制度・法改正 読了 20分

不動産のコンプライアンス実務ガイド2026|宅建業法・賃貸住宅管理業法・個人情報保護法・犯収法・景表法

中小の不動産会社が守る法令を、宅建業法・賃貸住宅管理業法・個人情報保護法・犯罪収益移転防止法・景品表示法の5つを軸に、条文番号つきで整理しました。反社会的勢力への対応、書面の電子化、罰則と、自社で点検する確認表も載せています。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
不動産のコンプライアンス実務ガイド2026|宅建業法・管理業法・個人情報・犯収法
目次

中小の不動産会社のコンプライアンスは、宅建業法・賃貸住宅管理業法・個人情報保護法・犯罪収益移転防止法・景品表示法の5つを軸に、「誰に、いつ、何を渡し、何を残すか」を条文で確かめることから始まります。この記事では、各法律で押さえる義務を条文番号つきで整理し、反社会的勢力への対応、書面の電子化、罰則までを1本にまとめます。最後に、自社で点検するための確認表を載せています。

不動産会社が守る法令の全体像

不動産会社に関係する法令は多いですが、日々の業務で違反が起きやすいのは、次の表の範囲です。自社がどの業務をしているか(売買の仲介、賃貸の仲介、賃貸住宅の管理、自ら売主など)によって、かかる法律が変わります。

領域主な法令主な義務かかる業務
取引の公正宅地建物取引業法免許、宅建士の設置、広告、媒介契約書、重要事項説明、37条書面、報酬、帳簿売買・賃貸の仲介、自ら売主
賃貸住宅の管理賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律登録、業務管理者、管理受託契約の重要事項説明と書面、分別管理、定期報告賃貸住宅の管理
個人情報個人情報の保護に関する法律利用目的、安全管理措置、第三者提供の制限、漏えい時の報告すべて
マネー・ローンダリング対策犯罪による収益の移転防止に関する法律取引時確認、確認記録・取引記録、疑わしい取引の届出売買の締結・代理・媒介
広告景品表示法、不動産の表示に関する公正競争規約不当表示・おとり広告・ステマの禁止募集・販売の広告
反社会的勢力政府指針、各都道府県の暴力団排除条例関係の遮断、契約書への排除条項すべて

宅建業法で押さえる義務

免許と名義貸しの禁止

宅建業は免許を受けなければ営めません(3条1項・12条1項)。免許は5年ごとに更新が必要です(3条2項)。自分の名義で他人に宅建業を営ませる名義貸しも禁止されています(13条1項)。無免許営業や名義貸しは、宅建業法の中でも重い罰則の対象です(79条)。

専任の宅建士の設置

事務所ごとに、成年者である専任の宅建士を国土交通省令で定める数以上置く必要があります(31条の3第1項)。施行規則15条の5の3は、事務所では業務に従事する者の数に対する専任の宅建士の割合を5分の1以上と定めています。退職などで数が足りなくなったときは、2週間以内に必要な措置をとらなければなりません(31条の3第3項)。人の出入りがあるたびに、人数と割合を見直します。

広告:誇大広告・開始時期・取引態様

  • 誇大広告の禁止(32条):所在、規模、形質、利用の制限、環境、交通その他の利便、代金・借賃などの対価やその支払方法などについて、著しく事実に相違する表示や、実際より著しく優良・有利と誤認させる表示をしてはなりません。
  • 広告の開始時期(33条):工事の完了前の物件は、開発許可や建築確認などの処分があった後でなければ広告できません。
  • 取引態様の明示(34条):広告をするとき、また注文を受けたときは遅滞なく、自ら当事者か、代理か、媒介かを明示します。

3つの書面:媒介契約書・重要事項説明・37条書面

売買・交換の媒介契約を結んだときは、遅滞なく媒介契約の内容を書面にして依頼者に交付します(34条の2)。契約が成立するまでの間に、宅建士に重要事項説明書を交付して説明させます(35条1項)。説明の際、宅建士は宅建士証を提示しなければなりません(35条4項)。契約が成立したら、遅滞なく37条書面を交付します(37条)。35条書面と37条書面には宅建士の記名が必要です(35条5項・37条3項)。

