オーナー提案 読了 17分

賃貸オーナー対応の型|管理業法20条の定期報告と短い面談で信頼を保つ方法

賃貸住宅管理業法20条は、管理業者に委託者(オーナー)への定期報告を求めています。施行規則40条の頻度と記載事項を確かめたうえで、月次報告の中身と短い定期面談の型を、標準管理受託契約書の条文とあわせて解説します。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
賃貸オーナー対応の型|定期報告(管理業法20条)と面談で信頼を保つ
目次

賃貸オーナーとの信頼は、法律が求める年1回以上の「管理業務報告書」を土台にして、月次の報告と短い定期面談を同じ型で回すと保ちやすくなります。賃貸住宅管理業法第20条と施行規則第40条は、管理受託契約を結んだ日から1年を超えない期間ごとに、管理業務の実施状況や入居者からの苦情の状況を報告書にまとめ、委託者に交付して説明することを求めています。この記事では、その法定の報告を軸に、月次報告の中身と面談の進め方を整理します。

筆者は宅地建物取引士で、ウルスタ株式会社の代表として中小の不動産会社向けの業務クラウドを作っています。自社でも賃貸住宅226戸を所有し、そのうち約100戸は管理会社を通さず自主管理しています。オーナーと管理の両方の立場から、条文と国土交通省の資料に沿って書きます。

管理業法20条と施行規則40条が求める定期報告

賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(以下「管理業法」)第20条は、「賃貸住宅管理業者は、管理業務の実施状況その他の国土交通省令で定める事項について、国土交通省令で定めるところにより、定期的に、委託者に報告しなければならない」と定めています。報告の時期と中身は、施行規則第40条で決まっています。

義務を負うのは登録した賃貸住宅管理業者

管理業法第2条第3項は、「賃貸住宅管理業者」を「次条第一項の登録を受けて賃貸住宅管理業を営む者」と定義しています。第3条第1項で賃貸住宅管理業を営む者は国土交通大臣の登録を受けることとされ、施行規則第3条で、登録が必要になる規模は管理する賃貸住宅の戸数が200戸とされています。

つまり第20条の報告義務は、登録した管理業者にかかります。200戸未満で登録していない会社には条文上の義務はありませんが、オーナーが知りたい中身は規模で変わりません。管理戸数が増えて登録する時期が来ることを考えると、早いうちから法定の型で報告書を作っておくほうが切り替えの手間が少なくて済みます。

報告の頻度は「1年を超えない期間ごと」と「契約満了後」

施行規則第40条第1項は、報告の時期を「管理受託契約を締結した日から一年を超えない期間ごとに、及び管理受託契約の期間の満了後遅滞なく」と定めています。最低でも年1回と、契約が終わったときです。

国土交通省の「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解釈・運用の考え方」(以下「解釈・運用の考え方」)は、報告する事項によってはそれ以上の頻度で報告することが望ましいとしています。一方で、すでに定期的に報告している期間内に契約を更新する場合は、更新時の満了に伴う報告は不要として差し支えないとしています。

報告書に書く事項

施行規則第40条第1項は、報告書(管理業務報告書)に次の事項を書くよう定めています。

  1. 報告の対象となる期間
  2. 管理業務の実施状況
  3. 管理業務の対象となる賃貸住宅の入居者からの苦情の発生状況及び対応状況

解釈・運用の考え方は、2つ目の「管理業務の実施状況」について、法第2条第2項の管理業務(維持保全と金銭の管理)に限らず、管理受託契約で委託を受けた業務の全てを報告することが望ましいとしています。3つ目の苦情については、苦情の発生した日時、申し出た人の属性、苦情の内容、対応状況などを把握できる範囲で記録し、報告する必要があるとしています。単純な問い合わせまで記録する義務はありませんが、苦情を伴う問い合わせは記録し、対処の状況も含めて報告するよう求めています。

さらに、ここに挙げた事項以外についても、賃貸人の求めに応じて報告することが望ましいとされています。収支や滞納の状況は条文の列挙にはありませんが、オーナーが最も気にする部分なので、報告書に入れておくのが自然です。

