賃貸管理 読了 15分

オーナー向け月次レポートの作り方|賃貸住宅管理業法20条の定期報告と、管理の解約を防ぐ書き方

管理会社を替えたいというオーナーの不満は「何をしてもらっているか見えない」ことから生まれがちです。管理業法20条の定期報告の決まりを確認し、月次レポートに入れる内容、送金明細の見せ方、毎月の作業の流れを整理します。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
オーナー向け月次レポートの作り方|管理業法20条の定期報告と解約を防ぐ書き方
目次

オーナーが管理会社を替えたくなる理由の多くは「何をしてもらっているのか見えない」ことにあるため、月次の報告で、お金の流れ・部屋の状況・対応した内容・決めてほしいことを毎月同じ形で示すことが、管理の解約を防ぐ土台になります。賃貸住宅管理業法20条と施行規則40条が求めるのは「1年を超えない期間ごと」の報告ですが、法律の最低限に毎月の報告を重ねると、オーナーは状況を自分で確かめられるようになります。この記事では、法律上の定期報告の決まりを確認したうえで、月次レポートに入れる内容、送金明細の見せ方、毎月の作業の流れを整理します。

法律が求める定期報告(管理業法20条・施行規則40条)

賃貸住宅管理業法(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律)20条は、賃貸住宅管理業者に対し、管理業務の実施状況などを、国土交通省令で定めるところにより定期的に委託者(オーナー)へ報告するよう求めています。具体的な決まりは施行規則40条にあります。

報告の時期

施行規則40条1項は、管理受託契約を結んだ日から1年を超えない期間ごとに、そして契約の期間が満了した後は遅滞なく、管理業務報告書を作って委託者に交付し、説明することを求めています。法律上の最低限は「1年を超えない期間ごと」です。毎月の報告は法律上の義務ではありませんが、毎月の報告を積み重ねておくと、年1回の報告書は月次の内容をまとめる作業になります。

国土交通省の「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解釈・運用の考え方」は、契約を更新する場合について、1年を超えない期間ごとの報告がされているときは、更新時の期間満了に伴う報告は不要として差し支えないとしています。

報告書に書く事項

施行規則40条1項は、管理業務報告書に次の3つを書くよう定めています。

記載事項書く内容の例根拠
報告の対象となる期間何年何月何日から何月何日までの報告か施行規則40条1項1号
管理業務の実施状況点検・清掃・修繕など維持保全の状況、家賃などの金銭の管理の状況施行規則40条1項2号、法2条2項
入居者からの苦情の発生状況と対応状況苦情を受けた日時、申し出た人の属性、内容、対応の状況施行規則40条1項3号、解釈・運用の考え方

苦情については、解釈・運用の考え方が、発生した日時、申し出た者の属性、苦情の内容、対応状況などを把握できる限り記録し、報告する必要があるとしています。苦情が多いか少ないかに関係なく、記録を残しておくことが前提になります。

渡し方と説明

報告書は「交付して説明」するのが原則です。解釈・運用の考え方は、説明の方法は問わないとしつつ、賃貸人が報告書の内容を理解したことを確かめるよう求めています。送りっぱなしにせず、電話や面談で要点を説明し、質問を受けた記録を残しておくと、後から説明したことを示せます。

電子メールなどで送る場合

施行規則40条2項以下により、委託者の承諾を得れば、報告書を交付する代わりに電磁的方法(電子メールやファイルの共有など)で提供できます。承諾を得る前に、使う方法の種類と内容を示すこと(同条4項)、委託者が書面に出力できる方法であること(同条3項)、委託者から電磁的方法で受け取らない旨の申出があったときは、改めて承諾を得ない限り電磁的方法で提供できないこと(同条7項)が決まっています。オーナーごとに「紙で受け取るか、電子で受け取るか」を記録しておきます。

管理受託契約で決めておくこと

報告の頻度や内容は、管理受託契約で決めておくと、オーナーとの間で期待のずれが起きにくくなります。国土交通省の「賃貸住宅標準管理受託契約書」には、次のような定めがあります。

  • 15条1項: 管理業者は、頭書(8)の記載に従い、委託者と合意した期日・頻度で、定期に管理業務の報告をします。頭書(8)は、定期報告の内容と頻度を書く欄です。
  • 15条2項・3項: 委託者は、定期報告のほかにも管理業務の実施状況の報告を求めたり、関係書類の提示を求めたりできます。
  • 15条のコメント: 報告の内容と頻度は、信頼関係を維持できるよう、業務内容に応じて適切に実施する必要があるとされ、家賃等の収受の状況、維持保全の実施状況、法定点検等の状況、入居者からのクレーム対応などが報告の項目として挙げられています。
  • 7条: 家賃は毎月、頭書(6)に書いた期日までに振込で引き渡します。管理報酬を家賃から差し引くことは、あらかじめ委託者の承諾を得ているものに限られます。
  • 21条: 委託者と管理業者は、少なくとも契約で定めた月数前に文書で解約を申し入れれば、契約を終了させられます。

