令和8年8月21日、国土交通省が「不動産特定共同事業法施行規則の一部を改正する命令」を公布しました。公布と施行が同じ日です。あわせて「不動産特定共同事業の監督に当たっての留意事項について」と「不動産特定共同事業の電子取引業務ガイドライン」も改正され、こちらも同日発出・適用となっています。改正の中心は、契約が成立する前に投資家へ渡す書面に何を書くかです。とくに「想定利回り」を掲げたときに、その数字の出どころをどこまで書くのかが、具体的に指定されました。
4段階で書き分けろ、という指示
この改正でいちばん具体的なのは、施行規則そのものではなく、同じ日に改正された監督留意事項のほうです。収益や利益の算定の根拠となる「不動産取引が行われたことの根拠又は行われることが見込まれる根拠」について、次の4つを区別して書くことが求められる、と明示されました。
| 段階 | 監督留意事項が示す状態 |
|---|---|
| 1 | 当該不動産取引の額で、当該不動産取引に関する契約が締結済みであること |
| 2 | 当該不動産取引の額で、相手方となる予定の者が法的拘束力の無い意向表明書を作成したにとどまること |
| 3 | 当該不動産取引の額で不動産取引の相手方を探索している状態であること |
| 4 | 不動産取引の相手方を探索する前の状態であること |
1と4を、同じ「想定利回り」という言葉で並べてはいけない、ということです。出口が契約済みの商品と、出口をまだ探してもいない商品が、これまで同じ見え方をしていた。その差を書面の上に出させるのが、この4段階です。
あわせて、当該不動産取引の額が実現困難な額になっていないかを、不動産取引相場などの具体的な根拠によって示すことも求められています。数字を置くだけでは足りず、その数字が相場のどこに位置するのかを言うところまでが説明になりました。
いま押さえる5点
1. 公布と施行は令和8年8月21日(金)。パブリックコメントや検討会の段階ではなく、すでに効力を持っています。
2. 動いたのは3つ。施行規則(命令)、監督留意事項、電子取引業務ガイドライン。ガイドラインだけを見ていると規則の改正を落とし、規則だけを見ていると「どこまで書けば足りるか」の水準を落とします。
3. 既存事業者には経過措置がある。施行の際に現に許可等を受けているものについて、契約成立前の説明事項・財産管理報告書・HP掲載事項の3つは令和8年11月30日まで従前の例によることができます。「よることができる」であって、「よらなければならない」ではありません。前倒しで新しい様式に切り替えても構わない、という意味です。裏を返せば、12月1日からは選べません。
4. 利害関係人への売却には別の日付がある。事業参加者の保護に支障を生じるおそれがある状況等の追加(規則第40条関係)は、令和8年12月1日以後に締結される不動産特定共同事業契約に係る対象不動産の売却等について適用されます。
5. 提出部数だけ10月1日から。許可申請書等の副本が4部から1部になります。実務の手間としては、これがいちばん早く効きます。
何が同時に3つ改正されたのか
今回の改正は、令和7年8月にとりまとめられた「一般投資家の参加拡大を踏まえた不動産特定共同事業のあり方についての中間整理」を踏まえたものです。中間整理は「一般投資家の参加拡大を踏まえた不動産特定共同事業のあり方についての検討会」での議論を経て出されました。
| 改正されたもの | 性格 | 日付 |
|---|---|---|
| 不動産特定共同事業法施行規則(平成7年大蔵省・建設省令第2号)の一部を改正する命令 | 省令(命令) | 公布・施行 令和8年8月21日 |
| 不動産特定共同事業の監督に当たっての留意事項について | 監督の指針。都道府県あて発出 | 発出 令和8年8月21日 |
| 不動産特定共同事業の電子取引業務ガイドライン | 電子取引業務のガイドライン | 発出・適用 令和8年8月21日 |
関係は入れ子です。規則が「これを書け」と決め、監督留意事項が「その書き方はこの水準だ」と例示し、電子取引業務ガイドラインが「HPにはこれを載せろ」と足す。3つとも同じ日に動いているのは、そのためです。
