賃貸保証会社は、審査の速さや保証料だけでなく、国土交通省の登録の有無、保証の範囲と限度額、代位弁済の請求手続き、契約条項が消費者契約法に沿っているかで選びます。家賃債務保証業者の登録は任意ですが、登録業者には書面での説明や業務の平穏を害する言動の禁止などのルールがあります。2025年10月には登録規程の改正と、住宅セーフティネット法の認定制度の施行もありました。
保証会社と個人の連帯保証人の違い
賃貸の保証には、個人が連帯保証人になる形と、家賃債務保証業者(保証会社)が保証する形があります。保証会社を使う場合は、入居者が保証会社に保証を委託する契約(保証委託契約)を結び、保証会社が貸主に対して家賃などの支払いを保証します。
個人の連帯保証人には極度額が必要
民法465条の2は、一定の範囲の不特定の債務を保証する契約で、保証人が法人でないものを「個人根保証契約」とし、極度額(保証する上限額)を定めなければ効力を生じないと定めています。賃貸借契約の連帯保証は、契約期間中に生じる家賃や損害賠償などをまとめて保証するため、個人が保証人になる場合はこの規定の対象になります。また、民法446条2項により、保証契約は書面(または電磁的記録)でしなければ効力を生じません。
国土交通省は、2020年4月の民法改正の施行に向けて、極度額の設定に役立てるための「極度額に関する参考資料」(2018年3月)を公表しています。家賃債務保証業者の損害額や家賃滞納の発生、判決での連帯保証人の負担額を調べた資料で、極度額を決めるときの参考になります。
個人の保証では元本の確定や情報提供のルールもある
民法465条の4では、主たる債務者(入居者)や保証人が死亡したときなどに、個人根保証契約の元本が確定すると定めています。確定後に生じた家賃は保証の対象外になるため、入居者が亡くなった後の家賃を個人の保証人に請求できるとは限りません。また、民法458条の2により、入居者から頼まれて保証人になった人から請求があれば、貸主は滞納の有無や残額などの情報を遅滞なく提供しなければなりません。店舗や事務所など、事業のための賃貸借で個人が保証する場合は、民法465条の10により、入居者は保証を頼む相手に財産や収支の状況などの情報を提供する義務があります。
保証会社(法人)にはこの極度額の規定は当たらない
465条の2の対象は「保証人が法人でないもの」です。保証会社が法人であれば、この極度額の規定は直接は当たりません。その代わり、保証の範囲や限度額は保証会社ごとの契約で決まるため、契約書と説明書面で確認することになります。
国土交通省の家賃債務保証業者登録制度
国土交通省は、家賃債務保証の業務の適正化を図るため、家賃債務保証業者の登録制度を設けています。告示(家賃債務保証業者登録規程)は2017年10月2日に公布され、同年10月25日に施行されました。国土交通省のQ&Aでは、登録するかどうかは各事業者の判断で、登録を受けなくても家賃債務保証業を営むことは可能とされています。登録業者は国土交通省のウェブサイトの一覧で確認できます。
登録の要件
登録規程では、登録の有効期間を5年とし、5年ごとに更新を受けなければ効力を失うと定めています(第3条第2項)。登録を拒否される場合として、純資産額が1,000万円に満たない者(第6条第1項第13号)、暴力団員等が関わる者、一定の業務経験がない者などが挙げられています。
登録業者が守るルール
| 登録規程の条文 | 内容 | 管理会社が見るところ |
|---|---|---|
| 第11条 業務処理の原則 | 賃借人その他の者の私生活や業務の平穏を害する言動をしない、権利利益を侵害しないよう適正に業務を行う | 督促や回収の方法についての社内基準を聞く |
| 第12条 証明書の携帯 | 従業者に、従業者であることを示す証明書を携帯させる | 現地対応の際の身分確認 |
| 第17条 契約締結前の書面交付と説明 | 保証期間、保証の範囲、保証の限度額、保証委託料、中途解除時の返還、求償権の行使、違約金、相談窓口などを書面で説明する | 入居者に渡る説明書面の見本をもらい、内容を把握する |
| 第18条 契約締結時の書面交付 | 契約を結んだら、契約内容を記載した書面を遅滞なく交付する | 交付の方法(紙・電子)と時期 |
| 第20条 帳簿の備付け | 賃借人ごとに契約年月日、保証期間、弁済した金額などを帳簿に記載する | 代位弁済の履歴を照会できるか |
| 第22条 標識の掲示 | 営業所ごとに、公衆の見やすい場所に標識を掲げる | 登録番号の確認 |