交付して説明する。電子で送るなら承諾を取る

施行規則第40条第1項は、報告書を作成し「委託者に交付して説明しなければならない」としています。送るだけでは足りず、説明までが義務です。

解釈・運用の考え方は、説明の方法を特に限定していません。そのうえで、賃貸人と説明方法を協議し、双方向でやりとりできる環境を整え、賃貸人が報告書の内容を理解したことを確認するよう求めています。報告書をメールなどの電磁的方法で提供する場合は、賃貸人の承諾を得ることが前提で、提供した管理業者の側でも報告書のデータを適切に保存するよう努めることとされています。

論点決まっていること根拠
対象登録した賃貸住宅管理業者(登録が必要になる規模は200戸)法2条3項・3条1項、規則3条
頻度契約締結日から1年を超えない期間ごと、契約満了後は遅滞なく規則40条1項
記載事項対象期間、管理業務の実施状況、入居者からの苦情の発生状況と対応状況規則40条1項1号〜3号
実施状況の範囲委託を受けた業務の全てを報告するのが望ましい解釈・運用の考え方 第20条関係
苦情の記録日時、申出者の属性、内容、対応状況を把握できる範囲で記録して報告解釈・運用の考え方 第20条関係
方法交付して説明。電磁的方法は賃貸人の承諾が前提。説明は双方向で理解を確認規則40条、解釈・運用の考え方 第20条関係

契約書で報告の内容と頻度を先に決める

法定の最低ラインは年1回ですが、実際には毎月の家賃送金があり、修繕や募集の判断も月単位で発生します。どこまでを、どの頻度で報告するかは、管理受託契約で先に決めておくと後でもめません。

国土交通省の「賃貸住宅標準管理受託契約書」は、第15条第1項で、管理業者は頭書の記載に従い、オーナーと合意して定めた期日に、合意した頻度で定期に管理業務の報告をすると定めています。頭書には「甲への定期報告の内容及び頻度」を書く欄があります。契約書のコメントは、報告の内容と頻度について「甲と乙の信頼関係を維持できるよう、業務内容に応じて、適切に実施される必要がある」としています。

同じ第15条には、定期報告のほかにオーナーが必要と認めるときは報告を求められること(第2項)、管理業務の実施状況に関する書類の提示を求められること(第3項)、オーナーと管理業者が相互に意見を述べたり協議を求めたりできること(第4項)も書かれています。定期面談は、この第4項の協議の場として位置づけると説明しやすくなります。

家賃の送金については、第7条が、管理業者は入居者から徴収した当月分の家賃等を毎月、頭書に記載する期日までに振り込んで引き渡すこと、あらかじめオーナーの承諾を得た管理報酬は差し引けることを定めています。月次の送金明細は、この第7条の引渡しに合わせて毎月作るものなので、月次報告の中心に置くと無理がありません。

頭書の「定期報告の内容及び頻度」欄には、たとえば次のように書き分けておくと、法定の報告と任意の報告の区別がはっきりします。

  • 毎月: 送金明細(家賃の入金、管理報酬、修繕費などの控除、送金額)、滞納と空室の状況
  • 随時: 緊急の修繕、事故、入居者との紛争など、判断や承諾が必要な事項
  • 年1回以上と契約満了時: 施行規則第40条の管理業務報告書の交付と説明
  • 定期面談: 頻度と方法(対面、電話、オンライン)

月次のオーナー報告に入れる中身

月次報告を毎回同じ並びで作っておくと、年次の管理業務報告書はそれを束ねるだけで作れます。オーナーにとっても、前月と見比べやすくなります。並べる順番は、お金、部屋、建物、問題の順にすると読みやすくなります。

収支(送金明細)

部屋ごとの請求額と入金額、管理報酬、修繕費などの控除、送金額を載せます。控除した費用には、見積書や請求書などの根拠を添えます。管理報酬を家賃から差し引けるのは、標準管理受託契約書第7条の考え方では、あらかじめオーナーの承諾を得たものです。契約にない費用を差し引くことがないよう、控除の項目は契約の文言と合わせておきます。