施行規則の改正5項目
概要資料は、改正内容を次の5つに整理しています。
| 項目 | 内容 | 条 |
|---|---|---|
| 1 | 許可申請書等の提出部数の変更(副本を現行の4部から1部へ) | 第9条・第17条 |
| 2 | 事業参加者の保護に支障を生じるおそれがある状況等の追加 | 第40条 |
| 3 | 不動産特定共同事業契約の成立前の説明事項の追加 | 第43条 |
| 4 | 財産管理報告書の記載事項の充実 | 第50条 |
| 5 | 電子取引業務を行う事業者のHP等への掲載事項の充実 | 第55条 |
このうち2・3・4に対応して監督留意事項が、5に対応して電子取引業務ガイドラインが改正されています。1だけが、どちらにも対応しない純粋な事務手続の話です。
契約成立前の説明事項に足されたもの
規則第43条は、契約が成立するまでの間に、書面を交付して契約の内容等を説明する義務の中身を定めています。ここに追加されたのは、次の7つです。
利回りを出したときの根拠
勧誘に際して利回り等を表示した場合には、その利回り等が予想に基づくものであり不確実である旨に加えて、根拠となる不動産取引の額、対象不動産を特定するために必要な事項、不動産取引の取引態様の別、その取引が行われたことの根拠又は行われることが見込まれると判断した根拠を書くことになりました(第2項第6号関係)。冒頭の4段階は、この「見込まれると判断した根拠」の書き方です。
対象不動産の価格を妥当と判断する根拠
第1項第18号および第2項第5号関係です。買った価格をそのまま置くのではなく、なぜその価格が妥当なのかを言う。宅地建物取引業者が述べた価格に対する意見を根拠にする場合、監督留意事項は価格査定マニュアル(公益財団法人不動産流通推進センターが作成したもの、またはこれに準じたもの)や同種の取引事例等、他に合理的な説明がつくものが求められることを明示しました。あわせて、それが不動産の鑑定評価に関する法律に基づく鑑定評価書ではないことを明記させています。
利害関係人取引の額を妥当と判断する根拠
第1項第13号および第2項第1号から第3号関係です。鑑定評価額、対象不動産と条件の類似する不動産の近傍同種の不動産取引価格等、鑑定評価額等と当該取引の額の差額、そして当該取引の額を妥当と判断する理由。差額を書かせるところが要点です。
監督留意事項はさらに踏み込んでいます。近傍同種の売買価格・賃料等を示すときは、単に数字を示すのではなく、それが特定の不動産のものか、複数の不動産の平均値かという「その数字の意味」まで書くことが求められます。また、規則が挙げる根拠の全部またはいずれかを示していない場合には、対象不動産等の鑑定評価を受け、その結果等を記載することが求められることも明示されました。
出資された金銭の使途
第1項第20号ホ関係。監督留意事項は、不動産の取得代金、工事費用、租税公課、アップフロントフィー、積立金のような具体的な使途ごとに項目を記載することを明示しています。「事業資金として」ではもう通りません。
工事が完了する前の物件の場合
宅地の造成または建物の建築に関する工事の完了前であれば、必要な許可等の処分(開発許可、建築確認等)の有無とその処分の概要、資金計画、工事の完了時期等を書きます(第1項第16号の2関係)。監督留意事項は「当該処分の概要」の例として、都市計画法上の開発許可を取得している場合は同法上の開発登録簿に記載の事項、建築基準法上の建築確認を受けている場合は建築確認済証に記載の事項を含めた処分の概要を挙げています。開発許可の側だけを見て、建築確認の側を落とさないでください。
水害ハザードマップと建物状況調査
水害ハザードマップに関する事項が、説明事項に入りました(第1項第17号ト関係)。ただしこの号は、宅地建物取引業法施行規則の規定を引く形で書かれています。概要資料は「対象不動産が水害ハザードマップ上にある場合には、その内容」と要約していますが、引用される範囲は対象不動産が宅地か建物かで違います。実際に何を書くかは、要約ではなく案文で確認してください。