説明の場面では、47条1号が、重要な事項について故意に事実を告げないこと、または不実のことを告げることを禁じています。重要事項説明書の記載事項は重要事項説明書のテンプレートで詳しく扱っています。

報酬:上限と掲示、空き家の特例

代理・媒介で受けられる報酬の額は国土交通大臣が定め、その額を超えて受け取ってはなりません(46条1項・2項)。大臣が定めた報酬の額は、事務所ごとに公衆の見やすい場所に掲示します(46条4項)。不当に高額の報酬を要求する行為も禁止されています(47条2号)。

2024年7月1日からは、空き家等の媒介報酬の特例が見直されました。国土交通省の資料では、800万円以下の低廉な空家等の売買では30万円の1.1倍を上限に、長期の空家等の賃貸では貸主から借賃1か月分の2.2倍を上限に、報酬を受けられるとされています。売買の特例は、媒介契約の締結の際にあらかじめ報酬額を依頼者に説明し、合意しておく必要があります。

従業者証明書・従業者名簿・帳簿

  • 従業者に従業者証明書を携帯させなければ業務に従事させてはならず、取引の関係者から求められたら提示します(48条1項・2項)。
  • 事務所ごとに従業者名簿を備え、取引の関係者から請求があれば閲覧させます(48条3項・4項)。
  • 事務所ごとに業務に関する帳簿を備え、取引のあったつど、年月日、物件の所在・面積などを記載します(49条)。

賃貸住宅管理業法で押さえる義務

賃貸住宅管理業法は2021年6月15日に登録制度が施行されました。国土交通省の資料では、管理戸数200戸以上の事業者は登録が義務で、200戸未満の事業者は任意登録とされています。登録は5年ごとに更新が必要です(3条2項)。登録を受けた管理業者には、次の義務がかかります。

義務条文内容
業務管理者の選任12条営業所ごとに1人以上。ほかの営業所の業務管理者を兼ねられない。業務管理者がいなくなったら、新たに選任するまで管理受託契約を結べない
管理受託契約の重要事項説明13条契約の締結前に、賃貸人に書面を交付して説明する。承諾を得て電磁的方法でも提供できる
契約締結時の書面14条締結したら遅滞なく、管理の対象・方法・期間・報酬などを記載した書面を交付する
財産の分別管理16条受け取った家賃・敷金・共益費などを、自己の固有財産やほかの契約の金銭と分けて管理する
委託者への定期報告20条管理業務の実施状況などを定期的に報告する。国交省の資料では最低限年1回の報告とされている

業務管理者の要件について、国交省の資料は、登録試験に合格し2年以上の実務経験がある者、宅建士で指定講習を修了し2年以上の実務経験がある者などを挙げています。分別管理は、口座を分けるだけでなく、どのオーナーのお金がいくらあるかを帳簿で示せる状態にしておくことが実務上のポイントです。

個人情報保護法で押さえる義務

不動産会社は、入居希望者の申込書、本人確認書類、収入の資料、オーナーの口座情報など、多くの個人データを扱います。特に次の3点は、日常の業務で判断を迫られる場面が多い規定です。

第三者提供には原則として本人の同意が必要

個人データを第三者に提供するときは、あらかじめ本人の同意を得る必要があります(27条1項)。法令に基づく場合など例外もあります。一方、業務の委託に伴って提供する場合、事業の承継に伴う場合、あらかじめ本人に通知するなどしたうえで共同利用する場合は、第三者への提供に当たりません(27条5項)。入居審査で保証会社に申込書の情報を渡す、オーナーに入居者の情報を伝える、といった場面で、どの根拠で渡しているかを説明できるようにしておきます。

安全管理措置と監督

個人データの漏えい・滅失・毀損を防ぐために必要かつ適切な措置を講じます(23条)。従業者に対する監督(24条)と、業務を委託した先に対する監督(25条)も義務です。退職者のアカウント停止、持ち出し用の端末の管理、委託先との契約内容の確認が、点検の起点になります。

漏えい等が起きたときの報告

一定の漏えい等が起きたときは、個人情報保護委員会への報告と本人への通知が必要です(26条)。個人情報保護委員会の案内では、2022年4月1日から義務化され、要配慮個人情報が含まれる場合、財産的被害が生じるおそれがある場合、不正の目的をもって行われたおそれがある場合、1,000人を超える場合の4つが報告の対象とされています。報告は速やかに(概ね3〜5日以内に)行うよう示されています。メールの誤送信や書類の紛失に備えて、誰がいつ何を判断するかを決めておきます。

