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金利上昇2026で買主の借入可能額はどう変わるか|政策金利・フラット35金利・返済負担率と計算式で見る売出価格の相談

金利が上がると、同じ年収の買主でも借りられる額が減り、減る割合は年収によらず同じです。2026年の政策金利とフラット35の金利、返済負担率と審査金利の考え方、借入可能額の計算式と仮の数字での計算例、売出価格の相談への落とし込みを説明します。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
金利上昇2026で買主の借入可能額はどう変わるか|返済負担率と計算式で見る価格の相談
目次

金利が上がると、同じ年収の買主でも借りられる額が減ります。減り方は「審査で使う金利」「返済負担率」「返済期間」の3つで決まり、年収が違っても減る割合は同じです。日本銀行は2026年9月18日の金融政策決定会合で政策金利を1.25%程度に引き上げ、フラット35の2026年10月の金利も上がっています。この記事では、借入可能額の計算式と仮の数字での計算例、売出価格の相談や売主への報告にどうつなげるかを整理します。

2026年の政策金利とフラット35の金利

まず、事実として確認できる金利の動きを整理します。日本銀行は、金融政策決定会合で無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標を決めています。2025年以降の変更は次のとおりです。

決定会合の日無担保コールレート(オーバーナイト物)の目標出典
2025年1月24日0.5%程度日本銀行「金融市場調節方針の変更について」
2025年12月19日0.75%程度同上
2026年6月16日1.0%程度同上
2026年9月18日1.25%程度(実施は翌営業日の9月24日)同上

2026年に開かれたほかの会合(1月、3月、4月、7月)では、公表文の題が「当面の金融政策運営について」で、目標の変更はありませんでした。9月の公表文では、経済・物価の情勢に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく考え方も示されています。今後の会合の結果は、日本銀行のホームページで確認してください。

住宅金融支援機構のフラット35(買取型)の2026年10月の金利は、借入期間21年以上35年以下・融資率9割以下で年3.830%〜年5.840%、最も多い金利が年3.830%です。借入期間20年以下(フラット20)・融資率9割以下では年3.510%〜年5.520%、最も多い金利が年3.510%です。この金利は新機構団信(団体信用生命保険)の付いた金利として表示されていて、デュエット(夫婦連生)は0.18%、新3大疾病付機構団信は0.24%が上乗せされます。金利は毎月更新されるので、買主に伝えるときは「何月の金利か」も添えてください。

民間金融機関の住宅ローン金利は、金融機関・商品・借りる人の条件で違います。この記事では個別の金融機関の金利は扱わず、どの金利でも使える考え方と計算の型を説明します。

借入可能額を決める3つの要素

買主がいくら借りられるかは、おおむね次の3つで決まります。

返済負担率

年収に占める、すべての借入れの年間返済額の割合です。フラット35の利用条件では「総返済負担率」として、年収400万円未満は30%以下、年収400万円以上は35%以下が基準とされています。ここでいう「すべての借入れ」には、フラット35のほか、ほかの住宅ローン、自動車ローン、教育ローン、カードローン(クレジットカードのキャッシング、分割払いやリボ払いによる購入を含む)などが含まれます。民間金融機関の基準は金融機関ごとに違います。

審査で使う金利

民間金融機関では、返済負担率を計算するときに、実際に適用する金利(実行金利)ではなく、金融機関が定める審査用の金利を使うことがあります。この審査用の金利が上がると、実行金利がそれほど変わらなくても借入可能額が減ります。審査用の金利の水準は金融機関ごとに違い、一般に広く公表されているものではないため、提携先の金融機関の担当者に確認するのが確実です。

返済期間

期間が長いほど毎月の返済額が下がり、借りられる額は増えます。フラット35の借入期間は、15年(申込本人または連帯債務者が満60歳以上の場合は10年)以上で、「80歳から申込時の年齢を引いた年数」と「35年」のいずれか短い年数が上限です。買主の年齢によっては35年を組めないことがあるので、年齢も最初に聞いておく項目です。

借入可能額の計算式

住宅ローンで多い元利均等返済では、毎月の返済額が一定です。毎月返せる上限額が決まれば、借入可能額は次の式で出せます。

手順計算
1. 毎月返せる上限年収 × 返済負担率 ÷ 12 − ほかの借入れの毎月返済額
2. 月利r = 審査で使う年利 ÷ 12
3. 返済回数n = 返済年数 × 12
4. 借入可能額毎月返せる上限 × (1 − (1 + r)のマイナスn乗)÷ r