建物状況調査の有効期間については、鉄筋コンクリート造または鉄骨鉄筋コンクリート造の共同住宅等にあっては2年とされました(第1項第17号リ関係)。それ以外は1年のままです。
出口の蓋然性を4段階に分ける
冒頭に戻ります。この4段階が、今回の改正でいちばん現場を変える部分です。
これまでの募集ページでは、「想定利回り」の下に数字と短い注記があるだけでした。売却先がもう決まっている案件と、売却先を探す前の案件が、同じ見た目で並んでいた。4段階は、そこに階段をつけます。これは投資家保護の話であると同時に、まじめに出口を固めてから募集している事業者にとっては、その努力が初めて紙の上に出るという話でもあります。
鑑定評価額から1割という線
規則第40条は、事業参加者の保護に支障を生じるおそれがある状況等を定めた条文です。ここに、次の状況が追加されました。
対象不動産の売却等を行う場合(利害関係人ではない者への売却を除く)に、利害関係人等でない不動産鑑定士が行った鑑定評価に相当する価格での対象不動産の売却等をするために必要な措置を行っていない状況(概要資料の記述)
読み方に注意が必要です。外部の第三者へ売るときの話ではありません。利害関係人へ売るときの話です。償還時に自社グループへ物件を引き取らせるような場面が、これに当たります。
なお、案文の実際の文言は概要資料の要約より厳密で、鑑定士の側は「利害関係を有しない不動産鑑定士」、価格の側は「鑑定評価の評価額に相当する額」という表現になっています。括弧書きも「除く」ではなく、売却の場合は利害関係人に対して売却する場合に限る、という形の限定です。社内規程に写すときは、概要ではなく案文の文言を写してください。
そして監督留意事項が、線を引きました。「必要な措置」に該当しないものとして、対象不動産について鑑定評価の評価額を概ね1割以上上回る価格、または1割以上下回る価格で売却等をする行為が例示されています。
上振れも下振れも、どちらも書かれています。安く引き取れば投資家の取り分が減りますが、高く引き取れば損失補填になりうる。中間整理が「不当廉売や損失補填を防止するため」と書いていたのは、この両側のことです。
監督留意事項では、規則第40条第5号について「利害関係人」に含まれるもの、および「利害関係を有しない不動産鑑定士」に含まれないものが明示されています。誰が利害関係人かの判定は、この明示に当たってください。
財産管理報告書は「使った金の内訳」を書く
規則第50条は、契約を締結した事業参加者へ定期的に交付する財産管理報告書の記載事項です。概要資料は、追加されたものを次の4行にまとめています。
| 概要資料が挙げる追加事項 | 号 |
|---|---|
| 報告対象期間において支出した金銭の額及び使途 | 第9号関係 |
| 既に着手した工事の概要及びその完了時期 | 第10号イ関係 |
| 今後の資金計画、および今後実施予定の工事の概要とその完了時期 | 第10号ロ・ホ関係 |
| 必要な許可等の変更許可等の処分の有無及びその処分の概要 | 第10号ハ・ニ関係 |
ただし、この4行だけを見て様式を作らないでください。案文の第10号はイからヘまであり、概要の4行には現れない項目が含まれています。処分が取り消されるなどして効力を失った場合の記載や、直近に交付した財産管理報告書からの変更内容とその理由もそのひとつです。概要は「主に以下の改正を行います」と断っている文書で、様式の設計図ではありません。
監督留意事項は、支出した金銭について具体的な使途ごとに金額及び内訳を記載することを明示しています。契約成立前書面で「使途をこう書く」と言った以上、運用中の報告でも同じ粒度で突き合わせられる、という設計です。
もうひとつ、読み落としやすい定義があります。「既に着手した工事」は、報告対象期間の満了の日時点で着工している全ての工事を指し、報告対象期間より前の期間に着工した工事も含まれると明示されました。「今期に着工したもの」ではありません。
