税金・優遇 読了 16分

不動産管理会社の請求書を電子化するときの要件|インボイスの記載事項・電子取引の保存・家賃の入金消込

請求書を電子化する前に確かめたいのは、適格請求書の6つの記載事項、電子で送受信した請求書の保存要件、家賃の入金消込の流れです。入居者・オーナー・業者で消費税の扱いが違う点も含め、消費税法と国税庁の資料に沿って整理します。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
不動産管理の請求書を電子化する要件|インボイス記載事項と電子帳簿保存法
目次

不動産管理会社が請求書を電子化するときは、まず「相手ごとに消費税とインボイスの扱いが違う」ことを整理し、そのうえで適格請求書の記載事項と電子取引データの保存要件を満たす形に作り替えるのが近道です。居住用の家賃は消費税が非課税ですが、管理料や修繕費、事業用の賃料は課税です。この記事では、消費税法第57条の4と国税庁の資料をもとに、入居者・オーナー・業者ごとの違いと、家賃の請求から入金消込までの流れを解説します。

筆者は宅地建物取引士で、ウルスタ株式会社の代表として中小の不動産会社向けの業務クラウドを作っています。自社でも賃貸住宅226戸を所有し、そのうち約100戸は管理会社を通さず自主管理しています。税務の判断は顧問税理士と確認する前提で、条文と国税庁の資料で確かめられる範囲を書きます。

管理会社の請求書は相手ごとに扱いが違う

賃貸管理会社がやりとりする請求書は、大きく3方向に分かれます。入居者への家賃の請求、オーナーへの管理料の請求(多くは送金明細の中で差し引く形)、修繕業者などから受け取る請求書です。電子化のシステムを考える前に、それぞれで消費税とインボイスの論点がどう違うかを押さえておきます。

相手主な書類消費税インボイスの論点
入居者(居住用)家賃の請求、口座振替の案内住宅の貸付けは非課税非課税のため適格請求書の対象外
入居者(事務所・店舗、駐車場など)賃料の請求書課税事業者の借主から求められたら交付
オーナー送金明細(管理料の差し引き)、管理料の請求書管理料は課税オーナーが課税事業者なら交付を求められる
修繕・清掃などの業者受け取る請求書課税登録番号の確認、免税事業者からの仕入れの経過措置

適格請求書の記載事項(消費税法57条の4)

インボイス制度は令和5年(2023年)10月1日に始まりました。消費税法第57条の4第1項は、適格請求書発行事業者が課税資産の譲渡等を行い、相手の事業者から求められたときに、適格請求書を交付しなければならないと定めています。

書くべき6つの事項

同項各号と国税庁の「インボイス制度について」のページが示す記載事項は、次のとおりです。

  1. 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
  2. 取引年月日(一定期間分をまとめて作る場合は、その期間)
  3. 取引の内容(軽減税率の対象であればその旨)
  4. 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜又は税込)と適用税率
  5. 税率ごとに区分した消費税額等
  6. 交付を受ける事業者の氏名又は名称

書類の名前は問われない

国税庁の「インボイス制度に関するQ&A」は、適格請求書の様式は法令等で定められておらず、必要な事項が記載された書類であれば、請求書、納品書、領収書などの名称を問わず適格請求書に当たるとしています。管理会社がオーナーに送る送金明細も、記載事項がそろっていれば管理料の適格請求書として使えます。

電子で送ることも、写しの保存も条文にある

消費税法第57条の4第5項は、適格請求書の交付に代えて、記載事項を電磁的記録で提供できるとしています。PDFやデータで送るのはこの規定によるものです。第6項は、交付した適格請求書の写しや提供した電磁的記録を保存するよう求めています。電子で送った場合、その保存は次に説明する電子帳簿保存法の電子取引のルールにも関わります。

入居者への家賃の請求

国税庁のタックスアンサー「No.6201 非課税となる取引」は、住宅の貸付けを非課税取引に挙げ、対象は契約で人の居住の用に供することが明らかにされているもので、1か月未満の貸付けなどは非課税に当たらないとしています。居住用の家賃は消費税がかからないため、入居者に適格請求書を交付する場面は原則としてありません。

一方、事務所や店舗の賃料は課税です。同じページは、土地の貸付けについても、駐車場など施設の利用に伴って土地が使用される場合は非課税に当たらないとしています。事業者の借主から求められれば、貸主は適格請求書を交付する必要があります。

毎月請求書を発行せず、口座振替や振込で賃料を受け取っているケースも多いはずです。国税庁の質疑応答事例「家賃を口座振替・口座振込により支払う場合の仕入税額控除の適用要件」は、借主の側は、契約書とともに通帳(取引の年月日の事実を示すもの)を併せて保存することで要件を満たせるとしています。この場合、契約書に貸主の登録番号などの記載事項が入っている必要があるため、事業用の契約書の書式に登録番号の欄を設けておきます。

