電子契約・IT重説 読了 15分

宅建業法改正の重要ポイント【2026年版】|IT重説・電子書面・建物状況調査・ハザードマップ・盛土規制法・区分所有建物の重要事項説明

宅建業法の改正で現場の手順が変わったのは、IT重説、書面の電子化、建物状況調査、水害ハザードマップ、盛土規制法、空家等の報酬特例、区分所有建物の重要事項説明です。施行日と条文、重要事項説明書・契約書の確認点、手順書の見直し方を説明します。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
宅建業法改正の重要ポイント【2026年版】|IT重説・電子書面・重説の追加項目
目次

宅建業法の改正で現場の手順が変わったのは、主にIT重説、書面の電子化、建物状況調査、水害ハザードマップ、盛土規制法、空家等の報酬特例、区分所有建物の重要事項説明の7つです。どれも「いつから」「どの条文で」「どの書類に何を書くか」を押さえれば、社内の手順書に落とし込めます。この記事では、改正の時系列と条文、重要事項説明書・契約書の確認ポイント、社内での見直し方を順に説明します。

改正の時系列一覧

国土交通省は「最近の宅地建物取引業法令の改正について」というページで、公布日と施行日を一覧にしています。現場の書類や説明の手順に影響が大きいものを、時系列で並べると次のとおりです。

時期内容主な根拠
2017年10月1日賃貸取引のIT重説の本格運用開始国土交通省の運用(実施マニュアル)
2018年4月1日建物状況調査に関する説明・記載の義務化宅建業法34条の2第1項4号、35条1項6号の2、37条1項2号の2
2020年8月28日水害ハザードマップにおける物件の所在地の説明施行規則16条の4の3第3号の2
2021年3月30日売買取引のIT重説の本格運用開始国土交通省の運用(実施マニュアル)
2022年5月18日重要事項説明書・契約書面・媒介契約書面の電子化、宅建士の押印廃止宅建業法34条の2第11項、35条5項・8項、37条3項・4項
2023年5月26日盛土規制法の施行に伴う重要事項説明の対象法令の見直し施行令3条1項、施行規則16条の4の3第1号
2024年7月1日低廉な空家等・長期空家等の媒介報酬の特例報酬告示、解釈・運用の考え方
2026年4月1日区分所有建物の管理者等がマンション管理業者である場合の説明施行規則16条の2第9号

このほかにも、関係法令の改正に伴う重要事項説明の対象法令の追加などが毎年のように行われています。年に1回は国土交通省の一覧を見て、自社の重要事項説明書のひな形が最新かを確かめる習慣をつけてください。

IT重説(オンラインによる重要事項説明)

宅建業法35条は、宅地建物取引士が契約成立前に重要事項を説明することを求めています。テレビ会議などのITを使った説明(IT重説)は、国土交通省が社会実験を経て、賃貸取引では2017年10月1日から、売買取引では2021年3月30日から本格運用を始めました。

運用の詳しい条件は、国土交通省の「重要事項説明書等の電磁的方法による提供及びITを活用した重要事項説明 実施マニュアル」にまとめられています。実務で確認しておきたいのは、次の点です。

  • 説明の前に、重要事項説明書を相手方に届けておくこと(紙の送付または電磁的方法による提供)。
  • 映像と音声が双方向でやりとりでき、相手方が書類と画面を見ながら説明を聞ける環境であること。
  • 説明の開始前に、相手方の映像・音声の状況を確かめること。途中で映像や音声が途切れたら、説明を中断すること。
  • 宅建士証を画面上で提示し、相手方が確認できるようにすること(35条4項の提示義務は、IT重説でも同じです)。

IT重説は「楽になる手段」ではなく、説明の相手が書類のどこを見ているかが分かりにくくなる手段でもあります。ページ番号を読み上げてから説明に入る、区切りごとに質問がないかを聞く、といった進め方を社内で決めておくと、説明の質がそろいます。

書面の電子化と押印の廃止

デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律(令和3年法律第37号)により、2022年5月18日から、次の書面を相手方の承諾を得て電磁的方法で提供できるようになりました。

書面電磁的方法の根拠宅建士の関与
媒介契約書面34条の2第11項(依頼者の承諾)-
重要事項説明書(35条書面)35条8項(相手方等の承諾)宅建士の記名(35条5項)
契約書面(37条書面)37条4項(各号に定める者の承諾)宅建士の記名(37条3項)