入居状況

入居中、空室、退去予定の部屋を一覧にし、空室には募集条件、募集を始めた日、問い合わせや申込の状況を書きます。募集条件を見直す提案がある場合は、提案の理由(周辺の募集事例や反響の状況など)を添えて、判断事項として分けて書きます。

修繕と点検

実施した修繕と点検の内容、金額、オーナーの承諾を得た日を書きます。標準管理受託契約書第11条は、災害や事故などで緊急に行う必要があり、承認を受ける時間的な余裕がない業務は承認なしで実施できるとしつつ、速やかに書面で業務の内容と費用の額を通知するよう定めています。緊急対応をした月は、その通知と月次報告の記載をそろえておきます。

滞納

滞納している部屋、滞納の月数と金額、督促の経過(いつ、誰が、どの方法で連絡したか)、今後の方針を書きます。標準管理受託契約書第14条は、未収金の督促を管理業者がオーナーを代理して行う業務に挙げています。どこまで管理業者が動き、どこからオーナーの判断(法的手続きなど)になるのかを、報告の中で毎回はっきりさせておくと、方針のずれが起きにくくなります。

苦情と対応

解釈・運用の考え方に沿って、苦情の日時、申し出た人の属性(入居者、近隣など)、内容、対応状況を記録しておき、月次では件数と主な内容、年次ではその一覧を載せます。騒音や設備の不具合のように繰り返すものは、建物側の対策(修繕や掲示)と結びつけて書くと、オーナーが判断しやすくなります。

区分載せる内容添えるもの
収支部屋ごとの請求額・入金額、管理報酬、控除した費用、送金額送金明細、費用の請求書
入居状況入居中・空室・退去予定、募集条件、申込の状況募集図面、条件変更の提案
修繕・点検実施内容、金額、承諾を得た日、緊急対応の有無見積書、写真、緊急時の通知書面
滞納部屋ごとの月数・金額、督促の経過、今後の方針督促の記録
苦情日時、申出者の属性、内容、対応状況対応記録
判断事項オーナーの承諾や判断が必要なもの、期限比較資料

ウルスタくんでは、物件・入居者の管理と入金の記録から、オーナーへの送金明細(管理料・修繕費を差し引いた明細)を作れます。月次報告の「収支」と「滞納」の欄は、この記録をもとにすると転記の手間と食い違いを減らせます。

年1回の管理業務報告書のまとめ方

法定の管理業務報告書は、施行規則第40条第1項の3つの事項を落とさないことが第一です。月次報告をそろえていれば、次の構成でまとめられます。

  1. 報告の対象となる期間(契約締結日から1年を超えない範囲)
  2. 管理業務の実施状況(委託を受けた業務ごとに、実施した内容と回数)
  3. 入居者からの苦情の発生状況と対応状況(一覧)
  4. 収支の年間集計、入居状況の推移(賃貸人の求めに応じた任意の報告)
  5. 次の期間に予定している修繕や判断事項

注意したいのは対象期間です。施行規則は契約締結日を起点に「一年を超えない期間ごと」としているので、契約の始まりがオーナーごとに違えば、報告の期限も違います。管理受託契約の一覧に「次の管理業務報告書の期限」を持たせておくと、漏れを防げます。期間を短く区切ることは「一年を超えない」範囲なので、事務の都合で報告の時期をそろえたい場合は、各契約で1年を超えない形で調整します。

交付と説明をした日、方法、説明した担当者、オーナーからの質問と回答、内容を理解したことを確認した旨は記録に残します。電磁的方法で送る場合は、承諾を得た日と方法も一緒に残しておきます。

短い定期面談の進め方

報告書は送るだけでは伝わりにくく、施行規則も「説明」までを求めています。毎回の面談を同じ型にしておくと、短い時間でも中身のある話ができます。

頻度は契約で決め、物件の状況で足す

面談の頻度は、頭書の定期報告の欄に書いておきます。空室が多い、大規模な修繕を控えている、滞納の対応が続いている、といった時期は、標準管理受託契約書第15条第4項の協議として臨時に設けます。オーナーの側から報告を求められたときに応じることも、同条第2項に書かれています。

