2026年10月9日更新:この記事で扱っている変更は、2026年10月5日から適用されています。
2026年10月5日から、所有権の保存・移転などの登記を申請するときは、名義人になる人の「国籍等」も検索用情報として申し出ることになりました。日本人も外国人も対象で、国籍等を証する書類が要ります。電子申請の電子証明書では代わりになりません。国籍等は登記事項証明書には載らず、登記所の内部情報として扱われます。
【要点】2026年10月5日から何が変わったか
不動産登記規則の一部を改正する省令(令和8年法務省令第23号)が2026年10月5日に施行されました。法務省の案内ページ「検索用情報の申出について」は、10月5日以降に検索用情報の申出をする場合は、国籍等の情報も申し出る必要があるとしています。
根拠は不動産登記規則第158条の39です。所有権の保存・移転の登記などを申請する場合に、名義人になる人について申し出る事項として、氏名、氏名の振り仮名、住所、出生の年月日、電子メールアドレスに加えて、第6号に「国籍等」が並びました。
| 項目 | 2026年10月5日以後の扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 申し出る事項 | 氏名、振り仮名、住所、生年月日、メールアドレスに国籍等が加わる | 規則158条の39第1項 |
| 国籍等を証する情報 | 公務員が職務上作成した情報などの提供が必要(住民票コードで確認できる場合などを除く) | 規則158条の39第2項 |
| 電子証明書による代替 | 振り仮名と生年月日を証する情報に限られ、国籍等には使えない | 規則158条の39第3項 |
| 国外に住所がある人 | 国籍等を含めて申し出る必要がある | 令和8年9月4日付け通達 |
| 登記事項証明書 | 載らない(公開の対象ではない) | 同通達 |
そもそも検索用情報の申出とは
2026年4月1日から、所有権の登記名義人は、氏名や住所が変わった日から2年以内に変更の登記を申請しなければならなくなりました(不動産登記法第76条の5)。正当な理由なく怠ると5万円以下の過料の対象です(同法第164条第2項)。
この負担を軽くするため、登記官が住基ネットの情報を検索し、職権で住所等の変更登記をする仕組み(法務省は「スマート変更登記」と呼んでいます)が始まっています。その検索に使う氏名・生年月日などを登記所に預けておく手続が、検索用情報の申出です。記録先は法務大臣が備える「検索用情報管理ファイル」で、自然人である所有権の登記名義人が対象です(規則第158条の38)。
今回の改正で、このファイルに記録する事項に国籍等(第158条の38第1項第6号)が加わり、申出の場面でも国籍等を出すことになりました。
「国籍」ではなく「国籍等」と書かれている理由
規則は国籍等を「国籍の属する国又は出入国管理及び難民認定法第二条第五号ロに規定する地域」と定義しています。国だけでなく地域も含めるためです。通達は、地域名として「台湾」と「ヨルダン川西岸地区及びガザ地区」を挙げています。
法務省は、国籍等を集める理由を、名義人に相続が起きたときに適用される法律(準拠法)を確認する基礎になり、相続登記を適正かつ円滑に進められるためと説明しています。日本人も対象になっているのは、この目的のためです。
対象になる人と登記
対象は、所有権の保存若しくは移転の登記、合体による登記等、所有権の更正の登記を申請する場合に、新たに所有権の登記名義人となる自然人です(規則第158条の39第1項)。
| 場面 | 国籍等の申出 |
|---|---|
| 売買による所有権移転(買主が個人) | 対象。日本人の買主も含む |
| 相続・贈与による所有権移転 | 対象。名義人になる相続人・受贈者について申し出る |
| 新築建物の所有権保存 | 対象 |
| 買主が法人 | 検索用情報管理ファイルは自然人が対象のため、この申出の対象外 |
| 抵当権の設定・抹消だけの登記 | 所有権の保存・移転等ではないため、この規定の対象外 |
| すでに名義人になっている人 | 新たな申請をしない限り申出は求められない。任意で単独申出(規則第158条の40)はできる |
国外に住所がある人も対象です。令和8年9月4日付けの通達は、改正省令の施行後は、名義人になる人が国外に住所を有するときも、国籍等を含めた検索用情報を申し出る必要があるとしています。海外在住の日本人が買主や相続人になる案件も含まれます。
