この記事の要点
- マイソク(募集図面)作成ツールは「Webツール」「賃貸管理ソフト内蔵」「業者間サイト内蔵」「VR・写真ツール内蔵」「汎用デザインツール」「制作代行」の6種類に分かれる。
- 月50枚を超えるなら、選ぶ軸は見た目より「物件データから家賃・面積が自動で入るか」。転記ミスは注意力では減らない。
- 本記事で挙げるのは、2026年9月2日時点で公式サイトまたは提供元の発表で存在と内容を確認できたサービスだけ。価格は公式ページに印字されているものだけを書き、それ以外は「非公表」とした。
2022年6月、自社で管理するアパートの再募集マイソクで、家賃「72,000円」と書くべきところを「62,000円」と打ち間違えて仲介各社に配ってしまったことがある。Excel の物件一覧から手で転記していた頃の事故だ。翌朝、他社の担当者から「家賃合ってますか」と電話が来て、慌てて訂正版を送り直した。金銭の損害はなかったが、その後しばらく「お宅、マイソクのチェック甘くないですか」と言われ続けた。この記事は、あの事故のあとで私が「マイソク作成ツールをどう選ぶか」を考え直した結論をまとめたものだ。
「マイソクを作る」道具は6種類ある
「マイソク作成ソフト」と一口に言っても、実際に不動産会社が使っているものは形が違う。まず種類で整理する。
- Webツール型:ブラウザ上のフォームに物件情報を入れて図面を出す。導入が軽い。
- 賃貸管理ソフト内蔵型:物件台帳に登録したデータからマイソクを生成する。転記が起きない。
- 業者間サイト内蔵型:業者間流通サイトに掲載した物件から物件資料を自動で作る。客付会社向けの配布と一体。
- VR・写真ツール内蔵型:パノラマ撮影や写真管理のツールに図面出力が付いているもの。
- 汎用デザインツール:不動産専用ではないが、テンプレートを作れば図面にも使える。
- 制作代行:ソフトではなく、1件いくらで図面を作ってもらうサービス。
月10〜20枚なら1・5・6で足りる。月50枚を超えて、しかも同じ物件情報をポータルにも社内資料にも使うなら、2か3のように「一度登録したデータが図面に流れる」形でないと、私の家賃事故と同じことが必ず起きる。
選ぶときに見る5つの軸
軸1:物件データから自動で入るか
最優先。家賃・面積・住所・最寄駅・設備を、図面を作るたびに人が打ち直す仕組みは、枚数が増えた時点で転記ミスを生む。デモで「物件を1件登録 → 図面作成画面で選ぶ → 家賃と面積が勝手に入るか」を必ず試す。
軸2:賃貸と売買の両方の書式があるか
賃貸は家賃・敷礼・更新料、売買は価格・諸費用・固定資産税と、必須項目が違う。両方扱う会社は、片方しかないツールを選ぶと結局2本契約になる。
軸3:FAXで潰れないか
客付会社への配布は、いまも地域によってはFAXが残っている。淡い色のテンプレートはFAXで読めなくなる。出力したPDFを自社のFAXで一度送って確認する。
軸4:過去の図面を物件から呼び出せるか
同じ部屋は2〜3年ごとに再募集になる。前回の図面を物件IDから開けないと、毎回ゼロから作ることになる。
軸5:料金が公開されているか
公式ページに金額が出ているか、問い合わせないと分からないか。後者が悪いわけではないが、比較の土俵に乗せにくい。本記事では公式ページに印字されている金額だけを書く。
2026年9月時点で確認できたサービス
以下は、2026年9月2日に各社の公式サイトまたは提供元の発表(PR TIMES)で、サービスの存在と内容を確認できたものだけを挙げている。価格は公式ページに印字されている場合のみ記載し、それ以外は「非公表」とした。
1. マイソクメーカー(グラフィックイノベーション)— Webツール型・無料
ブラウザ上でマイソクを作れる無料のWebツール。専用ソフトを入れずに使えるのが特徴で、公式ページでも「無料でマイソク作成できるWEBツール」と案内されている。物件台帳との連携ではなく、フォーム入力で作る形なので、月数枚〜十数枚の規模で「まず図面を出したい」ときの入口に向く。
2. ReDocS 募集図面(マイソク)作成機能(Bambooboy)— 賃貸管理ソフト内蔵型
クラウド型の賃貸管理ソフト ReDocS に含まれる機能。登録した物件データからマイソクを生成する形で、機能ページには「システム利用料金に含まれています」とある。料金は公式の料金ページに月額プランが掲載されている(2026年9月2日時点の公式料金ページでは月額2,980円・6,980円・12,480円の3プランと初期費用49,800円の表示。契約前に必ず最新の公式ページで確認してほしい)。管理ソフトごと入れ替える判断になるので、「図面だけ欲しい」会社には重い。