21条のとおり、管理受託契約は双方から解約を申し入れられる契約です。だからこそ、契約書の頭書(8)に「毎月の送金明細と月次報告書を送る」「年1回、管理業務報告書を交付して説明する」のように、報告の中身を具体的に書いておくことが、オーナーとの約束を見える形にする第一歩になります。

月次の報告が解約の予防になる理由

ここからは、法令ではなく実務上の考え方です。管理会社を替えたいと考えるオーナーの不満は、おおむね次のどれかにまとまります。

  • お金の流れが分からない(何が差し引かれて送金されたのか分からない)
  • 空室がなぜ埋まらないのか、何をしているのかが分からない
  • 修繕の費用が妥当か判断できない、事前に相談がない
  • 相談への返事が遅い、担当者が替わると話が伝わっていない

どれも「見えない」ことが原因です。月次レポートは、この見えない部分を毎月同じ形で示す道具です。毎月同じ形にすることが大切で、良い月だけ詳しく、悪い月は簡単に、という書き方をすると、かえって不信につながります。筆者は自社で賃貸住宅226戸を所有し、そのうち約100戸を自主管理していますが、オーナーの立場で見ても、知りたいのは「先月から何が変わったか」と「自分が決めることは何か」の2点です。

月次レポートに入れる内容

毎月のレポートは、次の5つの区分に分けると、オーナーが数分で読める形になります。

区分書く内容関係する決まり
収支と送金部屋ごとの家賃・共益費の入金、未入金、差し引いた管理料・修繕費、送金額と送金日標準管理受託契約書7条、管理業法16条(分別管理)
入居と空室入居中・空室・退去予定、募集の条件、内見や申込みの状況、更新が近い契約標準管理受託契約書15条コメント
修繕と点検実施した修繕と費用、見積り中の修繕、法定点検や定期清掃の実施状況施行規則40条1項2号、法2条2項1号
苦情と対応受けた日時、内容、対応の状況(個人が特定される情報は必要な範囲に絞る)施行規則40条1項3号
決めてほしいこと修繕の可否、募集条件の変更、更新条件など、オーナーの判断が必要な事項と期限標準管理受託契約書15条4項(相互の協議)

収支と送金

部屋ごとに「請求した額」「入金された額」「差し引いた額」「送金した額」を並べます。未入金がある場合は、督促の状況と次の対応の予定も書きます。管理業法16条は、受け取った家賃などを自社の財産や他の契約の金銭と分けて管理するよう求めており、解釈・運用の考え方は、家賃等を管理する口座と自社の口座を分けること、管理受託契約ごとに金銭の出入りを区別した帳簿を作ることを示しています。送金明細は、この帳簿から作るのが自然です。

入居と空室

空室については「いつから空いているか」「募集の条件」「この1か月で何をしたか」「次に何をするか」を書きます。内見や問い合わせの件数を書く場合は、実際に記録した数だけを書き、推測の数字は入れません。退去予定や更新が近い契約も、この区分に入れておくと、オーナーが先の予定を立てやすくなります。

修繕と点検

実施した修繕は、場所・内容・費用・業者・写真をそろえます。費用が大きい修繕は、事前に見積りを示して判断をもらった経緯も書きます。点検や清掃は、予定どおり実施したかどうかを一覧にします。

苦情と対応

苦情の報告は、施行規則40条1項3号の記載事項です。ただし、月次レポートに入居者の氏名や詳しい事情まで書く必要はありません。管理業法21条は、正当な理由なく業務上知り得た秘密を漏らすことを禁じています。オーナーの判断に必要な範囲(部屋番号、内容の要約、対応の状況)に絞ります。

決めてほしいこと

レポートの最後に、オーナーに判断してほしい事項を、期限と選択肢をつけて並べます。「エアコン交換: A案 同等品で交換、B案 修理で様子を見る。10月20日までにご返事をお願いします」のように書くと、返事をもらいやすくなります。

送金明細の見せ方(仮の数字の計算例)

仮の数字で計算例を示します。実際の物件や実績の数字ではありません。8室のアパートで、家賃は各室6万円、管理料は家賃入金額の5%、今月は1室が空室、1室が未入金、ほかに修繕費が2万2,000円かかったとします。