電子取引業務のHP掲載事項
電子取引業務を行う事業者が自らのHP等で投資家に閲覧できる状態にしておく事項に、次の3つが追加されました(規則第55条関係、電子取引業務ガイドライン「10.重要事項の閲覧」関係)。
| HP等への掲載が追加された事項 | 規則第55条第1項の号 |
|---|---|
| 利害関係人取引に関する事項 | 第13号 |
| 宅地の造成又は建物の建築に関する工事に関する事項 | 第16号の2 |
| 収益又は利益の分配に関する事項 | 第22号 |
契約成立前書面に足された内容と、重なっています。個別の投資家に渡す紙だけでなく、誰でも見られる場所にも同じ趣旨の情報を置け、ということです。ページの改修が要る事業者は、ここが工数の中心になります。
日付の整理
今回の改正は、日付が4つに割れています。ここを1本の日付だと思い込むと、間に合いません。
| 日付 | 何が起きるか |
|---|---|
| 令和8年8月21日(金) | 施行規則の公布・施行。監督留意事項の都道府県あて発出。電子取引業務ガイドラインの発出・適用 |
| 令和8年10月1日 | 許可申請書等の提出部数(第9条・第17条)の改正規定が動く日。概要資料は「適用する」、附則は「施行する」と書いています |
| 令和8年11月30日 | 施行の際に現に許可を受けている者・登録を受けている者について、契約成立前の説明事項・財産管理報告書・HP掲載事項(第55条第1項)が「従前の例によることができる」最終日 |
| 令和8年12月1日 | この日以後に締結される不動産特定共同事業契約に係る対象不動産の売却等について、規則第40条の追加規定を適用 |
11月30日と12月1日は、条文が違うので分けて覚えてください。11月30日は「既存の事業者の、書面まわりの猶予の終わり」、12月1日は「契約の締結日を基準にした適用の始まり」です。基準が「事業者」なのか「契約」なのかが違います。
なぜ市場が変わったのか
中間整理の概要には、この改正の理由になった数字が1つだけ載っています。運用中商品の一般投資家参加者数の推移です。出典は国土交通省「不動産証券化の実態調査」より作成、とされています。
| 年 | 一般投資家参加者数(運用中商品) | うちインターネット上の契約を通じた参加者 |
|---|---|---|
| 2019年 | 3.4万人 | 0.7万人(21.4%) |
| 2023年 | 29.7万人 | 20万人(67.2%) |
4年で人数がおよそ8.7倍。そして、ネット経由の比率が2割台から7割弱へ入れ替わっています。
この2つは意味が違います。人数が増えただけなら、説明の量を増やせば足ります。入り口がネットに移ったということは、対面で補える説明が減ったということです。画面に出ている文字が、説明のほぼ全部になる。だから改正は「書面に何を書くか」に集中しました。1995年の制度創設から30年かけて広がった制度が、直近の数年で客層を入れ替えた。今回の改正は、その入れ替わりへの追いつきです。
不特事業をやっていない会社にとっての意味
ここまでは不特事業者の話です。許可も登録も持っていない会社にとっても、ふたつの点で関係があります。
1. 「想定利回り」の説明水準が、公の文書になった
収益物件のマイソクや販売資料に「想定利回り8%」と書くとき、その8%の分母と分子は誰が決めた数字か。空室部分の賃料は何を根拠にしたのか。宅地建物取引業法の世界に、不特法の規則第43条のような細目はありません。それでも、行政が「投資家への説明として足りる形」を具体的に書き下ろした文書が、公になったという事実は残ります。4段階の区別、近傍同種の数字が単一か平均かの明示、価格査定マニュアル等による根拠づけ。「では御社の想定利回りはどうやって出したのですか」と聞かれたときの、答え方の型にはなります。とくに4段階は、賃貸の稼働想定にも読み替えられます。すでに申込が入っている部屋と、募集をこれから始める部屋を、同じ「想定賃料」で足していないか。
2. 小規模不動産特定共同事業という入り口がある
