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不動産会社のリモートワーク導入|専任の宅建士のテレワークの扱いと、労働時間・費用・個人情報の規程、営業・管理部門別の運用ルール

不動産会社でもリモートワークは導入できますが、先に専任の宅建士の勤務の扱い、労働時間と費用のルール、個人情報を家に持ち出さない仕組みを規程に書いておく必要があります。2021年7月1日施行の解釈・運用の考え方の改正と、厚生労働省のテレワークガイドラインをもとに、部門別の運用例まで整理します。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
不動産会社のリモートワーク導入|専任の宅建士の扱いと労働時間・費用・個人情報の規程
目次

不動産会社でもリモートワークは導入できますが、先に「専任の宅地建物取引士の勤務の扱い」「労働時間と費用のルール」「個人情報を家に持ち出さない仕組み」の3つを規程に書いておく必要があります。専任の宅建士は、2021年7月1日施行の国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」の改正で、ITの活用等により適切な業務ができる体制を確保した上であれば、事務所以外で勤務する場合も「常勤」に含まれるとされました。この記事では、厚生労働省のテレワークガイドラインと宅建業法を踏まえて、営業・管理・事務の業務ごとの運用ルールの作り方を整理します。

在宅にできる業務の切り分け方

不動産業は、内見の案内、退去立会い、鍵の受け渡しなど、現地でしかできない業務があるため、テレワークに向かないと言われがちです。厚生労働省の「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」は、一般にテレワークの実施が難しいと考えられる業種・職種でも、個別の業務によっては実施できる場合があるとし、テレワークに向かないと安易に結論づけるのではなく、実施できる方法を検討するよう求めています。

そこで、職種単位ではなく業務単位で切り分けます。業務を一覧にし、次の3つに分けてみてください。

区分業務の例考え方
現地が必要内見の案内、退去立会い、巡回、鍵の受け渡し、緊急時の現地対応出社日や外出日にまとめる
事務所の設備や紙が必要紙の原本の確認・保管、郵便物の処理、来店客の対応紙をデータに置き換えられるかを検討する。置き換えるまでは出社日に行う
在宅でもできる問い合わせのメール・電話対応、募集図面の作成、オーナーへの報告書の作成、協力業者との日程調整、入金の確認個人情報の扱いのルールを決めたうえで在宅の対象にする

ガイドラインは、正規雇用労働者、非正規雇用労働者といった雇用形態の違いのみを理由としてテレワークの対象者から除外しないよう留意することも求めています。対象者は、業務の内容で決めるのが基本です。

専任の宅建士とテレワーク

宅建業法31条の3第1項は、事務所ごとに、国土交通省令で定める数の成年者である専任の宅地建物取引士を置くことを求めています。数は、事務所では業務に従事する者の5分の1以上です(同法施行規則15条の5の3)。

国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」は、「専任」を、原則として、宅建業を営む事務所に常勤して、専ら宅建業に従事する状態としています。2021年7月1日に施行された改正(国土交通省不動産・建設経済局不動産業課長通知、国不動第35号)で、この「常勤」には、「ITの活用等により適切な業務ができる体制を確保した上で、宅地建物取引業者の事務所以外において通常の勤務時間を勤務する場合」も含まれるとされました。新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえて当面の間認められていた扱いを、常駐規制の見直しやテレワークの定着を踏まえて改めたものです。

業界団体を通じて示されたQ&Aでは、次の点が説明されています。

  • 「適切な業務ができる体制」かどうかは、ITを利用した業務環境の整備状況、窓口・受付等の体制の実施方法、テレワークを実施していたことが分かる勤怠管理の情報や、テレワークを実施した日に作業や連絡をとったことが分かるメールや書類等の有無を踏まえて、総合的に判断する
  • 「事務所」の定義は従来どおりで、接客や契約行為を行う営業活動の場所として認められない場合は事務所とみなされない
  • 専任の宅建士以外の従業者が全員事務所で業務を行い、専任の宅建士だけがテレワークをすることも、適切な業務ができる体制を確保した上であれば可能

その後の改正では、事務所で一時的に宅建業の業務が行われていない間に、ITの活用等により同じ宅建業者の他の事務所の業務に従事することは差し支えないが、その場合でも他の事務所の専任の宅建士を兼ねることはできない、という点も明確にされています。

