マンションの管理計画認定制度は、管理組合が作った管理計画を、マンション管理適正化推進計画を作った市区(町村部は都道府県)が認定する制度で、認定は5年ごとの更新制です。根拠はマンション管理適正化法5条の13から5条の17で、長期修繕計画の期間や修繕積立金の決議などが基準になります。2026年4月1日には改正区分所有法が施行され、総会の決議が出席者の多数決で決まるようになりました。この記事では、条文と国土交通省の資料をもとに、認定基準、修繕積立金の値上げに必要な決議、区分所有マンションのオーナーを担当する管理会社が押さえておく点を整理します。
管理計画認定制度の仕組み
築年数を重ねたマンションでは、修繕積立金の不足や総会が開けないといった管理の問題が、建物の劣化に直結します。管理計画認定制度は、管理の状態がよいマンションを自治体が認定し、その情報を市場や金融の評価につなげる仕組みです。国土交通省の制度ページでは、令和4年度から始まった制度として案内されています。
条文の番号は改正で変わっています。2026年10月時点のe-Gov法令検索に掲載されているマンション管理適正化法では、次の条文が管理計画の認定を定めています。
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 5条の13 | 管理組合の管理者等は、管理計画を作り、マンション管理適正化推進計画を作った都道府県等の長(計画作成都道府県知事等)に認定を申請できる。管理計画には修繕その他の管理の方法、資金計画、管理組合の運営の状況などを書く |
| 5条の14 | 認定基準。管理の方法と管理組合の運営が国土交通省令の基準に適合し、資金計画が修繕を確実に行うために適切であること等 |
| 5条の15 | 認定したときの通知(認定を受けた者を「認定管理者等」という) |
| 5条の16 | 認定は5年ごとに更新を受けなければ効力を失う |
| 5条の17 | 認定を受けた管理計画を変更するとき(軽微な変更を除く)は、改めて認定が必要 |
申請できるのは、その自治体がマンション管理適正化推進計画を作っている場合です。対象のマンションがある市区(町村部は都道府県)が計画を作っているかを、最初に確認します。改正後の法律には、マンション管理適正化支援法人の登録(5条の3)と、その業務として管理組合への情報提供や助言(5条の4)の規定も置かれています。
認定基準の中身
国土交通省がまとめた「管理計画認定の基準」(令和6年6月21日版)は、大きく5つの分野に分かれています。
| 分野 | 主な基準 |
|---|---|
| 管理組合の運営 | 管理者等と監事が定められている。集会(総会)が定期的に開催されている |
| 管理規約 | 管理規約が作成されている。緊急時の専有部分への立入り、修繕の履歴情報の保管、財務・管理に関する情報の提供について定めがある |
| 管理組合の経理 | 管理費と修繕積立金が区分して経理されている。修繕積立金会計から他の会計への充当がない。修繕積立金の滞納に適切に対処している |
| 長期修繕計画の作成と見直し | 標準様式に沿った長期修繕計画と、それに基づく修繕積立金の額が総会で決議されている。7年以内に作成または見直しがされている。計画期間が30年以上で、残りの期間に大規模修繕工事が2回以上含まれる。最終年度に借入金の残高がない。修繕積立金の平均額が著しく低くない など |
| その他 | 組合員名簿・居住者名簿が適切に備えられている。都道府県等のマンション管理適正化指針に照らして適切である |
自治体が独自の基準を上乗せしている場合があります。また、国土交通省の制度ページには令和9年4月1日以降に適用される基準も掲載されているため、申請の時期に合わせて該当する版を確認してください。
長期修繕計画と修繕積立金のガイドライン
認定基準の中心は長期修繕計画です。国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」(令和6年6月改定)は、計画期間を「30年以上で、かつ大規模修繕工事が2回含まれる期間以上」とし、一定期間(5年程度)ごとに見直すことを前提としています。
修繕積立金については「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改定)が、積立方式と金額の目安を示しています。
- 均等積立方式:計画期間中の積立額を均等にする方式。将来の増額を組み込まないため、安定した積立てができる