管理会社が貸主の代わりに賃料を受け取り、請求書を出すときは、誰の名前で適格請求書を出すかが問題になります。国税庁のQ&Aは、委託販売などで委託者と受託者がいずれも適格請求書発行事業者であり、委託者が登録を受けている旨を取引の前に受託者へ通知しているときに、受託者が自分の名称と登録番号で適格請求書を交付できる「媒介者交付特例」を説明しています。受託者は交付した適格請求書の写しを保存し、その写しを速やかに委託者に交付します。管理会社の家賃受領にこの特例を当てはめるかどうかは契約の形によるため、顧問税理士と確認してから書式を決めてください。

オーナーへの管理料の請求と送金明細

管理料は管理会社が提供する役務の対価なので、消費税の課税対象です。国土交通省の「賃貸住宅標準管理受託契約書」も、管理報酬を「家賃及び共益費(管理費)の○%(別途、消費税)」と書く形になっています。オーナーが課税事業者で、適格請求書の交付を求められた場合、管理会社は適格請求書を交付する必要があります。

多くの管理会社は、毎月の送金明細の中で管理料を差し引いています。この明細を適格請求書として使うなら、管理会社の名称と登録番号、対象期間、「管理料」などの内容、税率ごとの対価の額と税率、消費税額、オーナーの名称をそろえます。修繕費の立替分を同じ明細で差し引く場合は、管理会社が受け取る管理料と、業者に支払った立替金とを分けて書くと、オーナー側の経理が処理しやすくなります。

個人のオーナーで不動産所得が少なく免税事業者の方もいます。交付義務は「他の事業者(免税事業者を除く)」から求められたときにかかる形なので、相手によって扱いが変わります。ただ、オーナーごとに書式を分けると事務が複雑になるため、全員に記載事項のそろった明細を出すほうが管理しやすくなります。

業者から受け取る請求書

修繕、清掃、点検などの業者から受け取る請求書は、管理会社やオーナーが仕入税額控除を受けるための証拠になります。受け取ったら、登録番号が正しいかを国税庁の「インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイト」で確かめられます。

適格請求書発行事業者でない業者(免税事業者など)からの仕入れは、経過措置で一定割合の控除が認められてきました。国税庁の「インボイス制度に関するお知らせ 令和8年度税制改正特集」(令和8年9月)は、令和8年10月1日からその割合が80%から70%となり、令和10年10月1日から50%、令和12年10月1日から30%、令和13年10月1日からは控除できなくなるとしています。取引先の登録状況を一覧にしておくと、経理処理の判断がぶれません。

オーナーの物件の修繕で業者の請求書の宛名を誰にするかは、誰の課税仕入れになるかに関わります。管理受託契約の費用負担の定めと合わせて、顧問税理士と確認しておきます。

電子帳簿保存法の電子取引データ保存

国税庁の「電子帳簿等保存制度特設サイト」は、電子帳簿保存法の制度を、電子取引、電子帳簿・電子書類、スキャナ保存の3つに分けて案内しています。このうち、メールやインターネットでやりとりした取引情報のデータの保存は、所得税法・法人税法上の保存義務者が対応しなければならないものです。請求書をPDFで送る側も、受け取る側も対象になります。

保存の要件

国税庁の「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」(令和6年6月)によると、令和6年1月1日以後の電子取引データは、次の要件を満たして保存します。

要件内容
改ざん防止(真実性)タイムスタンプが付いたデータを受け取る、速やかにタイムスタンプを付す、訂正削除の記録が残るか訂正削除できないシステムを使う、訂正削除の防止に関する事務処理規程を定めて運用する、のいずれか
見られる状態(可視性)ディスプレイやプリンタなどを備え付ける
検索取引年月日、取引金額、取引先で検索できる

検索の要件は、基準期間の売上高が5,000万円以下で、税務職員からのデータのダウンロードの求めに応じられるようにしている場合などは不要とされています。大がかりなシステムを入れずに始める方法として、一問一答は、ファイル名に取引年月日・取引先・金額を入れて保存する方法(例「20210131_㈱霞商店_110000」)や索引簿を作る方法を示し、訂正削除の防止に関する事務処理規程のサンプルも案内しています。

紙に印刷して保存するだけでは足りない

国税庁のパンフレットにあるとおり、電子取引データを印刷して紙で保存する扱いは、令和5年12月31日までの措置でした。令和6年1月以後は、要件に沿ってデータで保存するのが原則です。要件どおりに保存できないことに相当の理由があると税務署長が認め、税務調査の際にデータとその出力書面を提示又は提出できるようにしている場合の猶予措置もありますが、例外として考えておきます。

