この記事の要点
- 「AIでマイソクを自動生成する」機能は、2026年9月2日時点で公式情報で確認できた範囲では、業者間サイトや賃貸管理ソフト、VRツールの一機能として提供されている(ITANDI BB、スペースリー、弊社ウルスタくん)。単体の「AIマイソク生成ソフト」を名乗る製品は確認できなかった。
- 各社とも「精度○%」のような数値は公式に公開していない。本記事にも精度の数字は載せない。精度は自社の物件で試して確かめるしかない。
- 確かめ方は「同じ物件30件で、AIの出力と人が作った図面を項目ごとに突き合わせる」。見る項目は家賃・面積・間取り表記・設備・写真の配置・広告表示ルールの5つ。
AIが物件写真や登録情報から募集図面(マイソク)を自動で組み上げる機能は、賃貸管理や業者間流通のツールに載り始めている。「どのくらい正確なのか」は当然の疑問だが、各社とも精度を数字で公開していないので、比較表で決められるものではない。この記事では、公式情報で確認できたサービスを挙げたうえで、自社の物件で精度を確かめる手順を書く。
2026年9月時点で確認できた「自動生成」機能
以下は、2026年9月2日に各社の公式サイトまたは提供元の発表で確認できたものだけ。料金は公式ページに印字がある場合のみ記載した。
ITANDI BB 物件資料自動作成機能(イタンジ株式会社)
業者間サイト ITANDI BB に掲載した物件を対象に、物件資料(図面)を自動で作成する機能。2025年11月の発表で掲載全物件が対象になった。客付会社への配布と同じ場所で図面ができる。料金は非公表。
スペースリー「マイソク・販売図面機能」(株式会社スペースリー)
VR内見ツール Spacely の機能として2025年8月に発表された。同社の案内では「最短わずか5分でマイソク・販売図面の作成」ができるとしている。料金は非公表。
ウルスタくん マイソク・間取り図(ウルスタ株式会社・弊社)
弊社の賃貸管理クラウドの機能。物件台帳の家賃・面積・最寄駅・設備・写真をそのまま図面に流し、写真から間取りを起こす。月額980円(税抜)からの管理戸数制で、30日間は全機能を無料で試せる。私が代表を務める会社の製品なので、評価に偏りがあり得ることを明記しておく。
参考:フォーム入力型の無料ツール
AIによる自動生成ではないが、ブラウザのフォームに入力して図面を出す無料ツールとして「マイソクメーカー」(グラフィックイノベーション)がある。詳しくはマイソク作成ソフト・ツール比較を参照。
精度を自社で確かめる手順
精度は「どの物件で、何を見るか」で変わる。他社の数字を探すより、自社の物件で30件試すほうが早くて確実だ。
1. 物件を30件選ぶ
自社の主力の家賃帯から20件、特殊な物件(メゾネット、店舗付き、古い間取り)から10件。得意な物件だけで試すと、実運用で困る場所が見えない。
2. 人が作った図面を「正」として用意する
すでに配布済みの図面をそのまま使う。AIの出力と、この図面を項目ごとに突き合わせる。
3. 見る項目は5つ
- 家賃・敷礼・面積:一桁でも違えば不合格。台帳から流れる仕組みなら、ここは原理的に間違わない。写真や入力から拾う仕組みなら、ここが最初に崩れる。
- 間取りの表記:「1LDK」「2DK」の判定と、部屋の並び。写真から起こす間取り図は、収納や柱の有無で崩れやすい。
- 設備の記載:エアコン、独立洗面台、宅配ボックスなど。台帳に無い設備は出ないので、台帳側の欠けが見える。
- 写真の配置と品質:外観・間取り・室内の順番、明るさ。FAXで送るなら潰れないか。
- 広告表示のルール:徒歩分数の根拠、築年の表記、おとり広告にならない条件。ここはAIが「それらしく」書くほど危ないので、必ず人が見る。
4. 直しにかかった時間を記録する
「AIが出した図面を配布できる状態にするまでの分数」を30件分記録する。これが実質の精度になる。1件平均が人が一から作る時間の半分を切らないなら、その物件種別ではまだ使わない判断でよい。
現場メモ — 精度を数字で書かない理由
本記事で「精度○%」と書かないのは、各社が公式に数値を公開しておらず、物件の種類や台帳の入力精度によって結果が変わるためです。
