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不動産投資の融資相談|銀行選び・最初の相談先・必要書類と否決後の見直し方

不動産投資の融資は、物件・借入人・資金使途が商品の対象に入るかを先に確かめるのが近道です。最初の相談先の選び方、必要書類、相談文の例、否決されたあとの見直し方を、金融庁の調査結果や公的な情報に沿って整理しました。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
不動産投資の融資相談|銀行選び・最初の相談先・必要書類と否決後の見直し方
目次

不動産投資の融資相談では、物件・借入人・資金使途がその金融機関の商品の対象に入るかを先に確かめ、最初の相談先は「営業地域」「借入人の形(個人か法人か)」「既存の取引」で選びます。否決されたら、すぐ次へ回すのではなく、理由の見当をつけて資料や計画を直してから相談先を選び直します。年収や職業だけで可否が決まるわけではありません。

金融機関は投資用不動産の融資で何を見るか

金融庁は2019年3月に「投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果」を公表しました。その主なポイントでは、顧客の財産や収入を示す資料を紹介業者経由で受け取り、原本の確認を徹底していない金融機関が多いこと、融資の実行後に賃料や空室の実績を確認していない例があること、将来の収支見込みを更新していない例があること、紹介業者への依存などが指摘されています。

そのうえで金融庁は、金融機関に対して、物件の売買価格の妥当性を検証すること、事業性の融資と判断される場合は物件が生むキャッシュフローを基にした融資期間全体の収支シミュレーションを行うこと、顧客対応を紹介業者や保証会社に任せきりにせず自ら顧客との関係を築くことなどを求めています。

借りる側から見ると、次のことが言えます。

  • 収入や預金の資料は、原本で確認されることを前提に用意する
  • 家賃は「満室ならいくら」だけでなく、空室や滞納を見込んだ数字で説明する
  • 物件の価格が妥当であることを、周辺の事例や賃料の根拠で示す
  • 仲介会社に任せきりにせず、借入人本人が計画を説明できるようにする

当然ですが、収入や預金の資料を書き換えて提出することは許されません。仲介や紹介をする不動産会社も、そうした行為に関わらないよう、資料は借入人本人から金融機関へ直接出してもらうなどの運用を決めておくと安全です。

最初の相談先の選び方

「まず大きな銀行から」「まず地元の金融機関から」といった決まった順番はありません。最初の相談先で時間を使いすぎないために、次の3点で候補を絞ります。

営業地域と物件の所在地

金融機関には営業する地域があります。たとえば信用金庫は、会員になれる資格が地区内に住所や事業所がある人などと法律で定められており(信用金庫法10条)、貸付けは会員向けが基本で、会員以外への貸付けは政令で定める範囲に限られます(同法53条)。借入人の住所と物件の所在地が、その金融機関の地域に入っているかを最初に確認します。

借入人の形と資金使途

個人で借りるのか、資産管理の法人で借りるのか、事業として借りるのかで、使える商品が変わります。購入・建築・修繕・借換えなど、資金の使いみちも商品ごとに対象が決まっています。金融機関のウェブサイトに商品概要が公開されていれば、対象となる借入人、資金使途、物件の条件を先に読んでおきます。

既存の取引と、説明できる実績

給与の振込口座や事業の口座がある金融機関では、入出金の履歴が判断材料になり得ます。すでに賃貸経営をしている場合は、確定申告書や入金の実績で、これまでの経営を説明できます。どの金融機関で取引があり、何を説明できるかを書き出してから相談先を選ぶと、話が早く進みます。

金融機関の種類ごとの確認点

金利や審査の基準は金融機関ごとに異なり、公表されていないことも多いため、種類による優劣を一般論で決めることはできません。ここでは、相談前に確かめておく点を整理します。

相談先相談前に確認すること
都市銀行・地方銀行投資用不動産向けの商品があるか、対象の地域、個人と法人のどちらが対象か、既存の取引の有無
信用金庫・信用組合借入人や物件が地区内か、会員になる手続き、出資の要否
日本政策金融公庫事業としての資金か、利用できる融資制度、必要書類(国民生活事業の手続きは公式ページに掲載)
ノンバンク金利や手数料、返済期間、繰上返済の条件。条件の比較は他と同じ項目で行う

