顧客管理 / 追客 読了 14分

不動産のInstagram運用|物件投稿で守る広告ルール(宅建業法・表示規約・ステマ規制)と、少人数で続ける投稿の手順

Instagramの物件投稿は、チラシやポータルサイトと同じ広告のルールで作るのが基本です。取引態様の明示、誇大表現と特定用語、成約後の投稿の扱い、写真の決まり、社員の投稿とステマ規制、入居者への配慮、続けられる運用の手順を説明します。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
不動産のInstagram運用|物件投稿で守る広告ルールと、少人数で続ける投稿の手順
目次

Instagramで物件を紹介する投稿は、チラシやポータルサイトと同じ「広告」として、宅建業法と不動産の表示に関する公正競争規約に沿って作るのが基本です。取引態様の明示(宅建業法34条)、誇大広告の禁止(同32条)、おとり広告の禁止(表示規約21条)、2023年10月1日に始まったステルスマーケティングの規制を投稿前の確認に組み込めば、少人数の会社でも無理なく続けられます。

Instagramの物件投稿が「広告」として扱われる理由

宅建業法32条は、宅建業者が「その業務に関して広告をするとき」の誇大広告を禁じています。条文は新聞やチラシといった媒体を限定していません。34条1項も、宅地建物の売買・交換・貸借に関する広告をするときに、取引態様の別を明示するよう求めています。

不動産の表示に関する公正競争規約(以下「表示規約」)は、景品表示法36条にもとづき公正取引委員会と消費者庁長官の認定を受けた業界のルールです。表示規約4条5項は「表示」を、顧客を誘引するための手段として事業者が不動産の内容や取引条件などについて行う広告その他の表示と定め、その1つ目にインターネットによるものを挙げています。

このため、会社のInstagramアカウントで物件の間取りや賃料、立地を紹介する投稿は、表示規約の「表示」にあたると考えて作るのが安全です。「SNSだから気軽に」「ストーリーズは消えるから大丈夫」という考え方は、ルールの上では通りません。

筆者は宅地建物取引士で、自社で賃貸住宅226戸を所有し、約100戸を自主管理しています。この記事では、筆者の運用の数字ではなく、条文と公的資料で確かめられる範囲で、投稿の作り方を整理します。

物件投稿で守るルール

取引態様を書く(宅建業法34条)

物件を紹介する投稿には、自社が売主・貸主なのか、代理なのか、媒介(仲介)なのかを書きます。表示規約の施行規則9条(1)は、取引態様を「売主」「貸主」「代理」「媒介(仲介)」の用語で表示するよう定めています。キャプションの冒頭か末尾に「取引態様:媒介」のように決まった位置で書くと、書き忘れを防げます。

34条2項は、注文を受けたときにも遅滞なく取引態様を明らかにするよう求めています。DMで問い合わせを受けたときの最初の返信に、取引態様を入れておくと確実です。

誇大な表現を使わない(宅建業法32条・表示規約18条)

32条は、物件の所在、規模、形質、利用の制限、環境、交通その他の利便、代金・借賃、支払方法などについて、著しく事実に相違する表示や、実際よりも著しく優良・有利と誤認させる表示を禁じています。リール動画の字幕やサムネイルの一言も対象になると考えて、事実で言える範囲に収めます。

表示規約18条2項は、次の用語を、表示内容を裏付ける合理的な根拠を示す資料を持っている場合を除いて使ってはならないとしています。さらに1号と2号の用語は、根拠となる事実を併せて表示する場合に限って使えます。

号規約に挙がっている用語の例意味
1号「最高」「最高級」「極」「特級」最上級を意味する用語(根拠となる事実の併記が必要)
2号「買得」「掘出」「土地値」「格安」「投売り」「破格」「特安」「激安」「バーゲンセール」「安値」著しく安いという印象を与える用語(根拠となる事実の併記が必要)
3号「完全」「完ぺき」「絶対」「万全」全く欠けるところがない、手落ちがないことを意味する用語
4号「日本一」「日本初」「業界一」「超」「当社だけ」「他に類を見ない」「抜群」競争事業者より優位に立つことを意味する用語
5号「特選」「厳選」一定の基準で選別されたことを意味する用語
6号「完売」著しく人気が高く、売行きがよいという印象を与える用語

