制度・法改正 読了 12分

空き家の媒介報酬の特例|売買は800万円以下で33万円、長期空き家の賃貸は2.2か月分(施行2年)、媒介契約の前に説明と合意が要る

800万円以下の宅地建物の売買・交換の媒介は、費用を勘案して依頼者ごとに33万円(税込)まで受けられます。長期の空家等の賃貸の媒介は、貸主と借主から受ける合計で借賃2.2か月分までです。施行から2年がたった特例を、告示の文言で確認します。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
空き家の媒介報酬の特例|売買は33万円、長期空き家の賃貸は2.2か月分(施行2年)
目次

800万円以下(税抜)の宅地建物の売買・交換の媒介は、媒介に要する費用を勘案して依頼者ごとに33万円(税込)まで、長期の空家等の賃貸の媒介は、貸主と借主から受ける合計で借賃の2.2か月分まで報酬を受けられます。令和6年7月1日に施行された報酬告示の改正によるもので、2年あまりがたちました。どちらも媒介契約の前に、報酬額を依頼者に説明して合意しておく必要があります。

施行から2年たった特例

宅地建物取引業者が受けられる報酬の上限は、宅地建物取引業法第46条第1項に基づき国土交通大臣が定め、これを超えて受けることは同条第2項で禁じられています。その上限を定めた告示(昭和45年建設省告示第1552号)が、令和6年6月21日の国土交通省告示第949号で改正され、令和6年7月1日に施行されました。

見直しの対象は2つです。価格の低い宅地建物の売買・交換の媒介(告示では「低廉な空家等」)と、長く使われていない宅地建物の貸借の媒介(「長期の空家等」)です。

【要点】改正で変わった3点

論点改正前改正後(令和6年7月1日から)
売買の特例の対象400万円以下の宅地建物800万円以下の宅地建物
売買の特例の上限と相手売主から、18万円の1.1倍(19万8,000円)まで依頼者から、30万円の1.1倍(33万円)まで。買主も含む
賃貸の特例なし(双方から合計で借賃1か月分の1.1倍まで)長期の空家等は、合計で借賃1か月分の2.2倍まで

800万円以下の売買は、33万円が上限になる

告示の第七は、低廉な空家等を、売買代金(消費税等相当額を含まない)が800万円以下の宅地又は建物と定めています。この売買・交換の媒介では、当該媒介に要する費用を勘案して、通常の計算(第二)による額を超えて報酬を受けられます。ただし、依頼者から受ける報酬の額は30万円の1.1倍(33万円)を超えてはなりません。

通常の計算(第二)は、代金のうち200万円以下の部分に5.5%、200万円を超え400万円以下の部分に4.4%、400万円を超える部分に3.3%を掛けて合計します(いずれも消費税込みの率)。

仮の数字で計算例を示します。

売買代金(税抜)通常の計算による上限(税込)特例による上限(税込)
800万円33万円33万円
500万円23万1,000円33万円
300万円15万4,000円33万円
200万円11万円33万円

800万円ちょうどの物件は、通常の計算でも33万円になるため、特例を使っても上限は変わりません。代金が低いほど、特例との差が大きくなります。33万円はあくまで上限で、媒介に要する費用を勘案して決める額です。

名称は「空家等」ですが、告示の定義は価格だけで決まっています。空き家でない宅地や建物でも、800万円以下であれば対象になります。

買主からも受けられる

改正前の特例は、売主である依頼者から受ける報酬に限られていました。改正後の第七は「依頼者」と定めており、売主に限っていません。国土交通省の見直しの概要も、800万円以下の宅地建物について、原則による上限を超えて報酬を受領できるとしています。

上限は依頼者ごとに33万円なので、売主と買主の双方から媒介を受けた場合は、それぞれから33万円まで受けられることになります。代理の場合(第八)は、第七により算出した金額の2倍以内です。

媒介契約の前に、説明して合意する

国土交通省の見直しの概要は、媒介契約の締結に際し、あらかじめ、上限の範囲内で報酬額について依頼者に説明し、合意する必要があるとしています。この点は「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」に定めるものとされています。

後から特例の額を請求するのではなく、媒介契約を結ぶ前の段階で、次のことを依頼者に伝えて合意を得ます。

  • この取引が、800万円以下の宅地建物の売買として特例の対象になること
  • 特例による上限が33万円(税込)であること
  • 受け取る報酬額と、その額にした理由(媒介に要する費用の内容)

説明の文面の例

手順の例として、売主への説明は次のような順番にすると伝わりやすくなります。

  1. 「この物件は売買代金が800万円以下のため、国の報酬のルールで特例の対象になります」
  2. 「通常の計算では上限が〇円ですが、特例では33万円(税込)まで受けられることになっています」
  3. 「今回は、現地の確認や役所での調査などにかかる手間を考えて、報酬を〇円としたいと考えています」
  4. 「この内容でよろしければ、媒介契約書にこの金額を記載します」

高齢の売主や遠方に住む相続人が相手の場合は、口頭で伝えた内容を書面にして渡しておくと、家族と相談するときにも使ってもらえます。

売買・交換の媒介契約では、契約を結んだら報酬に関する事項を書いた書面を依頼者に交付します(宅地建物取引業法第34条の2第1項第7号)。報酬欄に特例による額を書き、説明した内容を別紙に残しておくと、合意の経過を後から示せます。