議題は「変化」「判断」「宿題」の順に

  1. 前回からの変化: 入居、退去、入金、滞納、苦情の動きを、月次報告の数字で確認します。
  2. 判断が必要な事項: 修繕の実施、募集条件の変更、更新条件、滞納への対応方針など。選択肢と、それぞれの費用や見通しを示します。
  3. 次回までの宿題: 誰が、何を、いつまでに行うかを決めます。

時間は30分程度に収め、資料は前日までに送っておくと、当日は判断事項に時間を使えます。説明の方法は限定されていないので、電話やオンラインでもかまいません。ただし解釈・運用の考え方が求めるとおり、双方向でやりとりでき、オーナーが内容を理解したことを確かめられる形にします。

記録を残し、次回の冒頭で確認する

面談のたびに、決まったこと、保留になったこと、宿題を短いメモにしてオーナーと共有します。次回の冒頭で前回の宿題の結果から入ると、話が積み上がっていきます。このメモは、年次の管理業務報告書の「管理業務の実施状況」を書くときの材料にもなります。

信頼を損ねやすい報告の仕方

報告の中身が正しくても、出し方で信頼を落とすことがあります。次の点は避けたいところです。

  • 悪い知らせを月次報告まで待つ: 事故、緊急修繕、長期の滞納の見込みなどは、標準管理受託契約書第11条の考え方に沿って、その都度すぐに知らせます。
  • 金額の根拠がない: 控除した費用には見積書や請求書を添え、契約で承諾を得た項目かどうかを示します。
  • 判断事項が埋もれる: 報告の最後にまとめるか、別の欄に分けて、期限を書きます。
  • 報告の形が毎回変わる: 並びと書式を固定すると、オーナーは前月との違いだけを見れば済みます。

保有戸数の多いオーナーには面談を増やすなど、対応に差をつける会社もあります。その場合も、施行規則第40条の法定事項はすべての委託者に同じように報告する必要があります。上乗せする報告や面談は、頭書の定期報告の欄に契約ごとに書いておくと、説明がつきやすくなります。

このテーマの全体像は「不動産の業務効率化ガイド2026|5段階の進め方と法令チェックポイント・関連記事一覧」にまとめています。

よくある質問

Q1. 管理業務報告書は毎月出す必要がありますか。

施行規則第40条第1項の頻度は、契約締結日から1年を超えない期間ごとと、契約満了後遅滞なくです。毎月の提出までは求められていません。ただし解釈・運用の考え方は、報告事項によってはそれ以上の頻度が望ましいとしています。送金明細と滞納・空室の状況は月次で出し、法定の報告書は年1回以上にまとめる形が実務に合います。

Q2. 報告書をPDFにしてメールで送るだけでよいですか。

電磁的方法で提供するには、賃貸人の承諾が前提です。また報告書は「交付して説明」する必要があり、解釈・運用の考え方は、双方向でやりとりできる環境で説明し、内容を理解したことを確認するよう求めています。メールで送ったうえで、電話やオンラインで説明する形が考えられます。

Q3. 管理戸数が200戸未満でも報告書は必要ですか。

第20条の義務を負うのは登録を受けた賃貸住宅管理業者です。施行規則第3条で登録が必要になる規模は200戸とされているため、200戸未満で登録していない会社には条文上の義務はありません。200戸未満でも登録している会社には義務がかかります。どちらの場合も、オーナーとの契約で報告を約束していれば、契約上の義務になります。

Q4. 入居者からの問い合わせは全部報告に載せますか。

解釈・運用の考え方は、単純な問い合わせまで記録する義務はないとしています。一方で、苦情を伴う問い合わせは記録し、対処の状況も含めて報告する必要があるとしています。苦情かどうか迷うものは、記録に残しておくほうが安全です。

Q5. 契約を更新するときにも報告が必要ですか。

施行規則は契約期間の満了後遅滞なく報告するよう定めています。解釈・運用の考え方は、すでに定期的に報告している期間内での更新であれば、更新時の満了に伴う報告は不要として差し支えないとしています。定期報告をきちんと回していることが前提です。

出典(本文で参照している資料)

この記事は2026年10月7日時点の情報です。

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