東京23区のマンションは「まったく売れない」状態ではありませんが、中古は成約件数の減少が続き、新築は供給が大きく減っています。不動産経済研究所によると、2026年8月の23区の新築マンションは発売478戸で前年同月比30.7%減、初月契約率は72.4%でした。東日本不動産流通機構(東日本レインズ)の2026年7月度の集計では、東京都区部の中古マンションの成約件数は1,509件で前年同月比17.2%減、7か月連続の減少です。
【要点】新築と中古で何が起きているか
| 市場 | 直近の数字 | 出典 |
|---|---|---|
| 23区の新築(2026年8月) | 発売478戸(前年同月比30.7%減)、初月契約率72.4%(同8.1ポイント上昇)、平均価格1億3,821万円(同0.1%上昇) | 不動産経済研究所 |
| 首都圏の新築(2026年8月) | 発売1,140戸(同12.4%減)、初月契約率61.1%(同4.0ポイント低下)、平均価格9,770万円(同5.4%下落) | 不動産経済研究所 |
| 東京都区部の中古(2026年7月度) | 成約1,509件(同17.2%減、7か月連続減)、成約㎡単価135.77万円(同2.7%上昇、75か月連続上昇) | 東日本レインズ |
| 首都圏の中古(2026年7月度) | 成約3,638件(同8.6%減、4か月連続減)、在庫47,151件(同5.5%増、5か月連続増) | 東日本レインズ |
新築は「出る数が減り、出たものはある程度売れている」、中古は「価格は上がり続けているが、成約の件数が減り、在庫が増えている」という形です。「売れない」という実感は、主に中古の成約件数の減少と在庫の増加に表れています。
23区の新築マンション:2026年8月と上半期の数字
不動産経済研究所が2026年9月17日に公表した「首都圏新築分譲マンション市場動向2026年8月度」の23区の数字を、前年同月と並べます。前年の数字は同研究所の2025年8月度の資料からとりました。
| 23区 | 2025年8月 | 2026年8月 |
|---|---|---|
| 発売戸数 | 690戸 | 478戸 |
| 初月契約率 | 64.3% | 72.4% |
| 平均価格 | 1億3,810万円 | 1億3,821万円 |
| ㎡単価 | 215.6万円 | 212.2万円 |
首都圏全体では、8月の発売は1,140戸で前年同月の1,301戸から12.4%減り、資料は「東京23区と神奈川県が大幅減」としています。8月末の販売在庫は6,610戸で、前月末から13戸増えました。同研究所は9月の発売を1,500戸程度と見込んでいます。
月ごとの平均価格は大きく振れる
1か月前の7月度では、23区の平均価格は2億6,520万円、㎡単価は363.8万円でした(発売1,028戸、初月契約率70.6%)。資料は首都圏の平均価格が最高値を更新した理由として、23区内の大規模物件の発売開始を挙げています。8月の1億3,821万円との差は、その月にどの物件が発売されたかで平均が大きく動くことを示しています。1か月の平均価格だけで相場を判断しないことが大切です。
上半期(2026年1〜6月)の数字
同研究所の2026年上半期の資料では、23区の発売は2,684戸(首都圏の33.6%)、平均価格は1億4,249万円(前年同期比9.1%上昇)、㎡単価は222.6万円(同10.5%上昇)、初月契約率は63.9%(同4.9ポイント低下)でした。首都圏全体の発売は7,989戸(同0.8%減)です。同研究所は上半期の資料で、2026年の首都圏の年間発売を約2.2万戸と見込んでいます。
首都圏の新築の販売在庫の推移
不動産経済研究所の資料には、月末時点の販売在庫(売り出したがまだ契約に至っていない住戸)の数も載っています。首都圏全体の数字ですが、前年と比べると在庫が積み上がっていることが分かります。
| 時点 | 首都圏の販売在庫 | 出典の資料 |
|---|---|---|
| 2025年6月末 | 6,026戸 | 2026年上半期 |
| 2025年7月末 | 5,940戸 | 2026年7月度 |
| 2026年6月末 | 6,389戸 | 2026年上半期 |
