賃貸管理 読了 16分

電子契約サービス比較|クラウドサイン・freeeサイン・GMOサイン・ドキュサイン・Adobe Acrobat Signを、不動産の電子契約の要件で整理(順位・料金なし)

電子契約サービスは、順位より「不動産の書類の要件を満たして運用できるか」で比べるのが近道です。クラウドサイン、freeeサイン、GMOサイン、ドキュサイン、Adobe Acrobat Signについて、公式ページで確認できた事実と、宅建業法・借地借家法の要件をまとめます。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
電子契約サービス比較|クラウドサイン・freeeサインなど5社を不動産の要件で整理
目次

電子契約サービスは、順位よりも「不動産の書類で求められる要件を満たして運用できるか」と「自社の件数や連携先に合うか」で比べるのが近道です。この記事では、クラウドサイン、freeeサイン、GMOサイン、ドキュサイン、Adobe Acrobat Signの5つについて、2026年10月7日に各社の公式ページで確認できた事実だけを並べます。順位付けと料金の記載はしていません。料金は各社の公式ページで最新の表示を確認してください。

不動産で電子契約を使うための法律の要件

2022年5月18日の改正法の施行で、宅建業法の書面を電磁的方法で提供できるようになりました。どの書面にも共通するのは「相手方の承諾を得ること」です。主な書面と根拠は次のとおりです。

書面電子化の根拠承諾を得る相手
媒介契約書(売買・交換)宅建業法34条の2第11項依頼者
重要事項説明書(35条書面)宅建業法35条8項説明の相手方など
37条書面(売買・交換)宅建業法37条4項契約の当事者など(自ら当事者・代理・媒介の区分に応じて定まる)
37条書面(貸借)宅建業法37条5項契約の当事者など(代理・媒介の区分に応じて定まる)
定期建物賃貸借の契約借地借家法38条2項(電磁的記録による契約は書面による契約とみなす)規定上、承諾の要件はない
定期建物賃貸借の事前説明の書面借地借家法38条4項借主
管理受託契約の締結前・締結時の書面賃貸住宅管理業法13条2項、14条2項賃貸人(オーナー)

定期建物賃貸借では、契約の前に「更新がなく、期間の満了で終了する」ことを書面を交付して説明しなければならず(借地借家法38条3項)、説明をしなかったときは更新がない旨の定めが無効になります(同条5項)。電子で済ませる場合も、この説明の書面と、契約そのものを分けて管理してください。

承諾の取り方

宅建業法施行令3条の3は、あらかじめ提供に使う電磁的方法の種類と内容を示した上で、書面または電磁的方法で承諾を得るよう定めています。承諾を得た後でも、相手方から電磁的方法で受け取らないと申出があれば、電磁的方法で提供してはいけません。承諾の記録をどこに残すかは、サービスを選ぶ前に決めておく点です。

電子の書面に求められること

重要事項説明書を電磁的方法で提供する場合、宅建業法施行規則16条の4の8は次の基準を定めています。

  • 相手方が出力して書面を作成できること
  • 記載事項が改変されていないかどうかを確認できる措置を講じていること
  • 書面の交付に係る宅地建物取引士が明示されること

国土交通省の「重要事項説明書等の電磁的方法による提供及びITを活用した重要事項説明実施マニュアル」(令和6年12月版)は、改変されていないことを確かめる措置として、電子署名やタイムスタンプの利用を挙げています。37条書面と媒介契約書にも、宅地建物取引士の記名や記名押印に代わる措置が求められます(37条4項・5項、34条の2第11項)。

立会人型と当事者型の違い(電子署名法3条)

電子署名法3条は、本人による一定の電子署名が行われている電磁的記録は、真正に成立したものと推定すると定めています。電子契約サービスの署名の方式は大きく2つあります。

方式しくみ実務での特徴
立会人型(事業者署名型)利用者の指示を受けて、サービス提供会社が自分の署名鍵で署名する相手方は電子証明書を用意しなくてよく、メールなどで受け取って署名できる
当事者型利用者本人の電子証明書を使って署名する本人性の確認は強くなるが、相手方にも証明書の準備が要る

立会人型が3条の電子署名に当たるかについて、デジタル庁と法務省のQ&A(令和2年9月4日、令和6年1月9日一部改定)は、利用者とサービス提供会社の間の手続と、サービス提供会社の内部の手続の両方で十分な水準の固有性が満たされている必要があるとしています。前者の例として、登録済みのメールアドレスとパスワードの入力に加え、SMSなど別の手段で得たワンタイム・パスワードを入力する方法が示されています。サービスを選ぶときは、相手方の認証にどの方法を使えるかを確認してください。

