オーナー提案 読了 13分

提案資料のテンプレートの作り方|不動産営業の提案書の基本の型・顧客の種類ごとに足す項目・書いてはいけない表現

提案資料をテンプレート化するときは、毎回変わる部分と変わらない部分を分け、ご希望の要約・候補・選んだ理由・気をつける点・費用・次の手順の順に並べた基本の型を1つ決めます。顧客の種類ごとに足す項目、共通パーツの管理、提案書に書いてはいけない表現を整理します。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
提案資料のテンプレートの作り方|不動産営業の提案書の型と書いてはいけない表現
目次

提案資料をテンプレート化するときは、毎回変わる部分と変わらない部分を分け、「ご希望の要約・候補・選んだ理由・気をつける点・費用・次の手順」の順に並べた基本の型を1つ決めることから始めます。顧客の種類ごとの違いは、基本の型に足す項目として管理すると、型が増えすぎません。この記事では、不動産営業の提案書の型、共通パーツの管理、渡す前の確認、そして宅建業法32条・47条・47条の2や消費者契約法4条に照らして書いてはいけない表現を整理します。

テンプレート化で決めること

提案書を毎回ゼロから作ると、作る人によって順番や情報の量がばらつきます。読む側のお客様にとっても、どこに何が書いてあるかが毎回違うと比べにくくなります。テンプレート化の目的は、作る時間を短くすることだけでなく、誰が作っても必要な情報が抜けない状態にすることです。

最初に決めるのは次の3つです。

  • 変わらない部分:会社の情報、取引態様、手続きの流れ、費用の項目の説明など。共通パーツとして1か所で管理します。
  • 毎回変わる部分:お客様の条件の要約、候補、選んだ理由、気をつける点、費用の金額。ここに作る時間を使います。
  • 確認する人と手順:誰が、何を見て、渡してよいと判断するか。

型は少ないほど管理しやすくなります。顧客の種類ごとに別のファイルを作るより、基本の型を1つにして、種類ごとに足す項目を決めておく方法をおすすめします。

提案書の基本の型

基本の型の例を示します。順番には意味があります。最初にお客様の条件を書くことで「話を聞いてもらえた」と確かめてもらえ、候補の理由と気をつける点を並べることで、比べて判断できるようになります。

順番項目書くこと
1表紙宛名、作成日、作成者、会社名、宅建業の免許番号
2ご希望の要約聞いた条件を、お客様の言葉に近い形で。優先順位も書く
3候補物件や方法。候補ごとに基本情報と資料の出どころ
4選んだ理由ご希望のどの条件に合うか
5気をつける点条件に合わない点、確認が済んでいない点、費用が増える可能性のある点
6費用の内訳項目ごとの金額と、金額が決まっていないものはその旨
7次の手順と期限内見、申込み、重要事項説明、契約までの流れと、お客様に決めてもらうこと
8取引態様と注意書き自社が媒介か代理か当事者か。情報の確認日。条件が変わる可能性

8番目の取引態様は、宅建業法34条2項が、売買・交換・貸借の注文を受けたときに遅滞なく取引態様の別を明らかにすることを求めているものです。口頭で伝えていても、提案書に書いておけば伝え漏れを防げます。

5番目の「気をつける点」は、空欄のまま渡さないことを社内の決まりにします。消費者契約法4条2項は、有利なことを告げながら、不利益となる事実を故意または重大な過失で告げなかったことにより消費者が誤認して契約したときは、取り消せると定めています。書くことが見つからないときは、確認が済んでいない点を書きます。

顧客の種類ごとに足す項目

基本の型に足す項目の例です。収入や年齢で細かく分けるより、意思決定の仕方と必要な書類の違いで分けるほうが実務に合います。

単身で住まいを探すお客様

通勤・通学の経路と時間、周辺の生活施設、入居までの日程を足します。初めての一人暮らしであれば、申込みから入居までに必要な書類と、入居時にかかる費用の項目を一覧にすると、比べやすくなります。

家族で住まいを探すお客様

一緒に決める人が提案書だけを見ても分かるように、ご希望の要約と気をつける点を丁寧に書きます。通学区域や保育施設のように自治体が決めているものは、自治体の公表資料で確かめた日を書き、変わる可能性があることを添えます。

