不動産会社の業務改善 読了 15分

不動産会社の業務効率化ガイド2026|棚卸し・電子化・自動化・導入・定着の5段階と法令チェックポイント

不動産会社の業務効率化は、棚卸し、法令で人が行う工程の確認、1業務ずつの電子化・自動化、定着、見直しの順で進めると失敗しにくくなります。段階ごとの要点と確かめる法令、詳しく説明したコラムへの案内を1ページにまとめました。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
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目次

不動産会社の業務効率化は、業務の棚卸し、法令で人が行う工程の確認、1業務ずつの電子化・自動化、社内への定着、定期的な見直し、の順で進めると失敗しにくくなります。このページは、各段階の進め方を詳しく説明したコラムへの案内と、段階ごとに確かめる法令のチェックポイントをまとめたものです。必要な段階から読み進めてください。

業務効率化の全体の流れ

業務効率化というと、まずシステムを選ぶことを考えがちです。しかし、何に時間がかかっているかが分からないまま選ぶと、使わない機能に費用を払い、肝心の業務は紙のまま、ということが起こります。順番は次のとおりです。

段階やること確かめる法令の例
1. 棚卸しと計画業務を書き出し、頻度と時間、担当者、使う書類を一覧にする各業務の根拠条文(宅建業法、賃貸住宅管理業法)
2. 書面の電子化相手方の承諾を得て、書面を電磁的方法で提供する。IT重説を始める宅建業法34条の2第11項・35条8項・37条4項5項、賃貸住宅管理業法13条2項・14条2項、電子帳簿保存法7条
3. 自動化転記・通知・集計を機械に任せ、人の確認を設計する宅建業法32条・35条・37条、賃貸住宅管理業法13条・16条・20条
4. システムの選定と導入要件を決め、試行し、旧運用を止める個人情報保護法23条〜28条
5. 定着と見直し担当の分け方、教え方、時間の記録と見直し賃貸住宅管理業法12条(業務管理者)、宅建業法の宅建士の工程

以下、段階ごとに要点と、詳しく説明したコラムを紹介します。

棚卸しと計画

最初の作業は、業務の一覧づくりです。誰が、どの業務に、月に何回、1回どのくらいかけているかを書き出します。正確に測る必要はなく、1週間ほど各自がおおまかにメモするだけでも、転記の多い業務や、特定の人にしかできない業務が見えてきます。

一覧には、業務ごとの法令の根拠も書き添えます。電子化できる条件や、人が行う必要のある工程を後で確かめるときに使います。

書面の電子化とIT重説

2022年5月18日から、宅建業法の媒介契約書、重要事項説明書、37条書面は、相手方の承諾を得れば電磁的方法で提供できるようになりました。国土交通省の実施マニュアルは、承諾をあらかじめ書面または電子的な方法で得ること、提供するファイルについて改変の有無を確認できる措置を講じることなどを示しています。重要事項説明書と37条書面には、電子でも宅建士の記名が必要です。

IT重説は、国土交通省のマニュアルによると、賃貸取引で2017年10月1日から、売買取引で2021年3月30日から本格運用に移っています。電子契約で取り交わした契約書などの電子取引データは、電子帳簿保存法7条により、電子データのまま保存します。

自動化の設計

自動化は、作業を「機械に任せる」「機械が下書きし人が確認する」「人が行う」の3つに分けることから始めます。宅建士による重要事項説明と記名(宅建業法35条・37条)、業務管理者の管理・監督の下で行う管理受託契約の重要事項説明(賃貸住宅管理業法13条)は、人の工程として残します。広告の掲載を自動で更新する場合も、成約済みの物件や変更された条件を反映しているかの確認が要ります(宅建業法32条)。

システムの選定と導入

システムを選ぶときは、棚卸しで分かった対象業務に合うかどうかと、やめるときにデータを書き出せるかどうかを確かめます。導入は、経営者と責任者が先に使い、1つのチームで試行し、続けるかどうかを判断してから全社に広げる、という順番が進めやすくなります。

入居者やオーナーの個人データをクラウドサービスに預ける場合は、個人情報保護法25条の委託先の監督が関わります。個人情報保護委員会のQ&A(Q7-53)は、提供事業者が個人データを取り扱わないこととなっている場合は委託に当たらないとしているため、利用規約や契約条項でどちらに当たるかを確かめます。2026年7月17日に改正個人情報保護法が公布されており、施行に向けた動きにも注意が必要です。

体制づくりと定着

仕組みを入れても、担当の分け方や教え方が決まっていないと、使い方が人によってばらばらになります。業務ごとに主担当と副担当を決め、手順書だけで新しい人が作業を始められる状態を目指します。

賃貸住宅管理業法12条は、営業所または事務所ごとに業務管理者を選任することを求めており、同法施行規則13条には、業務管理者が管理・監督する事項(13条の説明、14条の書面、金銭の管理、帳簿、定期報告、秘密の保持、苦情の処理など)が並んでいます。担当を分けるときは、これらの事項を業務管理者が確かめられる流れにしておきます。