| 2026年7月末 | 6,597戸 | 2026年7月度 |
| 2026年8月末 | 6,610戸 | 2026年8月度 |
2026年7月末の在庫は、前年同月末の5,940戸より657戸多い水準です。上半期の首都圏の初月契約率は64.8%で、前年同期の66.6%から1.8ポイント下がっています。一方で、上半期の首都圏の平均価格は1億135万円(前年同期比13.1%上昇)、㎡単価は151.4万円(同12.1%上昇)と、価格は上がり続けています。
東京都区部の中古マンション:成約件数と単価
中古は、東日本レインズの「月例速報 Market Watch サマリーレポート 2026年7月度」(2026年8月10日公表)の数字です。
| 項目 | 2026年7月度 | 前年同月比 |
|---|---|---|
| 東京都区部 成約件数 | 1,509件 | 17.2%減(7か月連続の減少) |
| 東京都区部 成約㎡単価 | 135.77万円 | 2.7%上昇(2020年5月から75か月連続の上昇) |
| 東京都区部 成約価格 | 7,757万円 | 3.4%上昇 |
| 首都圏 成約件数 | 3,638件 | 8.6%減(4か月連続の減少) |
| 首都圏 新規登録件数 | 16,474件 | 5.7%増 |
| 首都圏 在庫件数 | 47,151件 | 5.5%増(5か月連続の増加) |
単価は上がり続けているのに、成約の件数は減っています。売り出される物件と在庫は増えているので、買主から見ると選べる物件が増え、売主から見ると比べられる相手が増えている状態です。売出価格が成約事例から離れている物件ほど、比べられたときに選ばれにくくなります。
数字を読むときの注意
- 新築と中古で集計の元が違う:新築は不動産経済研究所の調査、中古は東日本レインズに登録された成約の報告です。同じ「23区」でも、比べ方には注意が要ります。
- 「首都圏」と「23区」の範囲:どちらの資料も首都圏は東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県の1都3県です。東日本レインズの「東京都区部」は23区を指し、多摩地域は含みません。
- 平均価格は物件の組み合わせで動く:新築は月ごとの発売物件の構成で大きく変わります。比べるときは㎡単価と、複数か月の動きを見ます。
- 契約率は「初月」の数字:発売した月のうちに契約に至った割合で、売れ残りの全体を示すものではありません。在庫の戸数と合わせて見ます。
- 最新の月を確認する:両者とも毎月公表されます。この記事は、2026年10月7日に確認できた資料に基づいています。
売れ残りが長引くときに仲介会社がすること
成約件数が減り在庫が増える局面では、売主との認識合わせが遅れると、販売期間が長引きやすくなります。仲介会社がすることを、宅建業法の定めに沿って整理します。
価格の見直しは根拠を示して話す
宅建業者は、売買すべき価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければなりません(宅建業法34条の2第2項)。値下げの提案も同じです。レインズの成約事例、国土交通省の不動産情報ライブラリの取引価格、競合する売出物件の価格と販売期間を並べ、「なぜこの価格か」を説明します。
報告を「反響の数字」で行う
専任媒介契約では2週間に1回以上、専属専任媒介契約では1週間に1回以上、業務の処理状況を報告しなければなりません(34条の2第9項)。購入の申込みがあったときは、遅滞なく依頼者に報告します(同条第8項)。報告には、問い合わせ件数、内見件数、内見後の感想、競合物件の動きを入れると、価格の見直しの判断材料になります。
媒介契約の更新を見直しの機会にする
専任媒介契約の有効期間は3か月を超えることができず、更新は依頼者の申出によります(34条の2第3項・第4項)。更新の前に、販売の経過と次の3か月の方針(価格、広告、内見の受け方)を書面にして示すと、売主が判断しやすくなります。
レインズ登録の期限と通知を守る
