宅建業免許の新規申請は、事務所を置く範囲で知事免許か大臣免許かが決まり(宅建業法3条)、欠格事由に当たらず(5条)、事務所ごとに専任の宅建士を業務に従事する者5人に1人以上置くこと(31条の3、施行規則15条の5の3)が前提です。免許が出たあとも、営業保証金の供託か保証協会への加入を済ませて届け出るまで営業は始められません(25条、64条の13)。この記事では、条文と東京都の手引き、国交省の資料で確かめた手順を順に整理します。
申請から営業開始までの流れ
- 事務所を決め、専任の宅建士を確保する。
- 申請書類をそろえる(役員全員の身分証明書など、役所で取る書類も含む)。
- 申請する。東京都知事免許の新規申請手数料は3万3千円です。大臣免許は登録免許税9万円です。
- 審査を受ける。東京都の手引きでは、補正の期間を含めて書類受付後おおむね30日から60日、国交省のページでは大臣免許はおおむね100日程度とされています。
- 免許の通知を受ける(東京都では本店あてのはがき)。
- 営業保証金を供託するか、保証協会に加入して弁済業務保証金分担金を納める。
- 供託の届出(または協会の手続き)を済ませ、免許証を受け取る。
- 標識(業者票)を掲げ、営業を始める。
6番目の手続きには期限があります。免許を受けた日から3か月以内に営業保証金の供託の届出がないときは、免許権者は届出をするよう催告しなければならず、催告が届いた日から1か月以内に届出がないときは免許を取り消すことができます(25条6項・7項)。
知事免許と大臣免許(3条)
| 項目 | 都道府県知事免許 | 国土交通大臣免許 |
|---|---|---|
| 対象 | 1つの都道府県の区域内にのみ事務所を設置 | 2つ以上の都道府県の区域内に事務所を設置 |
| 新規の費用 | 手数料(東京都は3万3千円) | 登録免許税9万円 |
| 審査期間の目安 | 東京都はおおむね30日から60日(補正期間を含む) | おおむね100日程度 |
| 有効期間 | 5年(3条2項)。続けるには更新が必要(3条3項) | |
判断の基準は「事務所の場所」で、営業する地域ではありません。知事免許でも、他県の物件を扱うことはできます。
免許証番号の括弧の中の数字は、解釈・運用の考え方で「免許証の更新の回数に1を加えた数」とされています。新規の免許は(1)から始まります。たとえば、筆者が代表を務めるウルスタ株式会社の免許は「東京都知事(1)第113653号」です。
更新の申請期間は有効期間満了の日の90日前から30日前までです(施行規則3条)。更新の申請をしていれば、満了日までに処分がなくても、処分があるまでは従前の免許が効力を持ちます(3条4項)。
欠格事由(5条)
5条1項は、免許を受けられない者を15号まで並べています。主なものを短くまとめると次のとおりです。
| 号 | 内容(要約) |
|---|---|
| 1号 | 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者 |
| 2号〜4号 | 不正な手段での取得などで免許を取り消され5年を経過しない者、取消しの聴聞の公示後に廃業の届出をして5年を経過しない者など(法人の役員だった者を含む) |
| 5号 | 拘禁刑以上の刑に処せられ、執行を終わるなどしてから5年を経過しない者 |
| 6号 | 宅建業法や暴力団対策法の違反、傷害・暴行・脅迫・背任などの一定の罪で罰金刑に処せられ、5年を経過しない者 |
| 7号 | 暴力団員、または暴力団員でなくなってから5年を経過しない者 |
| 8号・9号 | 申請前5年以内に宅建業に関し不正・著しく不当な行為をした者、不正・不誠実な行為をするおそれが明らかな者 |
| 10号 | 心身の故障により宅建業を適正に営むことができない者として省令で定めるもの |
| 11号 | 宅建業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者で、法定代理人が欠格事由に当たるもの |
| 12号・13号 | 役員や政令で定める使用人に欠格事由に当たる者がいる法人、政令で定める使用人に当たる者がいる個人 |
| 14号 | 暴力団員等がその事業活動を支配する者 |
| 15号 | 事務所について31条の3(専任の宅建士の設置)の要件を欠く者 |
