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賃貸管理会社の月次締めの手順|預り家賃の分別管理、オーナー送金と管理料の計算、滞納と帳簿の確認

管理受託で預かる家賃は、自社の財産と分けて管理し、どのオーナーの分かを帳簿ですぐ判別できる状態にしておく必要があります。入金の消込から滞納の確定、送金額の計算、預り金口座の残高確認、帳簿の保存までを、手順とチェックリストで解説します。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
賃貸管理会社の月次締め手順|家賃の分別管理・オーナー送金・滞納の確認
目次

賃貸管理会社の月次締めは、「入金を消し込む、滞納を確定する、オーナーごとの送金額を計算する、預り金口座の残高と帳簿を一致させる、記録を保存する」の順に、毎月同じ手順で回すのが基本です。賃貸住宅管理業法第16条と施行規則第36条は、管理受託で受け取る家賃等を自社の財産と分け、どの契約の金銭かを帳簿ですぐ判別できる状態で管理するよう求めています。この記事では、その要件に沿った締めの手順とチェックリストを示します。

筆者は宅地建物取引士で、ウルスタ株式会社の代表として中小の不動産会社向けの業務クラウドを作っています。自社でも賃貸住宅226戸を所有し、そのうち約100戸は管理会社を通さず自主管理しています。この記事では、締めにかかる時間がどれだけ短くなるかといった数字は扱わず、条文と公的資料で確かめられる手順に絞って書きます。

月次締めに関わる法律と資料

管理会社の月次締めは、会社自身の経理と、オーナーから預かったお金の管理が重なる作業です。後者には、賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(以下「管理業法」)のルールがかかります。

家賃等の分別管理(管理業法16条・施行規則36条)

管理業法第16条は、管理業者が管理受託契約に基づく管理業務(第2条第2項第2号の金銭の管理を行う業務)で受け取る家賃、敷金、共益費その他の金銭を、自己の固有財産や他の管理受託契約で受け取る金銭と分別して管理するよう定めています。

その方法を定めた施行規則第36条は、家賃等を管理する口座を自己の固有財産を管理する口座と明確に区分し、かつ、その金銭がどの管理受託契約に係るものかが帳簿(電磁的記録を含む)により直ちに判別できる状態で管理することを求めています。

国土交通省の「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解釈・運用の考え方」(以下「解釈・運用の考え方」)は、第16条関係として次の点を示しています。

  • 口座を分けたうえで、管理受託契約ごとに金銭の出入りを区別した帳簿を作るなどして、勘定上も分別管理する必要がある。
  • 家賃等を管理する口座は、オーナーごとに分けなくても、1つの口座にまとめて自社の口座と分けていれば足りる。
  • いったん家賃を全額家賃等の口座に入れ、そこから管理報酬分を自社の口座に移すような、一時的に両方のお金が同じ口座にある状態は差し支えないが、速やかに移し替える。
  • オーナーに家賃等を確実に引き渡す目的で、適切な範囲で自社の財産のうち一定額を家賃等の口座に残しておくことは差し支えない。

月次締めの目的の一つは、この「どのオーナーのお金がいくらあるか」を毎月確定させることです。

帳簿の備付け(管理業法18条・施行規則38条)

管理業法第18条は、営業所又は事務所ごとに業務に関する帳簿を備え付け、委託者ごとに管理受託契約の事項を記載して保存するよう定めています。施行規則第38条は、記載事項を、委託者の名称、契約を結んだ年月日、対象の賃貸住宅、受託した管理業務の内容、報酬の額、特約その他参考となる事項としています。帳簿はパソコンのファイルで持ってもよく、各事業年度の末日で閉鎖し、閉鎖後5年間保存します。

この帳簿は契約の台帳なので、お金の出入りの帳簿とは別のものです。ただ、月次締めで使う管理報酬の率や特約(立替費用の扱いなど)は、この帳簿の内容がもとになります。

標準管理受託契約書の家賃の引渡し

国土交通省の「賃貸住宅標準管理受託契約書」第7条は、管理業者が入居者から徴収した当月分の家賃等を、毎月、頭書に記載する期日までにオーナーの口座に振り込んで引き渡すこと、あらかじめオーナーの承諾を得た当月分の管理報酬は差し引けることを定めています。入居者から代理受領した敷金等は、速やかに引き渡すこととされています。月次締めの期限は、この送金期日から逆算して決めます。

