重要事項説明書の雛形は、国土交通省が「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」の附属書3として公開している様式例をもとに作るのが確実です。様式例は宅建業法35条と施行規則16条の4の3の記載事項を並べたもので、2026年4月1日施行の版が出ています。この記事では、入手先、記載事項の骨格、IT重説と電子交付の条件を、条文と国交省の資料で確かめた範囲で整理します。
雛形の入手先は国交省の「様式例」
国土交通省のページ「宅地建物取引業法 法令改正・解釈について」に、「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」と、その附属書3「重要事項説明の様式例」が掲載されています。2026年10月7日に確認した時点では、2026年4月1日施行の版が掲載されていました。
附属書3には、次の4つの様式例が入っています。
| 様式例 | 使う場面 |
|---|---|
| 売買・交換用 | 土地・建物の売買、交換 |
| 区分所有建物の売買・交換用 | マンションの1室などの売買、交換 |
| 宅地の貸借用 | 土地の賃貸借 |
| 建物の貸借用 | アパート・マンション・店舗などの賃貸借 |
法律が決めているのは「何を説明し、書面に書くか」です。様式例は、その記載事項を漏れなく並べるための例です。所属団体の書式や自社で作った書式を使うこともできますが、元になる記載事項は同じです。どの書式を使う場合も、まず様式例と見比べて、項目の抜けがないかを確かめるのが近道です。
様式例は法令の改正にあわせて改訂されます。同じページに改正の履歴が並んでいるので、自社の雛形がどの版をもとにしているかを記録しておくと、次の改訂のときに差分を追いやすくなります。
35条1項で決まっている記載事項
宅建業法35条1項は、宅建業者が、契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士に、少なくとも定められた事項を記載した書面を交付して説明させなければならないとしています。各号の内容を短くまとめると次のとおりです。
| 号 | 内容 | メモ |
|---|---|---|
| 1号 | 登記された権利の種類・内容、登記名義人など | 登記事項証明書で確認 |
| 2号 | 都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限の概要 | 取引の種類で対象の法令が変わる |
| 3号 | 私道に関する負担 | 建物の貸借以外の契約で必要 |
| 4号 | 飲用水・電気・ガスの供給、排水施設の整備状況 | 未整備なら見通しと特別の負担 |
| 5号 | 未完成物件の完了時の形状・構造など | 図面が必要なときは図面 |
| 6号 | 区分所有建物の敷地・共用部分・管理などに関する事項 | マンションの取引 |
| 6号の2 | 既存建物の建物状況調査の実施の有無と結果の概要、建築・維持保全の書類の保存状況 | 調査は省令で定める期間内のもの |
| 7号 | 代金・交換差金・借賃以外に授受される金銭の額と目的 | 敷金、礼金、更新料など |
| 8号 | 契約の解除に関する事項 | |
| 9号 | 損害賠償額の予定または違約金に関する事項 | |
| 10号 | 手付金等の保全措置の概要 | 41条・41条の2の場合 |
| 11号 | 支払金・預り金の保全措置の有無と概要 | |
| 12号 | 代金・交換差金の金銭の貸借のあっせんの内容と、不成立のときの措置 | 主に売買 |
| 13号 | 種類・品質に関する契約不適合責任の履行に関する措置 | 主に売買 |
| 14号 | その他、相手方の利益の保護のために省令で定める事項 | 施行規則16条の4の3など |
表の「メモ」は読みやすさのための補足です。どの号が自社の取引に当てはまるかは、条文と様式例の記載要領で確かめてください。
建物の貸借で加わる事項(施行規則16条の4の3)
35条1項14号を受けて、施行規則16条の4の3が取引の種類ごとに追加の説明事項を決めています。建物の貸借では、同条の1号から5号までと7号から12号までが対象です。
| 号 | 内容 |
|---|---|
| 1号 | 造成宅地防災区域内かどうか |
| 2号 | 土砂災害警戒区域内かどうか |
| 3号 | 津波災害警戒区域内かどうか |