- 段階増額積立方式:当初の負担は小さいが、将来の増額が前提。計画どおりに増額しようとしたときに合意ができず、積立金が不足する場合がある。適切な引上げの目安は、計画の初期額が基準額の0.6倍以上、最終額が基準額の1.1倍以内
同ガイドラインが示す修繕積立金の額の目安(機械式駐車場分を除く、専有床面積1平方メートル当たり月額)は次のとおりです。
| 階数・建築延床面積 | 平均値 | 事例の3分の2が含まれる幅 |
|---|---|---|
| 20階未満・5,000平方メートル未満 | 335円 | 235円〜430円 |
| 20階未満・5,000〜10,000平方メートル | 252円 | 170円〜320円 |
| 20階未満・10,000〜20,000平方メートル | 271円 | 200円〜330円 |
| 20階未満・20,000平方メートル以上 | 255円 | 190円〜325円 |
| 20階以上 | 338円 | 240円〜410円 |
この目安は認定基準の「修繕積立金の平均額が著しく低額でない」かどうかを考えるときの手がかりになります。ただし、建物ごとの必要額は長期修繕計画で決まるもので、目安の範囲に入っていれば十分という意味ではありません。
修繕積立金の値上げに必要な決議
修繕積立金の値上げには「4分の3以上の特別決議が必要」と説明されることがありますが、法律と標準管理規約を見ると、通常は普通決議で決める事項です。
- 共用部分の管理に関する事項は、共用部分の変更の場合を除き、集会の決議で決める。規約で別の定めをすることもできる(区分所有法18条1項・2項)
- 集会の議事は、法律または規約に別段の定めがない限り、出席した区分所有者(議決権を有しない者を除く)とその議決権の各過半数で決める(同法39条1項。2026年4月1日施行の改正後の条文)
- 国土交通省のマンション標準管理規約(単棟型)は、「管理費等及び使用料の額並びに賦課徴収方法」と「長期修繕計画の作成又は変更」を総会の決議事項とし(48条6号・5号)、これらは出席組合員の議決権の過半数で決める普通決議の扱いです(47条2項)
4分の3以上の決議が必要になるのは、規約の設定・変更・廃止(区分所有法31条1項)や、形状または効用の著しい変更を伴う共用部分の変更(同法17条1項)などです。そのため、管理規約の本文に修繕積立金の金額そのものを書いているマンションでは、値上げが規約の変更に当たり、4分の3以上の決議が必要になります。また、標準管理規約はあくまでひな形です。実際の決議要件は、そのマンションの管理規約で確認してください。
値上げの議案では、長期修繕計画の見直しと積立金の額をセットで示すのが基本です。認定基準も「長期修繕計画の内容と、それに基づき算定された修繕積立金の額が総会で決議されていること」を求めています。
2026年4月施行の改正区分所有法のポイント
国土交通省のリーフレット「管理規約の見直しが必要です!」によると、改正区分所有法は2026年4月1日に施行され、主に次の点が変わりました。
- 総会の決議が、区分所有者全員を分母とする多数決から、総会に出席した区分所有者の多数決に変わった
- 所在等が分からない区分所有者を、総会の決議などから除外する手続ができた
- 海外に住む区分所有者に代わって、総会の招集通知の受領や議決権の行使、管理費・修繕積立金の支払いなどを行う「国内管理人」の制度ができた
- 建替えやマンション再生の決議の多数決要件が緩和された
- 前の区分所有者の分も含めて、管理者がまとめて損害賠償請求をできるようになった
あわせてマンション標準管理規約も令和7年10月17日に改正されました。リーフレットは、管理規約を改正しないままでいると、総会の招集や運営が違法となるだけでなく、決議の内容が無効とされるおそれがあると注意を促しています。管理計画認定の基準には「管理規約が作成されている」ことが含まれるため、認定を目指すマンションでは規約の見直しと認定の準備を並行して進めるのが効率的です。
国土交通省の制度ページでは、2026年4月から分譲事業者も管理計画の認定を申請できるようになったことも案内されています。新築の段階から管理計画を作って管理組合に引き継ぐ仕組みです。
認定のメリット
国土交通省の制度ページでは、認定を受けたマンションについて次のような支援策が案内されています。
- 住宅金融支援機構の【フラット35】の金利引下げ、【フラット50】の利用
- マンション共用部分リフォーム融資の金利引下げ
- マンションすまい・る債の利率の上乗せ
- マンション長寿命化促進税制(固定資産税額の減額)