月次締めの全体像

手順は次の6つです。日付は会社ごとの送金期日で変わるため、ここでは順番だけを示します。

手順やること確かめる資料
1 入金の消込預り金口座の入金を、契約ごとの請求と突き合わせる口座の入出金明細、請求の一覧
2 滞納・過入金の確定消し込めなかった請求と、多すぎる入金を確定する消込の結果、督促の記録
3 送金額の計算オーナーごとに、入金から管理料と立替費用を差し引く管理受託契約、費用の請求書
4 残高の照合預り金口座の残高と、オーナーごとの預り額の合計を合わせる口座残高、オーナー別の預り金の帳簿
5 送金と明細送金し、明細をオーナーに届ける送金明細、振込の記録
6 保存帳簿、明細、請求書のデータを保存する保存のルール、事務処理規程

手順1 入金データを集めて消し込む

まず、預り金口座の入出金明細を締め日までの分そろえます。口座振替の結果、振込、保証会社からの代位弁済、窓口での現金など、入金の経路ごとにデータを集めます。

次に、入金を契約ごとの請求(家賃、共益費、駐車場代、更新料など)と突き合わせます。よく出る差異は、振込名義が契約者と違う、金額が足りないか多い、2か月分がまとめて払われた、別の部屋の入居者が払った、といったものです。差異は理由を確かめたうえで、どう処理したかを記録に残します。理由が分からない入金を推測で消し込むと、翌月以降の滞納の判断を誤ります。

入金の記録は、施行規則第36条の「どの管理受託契約に係るものかが帳簿により直ちに判別できる」状態の土台になります。契約単位で記録しておくと、後の手順がすべて楽になります。

手順2 滞納と過入金を確定する

消し込めなかった請求を、部屋ごとに滞納として一覧にします。滞納の月数、金額、最後に入金があった日、督促の経過を並べます。標準管理受託契約書第14条は、未収金の督促を管理業者がオーナーを代理して行う業務に挙げています。どの段階でオーナーに報告し、法的な手続きの判断を仰ぐかを、社内であらかじめ決めておきます。

家賃の債権も、民法第166条第1項により、権利を行使できることを知った時から5年間、又は権利を行使できる時から10年間行使しないと時効で消滅します。古い滞納が一覧から消えていないか、毎月の締めで確かめる意味はここにもあります。

反対に、多く払われた分(過入金)は、オーナーへの送金に含めるのか、翌月分に充てるのか、入居者に返すのかを決めて記録します。過入金も預かっている金銭なので、どの契約のものかが分かるようにしておきます。

手順3 オーナーごとの送金額を計算する

オーナーごとに、その月に入金された家賃等から、承諾を得ている管理報酬と立替費用を差し引いて送金額を出します。管理報酬を「請求した家賃」に率を掛けるのか、「入金された家賃」に掛けるのかは、契約によって違います。管理受託契約の帳簿に書いた報酬の定めと一致しているかを確かめます。

仮の数字で計算例を示します。管理報酬は入金された家賃の5%(別途消費税10%)、6室のうち1室が滞納、修繕費の立替が税込33,000円あったとします。

項目金額計算
請求した家賃300,000円50,000円×6室
入金された家賃250,000円1室分が未入金
管理報酬(税抜)12,500円250,000円×5%
管理報酬の消費税1,250円12,500円×10%
修繕費の立替(税込)33,000円業者の請求書による
送金額203,250円250,000円−13,750円−33,000円

滞納の50,000円は送金に含めず、明細に未入金として書きます。立替費用は、オーナーの承諾を得た日と業者の請求書を明細に結びつけておくと、問い合わせにすぐ答えられます。管理報酬は課税なので、送金明細を管理報酬の適格請求書として使う場合の記載事項は「不動産管理の請求書を電子化する要件」で解説しています。

手順4 預り金口座の残高を帳簿と合わせる

送金の前後で、預り金口座の残高と、帳簿上のオーナーごとの預り額の合計を照合します。分別管理ができているかを、毎月数字で確かめる手順です。

照合の式は、おおむね次の形になります。

預り金口座の残高 = オーナーごとの未送金の家賃等の合計 + 預かっている敷金等 + 過入金 + まだ自社口座に移していない管理報酬 + 引渡しのために残している自社の一定額

差額が出たら、締めを終える前に原因を確かめます。管理報酬を自社口座に移したかどうか、立替費用の精算の漏れ、入金の消込の誤りがよくある原因です。解釈・運用の考え方は、両方のお金が一時的に同じ口座にある状態は差し支えないとしつつ、速やかに移し替えるよう求めています。管理報酬の移し替えを毎月の締めの中に入れておくと、この状態が長く続くことを防げます。

手順5 送金して明細を届ける

標準管理受託契約書第7条の期日までに、オーナーごとに送金します。送金明細には、部屋ごとの請求額と入金額、管理報酬、立替費用、送金額、未入金の部屋を載せます。

毎月の送金明細は、賃貸住宅管理業法第20条と施行規則第40条が求める年1回以上の管理業務報告書の材料にもなります。報告書の書き方は「賃貸オーナー対応の型|定期報告と面談」で解説しています。