空き家や古民家の再生に、投資家からの出資を使う。その枠として不動産特定共同事業を検討する中小事業者は増えています。方向ははっきりしています。集めやすくする方向ではなく、集めるときの説明を厚くする方向です。参入を考えるなら、事業計画の中に「開示のコスト」を先に置いてください。
9月17日に無料ウェビナーがあります
国土交通省は令和8年8月24日、この改正を扱う「不動産特定共同事業 施行規則等の改正と実務対応 全国ウェビナー」の開催を発表しました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 日時 | 令和8年9月17日(木)16:00〜17:30 |
| 形式 | オンライン(Zoomでの開催を予定) |
| 対象 | 制度の理解を深めたい方、不動産証券化における運営管理・コンプライアンス対応などに従事されている方 ほか |
| 登壇者 | 国土交通省/弁護士/一般社団法人不動産特定共同事業者協議会/一般社団法人不動産クラウドファンディング協会 |
| 参加費 | 無料 |
| 申込期限 | 令和8年9月15日(火)17時 |
| 事務局 | 有限責任監査法人トーマツ |
報道発表の見出しは「全国の不特事業者及び実施してみたい方向けに」です。いま許可を持っていない会社が聞いてよい会だ、と国土交通省の側が書いています。申込URLと事務局の連絡先は、後掲の出典から報道発表ページを開いて確認してください。
数字の一覧
| 項目 | 数値・内容 |
|---|---|
| 公布・施行日 | 令和8年8月21日(金) |
| 同時に改正されたもの | 3つ(施行規則・監督留意事項・電子取引業務ガイドライン) |
| 施行規則の改正項目 | 5項目(+その他所要の改正及び経過措置) |
| 提出部数 | 副本 4部 → 1部(令和8年10月1日から) |
| 既存事業者の経過措置 | 令和8年11月30日まで 従前の例によることができる |
| 規則第40条の適用 | 令和8年12月1日以後に締結される契約に係る対象不動産の売却等 |
| 小規模事業者への準用 | 第71条。第40条・第43条・第50条・第55条は準用の範囲 |
| 鑑定評価額からの乖離の例示 | 概ね1割以上 上回る/1割以上 下回る |
| 出口の蓋然性の区分 | 4段階 |
| 建物状況調査の有効期間 | RC造・SRC造の共同住宅等は2年 |
| 財産管理報告書の追加事項 | 4項目(第9号・第10号イロハニホ関係) |
| HP等への掲載追加事項 | 3項目 |
| 中間整理のとりまとめ | 令和7年8月 |
| 制度創設 | 1995年 |
| 一般投資家参加者数 | 2019年 3.4万人 → 2023年 29.7万人 |
| うちネット経由 | 2019年 0.7万人(21.4%) → 2023年 20万人(67.2%) |
| ウェビナー | 令和8年9月17日(木)16:00〜17:30/無料/申込は9月15日(火)17時まで |
いまやること
1. 自社が許可等を受けているかで、読む順番を変える。受けているなら11月30日が締切です。受けていないなら、この記事は「業界がどちらへ動いているか」の資料として読んでください。
2. 既存の募集ページから「利回り」の語を全部拾う。数字の横に、予想に基づくものである旨と、4段階のどれに当たるかが書けるか。書けない案件があれば、それがいちばん先に直すところです。
3. 利害関係人の一覧を、監督留意事項の明示に当てて作り直す。「利害関係人」に含まれるもの、「利害関係を有しない不動産鑑定士」に含まれないものが明示されています。
4. 出資金の使途を、項目に割る。不動産の取得代金、工事費用、租税公課、アップフロントフィー、積立金。この粒度で割れる会計になっているかを、先に確認します。書面だけ直しても、報告のときに同じ粒度が出せなければ破綻します。
5. 財産管理報告書の様式を、いま開く。前期から続いている工事が落ちない作りになっているか。「今期着工分」で作った様式は、そのままだと漏れます。
