京都市の空き家税(非居住住宅利活用促進税)は、市街化区域内にある「住んでいる人がいない住宅」の所有者にかかる京都市独自の税で、京都市の案内では令和12年度(2030年度)から課税が始まる予定です。2023年3月24日に総務大臣が同意しましたが、システム開発の影響で当初予定の令和11年度から1年延期されています。この記事では、京都市の公式資料と条例をもとに対象・税額の仕組み・課税されないケースを整理し、国の空家特措法や相続登記の義務化とあわせて、所有者と管理会社が今から準備できることをまとめます。
京都市の空き家税の基本(いつから・誰に・何に)
正式名称は「非居住住宅利活用促進税」です。地方税法に定めのある税ではなく、京都市が条例で設けた法定外普通税です。市町村が法定外普通税を新設するときは、あらかじめ総務大臣に協議し、同意を得なければなりません(地方税法669条1項)。京都市の税は、総務省が2023年3月24日に同意を公表しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠 | 京都市非居住住宅利活用促進税条例(京都市のページに令和8年6月11日条例第6号による改正後の条例を掲載) |
| 総務大臣の同意 | 2023年3月24日(条例の公布は同年4月13日) |
| 課税開始 | 令和12年度(令和12年1月1日の利用状況によるもの)から課税開始の予定。システム開発の影響で令和11年度から1年延期 |
| 課税される住宅 | 京都市の市街化区域内に所在する非居住住宅(その所在地に住所を有する者がいない住宅) |
| 納税義務者 | 非居住住宅の所有者 |
| 住んでいるかの判断 | 住民票の有無ではなく、生活の本拠として利用している人がいるかどうかの実態で判断 |
施行日について、条例の附則は「市規則で定める日から施行する」としています。課税の開始時期は京都市のページで更新されることがあるため、オーナーに説明する前に最新の掲載内容を確認してください。
市街化区域の外にある住宅は対象になりません。京都市の案内では、家屋の課税明細書の「都市計画税に係る当該年度課税標準額」欄が空白の家屋は市街化区域内にないため、この税の対象にならないと説明されています。手元の課税明細書で最初に確認できる項目です。
税額の仕組み(家屋価値割と立地床面積割)
税額は「家屋価値割」と「立地床面積割」の合計です(条例4条)。どちらも固定資産税の評価額を使って計算します。
| 区分 | 課税標準 | 税率 |
|---|---|---|
| 家屋価値割 | 家屋の固定資産評価額 | 0.7% |
| 立地床面積割 | 敷地の1平方メートル当たり固定資産評価額 × 延べ床面積 | 家屋価値割の課税標準額が700万円未満なら0.15%、700万円以上900万円未満なら0.3%、900万円以上なら0.6% |
立地床面積割の税率は、土地の評価額ではなく、家屋価値割の課税標準額(家屋の評価額)で3段階に分かれます(条例7条)。評価額の高い家屋ほど立地床面積割の税率も上がる仕組みです。
免税点
家屋価値割の課税標準額が30万円に満たない住宅には課税されません(条例8条)。ただし、導入当初の5年間は、この30万円を100万円と読み替える経過措置があります(附則3項)。なお、2023年3月の総務省の公表資料では免税点を20万円と記載していますが、現在京都市が掲載している条例では30万円です。説明資料を作るときは、京都市が掲載している現行の条例を基準にしてください。
計算の例
仮の数字で計算例を示します。家屋の固定資産評価額が200万円、敷地の1平方メートル当たり固定資産評価額が10万円、延べ床面積が80平方メートルの住宅とします。
- 家屋価値割:200万円 × 0.7% = 14,000円
- 立地床面積割:10万円 × 80平方メートル = 800万円。家屋価値割の課税標準額は200万円で700万円未満のため税率は0.15%。800万円 × 0.15% = 12,000円
- 合計:年26,000円(家屋価値割の課税標準額200万円は経過措置の100万円以上のため、導入当初の5年間も課税の対象)
実際の評価額は課税明細書で確認できます。京都市は税額の試算用の表計算ファイルも公開しているので、オーナーごとに試算するときはそちらを使うと計算違いを防げます。
課税されないケース(課税免除・減免・徴収猶予)
非居住住宅であっても、次のような場合は課税されません。多くは申告が前提なので、「該当するはずだから何もしなくてよい」とはならない点に注意が必要です。
課税免除(条例5条)
- 事業用の住宅、または1年以内に事業用に使う予定であると申告したもの
- 賃貸や売却の予定を申告したもの(募集・販売の開始から1年未満のもの)