申請書の書き方(記載例の要点)
法務省は「令和8年10月5日以降に所有権の移転の登記を書面で申請する場合の記載例」を公開しています。要点は次のとおりです。
- 権利者欄に、住所・氏名とあわせて「氏名ふりがな」「生年月日」「国籍等」「メールアドレス」を書きます。日本人であれば国籍等は「日本」です。
- 添付情報に「国籍等を証する情報」を加えます。
- 日本の国籍を有しない人は、振り仮名の代わりに氏名の表音をローマ字で示します(規則第158条の39第1項第2号)。法務局の相続登記の記載例では、カタカナの氏名に括弧書きでローマ字氏名を併記する形です。
国名の書き方
通達は、具体的な国名は外務省ホームページの「国・地域」に掲げられている名称を使い、地域名は「台湾」又は「ヨルダン川西岸地区及びガザ地区」とするとしています。二以上の国籍等を持つことが申請情報と添付情報から確認された場合は、その全部が記録されます。無国籍の人は「無国籍」と記録されます。
実際の申請書は、提携している司法書士が作ります。仲介会社は、買主が自分の国籍等と証する書類を決済日までに用意できるかを確かめる役回りです。
国籍等を証する書類と、省略できる場合
| 名義人になる人 | 国籍等を証する情報の例(法務省・通達) |
|---|---|
| 日本の国籍を有する人 | 本籍地が記載された住民票の写し、戸籍の附票の写し等 |
| 日本の国籍を有しない人 | 国籍又は地域が記載された住民票の写し、旅券の写し、在留カードの写し、特別永住者証明書の写しなど |
- 住民票コードで省略できる場合:日本に住所があり日本の国籍を有する人について住民票コードが提供され、登記官が住基ネットで日本の国籍を有する者であることを把握できたときは、国籍等を証する情報の提供は要しないとされています(通達。規則第158条の39第2項ただし書)。
- 旅券などの写し:通達は、申出人が写しに原本と相違ない旨の証明をすれば足りるとしています。法務局の記載例は、旅券の写しに日本語訳文を添える形で案内しています。
- 相続登記:法務局の相続登記の記載例は、相続人であることが分かる相続人の戸籍全部事項証明書を出していれば、重ねて提出する必要はないとしています。
- 電子申請:電子証明書で代えられるのは振り仮名と生年月日を証する情報に限られます(規則第158条の39第3項)。単独申出でも、電子証明書による代替から国籍等を証する情報は除かれています(第158条の40第13項)。
本籍が記載された住民票の写しは、買主が普段取得する住民票とは記載事項の選び方が違うことがあります。必要書類の案内では「本籍の記載があるもの」と明記しておくと、取り直しを防げます。
申出をしなかったとき、国籍等が欠けていたとき
通達は、検索用情報の申出の中で国籍等が提供されなかった場合、登記官は申請人又は代理人に補正を求めるとしています。期間内に補正がされなかった場合は、添付情報から判明する国籍等を検索用情報管理ファイルに記録するとしています。
法務省のQ&A(令和7年4月7日現在)は、同時申出をすべき登記申請で同時申出をしなかった場合も、登記申請は却下されないと答えています。ただし、申出をするよう登記所から連絡するとしています。
つまり、出さなければ登記が止まるという仕組みではありません。それでも補正の連絡が入れば、完了までの段取りがずれます。決済の段階で揃えておくのが無難です。
なお通達の第4は、国籍等を検索用情報管理ファイルに記録できるようになるまでの間に申出がされた国籍等の扱いについて、別途連絡するとしています。運用の細部は今後変わる可能性があるため、依頼する司法書士に最新の扱いを確認してください。
登記事項証明書には載らない
通達は、検索用情報として記録された国籍等は内部情報として保有するものであり、不動産登記法に基づく公開の対象ではないとしています。登記事項証明書を取っても、国籍等は出てきません。
買主から「登記簿に国籍が載るのか」と聞かれたら、まずこの点を伝えると話が進みやすくなります。そのうえで、相続のときに適用される法律を確認するための情報だという法務省の説明を添えます。
いまの決済で仲介会社が確認すること
10月5日以降に申請する登記はすべて新しい扱いです。決済が近い案件から順に、次の手順の例で確認します。
| 時点 | 確認すること |