日本政策金融公庫の手続き

日本政策金融公庫の国民生活事業は小規模事業者向けの小口融資を行っていて、公式ページでは融資の限度額を7,200万円と案内しています。手続きは「相談」「申込み」「融資」の流れで、面談と審査を経て契約・送金となります。申込みに必要な書類として、個人事業主で初めて利用する場合は、創業計画書または企業概要書、直近2期分の確定申告書、設備資金の場合は見積書、送金先の預金通帳、本人確認書類などが挙げられています。同公庫のよくある質問では、融資が決まるまでの平均所要日数は2〜3週間程度(土日・祝日を含む)とされ、店舗付き住宅を購入する場合の住宅部分は融資の対象にならないと説明されています。

住宅ローンを投資用に使わない

住宅ローンは、本人や家族が住む家のための商品です。住宅金融支援機構は、【フラット35】を投資用物件の取得に使うことはできないとし、自らは住むつもりがなく投資目的で住宅を取得することなどを不適正な利用として注意を呼びかけています。不適正な利用が分かった場合は、融資の残りについて一括返済の請求などを行うとしています。「住宅ローンで買えば金利が低い」といった勧誘には乗らないよう、顧客にも伝えておきます。

融資相談の進め方

  1. 物件と資金計画を1枚にまとめる。所在地、種別、構造、築年数、価格、諸費用、自己資金、希望する借入額と期間を書き出します。
  2. 公開されている商品条件で対象を確かめる。営業地域、借入人の形、資金使途、物件の条件が合わない相談先は外します。
  3. 必要書類をそろえてから相談する。後から書類を追加すると、そのたびに確認がやり直しになります。
  4. 回答を同じ項目で並べる。借入額、金利の種類、期間、担保、保証人、手数料、繰上返済の条件、回答の期限を同じ表に写します。
  5. 売買契約の日程と合わせる。融資の承認が出る時期と、売買契約の融資特約(ローン特約)の期限を合わせます。

宅地建物取引業法35条1項12号は、代金に関する金銭の貸借のあっせんの内容と、その貸借が成立しないときの措置を重要事項説明の項目としています。同法37条1項9号では、あっせんの定めがある場合に、貸借が成立しないときの措置を契約書面に記載することとしています。仲介する不動産会社は、融資特約の期限と、融資が成立しなかったときの扱いを、買主と売主の双方に分かる形で書面にしておきます。

融資相談に用意する書類と数字

分類主な資料そろえるときの注意
借入人の確認本人確認書類、源泉徴収票または確定申告書、勤務先の概要原本を出せるものを用意する。法人なら決算書と履歴事項全部証明書
既存の借入れと資産借入れの返済予定表、預金通帳、保有不動産の資料借入れはすべて書き出す。隠すと信頼を失う
購入する物件販売図面、登記事項証明書、公図・測量図、建物図面、重要事項説明書の案構造・築年数・接道・法令上の制限を確認できるようにする
賃貸の収支レントロール(部屋ごとの賃料と契約状況)、賃貸借契約書、入金の実績空室や滞納も隠さず載せる
資金計画物件価格、諸費用の見積り、自己資金の額と出どころ、修繕の予定諸費用と当面の修繕費を自己資金で払えるかを示す

収支の計算例

仮の数字で計算例を示します。実際の金利や融資条件、審査の基準を示すものではありません。満室時の家賃収入が年600万円、空室と滞納の見込みを10%、運営費(管理料、修繕費、固定資産税、保険料など)を年120万円とすると、返済前の手取りは年420万円です。

借入条件(仮)年間返済額返済後に残る額
5,000万円・20年・年2.0%約304万円約116万円
5,000万円・20年・年3.0%約333万円約87万円
5,000万円・25年・年2.0%約254万円約166万円

元利均等返済で計算しています。返済後に残る額から所得税や住民税、大規模な修繕の積立てを払うことになるため、残る額がそのまま自由に使えるわけではありません。金利や期間を変えた表を自分で作っておくと、金融機関の回答を受け取ったときにすぐ比べられます。