ウルスタくんでは、入金の記録をもとに、管理料・修繕費を差し引いたオーナーへの送金明細を作れます。手順1から手順5を同じ記録の上で進められるので、転記による食い違いを減らせます。

手順6 帳簿と証憑を保存する

締めが終わったら、その月の記録を保存します。保存の決まりは、法律ごとに違います。

  • 管理業法の帳簿: 施行規則第38条により、各事業年度の末日で閉鎖し、閉鎖後5年間保存します。
  • 法人税の帳簿書類: 国税庁のタックスアンサー「No.5930 帳簿書類等の保存期間」によると、原則としてその事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間です。青色申告で欠損金額が生じた事業年度は10年間(平成30年4月1日前に開始した事業年度は9年間)です。
  • 電子取引のデータ: メールで受け取った業者の請求書や、PDFで送った送金明細などは、電子帳簿保存法の電子取引データとして保存します。国税庁の電子帳簿等保存制度特設サイトは、この電子取引データの保存を、所得税法・法人税法上の保存義務者が対応すべきものとして案内しています。

一方、会計ソフトなどで作った帳簿を電子のまま保存する「電子帳簿・電子書類」と、紙の書類を画像で保存する「スキャナ保存」は、特設サイトでは希望する人向けの制度として案内されています。月次締めでまず整えるべきは、電子取引データの保存のルールです。保存場所とファイル名の付け方を決め、締めの最後に、その月のデータが所定の場所にそろっているかを確かめます。

月次締めチェックリスト

毎月の締めで確かめる点を、手順ごとに並べます。社内の担当者が変わっても同じ品質で締められるように、印刷するか、業務の手順書に貼り付けて使ってください。

手順確認すること
入金締め日までの入出金明細を、入金の経路ごとにすべて取り込んだか
入金名義違い、過不足、まとめ払いの理由を確かめ、処理を記録したか
滞納滞納の一覧(月数、金額、最後の入金日、督促の経過)を更新したか
滞納オーナーへの報告や判断を仰ぐ段階に来た滞納がないか
滞納過入金の扱い(送金、充当、返金)を決めて記録したか
送金額管理報酬の計算の基準(請求額か入金額か)と率が契約どおりか
送金額立替費用ごとに、オーナーの承諾と業者の請求書がそろっているか
残高預り金口座の残高と、オーナーごとの預り額の合計が一致したか
残高管理報酬を自社口座に移し替えたか
送金契約の期日までに送金し、明細を届けたか
送金敷金等の代理受領分を速やかに引き渡したか(オーナーに引き渡す契約の場合)
保存電子取引のデータ(業者の請求書、送った明細)を所定の場所とファイル名で保存したか
保存管理業務報告書の期限が近い契約がないか

このテーマの全体像は「不動産CRM完全ガイド|6サービス比較と導入手順」にまとめています。

よくある質問

Q1. 預り金の口座はオーナーごとに分ける必要がありますか。

解釈・運用の考え方は、家賃等を管理する口座を1つにまとめ、自社の固有財産の口座と分けていれば足りるとしています。そのうえで、管理受託契約ごとに金銭の出入りを区別した帳簿を作るなどして、勘定上も分別管理する必要があります。

Q2. 管理報酬を家賃の口座に入れたままにしてもよいですか。

一時的に同じ口座に入っている状態は差し支えないとされていますが、速やかに自社の口座に移し替えることが求められています。月次締めの手順に、管理報酬の移し替えを入れておくのが確実です。

Q3. 滞納分も管理報酬の計算に含めますか。

管理受託契約の定め次第です。標準管理受託契約書の書式は、管理報酬を家賃及び共益費の一定割合として定める形で、計算の基準を請求額にするか入金額にするかは契約で決めます。帳簿に書いた報酬の定めと計算が一致しているかを毎月確かめます。

Q4. 管理戸数が200戸未満でも分別管理は必要ですか。

第16条の義務を負うのは登録した賃貸住宅管理業者で、登録が必要になる規模は施行規則第3条で200戸とされています。200戸未満で登録していない会社には条文上の義務はありませんが、他人のお金を預かることに変わりはないため、同じ方法で管理しておくと、登録が必要になったときにそのまま移れます。

Q5. 月次締めを税理士に任せている場合、社内では何をすればよいですか。

会社の決算や申告は税理士に依頼できますが、どのオーナーのお金がいくらあるかを帳簿で判別できる状態にしておくのは、管理業者自身の義務です。少なくとも手順1から手順4(消込、滞納、送金額、残高照合)は社内で毎月締め、その結果を税理士に渡す形にすると、責任の範囲がはっきりします。

出典(本文で参照している資料)

この記事は2026年10月7日時点の情報です。

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