仕組みを選ぶときに見るべきなのは、配布までにかかる時間と、家賃・面積の誤りがゼロになるかの二点です。写真や文書から読み取らせる方式は転記ミスの温床になります。台帳に登録した値がそのまま図面に流れる方式を選び、家賃と面積は人が最終確認してください。
検証シートの作り方
上の手順を回すには、記録する場所が要ります。表計算ソフトで足りるので、列だけ決めてください。1物件1行、30行の表です。
| 列 | 入れるもの | なぜ要るか |
|---|---|---|
| 物件ID | 自社の物件番号 | 後から現物と突き合わせるため |
| 種別 | 賃貸/売買、単身/ファミリー | 種別ごとに精度が違うことが多いため |
| 元データの出どころ | 自社台帳/レインズ/紙の資料 | 入力元が汚いのか、AIが誤るのかを分けるため |
| 誤りの数(5項目別) | 0か1以上の数 | どの項目で外すかを見るため |
| 直した時間(分) | 実測 | 導入判断はここで決まるため |
| そのまま出せたか | はい/いいえ | 合否ラインを引くため |
| 気づいたこと | 自由記入 | 次の改善の種になるため |
間違いが出やすい型
どこを重点的に見るかの当たりを付けるために、実務でよく見る型を挙げます。これは頻度を測ったものではなく、見る順番の目安です。自社の30件で実際にどこが多いかを確かめてください。
- 単位と桁:面積の㎡と坪、賃料の円と万円。桁が1つ違っても図面としては成立してしまうので、目視では見落とします。
- 向きと縮尺:方位記号の向き、縮尺の表記。元データに無い情報をもっともらしく埋めていないか。
- 条件の言い換え:「ペット相談」を「ペット可」に、「駐車場空有」を「駐車場付」に変えてしまう類。意味が変わるので、掲載の可否に関わります。
- 付帯設備の有無:無いものを足すより、あるものが落ちるほうが多い。設備の数を元データと突き合わせてください。
- 取引態様・免許番号・会社名:定型なので見落としやすい一方、間違えると法令の問題になります。
合否ラインの決め方
「精度何%なら導入」という決め方はおすすめしません。1件でも掲載できない誤りが出れば、全件を人が見ることになるからです。実際に効くのは次の2つです。
- 掲載可否に関わる誤り(取引態様・免許番号・条件の言い換え)が30件でゼロか。1件でも出たら、その項目だけは人の確認を工程に固定します。
- 直した時間の中央値が、いま人が作っている時間より短いか。平均ではなく中央値で見てください。1件の大外れで平均は簡単に動きます。
この2つが両方とも満たされてはじめて、導入の判断ができます。片方だけなら、まだ試用を続ける段階です。
よくある質問
Q1. AIマイソク自動生成の精度は何%くらいですか?
各社とも公式に数値を公開していないため、本記事では書かない。自社の物件30件で、上の5項目を突き合わせて確かめるのが確実。
Q2. 家賃や面積をAIに読ませても大丈夫ですか?
写真や文書から読み取らせる方式は転記ミスの温床になる。台帳に登録した値がそのまま図面に流れる方式を選び、家賃・面積は人が最終確認する。
Q3. 無料で試せますか?
ウルスタくんは登録から30日間無料で全機能を使える。ITANDI BB とスペースリーの試用条件は各社の公式ページで確認してほしい。
利益相反の開示
本記事の筆者 馬場生悦は、ウルスタ株式会社の代表です。「ウルスタくん」は弊社の製品であり、評価に偏りが生じ得ることを明記します。他社のサービスは2026年9月2日時点の公式サイト・提供元発表で確認できた内容だけを記載し、確認できなかった事項は「非公表」としました。
出典・参考資料
- イタンジ「ITANDI BB 物件資料自動作成機能」のお知らせ
- スペースリー「マイソク・販売図面機能」リリース(2025年8月7日)
- マイソクメーカー(グラフィックイノベーション)
- ウルスタくん 料金
本記事の各社情報は2026年9月2日時点の公式サイト・提供元発表に基づく。次回の見直し予定:2027年3月。


