賃貸管理 読了 14分

物上げにつながる募集情報の書き方|物件ポータル掲載の必要表示事項・おとり広告と宅建業法32〜34条の2

募集情報で依頼者の信頼を得るには、言葉の工夫より先に、表示規約が求める事項を漏れなく正しく最新の状態で載せ続けることが土台です。宅建業法と表示規約の決まり、書き方、掲載前の確認、更新と削除、依頼者への報告を整理します。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
物上げにつながる募集情報の書き方|ポータル掲載の必要表示事項とおとり広告の注意点
目次

物件ポータルに載せる募集情報で売主・貸主の信頼を得て次の依頼(物上げ)につなげるには、言葉の工夫より先に、表示規約が求める事項を漏れなく、正しく、最新の状態で載せ続けることが土台になります。依頼者は、自分の物件がどう紹介されているかを広告で確かめられます。この記事では、宅建業法32条から34条の2までの広告と媒介の決まり、表示規約の必要な表示事項とおとり広告の禁止を確認したうえで、募集情報の書き方と、掲載後の更新・依頼者への報告の進め方を整理します。特定の物件ポータルの良し悪しや料金は扱いません。

物上げと募集情報の関係

物上げは、売主や貸主から売却・賃貸の依頼を受けることです。依頼する側は、依頼先を選ぶときも、依頼した後も、その会社が物件をどう広告しているかを見ることができます。ここからは実務上の考え方ですが、次の3点がそろっている広告は、依頼者にとって「任せて大丈夫か」を判断する材料になります。

  • 表示の漏れや誤りがない(表示規約と宅建業法の決まりを守っている)
  • 物件の良い点が、事実に基づいて具体的に書かれている
  • 情報が更新されていて、成約した物件が残っていない

売買の媒介では、依頼を受けた後にも法律上の決まりがあります。宅建業法34条の2第2項は、物件の価額や評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにするよう定めています。査定の段階から根拠を示し、依頼後は広告と報告で約束を果たす、という流れが物上げの基本になります。

広告に関わる宅建業法の決まり(32条〜34条)

条文内容募集情報で気をつけること
32条 誇大広告等の禁止所在、規模、形質、利用の制限、環境、交通その他の利便、代金・借賃等の対価の額や支払方法などについて、著しく事実に相違する表示や、実際のものより著しく優良・有利と誤認させる表示を禁止駅からの所要時間、面積、設備、費用を資料で確かめてから書く
33条 広告の開始時期の制限工事の完了前は、建築確認などの処分があった後でなければ広告できない建築中・造成中の物件は、確認済みかを確かめてから掲載する
34条 取引態様の明示広告をするときは、自ら当事者か、代理か、媒介かの別を明示する。注文を受けたときも遅滞なく明らかにする掲載ごとに取引態様の欄を確認する
34条の2 媒介契約売買・交換の媒介契約の書面、専任媒介の有効期間(3か月まで)、指定流通機構への登録、業務の処理状況の報告など依頼後の登録と報告の期限を管理する

国土交通省は令和5年1月12日の通知で、相場より安い賃料・価格の物件で客を集めて他の物件を勧めること、成約済みの物件を速やかに削除せずに広告を続けること、実在しない物件の広告などを挙げ、これらのおとり広告は宅建業法32条で禁止されているとして、業界団体に周知を求めています。

表示規約の必要な表示事項

不動産の表示に関する公正競争規約(表示規約)8条は、インターネット広告などで物件を表示するとき、物件の種別ごとに定められた事項を、見やすい場所に、見やすい大きさと色の文字で、分かりやすく表示するよう求めています。必要な事項は物件の種別ごとに別表で定められています。たとえば中古の賃貸マンション・貸家・賃貸アパートなどは別表9で、主な事項は次のとおりです。

区分別表9の主な表示事項
広告主名称、事務所の所在地と電話番号、免許証番号、所属団体名と公正取引協議会加盟事業者である旨、取引態様
物件所在地(町または字まで)、交通の利便、構造・階数・所在階、面積、建築年月、入居可能時期
費用賃料、礼金等、敷金・保証金等、損害保険料等が必要な旨、家賃保証会社等との契約が条件のときはその旨と額、管理費・共益費等
契約定期建物賃貸借であるときはその旨、契約期間、取引条件の有効期限
情報の鮮度情報公開日(または直前の更新日)と次回の更新予定日