- 固定資産税が非課税または課税免除となっているもの
- 景観重要建造物など、歴史的な価値を持つ建築物
減免
京都市の案内では、災害や盗難による損失、生活保護の受給、公共事業による使用収益の制限のほか、転勤・入院・介護施設への入所・DV被害による避難・親族の介護・改築工事による一時的な非居住が減免の対象として挙げられています。一時的な非居住による減免は申請が必要です。
徴収猶予
所有者の死亡、または住んでいた人の死亡によって非居住住宅になった場合は、申告により3年間、徴収が猶予されます。猶予の期間中に活用すれば免除されると案内されています。相続の直後にすぐ方針を決められない家族にとって、時間を確保できる仕組みです。
管理会社として特に気をつけたいのは、賃貸用の空室の扱いです。課税免除は「募集の開始から1年未満」と期間が区切られています。募集が長引いている住戸やしばらく募集を止めている住戸がどう扱われるかは、条例5条と京都市の案内で確認し、判断がつかない場合は京都市に問い合わせてください。
国の制度:空家特措法の「管理不全空家」と固定資産税
京都市の税は京都市だけの制度ですが、空き家を放置したときの不利益は国の法律でも強まっています。2023年12月13日に施行された改正空家等対策特別措置法(空家等対策の推進に関する特別措置法)で、「管理不全空家等」の制度ができました。
- 空家等の所有者等は、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう適切な管理に努める(5条)
- 放置すれば特定空家等になるおそれのある空家等は、市町村長が「管理不全空家等」として指導できる(13条1項)
- 指導しても状態が改善しない場合、修繕や立木竹の伐採など具体的な措置を勧告できる(13条2項)
勧告を受けると、固定資産税の住宅用地の特例(地方税法349条の3の2)の対象から外れます。この特例は住宅用地の課税標準を3分の1(200平方メートル以下の小規模住宅用地は6分の1)にするもので、管理不全空家等で13条2項の勧告を受けたもの、特定空家等で22条2項の勧告を受けたものの敷地は除くと条文に書かれています。つまり、京都市以外の空き家でも、管理の状態によっては土地の固定資産税の負担が重くなる可能性があります。
また、建物の外壁や塀など土地の工作物の設置・保存に瑕疵があり他人に損害を与えたときは、占有者、占有者が必要な注意をしていた場合は所有者が賠償責任を負います(民法717条1項)。空き家の管理は税金だけでなく、事故の責任の問題でもあります。
相続登記の義務化と空き家の譲渡の特例
空き家の多くは相続をきっかけに生まれます。相続登記の申請は2024年4月1日から義務になりました。
- 相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する(不動産登記法76条の2第1項)
- 正当な理由なく申請を怠ると10万円以下の過料(同法164条1項)
- 2024年4月1日より前に相続した不動産で登記をしていないものは、2027年3月31日までに申請が必要(法務省の案内)
- すぐに遺産分割がまとまらないときは、相続人が単独でできる「相続人申告登記」で義務を果たす方法もある
あわせて、2026年4月1日からは住所や氏名が変わったときの変更登記も義務になっています(2年以内、5万円以下の過料)。詳しくは住所等変更登記の義務化の解説にまとめています。
売却を考える場合は、国税庁が案内している「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」も確認対象です。要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円(2024年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上の場合は2,000万円)を控除できます。主な要件は、1981年5月31日以前に建築された家屋であること、区分所有建物でないこと、相続の開始直前に被相続人以外に住んでいた人がいないこと、売却代金が1億円以下であること、相続の開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること、2027年12月31日までの譲渡であることなどです。相続後に貸したり事業に使ったりすると対象から外れるため、貸すか売るかを決める前に税理士に確認してもらうのが安全です。
所有者が今から決めておくこと
課税開始までには時間があります。ただ、相続した家の方針は家族の合意が必要で、決めるまでに時間がかかりがちです。選択肢は大きく次の4つです。
住む・使う
家族の誰かが生活の本拠として住めば、非居住住宅ではなくなります。判断は住民票ではなく生活の実態なので、住民票だけを移す方法では解決になりません。