6. 9月17日のウェビナーに申し込む。無料で、申込は9月15日17時までです。11月30日から逆算すると、9月に聞いておくのが順当です。
よくある質問
Q. 8月21日より前に締結した契約は、書面を作り直す必要がありますか。
A. 本稿は「作り直しが必要かどうか」を判断していません。公表資料が示しているのは、施行の際に現に許可・登録を受けている者について、契約成立前の説明事項・財産管理報告書・HP掲載事項は令和8年11月30日まで従前の例によることができること、そして規則第40条の追加規定は令和8年12月1日以後に締結される契約に係る対象不動産の売却等に適用されることまでです。既存契約の扱いは、案文と監督官庁への確認によってください。
Q. 「概ね1割」は、上回る側と下回る側の両方ですか。
A. はい。監督留意事項の概要は「鑑定評価の評価額を概ね1割以上上回る価格又は1割以上下回る価格で売却等をする行為」を例示しています。両側です。ただしこれは「必要な措置に該当しないもの」の例示であって、1割以内なら必ず適法という趣旨ではありません。
Q. 4段階は、書面のどこに書くのですか。
A. 監督留意事項が対応させているのは、改正後の規則第43条第2項第6号ロ⑸および同号ハ⑹です。収益または利益の算定の根拠となる「不動産取引が行われたことの根拠又は行われることが見込まれる根拠」の欄です。利回りを表示した場合に説明が必要になる項目の中にあります。
Q. 鑑定評価は必ず取らなければならなくなったのですか。
A. そう単純ではありません。監督留意事項が明示したのは、利害関係人取引の価格を妥当と判断する根拠として規則が挙げる事項(近傍同種の不動産の売買価格・賃料等、直近の非利害関係人との売買価格など)の全部またはいずれかを示していない場合に、鑑定評価を受けてその結果等の記載が求められる、という関係です。示せる根拠が揃っているかどうかで変わります。
Q. 小規模不動産特定共同事業者にも適用されますか。
A. 概要資料には書かれていませんが、及びます。規則第71条は小規模不動産特定共同事業者への準用を定めており、今回の改正はこの第71条自体にも手を入れています。準用の範囲には第40条・第43条・第50条・第55条が入っています。さらに附則は「第71条において準用する場合を含む」と明記し、経過措置の対象者にも「法第41条第1項の登録を受けている者」が挙げられています。つまり11月30日も12月1日も、小規模事業者に効きます。
ただし、提出部数の改正(第9条・第17条)は準用の対象外です。準用は第20条から始まるためで、ここだけは射程が違います。いずれにせよ、自社の適用関係は案文で確認してください。
出典
| 本文で使った内容 | 資料 |
|---|---|
| 公布・施行日、改正の5項目、監督留意事項・電子取引業務ガイドラインの同時改正、一部規定に経過措置があること、所管課 | 国土交通省「『不動産特定共同事業法施行規則の一部を改正する命令』の公布等 〜投資家がよりわかりやすく安心して投資できる市場の整備に向けて〜」(令和8年8月21日) |
| 改正の背景、5項目の詳細(条番号・追加された説明事項・財産管理報告書・HP掲載事項)、経過措置の日付(10月1日/11月30日/12月1日) | 国土交通省「不動産特定共同事業法施行規則の一部を改正する命令について(概要)」(PDF) |
| 出口の蓋然性の4段階、鑑定評価額から概ね1割の例示、利害関係人と不動産鑑定士の範囲の明示、出資金の使途の項目例、価格査定マニュアル、近傍同種の数字の意味の記載、既に着手した工事の定義 | 国土交通省「『不動産特定共同事業の監督に当たっての留意事項について』の一部改正について(概要)」(PDF) |
| HP等への掲載事項の追加3項目、「10.重要事項の閲覧」関係、発出・適用日 | 国土交通省「『不動産特定共同事業法の電子取引業務ガイドライン』の一部改正について(概要)」(PDF) |