| 第23条 求償権の譲渡の規制等 | 暴力団員等や、回収で相手方の平穏を害するおそれが明らかな者に、求償権の譲渡や回収の委託をしてはならない | 回収を外部に委託しているか、委託先の選び方 |
| 第24条 分別管理 | 受け取った家賃などを自己の固有財産と分けて管理する | 集金代行型の場合の資金の流れ |
2025年10月の改正
登録規程は、国土交通省告示第543号(2025年7月18日公布、同年10月1日施行)で改正されました。第11条に「私生活若しくは業務の平穏を害するような言動」をしないことが加わり、第17条・第18条の書面の記載事項に、保証委託契約の相談や苦情に応じる者の氏名と連絡先(または部署名と連絡先)が加わりました。求償権を行使するときの書面(第19条)にも相談窓口の記載が加わり、第23条第2項では、回収の際に相手方の平穏を害するおそれが明らかな者が、求償権の譲渡や回収の委託をしてはならない相手に加わっています。
住宅セーフティネット法の認定家賃債務保証業者
2025年10月施行の改正住宅セーフティネット法では、認定家賃債務保証業者の制度ができました。国土交通省の資料では、認定の基準として、居住サポート住宅に入居する要配慮者の家賃債務保証を正当な理由なく断らないこと、要配慮者との保証契約で緊急連絡先を親族などの個人に限らないこと、保証人の設定を条件としないこと、保証料が不当に高くないことが挙げられています。また、要配慮者の保証については、住宅金融支援機構の保険(保険割合は最大9割)を利用できると説明されています。
高齢の単身者や、頼れる親族がいない人の入居相談が多い管理会社では、取引先の保証会社が認定を受けているか、緊急連絡先の扱いがどうなっているかを確認しておくと、断らずに済む場面が増えます。
契約書で確認すべき条項
無催告解除・明渡しみなし条項についての最高裁判決
最高裁判所第一小法廷は、2022年12月12日の判決(令和3年(受)第987号)で、家賃債務保証業者の契約書にある次の2つの条項について、消費者契約法10条に規定する消費者契約の条項に当たると判断しました。
- 賃料などの不払いが3か月分以上になったときに、連帯保証人である保証会社が無催告で賃貸借契約を解除できるとする条項
- 賃料などの不払いが2か月以上で、連絡が取れないなどの事情があるときに、保証会社が建物の明渡しがあったものとみなすことができるとする条項
消費者契約法10条は、法律の任意規定と比べて消費者の権利を制限し、または義務を重くする条項で、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものを無効とします。取引先の保証会社の契約書に同じような条項が残っていないか、改定の状況を確認しておきます。
違約金・遅延損害金の条項
消費者契約法9条1項2号は、支払期日までに払わなかった場合の損害賠償の予定や違約金について、年14.6%の割合で計算した額を超える部分を無効としています。また同項1号は、解除に伴う損害賠償の予定や違約金のうち、同種の契約の解除で事業者に生じる平均的な損害の額を超える部分を無効としています。保証会社の契約書にある遅延損害金や手数料の定めが、この範囲に収まっているかを確認します。
保証会社を比べるときの確認表
保証会社ごとの審査の基準や料金は公開されていないことも多く、他社との優劣を一般論で決めることはできません。自社の物件と入居者に合うかを、同じ項目で比べます。
| 判断の軸 | 確認すること | 確認する資料 |
|---|---|---|
| 登録の有無 | 国土交通省の登録業者か、登録番号と有効期間 | 国土交通省の登録業者一覧、契約書の登録番号 |
| 保証の範囲 | 家賃、共益費、駐車場代、更新料、原状回復費、残置物の撤去費、訴訟費用などのうちどれが対象か | 保証委託契約書、契約前の説明書面 |
| 保証の限度額と期間 | 家賃の何か月分までか、費目ごとの上限、契約更新時の扱い | 保証委託契約書 |
| 代位弁済の請求手続き | 滞納の報告期限、請求の方法、支払いまでの流れ、報告が遅れたときの扱い | 管理会社との業務提携契約、運用マニュアル |
| 審査の受付 | 申込みの方法、必要書類、結果の連絡方法、緊急連絡先の要否 | 申込書の様式、担当者への確認 |
| 保証委託料 | 初回と更新時の負担、中途解約時の返還の有無 | 契約前の説明書面(第17条の記載事項) |