項目計算金額
家賃の請求額6万円×7室(1室は空室)42万円
家賃の入金額6万円×6室(1室は未入金)36万円
管理料36万円×5%1万8,000円
修繕費201号室 水栓交換2万2,000円
送金額36万円−1万8,000円−2万2,000円32万円

この例では、オーナーが「満室なら48万円」と考えていると、送金額との差は16万円になります。差の内訳(空室1室分6万円、未入金1室分6万円、管理料、修繕費)を明細の下に一言で書いておくと、問い合わせが減り、説明の時間も短くなります。管理料の計算の基準(請求額か入金額か)は契約によって異なるため、契約書の定めに合わせて書きます。

毎月の作業の流れ

月次レポートを続けるには、作業の順番と締め日を決めておくことが欠かせません。手順の例を示します。

  1. 締め日に、部屋ごとの入金を通帳や入金データと照らし合わせ、未入金を確定します。
  2. 修繕・点検・苦情の記録を、その月の分だけ抜き出します。記録は発生した時点で残しておきます。
  3. 送金明細を作り、送金額を確定して送金します(標準管理受託契約書7条の期日まで)。
  4. 月次レポートを作り、担当者以外の人が数字と記載を確認します。
  5. 紙か電子か、オーナーごとの受け取り方で送ります。電子で送るのは承諾を得たオーナーだけです。
  6. 判断をお願いした事項は、返事の期限を管理し、返事がなければ電話で確認します。
  7. 1年を超えない期間ごとに、月次の内容をまとめた管理業務報告書を作り、交付して説明します(施行規則40条1項)。

物件・入居者・入金・修繕の記録を一か所にまとめておくと、この作業の多くは記録を並べ替えるだけになります。ウルスタくんでは、物件・入居者の管理、入金の記録、更新が近い契約の一覧、管理料・修繕費を差し引いたオーナーへの送金明細の作成を、同じ画面の流れで扱えます。どの道具を使う場合も、記録を発生した時点で残すことが前提です。

報告で避けたい書き方

  • 根拠のない見通しの断定: 「来月には埋まります」ではなく、「申込みが1件入り、審査中です」のように事実を書きます。
  • 出典のない相場の数字: 周辺の賃料を書く場合は、どの資料のいつ時点の数字かを添えます。
  • 悪い情報の後回し: 滞納や設備の故障は、翌月のレポートを待たずに先に連絡し、レポートには経過を書きます。
  • 入居者の個人情報の書き込みすぎ: 苦情や滞納の報告は、判断に必要な範囲に絞ります(管理業法21条)。
  • 月によって形式を変えること: 比べられなくなるため、項目の並びは毎月そろえます。

よくある質問

Q1. 月次報告は法律上の義務ですか。

法律上の義務は、管理受託契約を結んだ日から1年を超えない期間ごとと、契約期間の満了後遅滞なくの報告です(管理業法20条、施行規則40条1項)。毎月の報告は義務ではありませんが、契約の頭書(8)に報告の内容と頻度を書いた場合は、その約束に従って報告します(標準管理受託契約書15条1項)。

Q2. 月次レポートを送っていれば、年1回の管理業務報告書は不要ですか。

施行規則40条1項は、報告の対象期間、管理業務の実施状況、苦情の発生状況と対応状況を書いた管理業務報告書を交付して説明することを求めています。月次レポートがこれらの事項を満たし、説明もしているかは個別に確かめる必要があります。迷う場合は、年1回、月次の内容をまとめた報告書を別に作って説明しておくと確実です。

Q3. 報告書をメールで送ってよいですか。

委託者の承諾を得れば、電磁的方法で提供できます(施行規則40条2項)。承諾の前に、使う方法の種類と内容を示す必要があり(同条4項)、委託者から電子で受け取らない旨の申出があれば、改めて承諾を得ない限り電子では送れません(同条7項)。

Q4. 苦情がない月も報告に書くべきですか。

「今月の苦情: なし」と書いておくと、確認したうえで「なし」なのか、書き忘れなのかが区別できます。施行規則40条1項3号の記載事項でもあるため、毎月欄を設けておくのが分かりやすい形です。

Q5. オーナーが報告の数字に納得しない場合はどうしますか。

標準管理受託契約書15条2項・3項は、委託者が実施状況の報告や関係書類の提示を求められると定めています。通帳の写し、請求書、見積書、作業写真など、数字の元になった資料を示せるように、月ごとにまとめて保管しておきます。

出典(本文で参照している資料)

この記事は2026年10月7日時点の情報です。

実務に役立つコラムを、週1回メールで

賃貸管理・反響対応・法改正の記事を、月曜の朝を目安にお届けします。無料。いつでも解除できます。登録の前に、確認のメールを1通お送りします。