実務では、専任の宅建士が在宅の日も、事務所の窓口で受けた問い合わせに応じられる連絡手段と、勤怠の記録、業務を行ったことが分かるメールや作業の記録を残しておくことが大事です。宅建業法35条の重要事項の説明や、書面への記名を宅建士が行うことは、在宅でも変わりません。

テレワーク規程に書く内容

ガイドラインは、導入目的、対象業務、対象となり得る労働者の範囲、実施場所などについて、あらかじめ労使で十分に話し合い、ルールを定めておくことが重要であるとし、就業規則に定めて労働者に適切に周知することが望ましいとしています。規程には、次の項目を入れておくと運用で迷いにくくなります。

項目書く内容の例
目的と対象者何のために導入するか。対象者の決め方(業務の内容で決める)
対象業務と出社が必要な業務在宅でできる業務と、現地・事務所でしかできない業務の一覧
実施場所自宅に限るか、サテライトオフィスや外出先を認めるか。公共の場所での作業の扱い
申請と承認テレワークの日の決め方、前日までの申請など
労働時間始業・終業の報告方法、記録の方法、中抜けの扱い、時間外・休日労働の事前申請
費用の負担通信費、機器、事務用品の負担のルール
情報の取扱い紙の書類の持ち出し、端末の管理、画面のロック、紛失時の報告
連絡と緊急時連絡手段、応答の目安、現地対応が必要になったときの交代の仕組み
評価と育成評価の方法、面談の頻度
安全衛生作業環境の確認、健康の相談先

労働時間の把握と中抜け

ガイドラインは、テレワークでも、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として、始業及び終業の時刻を確認することを求めています。勤怠のシステムへの打刻や、業務用の端末の使用記録を使う方法が考えられます。これは、専任の宅建士のテレワークで求められる「テレワークを実施していたことが分かる勤怠管理の情報」にもつながります。

育児や通院などで業務から離れる「中抜け」について、ガイドラインは、休憩時間として扱い終業時刻を繰り下げる、時間単位の年次有給休暇として扱うといった方法を挙げ、あらかじめ就業規則等で定めておくことが重要としています。

長時間労働への対策として、ガイドラインは、時間外・休日・深夜のメール送付の自粛を命ずることや、所定外の深夜・休日は事前に許可を得ない限り社内システムにアクセスできないよう設定することを挙げています。オーナーや入居者からの連絡が夜間に入りやすい業種なので、夜間の連絡を誰が受けるかを決め、在宅勤務者が個人の判断で対応し続けない仕組みにしておきます。

費用の負担

労働基準法89条5号は、労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合は、その事項を就業規則に定めなければならないとしています。ガイドラインも、労働者に情報通信機器、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合には就業規則に規定しなければならないことを示しています。

通信費や電気料金のように、業務と私用の区別がつきにくい費用について、ガイドラインは、業務に要した実費の金額を合理的・客観的に計算して支給することも考えられるとしています。どの方法をとる場合も、誰が、何を、どこまで負担するかを書面にしておくことが、後のもめごとを防ぎます。

個人情報と端末の安全管理

不動産会社が扱う情報には、入居申込書、本人確認書類の写し、勤務先や収入の情報、連帯保証人の情報など、漏れると影響が大きいものが多く含まれます。個人情報保護法23条は、個人データの漏えい、滅失又は毀損の防止その他の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じることを求め、24条は、従業者に個人データを取り扱わせるに当たって必要かつ適切な監督を行うことを求めています。在宅勤務でもこの義務は変わりません。

  • 紙を持ち帰らない:個人情報を含む紙の書類は事務所から持ち出さないことを原則とし、在宅で必要なものはデータで、権限を絞って見られるようにする
  • 端末の管理:会社が管理する端末を使う、画面のロック、ソフトウェアの更新、端末の紛失時の連絡先を決める
  • 保存場所:端末本体にファイルを保存せず、アクセスの記録が残る場所に保存する
  • 作業場所:画面をのぞき見されやすい場所や、会話を聞かれやすい場所での作業の扱いを決める
  • 漏えい時の手順:個人データの漏えい等で個人の権利利益を害するおそれが大きいものとして規則で定める事態が生じたときは、個人情報保護委員会への報告が必要になる(個人情報保護法26条)。在宅勤務者が気づいたときにすぐ報告する経路を決めておく