顧客データの扱いは個人情報保護法と不動産会社の顧客データ管理で詳しく扱っています。

犯罪収益移転防止法で押さえる義務

宅建業者は犯罪収益移転防止法の特定事業者です。国土交通省の事務連絡「犯罪収益移転防止法等の厳正なる遵守について」(2025年6月27日)は、宅建業者の特定取引を、宅地・建物の売買契約の締結またはその代理もしくは媒介としています。賃貸の仲介や管理は、ここに挙げられていません。

義務条文内容
取引時確認4条本人特定事項(個人は氏名・住居・生年月日、法人は名称・本店所在地)、取引を行う目的、職業(法人は事業の内容)、法人の実質的支配者を確認する
確認記録6条取引時確認をしたら直ちに記録を作成し、契約が終了した日などから7年間保存する
取引記録7条取引の記録を作成・保存する
疑わしい取引の届出8条収受した財産が犯罪による収益である疑いがあるときなどは、速やかに行政庁に届け出る

同じ事務連絡は、FATFの第5次対日相互審査(2028年8月予定)に向けて対策の強化が求められていることを示し、注意すべき取引として、金融機関を通さない現金での支払いや、支払いの原資が不透明な取引を挙げています。あわせて、施行規則32条にもとづき、商品・サービス、顧客の属性、取引の形態、国・地域を踏まえたリスクの評価書面(特定事業者作成書面)を作ることを求めています。売買を扱う会社は、この書面があるか、内容が古くなっていないかを確認します。

反社会的勢力への対応

政府は2007年6月19日、犯罪対策閣僚会議幹事会申合せとして「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」を定めています。指針は、組織としての対応、外部の専門機関との連携、取引を含めた一切の関係の遮断、有事における民事と刑事の法的対応、裏取引や資金提供の禁止を基本原則とし、平素の対応として契約書等に暴力団排除条項を入れることを挙げています。

あわせて、各都道府県の暴力団排除条例も確認します。条例の内容は都道府県ごとに異なるため、営業している地域の条例と、所属する業界団体の書式(契約書の排除条項、申込書の表明確約欄)を照らし合わせます。実務では、契約前の確認、契約書の排除条項、判明したときの相談先(警察、暴力追放運動推進センター、弁護士)の3つをそろえておくのが基本です。

景品表示法と表示規約で押さえること

不当表示とおとり広告

景品表示法5条は、実際より著しく優良と示す表示(優良誤認)、取引条件を実際より著しく有利と誤認させる表示(有利誤認)、内閣総理大臣が指定する表示を禁じています。不動産広告では、業界の自主ルールである「不動産の表示に関する公正競争規約」も守ります。規約21条は、おとり広告として次の3つの表示を禁じています。

  • 物件が存在しないため、実際には取引することができない物件に関する表示
  • 物件は存在するが、実際には取引の対象となり得ない物件に関する表示
  • 物件は存在するが、実際には取引する意思がない物件に関する表示

成約済みの物件を掲載し続けると、2つ目に当たるおそれがあります。成約や申込みが入ったら、ポータルサイトや自社サイトの掲載を止める手順と担当を決めておきます。規約18条は、「最高」「格安」「完全」などの用語の使い方にも基準を設けています。

ステルスマーケティングの規制

消費者庁は、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示を景品表示法の不当表示に指定し、2023年10月1日から規制しています。規制の対象は、広告を出す事業者(広告主)です。依頼して書いてもらった口コミや紹介の投稿は、広告であることが分かるように表示します。

書面の電子化で押さえること

2022年5月18日から、媒介契約書・重要事項説明書・37条書面は、相手方の承諾を得て電磁的方法で提供できるようになりました(34条の2第11項・35条8項・37条4項5項)。承諾の取り方、宅建士の記名、改変を確認できる措置など、国土交通省のマニュアルが要件を示しています。詳しくは電子署名の法的効力と不動産の電子契約とIT重説の手順と確認表で扱っています。