法人の申請では、役員全員が対象になります。東京都の手引きでも、身分証明書と登記されていないことの証明書は役員等全員分の原本が求められています。誰が「役員」に当たるかは手引きで確かめ、早めに取り寄せておくと申請の時期がずれにくくなります。
事務所の要件
宅建業法の「事務所」は、本店・支店のほか、継続的に業務を行うことができる施設で、契約を締結する権限を持つ使用人を置くものを指します。解釈・運用の考え方は、商業登記された支店でも宅建業を営まないものは事務所に当たらないとしています。
東京都の手引き(宅地建物取引業免許申請の手引)は、事務所の形態について次の点を示しています。
- 物理的にも社会通念上も事務所と認識される程度の独立した形態であること
- 事務所専用の出入口があること
- 住宅の一部を事務所にする場合は、事前に連絡して相談すること
- 他の法人と同居する場合は、互いの専用部分を通らずに出入りでき、高さ180cm以上の不透明で固定式の間仕切りなどで独立していること
- 写真は、入口から事務所までの経路が分かるものと、名称・商号の表示が分かるものを撮ること
他の道府県では基準や必要な写真が違うことがあります。申請先の手引きを読み、迷う点は窓口に相談してから賃貸借契約を結ぶと、事務所を探し直す手間を避けやすくなります。
専任の宅建士の人数(31条の3・規則15条の5の3)
31条の3第1項は、事務所ごとに、規模や業務内容を考えて省令で定める数の成年者である専任の宅建士を置くよう求めています。施行規則15条の5の3は、事務所では業務に従事する者の数に対して5分の1以上、案内所などでは1人以上としています。
- 個人の業者本人や法人の役員が宅建士のときは、その人が主に業務に従事する事務所では、成年者である専任の宅建士とみなされます(31条の3第2項)。
- 人数が足りなくなったときは、2週間以内に必要な措置をとらなければなりません(31条の3第3項)。
- 「専任」は、原則として事務所に常勤し、専らその事務所の宅建業の業務に従事する状態をいいます(解釈・運用の考え方)。
- 「業務に従事する者」には、代表者、常勤の役員、すべての従業員が含まれ、受付・秘書・運転手なども対象です。宅建業の取引に直接の関係が乏しい業務に臨時で従事する者は含みません(同)。
仮の数字で計算例を示します。代表者1人、常勤役員1人、営業3人、事務2人の合計7人の事務所なら、7÷5=1.4なので、専任の宅建士は2人以上必要です。8人目を採用すると8÷5=1.6で2人のままですが、11人になると11÷5=2.2で3人以上になります。採用の計画を立てるときは、この人数も一緒に見ておきます。
東京都の手引きは、専任の宅建士の副業について、他の法令に反する場合や事務所への通常の通勤に支障をきたすおそれがある場合などは認められないとしています。また、申請会社の監査役が専任の宅建士を兼ねることはできないとしています。
営業保証金と保証協会
| 項目 | 営業保証金を供託 | 保証協会に加入 |
|---|---|---|
| 主たる事務所 | 1,000万円 | 弁済業務保証金分担金60万円 |
| その他の事務所 | 1か所ごとに500万円 | 1か所ごとに30万円 |
| 根拠 | 25条、施行令2条の4 | 64条の9、64条の13、施行令7条 |
| 納める先 | 主たる事務所の最寄りの供託所(国債などの有価証券でも可) | 加入する保証協会(加入しようとする日までに納付) |
保証協会の社員(会員)は、営業保証金を供託しなくてよいとされています(64条の13)。保証協会には全国宅地建物取引業保証協会と不動産保証協会があり、多くの場合、業界団体への入会と一緒に手続きをします。入会金や年会費などは分担金とは別にかかります。額は各団体の案内で確かめてください。
開業後に支店を出すときも、保証協会の社員は新しい事務所を設置した日から2週間以内に分担金を納める必要があり、期限までに納めないと社員の地位を失います(64条の9第2項・3項)。
東京都の手引きで求められる主な書類
| 書類 | 様式・取得先 |
|---|---|
| 免許申請書 | 第1号様式 |
| 誓約書 | 第2号様式 |
| 略歴書 | 第3号様式 |
| 専任の宅地建物取引士設置証明書 | 第4号様式 |