総務省は「テレワークセキュリティガイドライン」(第5版、2021年5月)と、「中小企業等担当者向けテレワークセキュリティの手引き(チェックリスト)」(第3版、2022年5月)を公開しています。厚生労働省のガイドラインも、これらを活用した対策の実施や労働者への教育を行うことが望ましいとしています。手引きのチェックリストで、自社の対策の抜けを確かめるとよいと思います。

営業・管理・事務の運用ルールの例

次は、業務の性質から考えた運用の例です。曜日や頻度は会社の体制によって変わるため、決め方の参考として読んでください。

営業(仲介・募集)

内見の案内や来店客の対応は出社日・外出日にまとめ、在宅の日は問い合わせへの返信、募集図面の作成、物件情報の更新を行います。募集図面や物件紹介の表示は、宅建業法32条(誇大広告等の禁止)の観点で確認する人を決めておきます。

賃貸管理

退去立会い、巡回、鍵の受け渡しは現地の日にまとめ、在宅の日はオーナーへの報告書の作成、協力業者との日程調整、入居者からの問い合わせ対応を行います。漏水などの緊急対応は、在宅勤務者が一次対応を受け、現地に出る人を誰にするかを事前に決めておきます。

事務・経理

入金の確認、請求書の処理などは在宅でもできますが、紙の原本の確認や郵便物の処理は出社日に行います。紙で届く書類を減らすほど、在宅でできる範囲が広がります。

導入の進め方

  1. 業務の一覧を作り、在宅でできる業務を選ぶ
  2. 専任の宅建士の勤務の扱い、労働時間、費用、情報の扱いを規程にまとめ、従業者と話し合う
  3. 少ない日数・少ない人数から試し、困ったことを記録する
  4. 記録をもとに規程を見直し、対象を広げる

筆者は宅地建物取引士で、自社で賃貸住宅226戸を所有し、そのうち約100戸を管理会社を通さずに自主管理しています。物件や入居者の情報がどこからでも同じように見られることが、在宅でできる業務を増やす前提になると考えています。

ウルスタくんでは、物件・入居者の管理、入金の記録、オーナーへの送金明細、賃貸借契約書・重要事項説明書など24種の書類と電子サインを扱えます。紙の書類を減らし、在宅でできる業務を広げるときの選択肢の1つとして検討してください。

新人の受け入れは新人賃貸管理スタッフの30日育成プログラム、経験者が続けやすい仕組みはベテランスタッフの離職を防ぐ仕組みで説明しています。

このテーマの全体像は「不動産CRM完全ガイド|6サービス比較と導入手順」にまとめています。

よくある質問

Q1. 専任の宅建士が毎日在宅勤務でもよいのですか。

解釈・運用の考え方では、ITの活用等により適切な業務ができる体制を確保した上で、事務所以外において通常の勤務時間を勤務する場合も「常勤」に含まれるとされています。解釈・運用の考え方の文言には在宅の日数の上限は書かれていませんが、適切な体制かどうかは、IT環境、窓口・受付の体制、勤怠やメール等の記録を踏まえて総合的に判断されます。「常勤」はもともと通常の勤務時間を勤務することを指すため、遠方に住んでいて事務所の業務に応じられない状態が常勤といえるかなど、運用に不安がある場合は免許権者に確かめてください。

Q2. テレワークの規程は就業規則に入れる必要がありますか。

ガイドラインは、テレワークのルールを就業規則に定めて周知することが望ましいとしています。通信費などを労働者に負担させる定めをする場合は、就業規則に規定しなければなりません(労働基準法89条5号)。常時10人以上の労働者を使用する会社では、変更の届出も必要です。

Q3. 在宅勤務中のけがは労災になりますか。

ガイドラインは、労働契約に基づいて事業主の支配下にあることによって生じたテレワークにおける災害は、業務上の災害として労災保険給付の対象となるとしています。私的な行為による場合は対象になりません。作業環境については、ガイドラインのチェックリストで、作業のための空間、机と椅子、明るさ、換気などを確かめられます。

Q4. カフェなど外出先での作業は認めてよいですか。

法律で一律に禁止されているわけではありませんが、不動産会社は個人情報を多く扱うため、画面ののぞき見や会話の内容が周りに聞こえるおそれを考えて、認めるかどうかを規程で決めます。認める場合は、扱ってよい情報の範囲と、通信の方法を決めておきます。

出典(本文で参照している資料)

この記事は2026年10月7日時点の情報です。

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