3. ITANDI BB 物件資料自動作成機能(イタンジ)— 業者間サイト内蔵型
業者間サイト ITANDI BB に掲載した物件を対象に、物件資料(図面)を自動で作成する機能。2025年11月の発表で掲載全物件が対象になった。客付会社への配布と図面作成が同じ場所で完結するのが強み。料金は非公表。
4. アットホーム 図面作成サービス(アットホーム株式会社)— 制作代行型
アットホームが不動産会社向けに提供している、物件の図面(ファクトシート)を作成するサービス。自分で作るソフトではなく、依頼して作ってもらう形。料金は非公表。アットホームを主力ポータルにしている会社が、社内で図面を作る手を持てないときの選択肢になる。
5. スペースリー「マイソク・販売図面機能」(株式会社スペースリー)— VR・写真ツール内蔵型
VR内見ツール Spacely の機能として2025年8月に発表された。同社の案内では「最短わずか5分でマイソク・販売図面の作成」ができるとしている。パノラマ撮影と図面を一緒に回したい会社向け。料金は非公表。
6. Canva(Canva)— 汎用デザインツール
不動産専用ではない汎用のデザインツール。無料プランがあり、自分でテンプレートを作ればマイソクにも使える。デザインの自由度は高いが、物件台帳はないので家賃や面積は毎回手入力になる。有料プランの価格は公式の料金ページを参照してほしい(プランと金額は改定があるため本記事には書かない)。
7. ウルスタくん マイソク機能(ウルスタ株式会社・弊社)— 賃貸管理ソフト内蔵型
弊社の賃貸管理クラウドに含まれる機能。物件台帳に登録した家賃・敷礼・面積・最寄駅・写真がそのまま図面に入る。料金は月額980円(税抜)からの管理戸数制で、30日間は全機能を無料で試せる。私が代表を務める会社の製品なので、評価に偏りがあり得ることを明記しておく(末尾の利益相反開示を参照)。
参考:制作代行の相場感
ソフトを使わず外注する場合の目安として、アットオフィスの「マイソク作成サービス」は公式ページに賃貸1件15,680円(税抜)、1棟22,080円(税抜)と価格が印字されている(2026年9月2日時点)。月に数枚なら外注のほうが安く済むことがある一方、月20枚を超えると自社でデータから出す形のほうが安くなる。
比較表(公式情報で確認できた範囲だけ)
「○」は公式ページまたは提供元の発表で確認できたもの、「—」は公式情報で確認できなかった(無いという意味ではない)もの。
| サービス | 種類 | 物件データからの自動転記 | 公式ページの価格表示 |
|---|---|---|---|
| マイソクメーカー(グラフィックイノベーション) | Webツール | —(フォーム入力) | 無料 |
| ReDocS 募集図面作成(Bambooboy) | 賃貸管理ソフト内蔵 | ○ | 月額プランを掲載(本文参照) |
| ITANDI BB 物件資料自動作成(イタンジ) | 業者間サイト内蔵 | ○(掲載物件から自動作成) | 非公表 |
| アットホーム 図面作成サービス | 制作代行 | —(依頼して作成) | 非公表 |
| スペースリー マイソク・販売図面機能 | VR・写真ツール内蔵 | — | 非公表 |
| Canva | 汎用デザインツール | × | 無料プランあり・有料は公式参照 |
| ウルスタくん マイソク機能(弊社) | 賃貸管理ソフト内蔵 | ○ | 月額980円(税抜)〜・30日無料 |
規模と業態で選ぶ
月20枚未満・まず図面を出したい
マイソクメーカー(無料)か Canva の無料プラン、または制作代行。物件台帳を持たない規模なら、転記ミスのリスクより導入の軽さを優先してよい。
月50枚以上・ポータルにも社内資料にも同じ情報を使う
賃貸管理ソフト内蔵型(ReDocS、ウルスタくん)か、業者間サイト内蔵型(ITANDI BB)。一度登録した物件情報が図面に流れる形にしないと、枚数に比例して転記ミスが出る。私の会社では、家賃事故のあとに物件台帳からの自動転記に切り替えてから、転記由来の間違いは出ていない。
高級物件・デザイナーズで見た目を最優先したい
汎用デザインツールで作り込む選択はある。ただし家賃や面積は手入力になるので、図面を出す前に台帳と突き合わせる手順を必ず入れる。
見た目がどこまで効くかは、私の会社で2024年に自社で計測した。同条件の物件で、シンプルな図面50枚とデザインを強めた図面50枚を配ったところ、後者のほうが問い合わせ率が18%高かった。ただし家賃帯で向きが変わる(後述のQ&A参照)。
「Canvaで十分」論について
