登録を受けた賃貸住宅管理業者は、管理受託契約を結んだ日から1年を超えない期間ごとに、そして契約期間が満了した後は遅滞なく、管理業務報告書を作ってオーナー(委託者)に交付し、説明しなければなりません(賃貸住宅管理業法20条、施行規則40条1項)。報告書に書くのは、報告の対象となる期間、管理業務の実施状況、入居者からの苦情の発生状況と対応状況の3つです。オーナーの承諾があれば、紙の代わりに電磁的方法で提供できます(同条2項)。この記事では、時期・記載事項・説明の仕方・電子で渡すときの手順を、条文と国土交通省の「解釈・運用の考え方」で確かめた範囲で整理します。
結論(定期報告の早見表)
| 項目 | 決まり | 根拠 |
|---|---|---|
| 誰が | 登録を受けた賃貸住宅管理業者 | 法20条 |
| 誰に | 管理業務を委託したオーナー(委託者) | 法20条 |
| いつ | 契約を結んだ日から1年を超えない期間ごと、契約期間の満了後は遅滞なく | 施行規則40条1項 |
| 何を | 報告の対象期間、管理業務の実施状況、入居者からの苦情の発生状況と対応状況 | 施行規則40条1項1号から3号 |
| どうやって | 管理業務報告書を交付して説明する。オーナーの承諾があれば電磁的方法で提供できる | 施行規則40条1項・2項 |
| 社内の担当 | 定期報告に関する事項は業務管理者が管理・監督する | 施行規則13条5号 |
報告する時期
条文が求める最低限の頻度は、管理受託契約を結んだ日から数えて1年を超えない期間ごとです。たとえば4月1日に契約した物件は、翌年3月31日までの期間について報告します。暦年や決算期でまとめて報告したい場合も、契約ごとに1年を超える期間ができないように区切りを決めます。
契約期間が満了したときは、その期間について遅滞なく報告します。「解釈・運用の考え方」は、契約を更新する場合で、期間内に定期報告をしていれば満了時の報告が要らない場合があるとしています。また、項目によってはより短い間隔で報告することが望ましいとしています。毎月の送金のたびに収支を知らせている会社は、それとは別に、年1回の報告書で記載事項がそろっているかを確かめます。
報告書に書くこと
| 記載事項 | 書く中身の例 |
|---|---|
| 1. 報告の対象となる期間 | 開始日と終了日 |
| 2. 管理業務の実施状況 | 契約で受けている業務(家賃等の受領、点検・清掃、修繕の手配など)を、期間中にどう行ったか |
| 3. 苦情の発生状況と対応状況 | 苦情があった日時、申し出た人の属性、苦情の内容、対応の状況 |
苦情について、「解釈・運用の考え方」は、苦情の発生した日時、申し出た人の属性、内容、対応状況などを把握できる範囲で記録し、報告するよう求めています。単なる問い合わせは記録・報告の義務はありませんが、苦情を伴う問い合わせは対応状況も含めて報告が要ります。1年分をまとめて思い出すのは難しいので、苦情を受けた日に記録する仕組みを先に作っておきます。
説明の仕方
報告書は交付するだけでなく、説明も要ります(施行規則40条1項)。「解釈・運用の考え方」は、説明の方法は問わないとしたうえで、オーナーと協議して双方向でやりとりできる環境を整え、オーナーが内容を理解したことを確認する必要があるとしています。郵送やメールで送って終わりにせず、電話・面談・オンラインなどで質問を受けられるようにし、説明した日と方法を記録に残します。
電磁的方法で渡すとき
オーナーの承諾があれば、報告書を紙で交付する代わりに、記載事項を電磁的方法で提供できます。その場合は交付したものとみなされます(施行規則40条2項)。手順は次のとおりです。
| 段階 | やること | 根拠 |
|---|---|---|
| 1. 承諾をとる | あらかじめ、使う電磁的方法の種類と内容を示し、書面または電磁的方法で承諾を得る | 施行規則40条4項 |
| 2. 方法を選ぶ | メール等での送信、オーナーが閲覧するサイトへの掲載、記録媒体の交付など | 施行規則40条2項 |
| 3. 基準を満たす | オーナーが出力して書面を作れること。閲覧の方法では、記録した旨をオーナーに通知する(閲覧を確認できたときを除く) | 施行規則40条3項 |
| 4. 保存する | 提供したデータを適切に保存する | 解釈・運用の考え方 |
オーナーが閲覧するサイトに載せる方法では、載せただけで終わらせず、載せたことを知らせる手順を決めておきます。
毎月の送金明細との違い
多くの管理会社は、毎月の家賃の入金から管理料や修繕費を差し引いた送金明細をオーナーに送っています。送金明細は収支を知らせるものとして役に立ちますが、それだけでは、管理業務の実施状況や苦情の発生・対応状況が書かれていないことがあります。年1回の管理業務報告書では、送金明細の内容に加えて、点検・修繕などの実施状況と苦情の記録をまとめて報告します。
ウルスタくんでは、入金の記録からオーナーごと・月ごとの送金明細を作り、確認して公開するとオーナーがスマホで見られます。苦情の記録と管理業務の実施状況は、報告書を作る前に別途そろえてください。送金明細の作り方は「オーナーへの送金明細と報告の流れ」で確かめられます。
よくある質問
Q1. 毎月の送金明細を送っていれば、定期報告をしたことになりますか
送金明細に、報告の対象期間・管理業務の実施状況・苦情の発生状況と対応状況がそろっていれば記載事項を満たしますが、収支だけの明細では足りません。また、交付に加えて説明が要ります(施行規則40条1項)。
Q2. 苦情が1件も無かった年はどう書けばよいですか
記載事項は苦情の「発生状況」なので、対象期間に苦情が無かったことを書きます。単なる問い合わせは報告の義務はありませんが、苦情を伴うものは対応状況も含めて報告が要ると「解釈・運用の考え方」は示しています。
Q3. メールでPDFを送るだけで足りますか
電磁的方法で提供するには、あらかじめ方法の種類と内容を示してオーナーの承諾を得る必要があります(施行規則40条4項)。承諾があっても、説明は別に要ります。
Q4. 管理戸数が200戸未満で登録していない会社にも定期報告の義務はありますか
定期報告は、登録を受けた賃貸住宅管理業者の義務です(法20条)。登録していない会社には法の義務としてはかかりませんが、任意で登録した会社にはかかります。オーナーとの管理受託契約で報告を約束している場合は、契約に従います。
関連する記事
出典(本文で参照している資料)
| 確かめた内容 | 資料 |
|---|---|
| 委託者への定期報告(20条)、業務改善命令(22条) | e-Gov法令検索「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」 |
| 業務管理者の職務(13条5号)、報告の時期・記載事項・電磁的方法・承諾の手順(40条) | e-Gov法令検索「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律施行規則」 |
| 苦情の記録と報告、満了時の報告、説明の方法、電磁的方法で提供したデータの保存 | 国土交通省「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解釈・運用の考え方」(PDF) |
| 制度の全体像と各条の概要 | 国土交通省 賃貸住宅管理業法ポータル「制度解説」 |