比べるときの観点

不動産会社が比べるときは、次の観点で公式ページと利用規約を確認すると漏れが少なくなります。

観点確認すること
署名の方式立会人型・当事者型のどちらに対応するか。相手方の認証方法(SMS、二要素認証など)
不動産書類での使い方重要事項説明書、37条書面、賃貸借契約、媒介契約などについて公式に案内があるか
宅地建物取引士の明示記名をどう表示するか。説明担当の宅地建物取引士が分かる形で送れるか
承諾の記録承諾を同じサービス内で取れるか、別に記録するか
改変の確認電子署名とタイムスタンプが付くか
保存と検索電子帳簿保存法の要件(日付・金額・取引先で検索、改ざん防止の措置)に合う保存ができるか
連携APIの有無と、使えるプラン。物件管理や顧客管理のソフトとの連携
権限と安全性IPアドレス制限、シングルサインオン、承認の流れ(ワークフロー)の有無と、使えるプラン
試し方無料のプランや試用期間の有無

5つのサービスの公式ページで確認できたこと(2026年10月7日時点)

以下は、各社の公式ページに書かれていたことをそのまま整理したものです。公式ページに書かれていない項目は「記載を確認できず」としています。記載がないことは、その機能がないことを意味しません。

サービス運営署名の方式(公式ページの記載)不動産向けの案内API・連携無料で試す方法
クラウドサイン弁護士ドットコム株式会社事業者署名型(立会人型)。電子署名とタイムスタンプ。マイナンバーカードによる署名の選択肢あり不動産業界向けページあり(賃貸・売買の契約業務)Web API(コーポレートプラン以上)、外部サービス連携フリープラン(月2件まで、1ユーザー)
freeeサインfreee株式会社料金ページで立会人型・当事者型の記載を確認できず。タイムスタンプは全プランに記載不動産の書類に特化した案内は確認できずAPI・Webhook(Starter以上)、freee人事労務、kintone、Salesforceとの連携の記載法人向け無料プラン、Standardプランの14日間無料試用
GMOサインGMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社立会人型(契約印タイプ)と当事者型(実印タイプ)の両方。延長タイムスタンプ不動産向けページあり(賃貸借契約、売買契約、媒介契約、重要事項説明書、更新契約書など)API連携(一部有償)、Salesforce、kintone、boxなどお試しフリー(月5件まで、1ユーザー、契約印タイプのみ)
ドキュサインDocusign, Inc.電子署名、デジタル署名、電子印鑑の記載不動産向けページあり(不動産売買契約、重要事項説明書、賃貸借契約、更新・解約、媒介契約、定期借家契約)API、Salesforce、Microsoft、Googleなどとの連携無料トライアル
Adobe Acrobat Signアドビ(Adobe)電子サイン、デジタル署名の記載日本の不動産書類に特化した案内は確認できずMicrosoft Word、Teams、Salesforce、Workday、Box、Dropboxなどとの連携Acrobat Pro グループ版などの無料体験

クラウドサイン

公式ページは、事業者署名型(立会人型)の電子契約サービスとして、電子署名法が定める「電子署名」に該当することを法務省とデジタル庁に認められたと説明しています。不動産業界向けのページでは、2022年の借地借家法・宅建業法等の改正で不動産取引の電子化が可能になったことに触れ、賃貸・売買の契約業務での利用や、不動産システムとの連携を案内しています。シングルサインオンとIPアドレス制限は、ビジネスプランとエンタープライズプランの機能として掲載されています。

freeeサイン

公式ページは、文書の作成から電子署名、契約の保管までを1つのサービスで扱えることと、弁護士が作成した公式テンプレートを案内しています。料金ページの機能表には、タイムスタンプ、API・Webhookの利用、本人確認書類の必須化、文書の一括作成・送信、ワークフロー、IPアドレス制限が、プランごとに掲載されています。freee人事労務など同社の他のサービスを使っている会社では、連携の範囲を確認する価値があります。

GMOサイン

公式ページは、立会人型と当事者型の両方を1つのサービスで使えることを案内し、当事者型ではグループ会社の電子証明書を使う形をとっています。不動産業界向けのページでは、全宅連との業務提携や、メール・SMS・二要素認証・マイナンバーカードによる本人確認などの認証方法を掲載しています。電子帳簿保存法への準拠も記載されています。

ドキュサイン

米国のDocusign, Inc.のサービスです。日本語の公式ページからは電子署名の法的な扱いの解説が案内されており、不動産向けページでは、重要事項説明書や定期借家契約を含む書類の例と、宅建業法の改正に伴う書面電子化の解説記事を案内しています。