| 契約条項 | 無催告解除・明渡しみなしの条項がないか、違約金の水準 | 保証委託契約書の最新版 |
| 相談窓口と言語対応 | 入居者からの相談窓口、外国語での対応の有無 | 説明書面、国土交通省の外国語対応業者一覧 |
| 認定の有無 | 住宅セーフティネット法の認定を受けているか | 保証会社への確認 |
管理会社の運用で気をつけること
入居申込の情報を保証会社に渡すときの同意
個人情報保護法27条1項は、例外に当たる場合を除き、あらかじめ本人の同意を得ないで個人データを第三者に提供してはならないと定めています。入居申込書の情報を保証会社に渡して審査を依頼する場合は、申込書に提供先と目的を明記し、同意を得る欄を設けておきます。
滞納の報告期限を管理する
代位弁済を受けるための滞納の報告方法や期限、期限を過ぎた場合の扱いは、保証会社との契約で確認します。保証会社ごとの期限を一覧にし、入金の確認と同じ流れで毎月報告できるようにしておくと、報告漏れを防げます。
複数の保証会社を使い分ける場合
複数社と取引する場合は、物件の種類や入居者の事情ごとに、どの保証会社を案内するかの基準を社内で決めておきます。担当者ごとに案内先がばらばらだと、報告期限や必要書類の管理が煩雑になります。また、入居者には保証会社ごとの保証委託料と保証の範囲を説明し、選んだ理由を記録しておくと、後の問い合わせにも対応しやすくなります。
ウルスタくんでは、物件・入居者の管理、入金の記録、更新が近い契約の一覧を使って、入居者ごとの契約期間や入金の状況を確認できます。毎月の入金確認と滞納の報告を同じ流れで進めるときに役立ちます。賃貸借契約書などの書類は電子サインにも対応しています。
あわせて読みたい記事: 入居審査マニュアル、家賃滞納の回収マニュアル
保証会社を使うときの賃貸借契約書の雛形(国土交通省の標準契約書)の入手先は「賃貸契約書テンプレート無料|国交省の標準契約書Word・PDFの入手先と選び方」にまとめています。
よくある質問
Q1. 国土交通省に登録していない保証会社は使えませんか。
登録は任意で、登録していなくても家賃債務保証業を営むことはできます。ただし、登録業者は登録規程にある書面の交付や業務の平穏を害する言動の禁止などのルールに従うことになるため、取引先を選ぶときの確認材料になります。
Q2. 保証会社を使えば、個人の連帯保証人は不要ですか。
契約によります。保証会社と個人の連帯保証人を併用する契約もあります。個人が保証人になる場合は、民法465条の2により極度額を定める必要があり、書面(または電磁的記録)で契約しなければなりません。
Q3. 保証会社との契約にも極度額の定めが必要ですか。
民法465条の2の極度額の規定は、保証人が法人でない根保証契約が対象です。保証会社が法人であれば直接は当たりませんが、保証の限度額は登録規程第17条の説明書面の記載事項です。
Q4. 入居者が亡くなった後の家賃は、個人の保証人に請求できますか。
民法465条の4により、主たる債務者が死亡すると個人根保証契約の元本は確定します。死亡後に生じた家賃は保証の対象外になると考えられるため、個別の事案は弁護士に確認してください。
Q5. 保証会社の回収方法に問題があると感じたらどうすればよいですか。
まず保証会社の相談窓口に、日時と内容を記録したうえで伝えます。登録業者については、国土交通省が「家賃債務保証業者に対する登録の取消し等の措置基準」を公表しており、違反の程度に応じて口頭指導、厳重注意、業務改善勧告、登録の取消しの措置をとることが定められています。
出典(本文で参照している資料)
- 民法(第446条、第458条の2、第465条の2、第465条の4、第465条の10)
- 消費者契約法(第9条、第10条)
- 個人情報の保護に関する法律(第27条)
- 国土交通省「家賃債務保証業者登録制度」
- 国土交通省「家賃債務保証業者登録規程」
- 国土交通省「家賃債務保証業者登録規程の一部を改正する告示」(告示第543号)
- 国土交通省「登録家賃債務保証事業者制度のQ&A」
- 国土交通省「登録家賃債務保証業者一覧」
- 国土交通省「家賃債務保証業者に対する登録の取消し等の措置基準」
- 国土交通省「改正住宅セーフティネット法(令和7年10月施行)」
- 国土交通省「極度額に関する参考資料」(2018年3月)
- 裁判所「令和3年(受)第987号 消費者契約法12条に基づく差止等請求事件(2022年12月12日 最高裁判所第一小法廷判決)」
この記事は2026年10月7日時点の情報です。