売買の物件は、土地・新築住宅・中古住宅などの種別ごとに別の別表があります。物件ポータルの入力欄は、必要な表示事項を全て満たすように作られているとは限りません。掲載の前に、該当する別表と入力内容を照らし合わせます。表示事項の細部は媒体によって異なる場合があるため、原文の別表で確認してください。

募集情報の書き方

見出しと紹介文

見出しには、借りる人・買う人が物件を選ぶときに確かめる事実(駅からの所要時間、間取り、設備、入居可能時期など)を入れます。表示規約18条は、「新築」は建築工事完了後1年未満で居住の用に供されたことがないものに限るなど、特定の用語の使い方を定めています。「最高」「格安」などの用語は、根拠となる資料がなければ使えません。言葉で目を引くより、事実を具体的に書くほうが、比べる人にとって分かりやすい情報になります。

写真

表示規約の施行規則は、取引する建物の写真や動画は取引するものを表示するよう定めており、他の建物の写真を使えるのは建築工事の完了前などの事情がある場合に限られます。完成していない物件でCGなどを使う場合も、その旨を明示する必要があります。外観、室内の各部屋、水回り、収納、眺望、周辺の様子を、撮影した時期が分かるように整理しておくと、写真を差し替えるときに迷いません。

費用の書き方

費用は、表示規約が求める項目(賃料、礼金、敷金、管理費、保険、保証会社など)を全て書きます。別表9には、契約時から期間満了までにそれ以外の費用が必要なときは、その費目と額を書くという注記があります。表示規約23条は、管理費や共益費などについて実際より有利と誤認されるおそれのある表示を含め、さまざまな不当表示を禁じています。初期費用を低く見せるために一部の費用を書かない、という書き方は避けます。

交通と周辺の情報

駅からの所要時間や周辺施設までの距離は、宅建業法32条の「交通その他の利便」に当たります。地図で測るだけでなく、実際の道のりで確かめます。周辺施設は、閉店や移転で変わることがあるため、掲載の更新のたびに確認します。

取引態様

広告には、貸主・売主、代理、媒介の別を明示します(宅建業法34条1項、別表9)。他社が元付の物件を広告する場合は、広告してよいか、条件はどうかを元付業者に確認し、確認した日付を記録しておきます。

掲載前の確認表

掲載のたびに同じ確認ができるよう、確認表を用意しておきます。次は確認表の例です。物件や媒体に合わせて項目を足してください。

確認すること根拠・参考確かめ方
貸主・売主または元付業者が広告を認めているか表示規約21条(取引の対象となり得ない物件の表示の禁止)確認した日付と相手を記録する
工事完了前の物件なら、建築確認などの処分があったか宅建業法33条確認済証などで確かめる
取引態様を明示しているか宅建業法34条1項、別表9掲載画面で表示を確かめる
必要な表示事項がそろっているか表示規約8条、該当する別表別表と入力内容を照らし合わせる
所要時間・面積・設備・費用が資料と一致しているか宅建業法32条、表示規約23条図面、契約条件の資料、現地で確かめる
写真がその物件のもので、現状と合っているか表示規約の施行規則撮影日を確かめ、古い写真は差し替える
特定の用語を根拠なく使っていないか表示規約18条「新築」「最高」などの語を確かめる
情報公開日と次回の更新予定日を決めたか別表9、おとり広告ガイドライン更新予定日を予定表に入れる

確認表は、掲載した人とは別の人が見るようにすると、思い込みによる誤りに気づきやすくなります。確認表の記録は、後から表示の経緯を説明するときの資料にもなります。

掲載後の更新と削除

表示規約21条は、実際には取引できない物件、取引の対象となり得ない物件、取引する意思のない物件の表示(おとり広告)を禁じています。不動産公正取引協議会連合会の「おとり広告ガイドライン」は、インターネット広告の更新の期間を最長でも2週間とし、その期間内でも契約済みと分かった物件はすぐに削除することを徹底する必要があるとしています。取引状況の確認を怠って契約済みの物件を新しく掲載することも、ガイドラインで問題とされています。