ハッシュタグも文字として表示されます。「#激安物件」「#最高の立地」のようなタグは、本文と同じ基準で確認します。

成約済み・取引できない物件を載せ続けない(表示規約21条)

表示規約21条は、物件が存在しないため取引できない物件、存在しても取引の対象となり得ない物件、存在しても取引する意思がない物件の表示を禁じています。いわゆるおとり広告です。

Instagramの投稿は、削除しない限りプロフィールに残り続けます。成約や募集停止の連絡を受けたら、その日のうちに投稿をアーカイブするか、キャプションの冒頭に「成約済み・募集終了」と書き直す運用を決めておきます。ポータルサイトの掲載と同じ管理表で、Instagramの投稿も消し込むと漏れにくくなります。詳しくは賃貸のおとり広告を防ぐ物件情報の管理で説明しています。

写真・動画は取引する物件のものを使う(表示規約施行規則9条(22))

施行規則9条(22)は、宅地や建物の写真・動画は取引するものを表示するよう定めています。建築工事の完了前などで使えない事情があるときに限り、施工者が過去に施工した建物で、構造・階数・仕様が同一で規模・形状・色等が類似するものなど、条件を満たす他の建物の写真を使えます。別の部屋の写真を「イメージ」として流用するのは避けます。

広角レンズや明るさの補正は、部屋が実際より広く明るく見える方向に働きます。32条の「実際のものよりも著しく優良」と受け取られない範囲にとどめ、間取り図と面積も併せて載せます。

完成前の物件は許可・確認の後に(宅建業法33条)

33条は、宅地の造成や建物の建築の工事完了前は、開発許可や建築確認など政令で定める処分があった後でなければ、その物件の売買その他の業務に関する広告をしてはならないとしています。表示規約5条にも同じ趣旨の定めがあります。新築アパートの「近日公開」投稿や工事中の現場紹介で物件の内容や条件に触れるときは、建築確認の有無を先に確かめます。

投稿の形式ごとの確認ポイント

Instagramには形式がいくつかあり、文字を書ける場所が違います。どの形式でも、物件の内容や条件を示すなら同じルールがかかると考えます。

形式書き漏れやすいこと確認のしかた
フィード投稿取引態様、賃料・価格以外の費用、成約後の放置キャプションの定型文に取引態様と問い合わせ先を入れておく
リール動画字幕やサムネイルの誇大表現、別物件の映像の混入撮影した物件名と撮影日を社内の管理表に残す
ストーリーズ表示時間が短いことを理由にした確認の省略フィードと同じチェック表を使う。ハイライトに残すものは成約時に外す
プロフィール会社名、免許番号、所在地の記載会社のホームページと同じ表記にそろえる
DMの返信取引態様、募集状況の最新化返信の定型文を作り、物件の状況を確かめてから送る

スタッフの投稿・依頼した投稿とステマ規制

消費者庁は、景品表示法5条3号にもとづく指定として、事業者の表示であることを一般消費者が判別することが困難な表示を不当表示とする告示(令和5年内閣府告示第19号)を定め、2023年10月1日から施行しています。規制の対象は広告主である事業者で、依頼を受けたインフルエンサーなどの第三者ではありません。

不動産会社のInstagram運用で関係しやすいのは、次の3つの場面です。

  • 社員が個人アカウントで自社の物件を紹介する。消費者庁のQ&A(Q3)は、社員の投稿がそれだけで直ちに違反になるわけではないものの、社内での地位や担当業務、投稿の目的などによっては「事業者の表示」にあたる場合があるとしています。営業担当が担当物件を紹介する投稿は、事業者の表示と判断されうる典型です。
  • 表示のしかた。Q11は「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」のほか、「A社から商品の提供を受けて投稿している」といった文章でもよいとしています。一方でQ12は、「私は〇〇社の社員です」と所属を書くだけでは、事業者の表示であることが明瞭とは必ずしもいえないとしています。
  • 入居者やインフルエンサーに投稿を頼む。謝礼や家賃の割引と引き換えに投稿を依頼し、内容に会社が関わるなら、投稿に広告であることを明示してもらう必要があります。

