3. 保証の確認保証会社への審査依頼、又は連帯保証人の意思確認連帯保証人の契約書に極度額があるか(民法465条の2)
4. 社内の確認決めた項目に沿って判断材料をそろえ、記録する属性による一律の線引きをしない
5. 貸主の確認判断材料を貸主に示し、入居の可否を確認する管理会社に任されている範囲を事前に決めておく
6. 結果の連絡申込者と仲介会社に結果を伝える断る場合は、確認できる事実の範囲で伝える

審査にかかる日数の目安を申込時に伝えておくと、結果を待つ申込者や仲介会社からの問い合わせが減ります。保証会社の審査が長引く場合は、途中経過だけでも連絡します。

審査のあとに使う賃貸借契約書の雛形の入手先と使い方は「賃貸契約書テンプレート無料|国交省の標準契約書Word・PDFの入手先と選び方」にまとめています。申込者の反社会的勢力の確認の流れは「不動産の反社チェックのやり方|業界データベースの照会と契約前の3ステップ」にまとめています。

よくある質問

Q1. 保証会社の審査に通れば、管理会社の審査は不要ですか。

保証会社が見ているのは保証を引き受けるかどうかで、入居人数や使用目的、ペットなど契約の内容を守れるかは別に確認が必要です。本人確認と契約条件の確認は、管理会社側でも行います。

Q2. 障害のある申込者から、内覧や契約の手続きで配慮を求められました。

障害者差別解消法8条2項により、負担が過重でない範囲で必要かつ合理的な配慮をすることが事業者に求められています。たとえば書類の読み上げや説明の方法の工夫など、何ができるかを申込者と話し合い、貸主との調整が必要なものは貸主に相談します。対応した内容は記録しておきます。

Q3. マイナンバーカードの写しをもらってもよいですか。

本人確認書類として表面を使うことはできますが、個人番号を集めたり保管したりすることは番号法20条で制限されています。個人番号が記載された面の写しはとりません。

Q4. 在留期間が契約期間より短い申込者はどうすればよいですか。

国籍を理由に断るのではなく、在留期間の更新の予定や勤務先・学校の状況を確認し、貸主と相談して判断します。国土交通省のガイドラインは、滞在資格や契約期間を事前に確認する項目として挙げています。

Q5. 断った理由を詳しく教えてほしいと言われました。

確認できた事実の範囲で、社内の基準に照らして判断したことを伝えます。保証会社の判断の場合は、その旨を伝え、理由は保証会社に確認してもらいます。推測で理由を伝えることは避けます。

Q6. 入居に至らなかった申込書は、いつ捨てればよいですか。

法律で一律の期間は決まっていません。個人情報保護法22条は、利用する必要がなくなったときは遅滞なく消去するよう努めるとしています。保管期間を社内で決め、申込書の利用目的とあわせて示しておきます。

出典(本文で参照している資料)

この記事は2026年10月7日時点の情報です。

実務に役立つコラムを、週1回メールで

賃貸管理・反響対応・法改正の記事を、月曜の朝を目安にお届けします。無料。いつでも解除できます。登録の前に、確認のメールを1通お送りします。