あわせて、35条書面・37条書面への宅建士の押印は不要になり、記名だけを求める形になりました。電磁的方法で提供するには相手方の承諾が要るので、承諾をどう取ったかを記録に残すことが大切です。承諾の取り方や、提供するファイルの改変を防ぐ措置などの具体的な考え方は、前記の実施マニュアルで確認できます。

なお、ウルスタくんでは、賃貸借契約書・重要事項説明書など24種類の書類の作成と電子サインを扱えます。電子化の手順を社内で決めるときは、どの書類を、誰の承諾で、どの方法で提供したかを、物件・契約ごとに後から追える形にしておくと、監督官庁の検査や問い合わせのときに慌てずに済みます。

建物状況調査(インスペクション)

宅地建物取引業法の一部を改正する法律(平成28年法律第56号)のうち、建物状況調査に関する部分は2018年4月1日に施行されました。既存の建物の取引では、3つの場面で対応が必要です。

場面条文求められること
媒介契約の締結時34条の2第1項4号建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項を媒介契約書面に記載する
重要事項説明35条1項6号の2建物状況調査(一定の期間を経過していないもの)を実施しているかどうか、実施している場合はその結果の概要などを説明する
売買等の契約締結時37条1項2号の2建物の構造耐力上主要な部分等の状況について、当事者の双方が確認した事項を記載する

重要事項説明の対象になる建物状況調査の期間は、施行規則16条の2の2で、1年(鉄筋コンクリート造または鉄骨鉄筋コンクリート造の共同住宅等は2年)と定められています。共同住宅等の2年は2024年の施行規則改正で設けられたもので、以前の社内資料が「1年」だけになっていないかを確かめてください。

水害ハザードマップの説明

2020年8月28日に施行された施行規則の改正で、重要事項説明の項目に、水防法施行規則11条1号の規定により市町村長が提供する図面(いわゆる水害ハザードマップ)に物件の位置が表示されているときは、その図面における物件の所在地が加わりました(施行規則16条の4の3第3号の2)。この項目は売買・交換だけでなく、宅地・建物の貸借の重要事項説明でも対象です。

国土交通省が改正時に示した留意事項は次のとおりです。手順書にそのまま入れておくと漏れが減ります。

  • 水防法に基づいて作られた洪水・雨水出水(内水)・高潮のハザードマップを示し、物件のおおむねの位置を示す。
  • 市町村が配布する印刷物か、市町村のホームページに載っているものを印刷した、入手できる最新のものを使う。取得した日を記録しておく。
  • 避難所の位置もあわせて示すことが望ましいとされている。
  • 浸水想定区域に入っていないことをもって、水害のリスクがないと相手方が誤認しないよう配慮する。

同じ16条の4の3には、造成宅地防災区域(1号)、土砂災害警戒区域(2号)、津波災害警戒区域(3号)の説明も並んでいます。災害関係の項目はまとめて確認する順番を決めておくと効率的です。

盛土規制法の施行と重要事項説明

宅地造成等規制法を改正した「宅地造成及び特定盛土等規制法」(盛土規制法)は、2023年5月26日に施行されました。これに合わせて、宅建業法の施行令・施行規則も改正されています。

  • 重要事項説明の対象になる法令上の制限を定める施行令3条1項に、盛土規制法の許可・届出などに関する規定(12条1項、16条1項、27条1項、28条1項、30条1項、35条1項)が掲げられています。
  • 施行規則16条の4の3第1号の「造成宅地防災区域」は、盛土規制法45条1項により指定された区域として説明します。

盛土規制法の規制区域(宅地造成等工事規制区域、特定盛土等規制区域)は、都道府県などが指定します。物件の所在地がどの区域に入っているかは、自治体の公表情報で確かめ、取得した日を記録してください。古いひな形で「宅地造成等規制法」のままになっていないかも確認しておくと安全です。

低廉な空家等の媒介報酬の特例

国土交通省は「不動産業による空き家対策推進プログラム」の一環として、媒介報酬の規制を見直しました。2024年7月1日からの主な内容は次のとおりです。

  • 物件価格が800万円以下の宅地建物(低廉な空家等)の売買・交換の媒介では、通常の計算による上限を超えて、30万円の1.1倍(33万円)を上限に報酬を受けられる。
  • 長期間使われていない建物(長期空家等)の貸借の媒介では、貸主と借主から受ける報酬の合計の上限を、1か月分の借賃の2.2倍以内とする特例がある(借主から受ける額は1.1倍以内、居住用で承諾がなければ0.55倍以内)。
  • 特例の上限の範囲内で、媒介契約の締結に際しあらかじめ、報酬額について依頼者に説明し、合意する必要があることが「解釈・運用の考え方」に明記された。