Instagram自体のブランドコンテンツのポリシーも、対価のやり取りがある投稿では、ビジネスパートナーをタグ付けするよう求めています。タグ付けすると、提携関係があることが投稿に表示されます。法律とプラットフォームの両方の決まりに合わせておきます。

入居者・近隣への配慮

ここは法令の条文ではなく、運用の考え方として書きます。居住中の部屋や共用部を撮るときは、入居者に事前に了解を取ります。郵便受けの名前、表札、駐車場の車のナンバー、窓から見える隣の建物の室内、通行人の顔は、写り込まないように撮るか、加工して消します。

建物の外観と最寄り駅の映像を組み合わせると、住所を書かなくても建物を特定できることがあります。入居者がいる建物の外観をどこまで出すかは、貸主と相談して決めておきます。

続けられる運用の手順と効果の見方

手順の例

  1. 載せる物件を決める。自社が貸主・売主の物件か、元付業者や貸主から広告の了解を得た物件に限ります。
  2. 素材をそろえる。募集図面と同じ物件データ(賃料、面積、所在地、交通、取引態様)を使い、写真は撮影日を残します。
  3. 文案を作り、チェック表で確かめる。取引態様、18条2項の用語、33条の該当の有無、写り込み、広告の明示の5点を見ます。
  4. 投稿する。投稿日と物件名を、ポータルサイトの掲載と同じ管理表に記録します。
  5. 成約・条件変更を反映する。募集終了の連絡を受けたら、ポータルサイトと同じ日にInstagramも直します。
  6. 問い合わせを記録する。DMの問い合わせは顧客管理の記録に移し、返信の担当者と期限を決めます。初動の決め方は反響への返信時間の決め方を参考にしてください。

効果の見方

フォロワー数より、問い合わせと来店予約の数を見ます。仮の数字で計算例を示します。1か月の撮影・編集・投稿に合計10時間かかり、Instagram経由の来店予約が2件なら、来店予約1件あたり5時間です。ほかの集客方法の1件あたりの時間や費用と並べて、続けるか、投稿の頻度を見直すかを判断します。集客費用の計算は顧客獲得コストの計算でも説明しています。

ウルスタくんでは、物件・入居者の管理に登録した物件データから募集図面(マイソク)を作れます。Instagramの投稿にも同じデータを使えば、賃料や面積の転記ミスを減らせます。DMの問い合わせは顧客管理に記録しておくと、担当者が替わっても追いかけられます。

このテーマの全体像は「不動産CRM完全ガイド|6サービス比較と導入手順」にまとめています。

よくある質問

Q1. 社員の個人アカウントで物件を紹介してもよいですか?

禁止はされていませんが、会社の業務として紹介するなら会社の広告と同じルールがかかると考えます。取引態様を書き、消費者庁のQ&Aにあるように「広告」「PR」などで事業者の表示であることを明示します。所属を書くだけでは足りない場合があります。

Q2. 「駅近」「格安」は使えますか?

「格安」は表示規約18条2項2号の用語で、裏付ける資料を持ち、根拠となる事実を併せて書く場合に限って使えます。「駅近」のような表現は、徒歩の所要時間を道路距離80メートルにつき1分で計算して数字で書くほうが確実です(表示規約施行規則9条(9))。

Q3. 成約した物件の投稿は消すべきですか?

表示規約21条は取引の対象となり得ない物件の表示を禁じています。成約した時点でアーカイブするか、冒頭に「成約済み・募集終了」と明記して、募集中と誤解されない状態にします。

Q4. 入居者に部屋の紹介投稿を頼むとステマになりますか?

謝礼などと引き換えに依頼し、会社が内容に関わるなら、事業者の表示として広告であることの明示が必要になると考えます。依頼の有無や謝礼の内容を記録し、投稿には「PR」などの表示を入れてもらいます。

Q5. 投稿にどのくらい時間をかければよいですか?

決まった基準はありません。問い合わせ1件や来店予約1件あたりにかかった時間を記録し、ほかの集客方法と比べて決めます。確認の時間を削ると誤った表示につながるので、チェック表の時間は削らない前提で計画します。

出典(本文で参照している資料)

この記事は2026年10月7日時点の情報です。

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