| 一般投資家参加者数の推移(2019年/2023年)、ネット経由の人数と比率、制度充実の4つの方向性、不当廉売や損失補填の防止という趣旨 | 国土交通省「一般投資家の参加拡大を踏まえた不動産特定共同事業のあり方についての中間整理(概要)」(PDF) |
| 報道発表資料本体(改正概要とスケジュールの原文、問い合わせ先) | 国土交通省 報道発表資料「『不動産特定共同事業法施行規則の一部を改正する命令』の公布等」(PDF) |
| ウェビナーの日時・形式・対象者・登壇者・参加費・申込期限・事務局、1995年の制度創設、商品数と募集総額の拡大傾向 | 国土交通省「不動産特定共同事業の施行規則等の改正と実務対応について理解を深めよう 〜全国の不特事業者及び実施してみたい方向けにウェビナーを開催します〜」(令和8年8月24日) |
| 附則の文言(施行日、「従前の例によることができる」、第55条第1項、第71条において準用する場合を含むこと、法第41条第1項の登録を受けている者)、規則第40条第5号・第43条・第50条・第55条第1項・第71条の実際の条文 | 国土交通省「不動産特定共同事業法施行規則の一部を改正する命令」案文(PDF) |
| 監督留意事項の改正箇所の逐条(4段階の区分、概ね1割の例示、建築確認済証、価格査定マニュアルと鑑定評価書でない旨、既に着手した工事の定義) | 国土交通省「不動産特定共同事業の監督に当たっての留意事項について」新旧対照表(PDF) |
| 電子取引業務ガイドラインの改正箇所(HP掲載事項に追加された号) | 国土交通省「不動産特定共同事業の電子取引業務ガイドライン」新旧対照表(PDF) |
書かなかったこと
条文を1条ずつ全部は追っていません。本稿の骨格は報道発表資料と3つの概要資料、そして中間整理の概要です。案文と新旧対照表は、概要の要約が実際の条文とずれていないかを確かめるために使いました。その確認の過程で、概要の要約だけでは足りない箇所がいくつも出ています。本文で「概要資料は」と断っているところが、そのしるしです。実際に書面を直すときは、必ず案文と新旧対照表に当たってください。概要資料は「主に以下の改正を行います」と、網羅ではないことを自ら断っています。
「その他所要の改正及び経過措置」の中身は書いていません。概要資料の第6項がこれに当たりますが、内容は示されていません。本稿が挙げた3つの日付以外に経過措置がある可能性があります。
電子取引業務ガイドラインの「適用時期」の節そのものは、今回改められていません。本稿が「発出・適用 令和8年8月21日」と書いたのは概要資料の記載であり、今回の改正部分がその日から適用される、という意味です。ガイドライン全体の適用時期の記述と混同しないでください。
違反したときにどうなるかは書いていません。監督処分の要件や量定に踏み込むには、監督留意事項の本文を通読する必要があります。本稿が読んだのは、改正箇所とその周辺です。
中間整理の円グラフの比率は、一部を落としています。2019年と2023年の参加者数、およびインターネット経由の人数と比率は本文に載せましたが、「その他」の比率はPDFから正しく読み取れませんでした。数字が合わないまま載せるより、載せないほうがよいと判断しています。
ウェビナーの申込URLは本文に書いていません。この種のURLは開催後に失効します。出典欄の報道発表ページから辿ってください。そちらなら、締切後でも「終わった会だ」と分かります。
最後に、この改正の骨をひとことで書いておきます。数字を出す自由は残り、その数字の後ろを見せない自由がなくなりました。利回りも、価格も、使途も、工事の進み具合も、いままでは結論だけ書けばよかった。これからは、結論に至った経路を並べて置くことになります。手間は増えますが、経路を書ける商品と書けない商品の差がそこで見えるので、まじめに組んでいる事業者ほど得をする改正だと思います。
本稿は国土交通省の公表資料にもとづく一般的な整理であり、個別の事業や契約について適法性を判断するものではありません。実際の対応は、案文・新旧対照表および監督官庁への確認によってください。賃貸管理と売買仲介の実務はウルスタのコラムで書いています。