表計算ソフトなら、PV関数で同じ値が出ます。たとえば「=PV(年利/12, 年数*12, -毎月返せる上限)」と入力します。社内で1枚のシートを作っておけば、年収・金利・期間を入れ替えるだけで、担当者が同じ計算をできます。

この式から分かる大事な点があります。借入可能額は「毎月返せる上限」に比例します。金利と期間が同じなら、年収600万円の人も年収1,000万円の人も、金利が上がったときに借入可能額が減る割合は同じです。違うのは減る金額だけです。

仮の数字で見る金利と借入可能額

ここからは仮の数字で計算例を示します。実在の買主や金融機関の条件ではありません。年収600万円、返済負担率35%、ほかの借入れなし、35年返済、元利均等返済とします。毎月返せる上限は、600万円 × 35% ÷ 12 = 175,000円です。

審査で使う金利(仮)借入可能額(概算)1つ上の行との差
3.0%約4,547万円-
3.5%約4,234万円約313万円減(約6.9%減)
4.0%約3,952万円約282万円減(約6.7%減)
4.5%約3,698万円約254万円減(約6.4%減)

この条件では、審査で使う金利が0.5%上がるごとに、借入可能額がおよそ6〜7%減ります。年収400万円・返済負担率35%で同じ計算をすると、3.5%で約2,823万円、4.0%で約2,635万円になり、減る割合は年収600万円と同じ約6.7%です。

ほかの借入れがあるとき

同じ年収600万円で、自動車ローンを毎月3万円返しているとします(仮の数字)。毎月返せる上限は175,000円 − 30,000円 = 145,000円になり、4.0%・35年の借入可能額は約3,275万円です。ほかの借入れがないときの約3,952万円より約677万円少なくなります。金利が上がる局面では、ほかの借入れの有無が借入可能額に与える影響も大きく見えるため、最初の面談で借入れの状況を聞いておくことが大切です。

年収400万円前後の境目

フラット35の基準では、年収400万円を境に返済負担率の上限が30%から35%に変わります。仮に年収380万円・30%・3.5%・35年で計算すると、毎月返せる上限は95,000円、借入可能額は約2,299万円です。年収400万円・35%なら約2,823万円なので、年収の差20万円に対して、借入可能額の差は500万円を超えます。年収の数え方(税込みの年収か、どの年の収入か)は金融機関の確認事項なので、境目付近の買主は早めに事前審査を受けてもらうほうが安全です。

返済期間を延ばしたとき

同じく仮の数字で、毎月175,000円・4.0%として期間を変えると、30年で約3,666万円、35年で約3,952万円、40年で約4,187万円です。期間を延ばせば借入可能額は増えますが、完済時の年齢が上がり、総返済額も増えます。フラット35は最長35年なので、40年以上の期間は取り扱う金融機関・商品に限られます。期間を延ばす提案をするときは、完済時の年齢と総返済額も一緒に示してください。

変動金利で借りている買主への説明

変動金利型では、借りた後の金利の見直しで毎月の返済額が変わる可能性があります。全国銀行協会の解説では、変動金利は通常半年ごとに見直され、元利均等返済の返済額の見直しは通常5年ごととされています。また、5年ごとの見直しのときに返済額の増加に上限を設ける、一般に「125%ルール」と呼ばれる仕組みがあると説明されています。

この仕組みがある商品では、金利が上がっても5年間は返済額が変わらず、その間は返済額のうち利息の割合が増えます。金利の上昇が大きいと、返済額で利息をまかなえず「未払利息」が発生する可能性があることも、全国銀行協会が説明しています。ただし、これらのルールの有無や中身は金融機関・商品で違います。買主に説明するときは「一般的にはこういう仕組みがある」にとどめ、具体的な条件は金融機関の説明書で確認してもらってください。

仮の数字で、3,500万円・35年・元利均等返済の毎月返済額を計算すると、実行金利0.9%で約97,177円、1.15%で約101,266円、1.4%で約105,458円です。0.25%上がるごとに毎月4,000円程度増える計算になります。変動金利を選ぶ買主には、この程度の幅で返済額が動いたときに家計が回るかを、購入前に一緒に確かめてもらうのが誠実な説明です。

