SaaS(サース)は、ソフトウェアを買って自社に入れるのではなく、インターネット経由で月額などの契約で使うサービスのことです。不動産会社がSaaSを選ぶときに出てくる用語は、「契約と運用の言葉」「データ連携(API・CSV・GA4)の言葉」「電子契約や個人情報など法令に関わる言葉」の3つに分けると整理しやすくなります。法令に関わる用語は、条文と公的資料で確かめた内容だけを書いています。
SaaSの契約と運用の基本用語
まず、営業担当の説明や利用規約によく出てくる言葉です。意味と一緒に、不動産会社が契約前に確認したい点を並べました。
| 用語 | 意味 | 契約前に確認したいこと |
|---|---|---|
| SaaS | ソフトウェアをインターネット経由で使う形態。サーバの管理や更新は提供会社が行う | 解約したときにデータを持ち出せるか |
| IaaS・PaaS | IaaSはサーバなどの基盤を借りる形態、PaaSはアプリを動かす土台を借りる形態。自社で開発しない限り、直接契約する場面は少ない | SaaSの提供会社がどの基盤を使っているか(障害時の説明に関係する) |
| サブスクリプション | 期間に応じて利用料を払う契約形態 | 最低契約期間、自動更新、解約の申出期限 |
| ユーザー課金(ID課金) | 使う人の数で料金が変わる方式 | 事務やパートの人にもアカウントが要るか |
| SLA | サービスの品質について提供会社が約束する内容。稼働率の目標や障害時の連絡方法などを定める | SLAがあるか、ない場合は障害時にどう連絡が来るか |
| 稼働率 | サービスが止まらずに使えた時間の割合 | 計画停止(メンテナンス)の時間帯と事前の告知方法 |
| マルチテナント | 複数の会社が同じシステムを共用し、データは会社ごとに分けて管理する方式 | 他社からデータが見えない仕組みをどう説明しているか |
| SSO(シングルサインオン) | 1回のログインで複数のサービスを使える仕組み | どのプランで使えるか |
| 二要素認証(多要素認証) | パスワードに加えて、SMSのコードなど別の手段でも本人を確かめる仕組み | 全員に必須にできるか |
| 権限設定(ロール) | 人ごとに見られる範囲や操作できる範囲を分ける設定 | オーナー情報や送金データを見られる人を絞れるか |
| 操作ログ(監査ログ) | 誰がいつ何をしたかの記録 | 保存期間と、管理者が出力できるか |
| エクスポート | データをCSVなどのファイルで取り出すこと | 全項目を出せるか、添付ファイルも出せるか |
| オンボーディング | 導入初期の設定や研修の支援 | 既存データの移行を誰がどこまで行うか |
SaaSは「使っている間は便利、やめるときに困る」ことがあります。解約時のデータの扱いは、利用規約で確認してから契約するのが安全です。
データ連携の用語(API・CSV・名寄せ)
不動産会社では、物件、顧客、契約、入金のデータが別々のソフトや表計算ファイルに分かれていることがよくあります。これをつなぐときの言葉です。
| 用語 | 意味 | 不動産業務での例 |
|---|---|---|
| API | ソフトどうしが決まった形式でデータをやり取りするための窓口 | 国土交通省の「不動産情報ライブラリ」は、取引価格や地価公示などの情報を提供し、API利用申請の窓口を設けている |
| Webhook(ウェブフック) | あるサービスで出来事が起きたときに、別のサービスへ自動で知らせる仕組み | 電子契約が締結されたら、顧客管理の状態を自動で変える |
| CSV連携 | 表形式のファイルを書き出して、別のソフトに読み込ませる方法 | 入金データを会計ソフトに取り込む |
| マスタ | 何度も参照する基本データ(物件、オーナー、取引先など) | 物件マスタの住所表記をそろえる |
| 名寄せ | 同じ人や同じ物件のデータが複数あるとき、1つにまとめること | 同じ建物が別の表記で2件登録されているのを統合する |
| 一意のキー | データを重複なく特定するための番号 | 土地・建物なら登記の不動産番号や不動産IDが候補になる |
APIがあると書かれていても、使える範囲はサービスとプランで違います。「どのデータを、読むだけか書き込めるか、どのプランで使えるか」の3点を確認してください。
GA4・Search Consoleの用語と、不動産サイトのAPI連携
自社サイトから問い合わせを集めている会社では、GA4(Google アナリティクス 4)とGoogle Search Consoleの用語も避けて通れません。Googleの公式ヘルプとデベロッパー向け資料で確認した内容です。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| GA4 | Googleのアクセス解析サービス。ページの閲覧やボタンのクリックなどを「イベント」として記録する |