運用の手順の例を示します。

  1. 物件ごとに、掲載している全ての掲載先と掲載日を一覧にする。
  2. 次回の更新予定日を決め、その日までに空室・販売中であることを貸主・売主または元付業者に確認する。
  3. 申込みが入った時点で、掲載の扱い(申込み中の表示か、掲載の停止か)を決め、全ての掲載先に反映する。
  4. 成約したら、その日のうちに全ての掲載先から削除する手順にしておく。
  5. 確認した日付と相手を記録に残す。

依頼者への報告で広告を見せる

売買の専任媒介契約では、宅建業法34条の2第9項により、業務の処理状況を2週間に1回以上(専属専任媒介契約は1週間に1回以上)依頼者に報告します。また、同条5項と施行規則15条の10により、専任媒介は契約の日から7日、専属専任媒介は5日以内(休業日数は算入しない)に指定流通機構へ物件を登録し、同条6項により登録を証する書面を遅滞なく依頼者に引き渡します。申込みがあったときは遅滞なく依頼者に報告します(同条8項)。専任媒介契約の有効期間は3か月を超えられず(同条3項)、これらの決まりに反する特約は無効です(同条10項)。登録・報告の期限は、媒介契約を結んだ日に予定表へ入れておきます。

国土交通省の令和6年12月24日の発表によると、令和7年1月1日から、指定流通機構への物件の取引状況の登録が義務付けられ、売主などが取引の申込みの状況を確認できる「ステータス管理機能」の活用が進められています。施行規則15条の11も、登録事項に「取引の申込みの受付に関する状況」を挙げています。

報告では、掲載している広告の画面、掲載先の一覧、問い合わせや内見の記録、申込みの状況を並べて示します。数字は実際に記録した分だけを書きます。賃貸の管理を受託している場合は、賃貸住宅管理業法20条の定期報告の中で、募集の経過を示すこともできます。広告の内容を依頼者に見てもらい、事実と違う点がないか確認してもらうことは、表示の誤りを防ぐことにもなります。

物件情報を一か所で管理し、各掲載先に同じ情報を出せると、更新と削除の漏れを減らせます。ウルスタくんでは、物件の情報から募集図面(マイソク)を作り、業者間流通(ウルスタBB)やお部屋探しサイト(ヘヤスタ)に掲載でき、顧客管理で問い合わせの記録も残せます。どの道具を使う場合も、他の掲載先を含めた更新と削除の確認は業者自身が行う必要があります。

このテーマの全体像は「不動産の業務効率化ガイド2026|5段階の進め方と法令チェックポイント・関連記事一覧」にまとめています。

よくある質問

Q1. 物件ポータルの入力欄を全部埋めれば、表示規約を守ったことになりますか。

入力欄が表示規約の必要な表示事項を全て満たしているとは限りません。物件の種別に対応する別表と、入力した内容を照らし合わせて確認します。

Q2. 成約後、広告を消すまでに猶予はありますか。

おとり広告ガイドラインは、更新の期間を最長でも2週間とし、その期間内でも契約済みと分かった物件はすぐに削除することを徹底する必要があるとしています。成約した日のうちに削除する手順にしておくのが安全です。

Q3. 「新築」と書けるのはいつまでですか。

表示規約18条は、「新築」を、建築工事完了後1年未満であって、居住の用に供されたことがないものと定めています。

Q4. 他社の物件を自社の広告に載せてもよいですか。

元付業者や貸主・売主が広告を認めているかを確かめてから掲載します。広告では取引態様を明示し(宅建業法34条1項)、掲載中は取引状況を定期的に確認します。

Q5. 依頼者への報告に、広告の反響の数字を書くべきですか。

実際に記録した問い合わせ・内見・申込みの数を書くと、依頼者が状況を判断しやすくなります。推測の数字や、他社の物件と比べた根拠のない評価は書かないようにします。

出典(本文で参照している資料)

この記事は2026年10月7日時点の情報です。

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