専任媒介契約では、契約日から7日以内(専属専任媒介契約は5日以内、休業日は数えない)にレインズへ登録し(34条の2第5項、同法施行規則15条の10)、登録を証する書面を遅滞なく依頼者に渡します(同条第6項)。成約したときは遅滞なくレインズに通知します(同条第7項)。
仮の数字で計算例を示します
売出価格8,000万円、70㎡の住戸で、近くの同じような物件の成約㎡単価が105万円だったとします。成約単価で計算すると105万円×70㎡=7,350万円です。売出価格との差は650万円で、この差をどう説明するか(階数、向き、管理状態、リフォームの有無など)が、売主との話し合いの中心になります。
売主への報告に入れる項目の例
販売期間が長くなると、売主は「なぜ売れないのか」を知りたくなります。報告書に次の項目を入れておくと、価格や販売方法の見直しを数字で話し合えます。
| 項目 | 中身 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 反響 | ポータルサイトなどからの問い合わせ件数(期間ごと) | 掲載直後と比べて減っていないか |
| 内見 | 内見の件数と、内見した人の感想 | 価格、広さ、管理状態など、断られた理由が偏っていないか |
| 競合物件 | 同じマンションや近くの物件の売出価格と売出開始日 | より安い、より条件のよい物件が新たに出ていないか |
| 成約事例 | レインズの成約事例、不動産情報ライブラリの取引価格 | 売出価格と成約単価の差 |
| 市場の動き | 東日本レインズ、不動産経済研究所の最新の公表値 | 成約件数と在庫の増減 |
| 次の方針 | 価格、広告、内見の受け方の変更案と、その根拠 | 宅建業法34条の2第2項に沿って根拠を示しているか |
このテーマの全体像は「不動産の業務効率化ガイド2026|5段階の進め方と法令チェックポイント・関連記事一覧」にまとめています。
よくある質問
Q1. 23区の新築マンションの平均価格はいくらですか。
不動産経済研究所によると、2026年8月は1億3,821万円、7月は2億6,520万円でした。月ごとの振れが大きいため、上半期の1億4,249万円(前年同期比9.1%上昇)も合わせて見てください。
Q2. 23区の中古マンションは値下がりしていますか。
東日本レインズの2026年7月度では、東京都区部の成約㎡単価は135.77万円で前年同月比2.7%上昇し、75か月連続の上昇です。値下がりではなく、成約件数が減っている状態です。
Q3. 新築の契約率が上がっているのに、なぜ「売れない」と言われるのですか。
8月の23区の初月契約率は72.4%でしたが、発売戸数は前年同月より30.7%減っています。中古では成約件数が7か月続けて前年を下回り、首都圏の在庫は増えています。売り出し中の物件を抱える売主や仲介会社には、この中古の動きが「売れない」実感として表れています。
Q4. 売れ残っている物件の価格は、どのくらい下げればよいですか。
一律の目安はありません。成約事例と競合物件をもとに根拠を示して提案します(宅建業法34条の2第2項)。最終的に価格を決めるのは売主です。
Q5. この数字はいつ更新されますか。
不動産経済研究所の首都圏の月次資料は、7月度が2026年8月20日、8月度が9月17日に公表されました。東日本レインズの月例速報は、7月度が2026年8月10日の公表です。どちらも毎月公表されるので、売主への報告では最新の月の数字に差し替えてください。
出典(本文で参照している資料)
- 不動産経済研究所 首都圏新築分譲マンション市場動向2026年8月度(2026年9月17日)
- 不動産経済研究所 首都圏新築分譲マンション市場動向2026年7月度(2026年8月20日)
- 不動産経済研究所 首都圏新築分譲マンション市場動向2026年(上半期)(2026年7月21日)
- 不動産経済研究所 首都圏新築分譲マンション市場動向2025年8月度(2025年9月18日)
- 東日本不動産流通機構 月例速報 Market Watch サマリーレポート 2026年7月度(2026年8月10日)
- 宅地建物取引業法(第34条の2)
- 宅地建物取引業法施行規則(第15条の10)
- 国土交通省 不動産情報ライブラリ
この記事は2026年10月7日時点の情報です。