法人の社宅として借りるお客様

契約者(法人)と入居者が違うため、誰に何を確認するかを分けて書きます。費用は、法人が負担するものと入居者が負担するものを分けて示すと、社内の手続きが進めやすくなります。請求書の宛名や支払方法も確認項目に入れます。

住宅を購入するお客様

住宅ローンを使う場合は、借入額や返済額の試算が前提条件つきであることを明記します。融資の可否は金融機関が審査で決めるため、提案書では「試算」であることと前提(金利、期間、借入額)を示します。宅建業者がローンをあっせんする場合の手続きはローン提案が担当者依存になる原因と対策で整理しています。

投資用の物件を検討するお客様

利回りや収支の試算には、前提(賃料、空室、経費、借入条件)と計算式を書きます。将来の収益について確実だと誤解させるような書き方は、宅建業法47条の2第1項が禁じる断定的判断に当たるおそれがあります。税金に関することは、一般的な制度の説明にとどめ、個別の判断は税理士への相談をすすめます。

共通パーツの管理

毎回同じ内容を載せる部分は、提案書の本体とは別に、共通パーツとして1か所で管理します。

  • 会社の情報(商号、所在地、宅建業の免許番号、連絡先)
  • 取引態様の説明
  • 申込みから契約、引渡し・入居までの流れ
  • 費用の項目の説明(何のための費用か)
  • 重要事項説明と契約書面についての案内
  • よくある質問

共通パーツで起きやすいのは、古い情報が残ることです。所在地や連絡先、手続きの流れが変わったときに、どのファイルを直せばよいかが分からなくなります。原本を1つに決め、直す人を決め、直した日をファイルの中に書いておきます。提案書を作るときは、手元に保存した古い控えではなく、毎回原本から取り込みます。

もう1つ起きやすいのが、前のお客様の提案書を複製して作ったときに、宛名や条件が残ってしまうことです。宅建業法45条は、宅建業者が業務上取り扱ったことについて知り得た秘密を、正当な理由なく漏らしてはならないと定めています。前の提案書を複製して使わず、毎回テンプレートの原本から作る決まりにしておくと、取り違えを防げます。

物件の情報をシステムで管理している場合は、提案書の候補欄に載せる内容を、登録済みの情報や募集図面と照らし合わせてから使います。ウルスタくんでも、物件の管理、募集図面(マイソク)、顧客管理の記録を扱えます。どの道具を使う場合も、提案書に書いた数字の出どころが登録内容のどれなのかを、後から確かめられるようにしておきます。

提案書に書いてはいけない表現

提案書は、お客様が判断の材料として手元に残すものです。口頭より言い過ぎが記録に残りやすいため、次の表現は型の段階で避けるようにします。

避ける表現の例関係する定め書き換えの例
「確実に値上がりします」「利益が出ることは間違いありません」宅建業法47条の2第1項(利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断)、消費者契約法4条1項2号「次の前提で試算すると、収支はこうなります。前提が変わると結果も変わります」
「近くに大型施設ができるので便利になります」宅建業法施行規則16条の11第1号イ(将来の環境・交通の利便についての断定的判断)「〇年〇月時点で計画が公表されています。時期や内容は変わることがあります」
知っている不具合や周辺の事情を書かない、事実と違う内容を書く宅建業法47条1号、消費者契約法4条1項1号・2項「気をつける点」の欄に事実と確認の状況を書く
「本日中のお申込みが条件です」宅建業法施行規則16条の11第1号ロ(判断に必要な時間を与えない)申込みの受付状況を事実として書き、判断の期限は相手と決める
実際より広い、駅に近い、条件が良いと受け取れる表現宅建業法32条(広告の誇大表示の禁止)の考え方資料に書かれた数字をそのまま使い、出どころを書く

宅建業法32条は広告についての定めで、個別のお客様に渡す提案書がそのまま広告に当たるとは限りません。ただし、所在、規模、環境、交通の利便、代金や借賃、ローンのあっせんなどについて著しく事実と違う表示や、実際より著しく優良・有利と誤認させる表示をしない、という考え方は提案書にもそのまま当てはめられます。