Adobe Acrobat Sign

PDFの作成・編集のAcrobatと一体で使う形です。公式ページでは、Acrobatのビジネス向けプランと、中〜大企業向けのAcrobat Sign Solutionsを案内しています。Microsoft WordやTeams、クラウドストレージとの連携が掲載されています。

freeeサインとクラウドサインを比べるときの見方

「freee サイン クラウド サイン 比較」で調べる方が多いので、この2つに絞った見方を示します。優劣ではなく、自社の状況に合うかどうかで判断してください。

  • 署名の方式:クラウドサインは公式ページで事業者署名型(立会人型)であることを明示しています。freeeサインの料金ページでは方式の記載を確認できなかったため、不動産の書類で使う前に方式と相手方の認証方法を問い合わせてください。
  • 不動産の書類での使い方:クラウドサインには不動産業界向けのページがあります。freeeサインでは、不動産の書類に特化した案内を確認できませんでした。どちらでも、宅地建物取引士の明示(施行規則16条の4の8)と承諾の記録の方法は、自社で運用を決める必要があります。
  • 連携:freeeサインはfreeeの他のサービスやkintone、Salesforceとの連携を掲載し、APIはStarterプラン以上です。クラウドサインはWeb APIをコーポレートプラン以上で提供し、不動産システムとの連携を案内しています。
  • 試し方:どちらにも無料のプランがあります。実際の重要事項説明書と賃貸借契約書で、相手方の受け取りから保存まで試してみるのが確実です。

電子契約を始める手順

  1. 対象の書類を決める:賃貸借契約や更新契約など、件数が多く書式が決まっているものから始めると運用を固めやすくなります。
  2. 承諾の取り方を決める:方法の種類と内容を示す文面を作り、承諾の記録の保存場所を決めます(施行令3条の3)。
  3. 宅地建物取引士の明示の方法を決める:書面上の記名の位置と、送信者・署名者の設定を決めます。
  4. 相手方の認証方法を決める:メールだけでなくSMSなどを組み合わせられるか確認します。
  5. 保存のルールを決める:電子帳簿保存法の要件に合わせ、検索できる形で保存します。
  6. 紙に戻すときの手順を決める:相手方が電子での受け取りを断った場合や、承諾を撤回した場合の流れを用意します。

ウルスタくんの電子サインについて

ウルスタくんは筆者が代表を務めるウルスタ株式会社のサービスのため、上の比較表には入れていません。ウルスタくんでは、賃貸借契約書・重要事項説明書など24種の書類の作成と電子サインを、物件・入居者の管理と同じ画面で扱えます。検討するときは、上の観点の表をそのまま使って確認してください。

このテーマの全体像は「不動産のIT重説 完全ガイド2026|国交省マニュアルの遵守事項と売買・賃貸の手順」にまとめています。

よくある質問

Q1. 重要事項説明書も電子契約サービスで送ってよいのですか。

相手方の承諾を得れば、電磁的方法で提供できます(宅建業法35条8項)。出力して書面にできること、改変されていないか確認できること、宅地建物取引士が明示されることが要件です(施行規則16条の4の8)。説明そのものは、対面またはIT重説で行います。

Q2. 立会人型のサービスでも法的に問題ありませんか。

デジタル庁と法務省のQ&Aは、利用者側の手続とサービス提供会社内部の手続の両方で十分な水準の固有性が満たされていれば、電子署名法3条の電子署名に当たりうると整理しています。相手方の認証にどの方法を使うかが確認の要点です。

Q3. 定期借家契約も電子でできますか。

契約は電磁的記録でしても書面でしたものとみなされます(借地借家法38条2項)。事前説明の書面も借主の承諾を得て電磁的方法で提供できます(同条4項)。説明をしなかった場合は更新がない旨の定めが無効になるので、説明の記録を残してください。

Q4. 電子契約サービスの料金はいくらですか。

料金はプランや送信件数で変わり、改定されることもあるため、この記事には載せていません。各社の公式料金ページで、月の送信件数とユーザー数を当てはめて確認してください。

Q5. 締結した契約書のデータはどう保存すればよいですか。

電子取引の取引情報として、電子帳簿保存法7条により保存が必要です。国税庁のパンフレットは、改ざん防止の措置と、日付・金額・取引先で検索できることを要件として示しています。サービス内の保存で足りるか、別に保存するかを決めておきます。

出典(本文で参照している資料)

この記事は2026年10月7日時点の情報です。

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