| キーイベント | イベントのうち、成果として数えるもの(問い合わせの送信、内見予約など)。Google 広告では、キーイベントをもとにコンバージョンを作成できる |
| Google Analytics Data API | GA4のレポートの数字をプログラムから取り出すためのAPI。GA4のプロパティだけが対象で、旧Universal Analyticsには使えない |
| Measurement Protocol | サーバから直接GA4にイベントを送る仕組み。サイトの外で起きた成果(来店後の申込など)を送るときに使う。Googleは、タグによる自動収集を補うもので置き換えるものではないと説明している |
| BigQuery Export | GA4の生のイベントデータをGoogleのデータベースサービス(BigQuery)に書き出す機能。標準のプロパティでは日次の書き出しが1日100万イベントまで |
| 表示回数(インプレッション数) | Search Consoleの指標。サイトが検索結果に表示された回数 |
| クリック数 | 検索結果からサイトがクリックされた回数 |
| CTR(クリック率) | クリック数を表示回数で割った値 |
| 平均掲載順位 | 検索結果でのサイトの最上位の掲載順位の平均 |
不動産サイトでGA4とAPI連携をするときの流れ(例)
- 問い合わせフォームの送信と内見予約の完了を、GA4のキーイベントに設定します。
- Google Analytics Data APIで、日別の流入元とキーイベントの数を取り出し、顧客管理の集計(反響数、内見数、申込数)と並べます。
- 店頭や電話で決まった申込など、サイトの外で起きた成果を分析に入れたい場合は、Measurement Protocolで送る方法があります。
- イベント単位で細かく分析したい場合は、BigQuery Exportを使います。書き出しの上限と、BigQuery側の費用の条件を先に確認してください。
個人を特定できる情報は送らない
Googleは、個人を特定できる情報(メールアドレス、個人の電話番号など)をGoogle アナリティクスに送ることをポリシーで禁止しています。問い合わせフォームの入力値やURLの末尾に氏名や電話番号が入っていないか、設定時に確認してください。顧客管理とつなぐときは、氏名ではなく社内の受付番号などで突き合わせる設計にします。
不動産業務のSaaSの画面に出てくる業務用語
不動産業務向けのSaaSでは、業界の言葉がそのまま画面の項目名になっています。法律に定めがあるものは条文を付けました。
| 用語 | 意味 | 根拠・補足 |
|---|---|---|
| レインズ(指定流通機構) | 国土交通大臣が指定した不動産流通機構が運営する物件情報のシステム | 専任媒介契約では登録が義務。期間は契約日から7日(専属専任媒介は5日)、休業日は数えない(宅建業法34条の2第5項、同法施行規則15条の10) |
| 媒介契約(一般・専任・専属専任) | 売買・交換の仲介を依頼する契約の種類 | 専任媒介契約の有効期間は3か月まで(34条の2第3項)。業務の処理状況は2週間に1回以上、専属専任は1週間に1回以上報告(同条第9項) |
| 重要事項説明(35条書面) | 契約が成立するまでに、宅地建物取引士が書面を交付して説明する手続 | 宅建業法35条1項 |
| 37条書面 | 契約成立後に交付する書面。売買・交換は37条1項、貸借は同条2項 | 宅地建物取引士の記名が要る(37条3項) |
| 募集図面(マイソク) | 物件の概要、間取り図、条件などを1枚にまとめた資料の通称 | 広告として使う場合は表示のルールにも注意 |
| 業者間流通 | 宅建業者どうしで物件情報を共有し、客付けを依頼し合う仕組み | レインズのほか、民間のサイトもある |
| 元付・客付 | 物件の依頼を受けている側の会社と、借主・買主を探す側の会社を指す業界の言葉 | 同じ会社でも取引ごとに立場が変わるため、案件単位で記録する |
| 物確(物件確認) | 空室かどうか、申込が入っていないかを元付に確かめること | 確認日時を記録しておくと、広告の更新漏れを防ぎやすい |
| 送金明細 | 管理会社が家賃を集めてオーナーへ送るときの明細。管理料や修繕費を差し引いた内訳を示す | 管理受託契約の内容と合わせる |
法令に関わる用語(電子契約・IT重説・電子帳簿保存法・個人情報の委託)
ここからは、間違えると法令違反になりうる用語です。条文と公的資料の名前を示しますので、最終的には原文を確認してください。
電子契約(書面の電磁的方法による提供)