費用と利回りの書き方

数字は、計算式と前提を一緒に書くと、お客様が自分で確かめられます。仮の数字で計算例を示します。

賃貸の月々の負担

家賃7万円、共益費5,000円、駐車場代8,000円の物件の場合、月々の負担は次のとおりです。

  • 月々の負担=家賃+共益費+駐車場代
  • 70,000円+5,000円+8,000円=83,000円

入居時にかかる費用は、敷金、礼金、前家賃、仲介手数料、保証会社の利用料、火災保険料など、物件ごとに項目と金額が違います。項目ごとに金額を書き、まだ決まっていないものは「確認中」と書きます。

投資用物件の利回り

物件価格8,000万円、満室時の年間賃料収入600万円、年間の経費150万円、購入時の諸費用500万円と仮定します。

  • 表面利回り=年間賃料収入÷物件価格×100=600万円÷8,000万円×100=7.5%
  • 経費と諸費用を考えた利回り=(年間賃料収入−年間経費)÷(物件価格+購入時の諸費用)×100=450万円÷8,500万円×100=約5.3%

利回りという言葉は、計算に何を含めるかで値が変わります。提案書では、満室を前提にしているのか現在の入居状況なのか、経費に何を含めたのかを、計算式と一緒に書きます。2つの物件を比べるときは、同じ式で計算します。

渡す前の確認

作った人とは別の人が、次の項目を確かめてから渡すようにします。人手が足りない場合でも、作った本人が時間を置いて見直すだけで見つかる誤りがあります。

  • 宛名、日付、条件が、このお客様のものになっているか
  • 候補の情報が最新か(募集が続いているか、価格や賃料が変わっていないか)
  • 「気をつける点」が空欄になっていないか
  • 試算に前提と計算式が書いてあるか
  • 断定、即決を迫る表現がないか
  • 取引態様と会社の情報が書いてあるか
  • メールで送る場合、宛先と添付ファイルが正しいか

渡した提案書は、いつ、誰に、どの版を渡したかが分かるように控えを残します。後で「あのとき言われた内容と違う」と言われたときに、何を示したかを確かめられます。

提案書を使って説明するとき

提案書は、渡すだけでは読まれないことがあります。説明の場では、表紙の次の「ご希望の要約」から読み合わせ、聞いた内容に違いがないかを最初に確かめます。ここで違いが見つかれば、候補を出し直す必要があるかどうかをその場で判断できます。

「気をつける点」は、書面に書いてあっても口頭でも説明します。お客様から出た質問は、その場で答えられないものをメモに残し、回答を書き足した版を後日渡します。判断の期限は、お客様の予定と募集の状況を踏まえて相手と相談して決め、こちらの都合で区切らないようにします。

提案書での説明は、重要事項説明の代わりにはなりません。宅建業法35条1項は、契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士に、重要事項を記載した書面を交付して説明させることを求めています。提案書には、契約の前に宅建士による重要事項説明があることを書き、提案の段階で話した内容と重要事項説明書の記載が食い違わないよう、説明を担当する宅建士に提案書の控えを渡しておきます。

このテーマの全体像は「不動産の業務効率化ガイド2026|5段階の進め方と法令チェックポイント・関連記事一覧」にまとめています。

よくある質問

Q1. テンプレートを使うと、どのお客様にも同じ内容に見えませんか。

同じなのは順番と共通パーツで、ご希望の要約、候補、選んだ理由、気をつける点はお客様ごとに書きます。作る時間を毎回変わる部分に使えるようにすることが、テンプレート化の目的です。

Q2. 型はいくつ作ればよいですか。

基本の型を1つにして、顧客の種類ごとに足す項目を決める方法なら、管理する型は1つで済みます。種類ごとに別の型を作る場合は、共通パーツを直したときにすべての型に反映されるようにしておきます。

Q3. 提案書に物件の写真や図面を載せてもよいですか。

載せる場合は、使ってよい資料かどうかを確かめます。他社が作った募集図面や写真は、そのまま使ってよいとは限りません。出どころを確かめ、許可された範囲で使います。

Q4. 試算の数字が後で変わったらどうしますか。

前提が変わったことと、変わった後の数字を書いた版を作り直して渡します。古い版を渡したままにしないよう、渡した版の控えを残しておきます。

出典(本文で参照している資料)

この記事は2026年10月7日時点の情報です。

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