特例は「上限」を定めたもので、いつもその額を受け取れるという意味ではありません。媒介契約の段階で、報酬額と、その根拠になる業務の内容を書面で示しておくことが前提です。

2026年4月の区分所有建物の重要事項説明

2026年4月1日に施行された施行規則の改正(令和7年内閣府令・国土交通省令第2号)で、区分所有建物の売買などの重要事項説明の項目を定める施行規則16条の2に、新しく第9号が加わりました。マンションの管理者等が、管理組合から委託を受けて管理事務を行うマンション管理業者である場合には、その旨を説明します。

これまでの第8号(管理の委託先の氏名・住所)とは別の項目です。区分所有建物の重要事項説明書のひな形を2026年4月以降のものに更新しているか、管理会社への重要事項調査の依頼項目に入っているかを確認してください。信託受益権の販売などの説明を定める施行規則16条の4の6などにも、同じ趣旨の項目が加わっています。

法令ではないが実務に効くガイドライン

条文の改正ではありませんが、説明の範囲に影響するものとして、国土交通省が2021年10月8日に策定した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」があります。賃貸借の取引では、自然死や日常生活の中での不慮の死は原則として告げなくてよいこと、それ以外の死はおおむね3年を経過した後は原則として告げなくてよいこととされています。売買の取引では、期間についての定めはありません。ガイドラインは判断の目安であり、事案によっては告げるべき場合があるとされている点も、社内で共有しておきたいところです。

また、国土交通省は宅建業法の条文ごとの考え方を「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」として公表し、改正に合わせて版を更新しています。2026年4月1日施行版も公開されているので、手順書の根拠として参照する版を明記しておくと、後から見直しやすくなります。

社内の手順書を見直す順番

改正への対応は、書類のひな形、説明の手順、記録の残し方の3つに分けると整理しやすくなります。

  1. ひな形:重要事項説明書(売買・貸借、区分所有建物)、37条書面、媒介契約書面が、最新の施行規則の項目と対象法令になっているかを確認します。版と改定日をひな形の欄外に入れておきます。
  2. 説明の手順:災害関係(ハザードマップ、土砂災害、津波、造成宅地防災区域)、建物状況調査、IT重説の進め方を、チェックリストにします。
  3. 記録:電磁的方法の承諾、取得した図面と取得日、建物状況調査の結果の概要、報酬額の説明と合意を、契約ごとに残します。
  4. 周知:宅建業法31条の2は、宅建業者に従業者への必要な教育を行う努力義務を課しています。改正のたびに短い社内勉強会を開き、変更点と新しいひな形を共有します。

このテーマの全体像は「不動産のIT重説 完全ガイド2026|国交省マニュアルの遵守事項と売買・賃貸の手順」にまとめています。

よくある質問

Q1. IT重説をするのに、事前の届出は必要ですか?

宅建業法には、IT重説を行うための届出の規定は置かれていません。ただし、相手方のIT環境の確認や書類の事前送付など、国土交通省の実施マニュアルが示す条件を満たして行う必要があります。最新のマニュアルで確かめてください。

Q2. 電子で提供した重要事項説明書にも宅建士の記名は必要ですか?

必要です。35条5項は宅建士の記名を求めており、電磁的方法で提供する場合も、記名に代わる措置を講じる方法として国土交通省令で定めるものによる必要があります。具体的な方法は実施マニュアルで確認できます。

Q3. 建物状況調査は実施しなければならないのですか?

宅建業法が求めているのは、あっせんに関する事項の記載、実施の有無と結果の概要の説明、当事者双方が確認した事項の記載です。調査そのものの実施を義務づけているわけではありません。売主・買主の意向を聞き、必要に応じて調査を行う者をあっせんします。

Q4. 改正の情報はどこで確認すればよいですか?

国土交通省の「最近の宅地建物取引業法令の改正について」のページに、公布日・施行日と改正の資料がまとめられています。条文はe-Gov法令検索で最新の内容を確認できます。

出典(本文で参照している資料)

この記事は2026年10月7日時点の情報です。

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