貸す
賃貸にする場合は、修繕費と家賃の見込み、募集にかかる期間を比べます。募集中の扱いは「募集の開始から1年未満」で申告したものが課税免除なので、募集を始める時期と申告の段取りを一緒に考えておきます。古い家屋は修繕費がかさみやすいので、見積もりを取ってから判断します。
売る
空き家の譲渡の特例が使えるかどうかで手取りが大きく変わることがあります。期限があるため、相続の時期と特例の期限を最初に確認します。
解体して土地を活用・売却する
建物を解体すると京都市の空き家税の対象からは外れますが、土地の固定資産税は住宅用地の特例がなくなります。解体費と固定資産税の変化、売却のしやすさを比べて判断します。
管理会社の実務:オーナーへの確認の手順
京都市内に物件を持つオーナーと付き合いがある管理会社は、課税開始の前に次の順で確認を進めると、オーナーへの説明がしやすくなります。
- 対象になりうる住宅の洗い出し:管理物件だけでなく、オーナーが自分で持っている実家や相続した家も含め、京都市内で人が住んでいない住宅を聞き取ります。
- 課税明細書の確認:家屋の評価額と、都市計画税の欄が空白でないか(市街化区域内か)を確認します。
- 試算:京都市の試算ファイルや本記事の計算方法で、おおよその年税額を出します。経過措置の5年間とその後で免税点が違う点も示します。
- 課税免除・減免に当たるかの確認:事業用、賃貸・売却の予定、一時的な非居住など、該当しそうなものと必要な申告を整理します。最終的な判断は京都市に確認します。
- 登記の確認:所有者の名義が亡くなった方のままになっていないか、登記上の住所が古いままでないかを登記事項証明書で確認し、必要なら司法書士を紹介します。登記の申請代理や申請書類の作成は司法書士の業務です(司法書士法3条1項、73条1項)。
- 方針が決まるまでの管理:空家特措法の管理不全空家にならないよう、換気・通水・草木の手入れ・郵便物の整理などの巡回を提案します。巡回の内容と費用は書面で取り決めます。
税額の個別の判断や相続税・譲渡所得税の計算は税理士の業務です。管理会社は、事実の整理と専門家へのつなぎ役に徹すると、後のトラブルを避けやすくなります。
このテーマの全体像は「不動産の業務効率化ガイド2026|5段階の進め方と法令チェックポイント・関連記事一覧」にまとめています。
よくある質問
Q1. 京都市の空き家税はいつから課税されますか。
京都市の案内では、令和12年度(令和12年1月1日の利用状況によるもの)から課税開始の予定です。当初は令和11年度の予定でしたが、システム開発の影響で1年延期されました。
Q2. 別荘やセカンドハウスも対象ですか。
判断の基準は、生活の本拠として利用している人がいるかどうかです。ときどき使うだけの別荘やセカンドハウスは、課税免除や減免に当たらなければ対象になりえます。個別の扱いは京都市に確認してください。
Q3. 賃貸用の空室にも課税されますか。
賃貸の予定を申告したもので、募集の開始から1年未満のものは課税免除です(条例5条)。募集が長引いている場合などの扱いは、条例と京都市の案内で確認してください。
Q4. 京都市以外の自治体でも同じ税が始まりますか。
市町村が新しい税を作るには、条例の制定と総務大臣の同意が必要です(地方税法669条1項)。他の自治体の動きは、それぞれの自治体と総務省の発表で確認してください。一方、空家特措法の管理不全空家の勧告による住宅用地特例の除外は全国の制度です。
Q5. 空き家を持っているだけで固定資産税が6倍になるのですか。
持っているだけではなりません。管理不全空家等や特定空家等として市町村長から勧告を受けると、住宅用地の特例(課税標準を3分の1または6分の1にする特例)の対象から外れます。税額がどれだけ変わるかは土地の評価額などによります。
出典(本文で参照している資料)
- 京都市:非居住住宅利活用促進税について
- 京都市非居住住宅利活用促進税条例(京都市掲載のPDF)
- 総務省:京都市「非居住住宅利活用促進税」の新設への同意(2023年3月24日)
- 地方税法(e-Gov法令検索)349条の3の2、669条
- 空家等対策の推進に関する特別措置法(e-Gov法令検索)5条、13条
- 国土交通省:空家等対策特別措置法の改正について
- 不動産登記法(e-Gov法令検索)76条の2、164条
- 法務省:相続登記の申請義務化について
- 国税庁 タックスアンサーNo.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
- 民法(e-Gov法令検索)717条
- 司法書士法(e-Gov法令検索)3条、73条
この記事は2026年10月7日時点の情報です。