| 3号の2 | 水防法施行規則11条1号に基づき市町村長が提供する図面(水害ハザードマップ)に物件の位置が表示されているときは、図面上の所在地 |
| 4号 | 石綿の使用の有無の調査の結果が記録されているときは、その内容 |
| 5号 | 1981年(昭和56年)6月1日より前に新築工事に着手した建物で耐震診断を受けているときは、その内容 |
| 7号 | 台所、浴室、便所その他の建物の設備の整備の状況 |
| 8号 | 契約期間と契約の更新に関する事項 |
| 9号 | 定期建物賃貸借(借地借家法38条1項)や終身建物賃貸借(高齢者住まい法52条1項)にするときは、その旨 |
| 10号 | 用途その他の利用の制限に関する事項 |
| 11号 | 敷金など、契約終了時に精算することとされている金銭の精算に関する事項 |
| 12号 | 建物の管理が委託されているときは、委託を受けている者の氏名(商号)と住所(主たる事務所の所在地) |
実務で抜けやすいのは3号の2と12号です。3号の2は、物件の位置が図面に示されているときに、その図面上の所在地を示して説明する事項です。どの図面を使ったかが後から分かるよう、入手した日と図面の名称を控えておくと確認がしやすくなります。12号は、管理会社が替わったときに古い名称のまま残りやすい欄です。
建物の貸借用の様式例の構成
附属書3の建物の貸借用は、大きく3つのまとまりと記載要領でできています。
- Ⅰ 対象となる建物に直接関係する事項(登記、法令上の制限、設備、災害関係の区域、水害ハザードマップ、石綿、耐震診断など)
- Ⅱ 取引条件に関する事項(借賃以外の金銭、契約の解除、損害賠償額の予定、契約期間と更新、用途の制限、敷金等の精算、管理の委託先など)
- Ⅲ その他の事項(供託所等に関する説明など)
- 記載要領(各欄の書き方、居住用と事業用の違い、別紙の扱いなど)
2026年4月1日からは、区分所有建物で管理業者が管理者になる方式(いわゆる管理業者管理者方式)が採られているときに、その旨を説明する事項が加わりました。国交省の通知(令和7年12月15日付 国不動第452号)で、施行規則16条の2第9号などの新設と、解釈・運用の考え方の改正が示されています。マンションの売買や賃貸を扱う会社は、雛形の該当欄が新しい版になっているかを確かめてください。
説明の手続き(35条4項・5項・6項)
- 説明するのは宅地建物取引士です。説明の時期は契約が成立するまでの間です(35条1項)。
- 説明のときは、相手方に宅地建物取引士証を提示します(35条4項)。
- 交付する書面には、宅地建物取引士が記名します(35条5項)。
- 相手方が宅建業者のときは、説明は要らず、書面の交付で足ります(35条6項)。
雛形の側では、説明をする宅建士の氏名・登録番号・業務に従事する事務所の欄と、記名の欄が揃っているかを見ます。説明日を書く欄も、後から説明の時期を確かめるために役立ちます。
IT重説の条件
テレビ会議などを使った重要事項説明(IT重説)について、国交省の「重要事項説明書等の電磁的方法による提供及びITを活用した重要事項説明 実施マニュアル」(令和6年12月版)は、解釈・運用の考え方に沿って次の条件を示しています。
- 宅建士と相手方が、図面などの書類と説明の内容を十分に理解できる程度に映像を見られ、音声を聞き取れ、双方向でやりとりできる環境であること
- 重要事項説明書と添付書類を、あらかじめ相手方に送っておくこと
- 説明を始める前に、相手方が書類を手元で確認しながら説明を受けられる状態にあることと、映像・音声の状況を確かめること
- 宅建士証を提示し、相手方が画面上で氏名や顔写真を確認できたことを確かめること
説明の途中で映像の視認や音声の聞き取りに支障が生じたときは、宅建士は説明を中断し、原因を把握して支障がない状態にしてから再開します。解消できないときは中止し、残りを対面の説明に切り替えることもできるとされています。録画・録音は義務ではありませんが、マニュアルはトラブルの解決に役立つものとして挙げています。行う場合は双方の了解をとり、個人情報として適切に管理します。
雛形に「IT重説の実施記録」の欄を設けるかどうかは各社の判断です。設ける場合は、実施日時、使った方法、事前送付の日、映像・音声の確認、宅建士証の確認といった、上の条件に対応する項目にしておくと、後から説明の経過を確かめやすくなります。
電子交付(35条8項・施行規則16条の4の8)