業務の流れを変えるときに確かめたい条文を、段階に関係なく一覧にしました。変更の前に、該当する行を確かめてください。

場面条文確かめること
媒介契約書を電子で渡す宅建業法34条の2第11項依頼者の承諾を得たか
重要事項説明宅建業法35条1項・4項・5項・8項宅建士が説明し、宅建士証を提示し、記名しているか。電子で提供する場合は承諾を得て宅建士に提供させているか
契約締結時の書面宅建業法37条3項〜5項宅建士の記名があるか。電子の場合は承諾を得たか
広告の自動更新宅建業法32条事実と著しく異なる表示や、著しく優良・有利と誤認させる表示になっていないか
帳簿宅建業法49条事務所ごとに業務に関する帳簿を備え、取引のつど記載しているか
管理受託契約の重要事項説明賃貸住宅管理業法13条契約締結までに書面を交付して説明しているか。業務管理者の管理・監督の下で行っているか
管理受託契約の締結時書面賃貸住宅管理業法14条遅滞なく交付しているか
家賃・敷金等の管理賃貸住宅管理業法16条自己の財産や他の管理受託契約の金銭と分別して管理しているか
オーナーへの定期報告賃貸住宅管理業法20条、同法施行規則40条1年を超えない期間ごとなどに管理業務報告書を交付して説明しているか
電子取引データの保存電子帳簿保存法7条電子で授受した契約書・請求書などをデータのまま保存しているか
クラウドに個人データを預ける個人情報保護法23条〜26条・28条安全管理措置、従業者の監督、委託先の監督、漏えい等の報告、外国にある第三者への提供

つまずきやすい点

段階を追って進めても、次のような点でつまずくことがあります。あらかじめ対策を決めておくと、途中で止まりにくくなります。

つまずき起きること対策の例
複数の業務を同時に変える問題が起きたときに原因が分からず、紙に戻る1つの業務が回ってから次に広げる
相手方の承諾の記録がない電子での提供について後から説明できない承諾の取り方と保存場所を最初に決める
紙を望む相手方への手順がない電子に応じない相手方への交付が遅れる紙の書式と交付の手順を残しておく
並行運用に終わりがない二重入力が続き、どちらが正しいか分からなくなる並行期間の終わりの日と正本を決める
人の確認が形だけになる自動で作った書類の誤りに気づけない確認する項目を絞り、確認者と日付を記録する

補助金を使う場合は、国や自治体の制度の名称・要件・対象が年度ごとに変わるため、最新の公募要領で確かめてください。補助の有無にかかわらず、自社の業務に必要かどうかで判断することが大切です。

効果の測り方と見直し

効果は、導入前と導入後で同じ方法で時間を記録して比べます。仮の数字で計算例を示します。1件15分かかる業務が月に20件あれば、月300分、5時間です。電子化の後、確認に1件5分かかるなら月100分で、差は月200分、約3.3時間です。確認の時間を0として計算しないことが、見積もりと実際を近づけるこつです。

時間のほかに、誤りの件数、相手方からの問い合わせの件数、紙に戻した作業の有無も見ると、形だけの電子化に気づけます。法令やガイドラインの改正、書類のひな形の変更があったときは、自動化した工程を一度止めて見直します。

筆者は宅地建物取引士で、自社で賃貸住宅226戸を所有し、そのうち約100戸を自主管理しています。自主管理では一人ひとりが受け持つ業務の幅が広いため、どの業務から手をつけるかを棚卸しで決めることが特に大切だと考えています。

ウルスタくんでは、物件・入居者の管理、更新が近い契約の一覧、入金の記録、オーナーへの送金明細、賃貸借契約書・重要事項説明書など24種の書類と電子サイン、募集図面(マイソク)、業者間流通(ウルスタBB)、顧客管理を1つの仕組みで扱えます。段階3と4を検討するときの選択肢の1つとしてご覧ください。

よくある質問

Q1. どの段階から始めればよいですか。

棚卸しがまだなら、まず棚卸しから始めてください。すでに一覧がある場合は、回数が多く、相手方の承諾を得やすい書面の電子化から始めると、手順に慣れやすくなります。

Q2. 少人数の会社でも、段階をすべて踏む必要がありますか。

少人数でも順番は同じですが、各段階を軽くできます。棚卸しは1枚の表で足り、試行のチームは経営者と1人の担当者でもかまいません。法令のチェックポイントは規模に関係なくかかるため、一覧の表は確かめておいてください。

Q3. 電子化と自動化はどちらを先にやるべきですか。

多くの場合、電子化が先です。紙のままでは自動化の材料になるデータがそろわないためです。まず書面とデータを電子にそろえ、その後に転記や通知を自動にすると、無理なく進められます。

Q4. 法令の改正はどう追えばよいですか。

e-Gov法令検索で条文の最新の状態を確かめられます。国土交通省や個人情報保護委員会のサイトで、マニュアルやガイドラインの改訂も公表されています。年に1度、このページの法令チェックポイントの表をもとに、自社の手順書を見直すとよいと思います。

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出典(本文で参照している資料)

この記事は2026年10月7日時点の情報です。

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