「媒介に要する費用」として整理しておくもの

告示は「当該媒介に要する費用を勘案して」と定めるだけで、費用の一覧を示していません。実務では、価格の低い物件ほど手間がかかる部分を記録しておくと、依頼者への説明に使えます。記録しておく項目の例です。

  • 現地までの移動と、現地での状況確認・写真撮影
  • 登記事項証明書、公図、地積測量図などの取得
  • 役所での都市計画、道路、上下水道の調査
  • 境界標、越境物、残置物の確認

訪問日、取得した書類、調査にかけた時間を案件ごとに残しておくと、報酬額の理由を説明しやすくなります。その媒介に関係のない費用を上乗せする理由にはなりません。

長期の空家等の賃貸は、合計で2.2か月分まで

告示の第九は、長期の空家等を「現に長期間にわたって居住の用、事業の用その他の用途に供されておらず、又は将来にわたり居住の用、事業の用その他の用途に供される見込みがない宅地又は建物」と定めています。告示に何年という期間の定めはありません。

この貸借の媒介では、当該媒介に要する費用を勘案して、通常の上限(第四:依頼者の双方から合計で借賃1か月分の1.1倍)を超えて、合計で借賃1か月分の2.2倍まで報酬を受けられます。国土交通省の概要は、貸主である依頼者から原則の上限を超えて受領できると説明しています。

条件は、借主から受ける報酬が借賃1か月分の1.1倍以内(居住用で、依頼を受けるときに借主の承諾を得ていない場合は0.55倍以内)であることです。借主から受けられる額が増える特例ではありません。

仮の数字で計算例を示します。月額賃料5万円(消費税の対象とならない居住用)の場合です。

ケース借主から貸主から合計の上限
通常の上限双方の合計で5万5,000円まで5万5,000円
特例・借主から受けない0円11万円まで11万円
特例・借主から0.55か月分2万7,500円8万2,500円まで11万円

媒介契約の前に貸主へ報酬額を説明し、合意を得る点は売買と同じです。賃貸の媒介には第34条の2の書面交付義務がないため、説明と合意の内容は書面やメールで残しておきます。物件がどのくらいの期間使われていなかったか、なぜ使われる見込みがないかも、記録しておくと説明しやすくなります。

それでも採算が合わない案件はある

上限が上がっても、手間が上限を上回る案件はあります。受託の前に、次の点を確認する考え方が役に立ちます。

  • 現地に何度行く必要がありそうか
  • 売主側で決める人(相続人の代表など)が決まっているか
  • 接道と境界が、公図や測量図で説明できる状態か

見通しが立たない部分が多いときは、媒介を受ける前に、調査の範囲と費用を依頼者と話し合っておくと、後のずれを減らせます。

あわせて案内できる税の特例

価格の低い空き家や土地の売却では、売主が使える税の特例があります。代表的なものは、相続した空き家を売ったときに譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例(国税庁タックスアンサーNo.3306)と、低未利用土地等を売ったときの100万円の特別控除(No.3226)です。要件が細かいため、適用できるかは税理士や税務署への確認を勧めます。

関連して、相続した空き家の処分と低未利用地の100万円控除の記事も確認してください。

社内で「使える状態」にする手順

  1. 媒介契約書の書式を直す:報酬欄に特例による額を書けるようにし、媒介に要する費用の内容を書く別紙を用意します。
  2. 説明の文面をそろえる:対象になる理由、上限、受け取る額と理由を、担当者が同じ順番で説明できるようにA4一枚程度にまとめます。
  3. 対象案件を拾う:査定額が800万円以下の売却相談と、長く使われていない賃貸物件の相談を、受付の段階で見分けられるようにします。

このテーマの全体像は「不動産のコンプライアンス実務ガイド2026|宅建業法・管理業法・個人情報・犯収法」にまとめています。

よくある質問

Q1. 800万円は税込みで判定しますか。

税抜きで判定します。告示は売買代金について、消費税等相当額を含まないものとしています。

Q2. 空き家でなくても使えますか。

告示の定義は、売買代金が800万円以下の宅地又は建物です。空き家かどうかは要件になっていません。

Q3. 売主と買主の双方から、いつでも33万円ずつ受け取れますか。

受け取れるとは限りません。33万円は依頼者ごとの上限で、媒介に要する費用を勘案して決める額です。媒介契約の前の説明と合意も必要です。

Q4. 長期の空家等の賃貸で、借主から2.2か月分を受け取れますか。

受け取れません。2.2か月分は貸主と借主から受ける合計の上限で、借主から受ける額は1.1か月分(居住用で承諾がない場合は0.55か月分)以内が条件です。

Q5. 長期とは何年ですか。

告示には年数の定めがありません。「現に長期間にわたって…用途に供されておらず、又は将来にわたり…供される見込みがない」という文言で判断します。判断に迷う物件は、免許行政庁に確認してください。

Q6. すでに媒介契約を結んでいる案件に、後から特例を使えますか。

国土交通省の概要は、媒介契約の締結に際し、あらかじめ説明して合意することを求めています。すでに結んだ契約に後から適用できるかは、この記事では断定しません。個別の案件は免許行政庁に確認してください。

出典(本文で参照している資料)

この記事は2026年10月7日時点の情報です。

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