|---|---|
| 契約の直後 | 買主(名義人になる人全員)の国籍と、住所が国内か国外かを確認する。必要書類の案内に「国籍等を証する書類」を加える |
| 司法書士への依頼時 | 外国籍の人、二重国籍の人、海外在住の人がいるかを先に伝え、どの書類で出すかを決めてもらう |
| 決済の前 | 本籍の記載がある住民票の写し、旅券の写しなどが揃ったかを確認する。住民票コードで足りる扱いにするかは司法書士の判断に合わせる |
| 決済の当日 | 持ち物の最終確認。メールアドレスも申出事項なので、買主が使い続けるアドレスを確認する |
本籍地が遠方にあり郵送で取り寄せる買主や、海外在住で書類の手配に時間がかかる買主は、案内を早めに出すほど決済日に間に合わせやすくなります。
相続の相談を受けたとき
相続登記でも、名義人になる相続人の国籍等を申し出ます。相続人に海外在住の人や外国籍の人がいる場合は、書類の手配に時間がかかることがあるため、早めに司法書士へつなぎます。
「国籍等の申出に関する質疑事項集」について
検索では「国籍等の申出に関する質疑事項集」という資料名も探されています。司法書士の解説記事などで言及されていますが、法務省の案内ページ「検索用情報の申出について」(令和8年9月7日更新)には掲載が見当たらず、作成日と内容を一次資料で確かめられませんでした。
この記事は、公開されている省令、令和8年9月4日付けの通達(法務省民二第872号)、法務省・法務局の記載例に基づいています。質疑事項集にある細かな運用は、依頼する司法書士に確認してください。
よくある誤解
- 外国人の買主だけの話:日本人の買主も対象です。
- 登記簿に国籍が載る:載りません。内部情報として扱われます。
- 電子申請なら電子証明書で足りる:国籍等を証する情報は電子証明書では代えられません。
- すでに持っている物件も届け出る義務がある:新たな登記を申請しない限り、申出は求められていません。
あわせて、住所等変更登記の義務化の記事も確認してください。
このテーマの全体像は「不動産のコンプライアンス実務ガイド2026|宅建業法・管理業法・個人情報・犯収法」にまとめています。
よくある質問
Q1. 日本人の買主も国籍等を申し出るのですか。
はい。規則第158条の39は国籍で区別していません。日本人の場合、国籍等は「日本」と書き、本籍地が記載された住民票の写しなどで証します。住民票コードで日本の国籍を確認できる場合は、証する情報の提供を要しないとされています。
Q2. 二重国籍の人はどう申し出るのですか。
通達は、二以上の国籍等を有していることが申請情報と添付情報から確認された場合は、その全部を記録するとしています。具体的な書き方と書類は司法書士に確認してください。
Q3. 国籍等を出さなかったら登記はどうなりますか。
通達では、登記官が補正を求め、期間内に補正がなければ添付情報から判明する国籍等を記録するとされています。法務省のQ&Aは、同時申出をしなかった場合も登記申請は却下されないとしています。ただし登記所から連絡が来るため、最初から揃えておくのが無難です。
Q4. 海外に住んでいる日本人が買主の場合はどうなりますか。
国外に住所がある場合も、国籍等を含めて申し出る必要があります(通達)。住民票がないため、書類の選び方は司法書士と早めに決めてください。
Q5. 仲介会社はどこまで関わるべきですか。
登記の申請は司法書士の業務です。仲介会社の役割は、必要書類の案内に国籍等を加え、決済日までに揃うよう段取りすることです。
出典(本文で参照している資料)
- 法務省「検索用情報の申出について(職権による住所等変更登記関係)」
- 法務省 不動産登記規則の一部を改正する省令の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(令和8年9月4日付け法務省民二第872号 通達)
- 不動産登記規則の一部を改正する省令(令和8年法務省令第23号)
- 法務省 令和8年10月5日以降に所有権の移転の登記を書面で申請する場合の記載例
- 法務局 相続登記申請書の記載例及び解説
- 法務省「検索用情報の申出に関するQ&A」(令和7年4月7日現在)
- 不動産登記規則(第158条の38、第158条の39、第158条の40)
- 不動産登記法(第76条の5、第164条)
この記事は2026年10月7日時点の情報です。