宅建業法では、重要事項説明書(35条8項)、37条書面(37条4項・5項)、媒介契約書(34条の2第11項)を、相手方や依頼者の承諾を得て、紙の代わりに電磁的方法で提供できます。承諾は、提供に使う方法の種類と内容をあらかじめ示した上で、書面または電磁的方法で得ます。承諾後でも、相手方から電磁的方法で受け取らないと申出があれば、電磁的方法で提供してはいけません(宅建業法施行令3条の3)。
電子の書面は、相手方が出力して紙にできること、内容が改変されていないか確認できる措置があること、交付に関わる宅地建物取引士が明示されることが求められます(宅建業法施行規則16条の4の8)。
賃貸では、定期建物賃貸借の契約は電磁的記録でしても書面でしたものとみなされ(借地借家法38条2項)、契約の前に行う「更新がない」旨の説明の書面も、借主の承諾を得て電磁的方法で提供できます(同条4項)。この説明をしなかったときは、更新がない旨の定めは無効になります(同条5項)。賃貸住宅管理業者が交付する管理受託契約の締結前・締結時の書面も、賃貸人の承諾を得て電磁的方法で提供できます(賃貸住宅管理業法13条2項、14条2項)。
IT重説
テレビ会議などのITを使って行う重要事項説明のことです。国土交通省の「重要事項説明書等の電磁的方法による提供及びITを活用した重要事項説明実施マニュアル」(令和4年4月、令和6年12月版)は、映像を視認でき、音声を聞き取ることができ、双方向でやり取りできる環境で行うことを求めています。あわせて、重要事項説明書を事前に相手方へ届けておくこと、開始前に映像と音声を確認すること、宅地建物取引士証を画面上で相手方に視認させること、映像や音声に支障が出たら中断することが示されています。
電子署名・立会人型・当事者型・タイムスタンプ
電子署名法3条は、本人による一定の電子署名が行われている電磁的記録は、真正に成立したものと推定すると定めています。電子契約サービスには、利用者の指示を受けてサービス提供会社が自分の署名鍵で署名する「立会人型(事業者署名型)」と、利用者本人の電子証明書を使う「当事者型」があります。
立会人型について、デジタル庁と法務省のQ&A(令和2年9月4日、令和6年1月9日一部改定)は、利用者とサービス提供会社の間の手続(例として、登録済みのメールアドレスとパスワードに加え、SMSなど別の手段で得たワンタイム・パスワードを入力する方法)と、サービス提供会社の内部の手続の両方で十分な水準の固有性が満たされていれば、3条の電子署名に当たりうると整理しています。どちらか一方だけでは足りません。
タイムスタンプは、ある時刻にその電子データが存在し、その後に改変されていないことを確かめるための仕組みです。
電子帳簿保存法(電子取引データの保存)
所得税と法人税の保存義務者は、電子取引をしたときは、その取引情報の電磁的記録を保存しなければなりません(電子帳簿保存法7条)。電子取引とは、取引情報の授受を電磁的方式で行う取引です(同法2条5号)。国税庁の一問一答(電子取引関係、令和8年7月)は、取引情報に契約書に通常記載される事項を含めています。
国税庁のパンフレット(令和6年11月)では、保存の要件として、改ざん防止の措置(タイムスタンプ付きのデータを受け取る、受け取ったデータにタイムスタンプを付ける、訂正・削除の履歴が残るシステムでやり取りする、事務処理規程を定めて運用する、のいずれか)と、日付・金額・取引先で検索できることが示されています。基準期間の売上高が5,000万円以下の事業者は、税務調査でデータのダウンロードの求めに応じられるようにしていれば、検索の要件は不要です。
個人情報の委託
個人情報保護法27条1項は、本人の同意なく個人データを第三者に提供することを原則として禁止しています。ただし、利用目的の達成に必要な範囲で個人データの取扱いを委託することに伴う提供は、第三者への提供に当たりません(同条5項1号)。その代わり、委託元は委託先を必要かつ適切に監督しなければなりません(同法25条)。
クラウドサービスについて、個人情報保護委員会のQ&A(7-53)は、契約条項でサービス提供会社がサーバに保存された個人データを取り扱わない旨が定められ、適切にアクセス制御を行っている場合などは、個人データの提供に当たらないとしています。SaaSを契約するときは、利用規約がどちらの考え方に立っているかを確かめ、委託に当たるなら監督の方法(契約の条項、安全管理の確認)を決めておきます。
SaaSを比べるときの確認表
ここまでの用語を、比較のときの質問に直すと次のようになります。どのサービスにもそのまま使えます。
| 確認すること | 関係する用語 | 質問の例 |
|---|---|---|
| データの持ち出し | エクスポート、CSV連携 | 解約時に全データと添付ファイルを出せますか |