売出価格の相談への落とし込み

金利の上昇は、買主の「買いたい気持ち」ではなく「買える上限」を下げます。売出価格の相談では、この違いを分けて考えると、売主に説明しやすくなります。

想定する買主から逆算する

  1. 物件の立地・広さから、想定する買主の年収帯を置きます(社内の過去の成約記録や問い合わせの記録から考えます)。
  2. その年収帯で、審査金利・返済負担率・期間を仮に置き、借入可能額を計算します。
  3. 借入可能額に自己資金を足し、諸費用を引いたものが、その買主層が出せる価格の目安です。諸費用は物件と金融機関で違うので、見積もりで確かめます。
  4. 審査金利を0.5%上げたときの目安も並べ、金利が動いたときに買主層がどれだけ減るかを見ます。

売主への報告に金利の行を入れる

宅地建物取引業法34条の2第9項は、専任媒介契約では業務の処理状況を2週間に1回以上(専属専任媒介契約では1週間に1回以上)依頼者に報告することを求めています。問い合わせや内見の数だけでなく、「今月のフラット35の最も多い金利」と「想定買主の借入可能額の目安」を1行ずつ足しておくと、価格の見直しを提案するときに、根拠を後から作ったように見えません。

「売れない」のか「買えない」のかを分ける

問い合わせが減ったとき、物件の魅力が足りないのか、買主層の借入可能額が価格に届かなくなったのかで、打つ手が変わります。内見後の反応がよいのに事前審査で止まる例が続くなら、価格や想定買主層を見直す材料になります。逆に、借入可能額には余裕があるのに反響が少ないなら、写真や募集図面、広告の出し方を先に見直します。

重要事項説明・契約・広告で気をつけること

住宅ローンを使う取引では、宅地建物取引業法の次の規定が関係します。

場面根拠内容
重要事項説明35条1項12号代金または交換差金に関する金銭の貸借のあっせんの内容と、あっせんに係る金銭の貸借が成立しないときの措置
契約書面(37条書面)37条1項9号金銭の貸借のあっせんに関する定めがある場合の、貸借が成立しないときの措置
広告32条代金の支払方法や金銭の貸借のあっせんについて、著しく事実に相違する表示や、実際より著しく有利と誤認させる表示の禁止
説明全般47条1号代金、借賃等の対価の額や支払方法など、相手方の判断に重要な影響を及ぼす事項について、故意に事実を告げず、または不実のことを告げる行為の禁止

金利が動いている時期は、事前審査から本審査までの間に条件が変わることもあります。融資が成立しなかったときの扱い(いわゆるローン特約)の期限や対象の金融機関は、重要事項説明書と契約書で食い違いがないように確認してください。広告で毎月の返済額の例を出すときは、何月の、どの金利で、どの条件の計算かを書き添えます。

なお、この記事の計算は自分が住む家の住宅ローンを前提にしています。賃貸用の物件を買うためのローンは審査の考え方が違うため、同じ式をそのまま当てはめないでください。

よくある質問

Q1. 審査で使う金利はどこで分かりますか?

金融機関ごとに違い、一般に広く公表されているものではありません。提携している金融機関の担当者に、現在の審査の考え方を確認するのが確実です。フラット35の総返済負担率の基準(年収400万円未満は30%以下、400万円以上は35%以下)は、住宅金融支援機構の利用条件のページで確認できます。

Q2. 年収が高い買主は金利上昇の影響を受けにくいのですか?

減る金額は大きくなりますが、減る割合は同じです。借入可能額は毎月返せる上限に比例するため、金利と期間が同じなら、年収にかかわらず同じ割合で減ります。年収が高い買主ほど、物件の価格帯も高いことが多いので、影響が小さいとは言えません。

Q3. 変動金利の買主に「金利はすぐには上がらない」と言ってよいですか?

言い切るのは避けてください。将来の金利は誰にも分かりません。金利の見直しの頻度や返済額の見直しのルールは商品ごとに違うため、金融機関の説明書を確認してもらい、仮の数字で返済額が増えた場合の計算を一緒に見るほうが誠実です。

Q4. 売主に価格の見直しを提案するとき、金利の話をどう使えばよいですか?

媒介を始めたときから、金利と想定買主の借入可能額の目安を報告に入れておくと、見直しの提案が後付けに見えません。「金利がこう動き、この年収帯の借入可能額がこう変わった。反響と事前審査の状況はこうだった」と、事実を並べてから案を出します。

出典(本文で参照している資料)

この記事は2026年10月7日時点の情報です。

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