35条8項は、相手方の承諾を得て、書面の交付に代えて、記載事項を電磁的方法で提供できるとしています。方法と要件は施行規則16条の4の8が決めています。
| 確認する点 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 承諾 | 提供の方法(メール、ダウンロードなど)とファイルの形式を示し、書面または電子メールなど記録が残る方法で承諾を得る | 35条8項、実施マニュアル |
| 承諾の撤回 | 承諾のあとでも、相手方は電磁的方法による提供を受けない旨を申し出られる | 実施マニュアル |
| 出力できること | 相手方がファイルを出力して書面を作成できる | 規則16条の4の8第2項1号 |
| 改変の確認 | 記載事項が改変されていないかを確認できる措置(電子署名やタイムスタンプなど) | 規則16条の4の8第2項2号 |
| 閲覧型の通知 | 業者側のファイルを相手方が閲覧する方法では、記録した旨を相手方に知らせる(閲覧を確認したときを除く) | 規則16条の4の8第2項3号 |
| 宅建士の明示 | 説明をした宅建士が明示されていること | 規則16条の4の8第2項4号 |
国交省は、承諾の取り方の例も同じページで公開しています。承諾は、説明当日ではなく、申込みの段階など早めにとっておくと、当日に紙へ切り替える手間を減らせます。
自社の雛形を整える手順の例
- 国交省のページで最新の様式例と解釈・運用の考え方を開き、版(施行日)を控える。
- 自社で扱う取引の種類ごとに雛形を分ける(建物の貸借、宅地の貸借、売買など)。
- 35条1項各号と施行規則16条の4の3の該当号を、雛形の欄と1対1で突き合わせる。
- 水害ハザードマップ、管理の委託先、設備の状況など、物件ごとに変わる欄の入力元(誰がどの資料から書くか)を決める。
- 宅建士の欄、記名欄、説明日の欄、電子交付の承諾の記録を確認する。
- 特約は雛形の本文と分けて管理し、借地借家法など強行規定に反していないかを見直す。
- 次の改訂に備え、改正履歴を見る時期を決めておく。
当社の業務クラウド「ウルスタくん」には、賃貸借契約書・重要事項説明書など24種類の書類を作る機能と電子サインの機能があります。ただし、記載内容が最新の法令と様式例に合っているかの確認は、どの道具を使う場合も各社で行う必要があります。
よくある質問
Q1. 国交省の様式例をそのまま使ってよいですか。
使えます。様式例は記載事項を並べた例なので、物件や取引に合わせて欄を足したり、別紙を付けたりして使うのが一般的です。逆に、欄を削るときは、その欄が法令上必要な事項でないかを条文で確かめてください。
Q2. IT重説は録画しないといけませんか。
国交省の実施マニュアルでは、録画・録音は義務ではありません。トラブルの解決に役立つ方法として示されており、行う場合は双方の了解と個人情報としての管理が必要です。
Q3. 電子交付の承諾は口頭でもよいですか。
実施マニュアルは、書面または電子メールなど記録が残る方法で承諾を得るよう示しています。提供の方法とファイルの形式を示したうえで承諾を得て、その記録を保存しておきます。
Q4. 相手方が宅建業者のときも説明が必要ですか。
35条6項により、相手方が宅建業者のときは説明は要らず、書面の交付で足ります。書面の交付自体は必要です。
Q5. 様式例が改訂されたことはどうやって知ればよいですか。
国交省の「宅地建物取引業法 法令改正・解釈について」のページに改正履歴が載っています。所属団体からの通知とあわせて、定期的に確認する時期を決めておくと見落としを減らせます。
出典(本文で参照している資料)
- 宅地建物取引業法(e-Gov法令検索) 35条
- 宅地建物取引業法施行規則(e-Gov法令検索) 16条の4の3、16条の4の8
- 国土交通省「宅地建物取引業法 法令改正・解釈について」
- 国土交通省「解釈・運用の考え方」附属書3 重要事項説明の様式例(2026年4月1日施行)
- 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(2026年4月1日施行)
- 国土交通省「ITを活用した重要事項説明及び書面の電子化について」
- 国土交通省「重要事項説明書等の電磁的方法による提供及びITを活用した重要事項説明 実施マニュアル」(令和6年12月版)
- 国土交通省 施行通知(令和7年12月15日 国不動第452号、全日本不動産協会掲載)
この記事は2026年10月7日時点の情報です。