| つなぎ方 | API、Webhook | どのデータをAPIで読み書きでき、どのプランから使えますか |
| 安全性 | 二要素認証、権限設定、操作ログ | 二要素認証を全員に必須にできますか。ログは何日分残りますか |
| 止まったとき | SLA、稼働率 | 障害時の連絡方法と、計画停止の告知方法は |
| 電子契約の要件 | 承諾、改変の確認、宅建士の明示 | 承諾の記録を残せますか。宅地建物取引士の記名をどう表示しますか |
| 保存 | 電子帳簿保存法、タイムスタンプ | 日付・金額・取引先で検索できますか。訂正・削除の履歴は残りますか |
| 個人情報 | 委託、委託先の監督 | 提供会社は保存された個人データを取り扱いますか。利用規約のどこに書かれていますか |
ウルスタくんでも、物件・入居者の管理、更新が近い契約の一覧、入金の記録、オーナーへの送金明細、書類(賃貸借契約書・重要事項説明書など24種)と電子サインを扱えます。検討するときは、上の表の質問をそのまま使ってください。
このテーマの全体像は「不動産のIT重説 完全ガイド2026|国交省マニュアルの遵守事項と売買・賃貸の手順」にまとめています。
よくある質問
Q1. SaaSとクラウドは同じ意味ですか。
近い言葉ですが同じではありません。クラウドはインターネット経由で計算資源やサービスを使う形全体を指し、SaaSはその中で完成したソフトウェアを使う形態です。
Q2. 不動産SaaSとは何ですか。
物件管理、顧客管理、契約書類、入金管理、物件情報の流通など、不動産業務に合わせて作られたSaaSの総称です。決まった定義はないため、どの業務を対象にしているかで比べてください。
Q3. GA4のAPI連携には専門の開発が必要ですか。
Google Analytics Data APIやMeasurement Protocolを使うには、APIの認証やプログラムの設定が必要です。まずはGA4の画面でキーイベントを設定し、数字の見方をそろえてから、必要に応じて開発会社に相談するのが現実的です。
Q4. 電子契約に切り替えるとき、最初に何をすればよいですか。
承諾の取り方と記録の残し方を決めることです。宅建業法施行令3条の3は、方法の種類と内容を示した上で承諾を得ることを求めています。承諾がなければ紙の交付に戻ります。
Q5. SaaSに顧客データを入れるのは第三者提供になりますか。
委託に当たるなら第三者提供には当たりませんが、委託先の監督が必要です。提供会社が個人データを取り扱わない契約で、適切にアクセス制御されている場合は、そもそも提供に当たらないとされています(個人情報保護委員会Q&A 7-53)。
出典(本文で参照している資料)
- 宅地建物取引業法(第34条の2、第35条、第37条)
- 宅地建物取引業法施行令(第3条の3)
- 宅地建物取引業法施行規則(第15条の10、第16条の4の8)
- 借地借家法(第38条)
- 賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(第13条、第14条)
- 電子署名及び認証業務に関する法律(第3条)
- デジタル庁・法務省 利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A(電子署名法第3条関係)
- 国土交通省 ITを活用した重要事項説明及び書面の電子化について
- 国土交通省 重要事項説明書等の電磁的方法による提供及びITを活用した重要事項説明実施マニュアル(令和6年12月版)
- 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(第2条、第7条)
- 国税庁 電子帳簿保存法対応!令和6年1月以降の電子取引データの保存方法について(令和6年11月)
- 国税庁 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(令和8年7月)
- 個人情報の保護に関する法律(第25条、第27条)
- 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A(7-53)
- 国土交通省 不動産情報ライブラリ
- Google Analytics Data API の概要
- Google アナリティクス 4 の Measurement Protocol
- アナリティクス ヘルプ BigQuery Export
- アナリティクス ヘルプ イベントにキーイベントとしてマークを付ける
- アナリティクス ヘルプ 個人を特定できる情報(PII)の送信を避ける方法
- Search Console ヘルプ 検索パフォーマンス レポート
この記事は2026年10月7日時点の情報です。