マンション長寿命化促進税制は、築20年以上・総戸数10戸以上で、過去に長寿命化工事を行っているなどの要件を満たすマンションが、外壁塗装・床防水・屋根防水の長寿命化工事を2023年4月1日から2027年3月31日までに完了した場合に、工事完了の翌年度の建物部分の固定資産税額を6分の1から2分の1の範囲で減額するものです。減額の割合は市町村の条例で決まります。管理計画認定マンションの場合は、2021年9月1日以降に修繕積立金の額を認定基準まで引き上げたことも要件です。
金利や減額の具体的な数字は、時期や商品で変わります。管理組合や区分所有者に説明するときは、住宅金融支援機構や市町村の最新の案内を確認してから伝えてください。
申請の流れと管理会社の関わり方
申請の流れ
- マンションのある市区(町村部は都道府県)がマンション管理適正化推進計画を作っているか確認する
- 認定基準と現在の管理規約、長期修繕計画、会計資料を照らし合わせ、足りない点を洗い出す
- 長期修繕計画の見直しや規約の改正が必要なら、総会で決議する
- 申請する。国土交通省の制度ページでは、公益財団法人マンション管理センターの「管理計画認定手続支援サービス」でインターネット上から申請できると案内されています
- 認定後は5年ごとに更新し、管理計画を変更するときは変更の認定を受ける
賃貸管理会社が押さえておくこと
中小の賃貸管理会社の場合、マンション全体の管理(管理組合の運営)は担当せず、区分所有マンションの一室を持つオーナーから賃貸管理を任されている形が多いはずです。その立場でも、次の点はオーナーへの説明に役立ちます。
- 総会の議案書(修繕積立金の改定、長期修繕計画の見直し、規約改正)が届いたら、オーナーに内容と収支への影響を伝える
- 2026年4月以降は出席者の多数決になったため、欠席や委任状を出さないままにすると、オーナーの意見が反映されないまま決まることがある
- 修繕積立金が上がると、オーナーの手取りが変わる。家賃の見直しや売却の判断材料として、管理計画認定の有無や長期修繕計画の内容を確認しておく
- 管理組合から管理事務を受託してマンション管理業を営むには、国土交通省のマンション管理業者登録簿への登録が必要です(マンション管理適正化法44条1項)。賃貸管理の延長で管理組合の業務を引き受けないよう注意する
このテーマの全体像は「不動産の業務効率化ガイド2026|5段階の進め方と法令チェックポイント・関連記事一覧」にまとめています。
よくある質問
Q1. 認定の有効期間はどれくらいですか。
5年です。5年ごとに更新を受けなければ、期間の経過で効力を失います(マンション管理適正化法5条の16)。
Q2. 修繕積立金の値上げには4分の3以上の賛成が必要ですか。
通常は普通決議です。標準管理規約では管理費等の額は総会の普通決議で決めます(47条2項、48条6号)。ただし、規約に金額を書いている場合は規約の変更に当たり、4分の3以上の決議が必要です(区分所有法31条1項)。実際の要件はそのマンションの規約で確認してください。
Q3. どこに申請すればよいですか。
マンション管理適正化推進計画を作った市区(町村部は都道府県)です。推進計画を作っていない自治体では申請できないため、最初に確認が必要です。
Q4. 長期修繕計画の期間は何年必要ですか。
認定基準では30年以上で、残りの期間に大規模修繕工事が2回以上含まれることが求められます。あわせて7年以内に作成または見直しがされていることも基準です。
Q5. 改正区分所有法に合わせて規約を変えないとどうなりますか。
国土交通省のリーフレットは、管理規約を改正しないままでいると、総会の招集や運営が違法となるだけでなく、決議の内容が無効とされるおそれがあると注意を促しています。標準管理規約(令和7年10月17日改正)を参考に見直しを進めてください。
出典(本文で参照している資料)
- マンションの管理の適正化の推進に関する法律(e-Gov法令検索)5条の3、5条の4、5条の13〜5条の17、44条
- 建物の区分所有等に関する法律(e-Gov法令検索)17条、18条、31条、39条
- 国土交通省:マンション管理計画認定制度
- 国土交通省:管理計画認定の基準
- 国土交通省:長期修繕計画標準様式・長期修繕計画作成ガイドライン(令和6年6月改定)
- 国土交通省:マンションの修繕積立金に関するガイドライン(令和6年6月改定)
- 国土交通省:マンション標準管理規約
- 国土交通省:管理規約の見直しが必要です!(区分所有法改正に伴うリーフレット)
- 国土交通省:マンション長寿命化促進税制の要件
この記事は2026年10月7日時点の情報です。