自社で点検する確認表

次の表は、条文にもとづいて点検する項目の例です。年に1回、または人の入れ替わりや業務の追加があったときに見直します。

点検項目根拠確認する資料
免許の有効期間と更新の時期宅建業法3条2項免許証
事務所ごとの専任の宅建士が5分の1以上いるか宅建業法31条の3、施行規則15条の5の3従業者名簿
報酬額の掲示があるか宅建業法46条4項事務所の掲示物
全員が従業者証明書を携帯しているか宅建業法48条1項従業者証明書の発行記録
取引のつど帳簿に記載しているか宅建業法49条帳簿
広告に取引態様を明示しているか。成約済み物件を掲載していないか宅建業法34条、表示規約21条掲載中の広告の一覧
営業所ごとに業務管理者がいるか管理業法12条業務管理者の選任記録
預り金を固有財産と分けているか管理業法16条口座と帳簿
オーナーへの定期報告をしているか管理業法20条報告書の控え
個人データを渡す先と根拠を説明できるか個人情報保護法27条申込書の同意欄、委託契約
漏えい時の報告の手順が決まっているか個人情報保護法26条社内規程、連絡網
売買の取引時確認と記録を7年保存しているか犯収法4条・6条確認記録
特定事業者作成書面があるか犯収法施行規則32条リスク評価書面
契約書に暴力団排除条項があるか政府指針、暴力団排除条例契約書の書式

違反したときの罰則と処分

宅建業法の違反には、指示・業務停止・免許取消しといった監督処分と、刑事罰があります。主な刑事罰は次のとおりです。

違反条文罰則
不正の手段で免許を受ける、無免許営業、名義貸し、業務停止命令に違反して営業する79条3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその併科
重要な事項について故意に事実を告げない・不実のことを告げる(47条1号)79条の22年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその併科
上の2つの違反を法人の代表者や従業者が業務に関して行った場合84条法人に1億円以下の罰金

賃貸住宅管理業法でも、違反に対して業務停止や登録取消しなどの監督処分と罰則が定められています。個人情報保護法、犯罪収益移転防止法、景品表示法にも、それぞれ命令や罰則の規定があります。どの法律も、まず社内の手順と記録を整え、日ごろの点検で違反を防ぐことが基本です。

よくある質問

Q1. 管理戸数が200戸未満でも、賃貸住宅管理業法を守る必要はありますか。

国交省の資料では、200戸未満の事業者の登録は任意とされています。登録を受けていない事業者には登録業者としての義務はかかりませんが、任意で登録した場合は200戸以上の業者と同じ義務がかかります。また、宅建業法や個人情報保護法は管理戸数に関係なくかかります。

Q2. 賃貸の仲介でも、犯罪収益移転防止法の取引時確認が必要ですか。

国交省の事務連絡は、宅建業者の特定取引を売買契約の締結またはその代理・媒介としています。賃貸の仲介は特定取引に含まれていません。ただし、入居者の本人確認は、家賃債務保証や反社会的勢力の排除など、別の目的で必要になります。

Q3. 申込書の情報を保証会社に渡すとき、本人の同意は必要ですか。

個人データを第三者に提供するときは、原則としてあらかじめ本人の同意が必要です(個人情報保護法27条1項)。申込書に提供先と目的を示した同意欄を設け、署名をもらう形が一般的です。委託や共同利用で整理する場合は、27条5項の要件を満たしているかを確認します。

Q4. まず何から手をつければよいですか。

この記事の確認表の上から順に、根拠の条文と手元の資料を照らし合わせるのが近道です。宅建士の人数、報酬額の掲示、従業者証明書、帳簿のように、資料を見ればすぐ確かめられる項目から始め、個人情報や犯収法のように社内の手順が要る項目は、担当を決めて書面にしていきます。

2026年9月2日 更新について。本記事に「当社」「私の会社」の実績・体験として書かれていた数値や事例(件数・削減幅・日数・金額・社員数・所在地など)は、当社で計測・記録したものではなく、記事作成時に実績のように書かれてしまったものでした。該当する段落を削除し、公式資料と一般的な実務手順だけを残しています。お詫びします。数字を伴う実績は、今後は記録があるものしか書きません。「現場5年」「現場8年」「月80時間削減を実証」といった記述も同様に根拠がないため外しました。

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出典(本文で参照している資料)

この記事は2026年10月7日時点の情報です。

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