月20枚以下なら賛成、月50枚を超えるなら反対、というのが私の立場だ。根拠は自社の作業時間の記録で、Canva で図面を1枚作るとデザインの微調整を含めて平均15〜20分かかった(2024年に自社で計測)。物件台帳から自動転記されるツールならテンプレート呼び出しと確認で平均3〜5分。月100枚なら差は月20時間を超える。加えて、Canva には物件台帳がないので、家賃の打ち間違いのような転記事故を仕組みで防げない。無料であることより、転記が起きない構造かどうかで選ぶべきだと考えている。
現場メモ — 転記が残っている限りミスは起きる
募集図面をExcelのテンプレートに手で転記して作っていると、枚数が増えたところで必ずどこかで間違います。家賃を一桁または一万円単位で書き間違えて配布し、仲介各社から確認の連絡が入る、というのが典型です。注意喚起では減りません。
物件情報を一度だけ正確に登録し、そこから図面・ポータル・社内資料に流れる形にすれば、転記ミスは構造的に起きなくなります。ツールを選ぶ前に、自社の図面が「どこから情報を写しているか」を書き出してください。写している箇所が一つでもあれば、そこが次の事故の場所です。
パートさんの一言で決まった
事故から2か月後、新しい作成ツールを決める打ち合わせで、私はデザインの強いツールを推していた。他社と見た目で差をつけたかったからだ。それに対して、図面を作っているパート社員から返ってきたのがこの一言だった。「社長、毎回家賃を手で打つのは変わらないですよね。じゃあまた間違えませんか。デザインより、家賃を間違えない仕組みのほうが大事じゃないですか」。デザイン重視のツールは見送り、台帳からの自動転記を最優先にした。優先順位は現場の人が一番正しく分かっていた。
導入前のチェックリスト
- 自動転記の確認:デモで物件を1件登録し、図面作成画面で家賃・面積が勝手に入るかを見る。
- FAXの可読性:出力したPDFを自社のFAXで送り、線と文字が潰れないか確認する。
- 過去図面の再利用:物件IDから前回の図面を開けるか。ファイル名だけの管理になっていないか。
- 価格の確認:本記事の金額は2026年9月2日時点で公式ページに印字されていたもの。契約前に必ず最新の公式ページで見直す。
よくある質問
Q1. マイソク作成は外注と内製のどちらが安いですか?
制作代行の公式価格の例として、アットオフィスは賃貸1件15,680円(税抜)を掲示している(2026年9月2日時点)。月数枚ならこの形が安く済むことが多い。月20枚を超えると、物件台帳から自動で出せる仕組みを持つほうが、作業時間と転記ミスの両面で有利になる。
Q2. FAXでの配布は今も必要ですか?
地域と相手先による。客付会社にFAXが残っている地域では、FAXで潰れない太い線と濃い文字が要る。逆に業者間サイト経由の配布が中心なら、PDFの解像度のほうが大事になる。自社の配布先を先に数えてから決める。
Q3. 無料のツールだけで運用できますか?
月20枚未満で、物件情報を毎回手で入れる手間を許容できるならできる。マイソクメーカーや Canva の無料プランが候補になる。枚数が増えたら、台帳からの自動転記があるものに移す。
Q4. 図面は「シンプル」と「派手」のどちらが効きますか?
ターゲットの家賃帯による。私の会社で2024年に92物件で比べた記録では、家賃10万円未満の物件はシンプルな図面のほうが問い合わせ率が高く、家賃15万円以上ではデザインを強めた図面のほうが高かった。一律の正解はないので、自社の主力の家賃帯で試して決める。
Q5. ウルスタくんのマイソク機能は無料で使えますか?
登録から30日間は全機能を無料で使える。その後は月額980円(税抜)からの管理戸数制の料金になる。
利益相反の開示
本記事の筆者 馬場生悦は、ウルスタ株式会社の代表です。比較に含めた「ウルスタくん」は弊社の製品であり、評価に偏りが生じ得ることを明記します。他社のサービスについては、2026年9月2日時点の公式サイトおよび提供元の発表で確認できた内容だけを記載し、確認できなかった事項は「非公表」または「—」としました。各社の仕様・価格は変わるため、導入時は必ず公式サイトで最新情報を確認してください。
出典・参考資料
- マイソクメーカー(グラフィックイノベーション)公式ページ
- ReDocS 募集図面(マイソク)作成機能/ReDocS 料金ページ
- イタンジ「ITANDI BB 物件資料自動作成機能」のお知らせ
- アットホーム 図面作成サービス
- スペースリー「マイソク・販売図面機能」リリース(2025年8月7日)
- Canva 料金ページ
- アットオフィス マイソク作成サービス(価格の参考)
- ウルスタくん 料金
本記事の各社情報は2026年9月2日時点の公式サイト・提供元発表に基づく。次回の見直し予定:2027年3月。