| 宅地建物取引業経歴書 | 別紙様式 |
| 身分証明書 | 本籍地の市区町村(役員等全員の原本) |
| 登記されていないことの証明書 | 法務局(役員等全員の原本) |
| 事務所の使用権原に関する書面 | 賃貸借契約書など |
| 事務所の写真 | 入口から事務所までの経路、名称・商号の表示 |
表は主なものです。法人の登記事項証明書など、ほかにも必要な書類があります。全体は手引きの一覧で確認してください。東京都の手引きは、2025年1月6日から国交省の電子申請システム(eMLIT)での申請もできるとしています。
商号にも注意が要ります。手引きには使えない商号の例が挙げられており、紛らわしい商号では変更を求められることがあるとされています。
免許前にしてはいけないことと、開業時に掲げるもの
- 免許を受けない者は宅建業を営めません。宅建業を営む旨の表示や、営む目的での広告もできません(12条1項・2項)。申請中に物件の広告を出したり、媒介の契約を結んだりしないよう注意します。
- 事務所などには、公衆の見やすい場所に標識(業者票)を掲げます(50条1項)。
- 業者票の大きさは、2025年12月1日施行の改正で「縦25cm以上、横35cm以上」になりました(国交省通知 令和7年12月15日 国不動第452号)。A3用紙で作れる大きさです。
申請前の確認リスト(例)
- 事務所を置く都道府県は1つか(知事免許か大臣免許か)。
- 役員と政令で定める使用人の全員について、欠格事由に当たらないか。
- 事務所が申請先の手引きの基準を満たすか。賃貸借契約で事務所として使えるか。
- 業務に従事する者の人数に対し、専任の宅建士が5分の1以上いるか。ほかの会社に専任として登録されたままになっていないか。
- 営業保証金と保証協会のどちらにするか。資金をいつ用意するか。
- 役所で取る証明書の取り寄せに必要な日数を見込んでいるか。
- 免許が出る前に、広告や契約の準備をしていないか。
このテーマの全体像は「不動産の業務効率化ガイド2026|5段階の進め方と法令チェックポイント・関連記事一覧」にまとめています。
よくある質問
Q1. 個人でも宅建業免許は取れますか。
取れます。宅建業法は個人の業者も前提にしています(31条の3第2項など)。法人にするか個人で始めるかは、税金や取引先の考え方も関わるため、税理士などと相談して決めてください。
Q2. 代表者が宅建士でなくても申請できますか。
できます。事務所ごとに必要な人数の専任の宅建士を置けばよく、代表者本人が宅建士である必要はありません。代表者が宅建士なら、31条の3第2項により専任の宅建士とみなされます。
Q3. 申請中に物件の広告を出してもよいですか。
出せません。免許を受けない者は、宅建業を営む旨の表示や、営む目的での広告ができません(12条2項)。広告は免許証を受け取り、営業を始められる状態になってからにします。
Q4. 営業保証金と保証協会はどちらを選ぶ人が多いですか。
選んだ人の割合を示す公的な統計は確認できませんでした。必要な金額は、主たる事務所で営業保証金1,000万円、保証協会なら分担金60万円です(施行令2条の4・7条)。保証協会は入会金や年会費が別にかかるので、総額で比べて決めます。
Q5. 審査にはどのくらいかかりますか。
東京都の手引きでは、補正の期間を含めて書類受付後おおむね30日から60日です。大臣免許は国交省のページでおおむね100日程度とされています。そのあと保証協会の手続きや供託の届出があるため、営業開始の予定日は余裕を持って決めます。
出典(本文で参照している資料)
- 宅地建物取引業法(e-Gov法令検索) 3条、5条、12条、25条、31条の3、50条、64条の9、64条の13
- 宅地建物取引業法施行令(e-Gov法令検索) 2条の4、7条
- 宅地建物取引業法施行規則(e-Gov法令検索) 3条、15条の5の3
- 国土交通省「宅地建物取引業の免許について」
- 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(2026年4月1日施行)
- 東京都住宅政策本部「宅地建物取引業免許申請の手引」
- 国土交通省 施行通知(令和7年12月15日 国不動第452号、全日本不動産協会掲載)
この記事は2026年10月7日時点の情報です。