家賃の請求から入金消込までの流れ

請求書の電子化は、家賃の入金管理と一体で考えると効果が出ます。管理会社の毎月の流れは、おおむね次のとおりです。

  1. 請求データを作る: 契約ごとの家賃、共益費、駐車場代などの月額と、更新料や日割りなどの臨時の請求を確定します。
  2. 入居者に請求する: 口座振替のデータを作るか、振込先と金額を案内します。事業用の借主には記載事項のそろった請求書を出します。
  3. 入金データを取り込む: 預り金口座の入出金明細を取り込みます。
  4. 消し込む: 入金を契約ごとの請求と突き合わせます。名義が違う、金額が足りない・多い、まとめて払われた、といった差異は理由を確かめて記録します。
  5. 滞納を確定する: 消し込めなかった請求を滞納として一覧にし、督促に回します。
  6. オーナーへの送金額を計算する: 入金済みの家賃から、承諾を得た管理料や立替費用を差し引き、送金明細を作ります。

管理受託で預かる家賃は、賃貸住宅管理業法第16条により、自社の財産と分けて管理する必要があります。入金データを取り込む口座、消込の結果、送金明細がつながっていると、どのオーナーの預り金がいくらあるかを帳簿ですぐ示せます。月末の締めの手順は「賃貸管理会社の月次締めの手順」で詳しく解説しています。

電子化を進める順番

システムを選ぶ前に、次の順で整理すると手戻りが少なくなります。

  1. 今ある請求書と明細を棚卸しする: 誰に、何を、どの方法(紙、PDF、メール、郵送)で送っているかを一覧にします。
  2. 相手ごとの消費税の扱いを確かめる: 居住用、事業用、駐車場、管理料、立替費用を分けます。
  3. 書式に記載事項を入れる: 登録番号、対象期間、税率ごとの金額と消費税額、相手の名称。事業用の契約書にも登録番号を入れます。
  4. 受け取る請求書の登録番号を確かめる: 取引先の一覧に登録の有無を持たせます。
  5. 保存のルールを決める: 保存場所、ファイル名、事務処理規程、保存期間。送った請求書も受け取った請求書も同じルールに乗せます。
  6. 入金消込と送金明細をつなぐ: 請求データと入金データを同じ契約単位で持つようにします。

ウルスタくんでは、物件・入居者の管理、入金の記録、オーナーへの送金明細(管理料・修繕費を差し引いた明細)を扱えます。請求と入金を契約ごとに記録しておくと、6つ目の「入金消込と送金明細をつなぐ」部分を一つの記録で済ませられます。

よくある質問

Q1. 居住用の入居者にも適格請求書を出す必要がありますか。

住宅の貸付けは消費税が非課税で、適格請求書の交付義務は課税資産の譲渡等が対象です。居住用の家賃について入居者に適格請求書を出す必要は原則としてありません。駐車場や事業用の部屋を同じ契約で貸している場合は、課税部分の扱いを確かめてください。

Q2. 送金明細を適格請求書として使えますか。

国税庁のQ&Aは、必要な事項が記載されていれば名称を問わず適格請求書に当たるとしています。管理会社の登録番号、対象期間、管理料の内容、税率ごとの金額と税率、消費税額、オーナーの名称がそろっていれば使えます。

Q3. PDFで受け取った請求書を印刷して保存すれば足りますか。

印刷して紙で保存する扱いは令和5年12月31日までの措置でした。令和6年1月以後は、改ざん防止、見られる状態、検索の要件に沿ってデータで保存します。検索の要件は、基準期間の売上高が5,000万円以下でダウンロードの求めに応じられる場合などは不要です。

Q4. 免税事業者の業者に修繕を頼んでも問題ありませんか。

取引すること自体に問題はありません。ただし仕入税額控除は経過措置の範囲に限られ、令和8年10月1日からは控除できる割合が70%になりました。この割合は段階的に下がるため、取引先の登録状況を把握しておくことが大切です。

Q5. 事業用テナントに毎月請求書を出していない場合はどうすればよいですか。

国税庁の質疑応答事例は、記載事項は1つの書類にすべてそろっている必要はなく、相互の関連が明確な複数の書類で満たせばよいとしています。借主の側では、記載事項の一部が書かれた契約書と通帳(又は振込金受取書)を併せて保存することで要件を満たせます。貸主の側では、契約書に登録番号などを入れておくことが前提です。令和5年9月30日以前からの契約で契約書に登録番号などが不足している場合は、別途、不足している事項を通知し、借主が契約書とともに保存していれば差し支えないとされています。

出典(本文で参照している資料)

この記事は2026年10月7日時点の情報です。

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