初回の相談文の例

電話やメールで最初に伝える内容は、短くても項目がそろっていることが大切です。

投資用の賃貸物件の購入資金について、融資のご相談をお願いします。物件は〇〇市の木造アパート(築〇年、〇室)、価格は〇〇万円です。借入人は個人(会社員)で、自己資金は〇〇万円、希望する借入額は〇〇万円、期間は〇年です。売買契約は〇月〇日の予定です。貴行の商品の対象になるか、必要な書類と、回答までのおおよその日数を教えてください。

否決されたあとの見直し方

否決の理由は、詳しく示されないこともあります。同じ資料のまま次々に相談先を変えても、同じ理由で断られる可能性があります。まず理由の見当をつけ、直せるものを直します。

考えられる理由確認すること見直し方
商品の対象外地域、借入人の形、資金使途、物件の種類が商品の条件に合っていたか条件に合う商品や金融機関を探し直す
物件の評価構造・築年数と希望した期間、接道や建築時の法令への適合、価格の根拠期間を短くする、借入額を減らす、価格交渉をする、物件を見送る
収支の前提想定家賃が周辺の募集事例と合っているか、空室や修繕の見込み根拠のある家賃で計画を作り直す
借入人の返済余力既存の借入れ、自己資金の額自己資金を増やす、既存の借入れを整理してから相談する
信用情報過去の延滞などの記録本人開示で記録を確認する

信用情報は本人開示で確認できる

全国銀行協会が運営する全国銀行個人信用情報センターでは、本人開示の手続きで、加盟している金融機関からの借入れの内容や支払いの状況を確認できます。インターネットと郵送の方法が案内されています。記録に心当たりのない内容があれば、早めに確認します。

次の相談先を選ぶ

見直しが済んだら、改めて「最初の相談先の選び方」の3点で候補を選びます。否決された金融機関に、どの条件なら検討の余地があるかを聞ける場合は、借入額や期間、自己資金の目安を参考にします。物件そのものに理由がある場合は、無理に借入先を探すより、物件を見送る判断も大切です。

法人で借りる場合の経営者保証

資産管理の法人で借りる場合、代表者の個人保証を求められることがあります。金融庁は「経営者保証に関するガイドライン」(2013年12月公表)や「経営者保証改革プログラム」(2022年12月策定)で、経営者保証に依存しない融資慣行の確立に取り組んでいます。法人と個人の資産や会計を分けて管理し、決算書などで財務の状況を説明できるようにしておくことが、条件の相談の前提になります。

ウルスタくんの物件・入居者の管理と入金の記録を使うと、部屋ごとの賃料や契約状況、入金の実績を整理でき、レントロールや入金実績の資料を作るときの元データになります。

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このテーマの全体像は「不動産の業務効率化ガイド2026|5段階の進め方と法令チェックポイント・関連記事一覧」にまとめています。

よくある質問

Q1. 最初は大きな銀行に相談するべきですか。

決まった順番はありません。営業地域、借入人の形と資金使途、既存の取引の3点で、商品の対象に入る相談先から選びます。

Q2. 複数の金融機関に同時に相談してもよいですか。

相談先の数に決まりはありません。ただし、同じ資料と同じ前提で相談し、回答を同じ項目で比べられる範囲にとどめると管理しやすくなります。売買契約の融資特約の期限も考えて、回答の期限を確認しておきます。

Q3. 否決されたら、すぐ別の金融機関に申し込むべきですか。

理由の見当をつけて、資料や計画を直してからのほうが、同じ理由で断られることを避けられます。物件に理由がある場合は、見送ることも選択肢です。

Q4. 日本政策金融公庫で投資用不動産の資金を借りられますか。

事業の資金として使える融資制度があるかは、公庫に直接確認してください。公式のよくある質問では、店舗付き住宅を購入する場合の住宅部分は対象にならないとされています。

Q5. 住宅ローンで投資用の物件を買ってもよいですか。

いけません。住宅金融支援機構は、【フラット35】を投資用物件の取得に使うことはできないとし、不適正な利用には一括返済の請求などを行うとしています。

出典(本文で参照している資料)

この記事は2026年10月7日時点の情報です。

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