総務省の令和5年住宅・土地統計調査で、全国の空き家は900万戸、空き家率は13.8%と過去最多・過去最高になりました。改正空家法で「管理不全空家」への指導・勧告が始まり、国土交通省も不動産業者による空き家管理受託のガイドラインと媒介報酬の特例を整えたことで、中小の不動産会社が空き家の管理と流通に関わる土台はそろっています。この記事では、統計・法令・国土交通省の資料で確かめた内容だけを使い、空き家管理を事業として組み立てるときの手順を整理します。
空き家は何戸あるのか(令和5年住宅・土地統計調査)
総務省統計局の「令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果」(2024年4月30日公表)によると、2023年10月1日現在の総住宅数は6,502万戸、そのうち空き家は900万戸でした。2018年の849万戸から51万戸増え、空き家率(総住宅数に占める空き家の割合)は13.8%で、いずれも過去最多・過去最高です。
空き家と一口に言っても、中身は分かれます。同じ資料の内訳は次のとおりです。
| 空き家の種類 | 戸数 | 空き家全体に占める割合 |
|---|---|---|
| 賃貸用の空き家 | 443万戸 | 49.3% |
| 売却用の空き家 | 33万戸 | 3.6% |
| 二次的住宅(別荘など) | 38万戸 | 4.3% |
| 賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家 | 385万戸 | 42.8% |
半分近くは賃貸用の空き家、つまり募集中の空室などです。管理会社の日常業務である空室対策も、統計上は空き家対策の一部ということになります。
一方、「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」は385万戸で、総住宅数の5.9%を占めます。賃貸や売却の予定がなく、別荘などでもない空き家です。国土交通省の改正空家法の概要資料でも、使用目的のない空き家はこの20年で約1.9倍に増え、今後さらに増える見込みと説明されています。管理の担い手が求められているのは主にこの層です。
改正空家法で何が変わったか
空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)は、2023年12月13日に改正法が施行されました。国土交通省の概要資料では、改正の柱が「活用拡大」「管理の確保」「特定空家の除却等」の3つに整理されています。
所有者の責務
空家法5条は、空き家の所有者や管理者に対し、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空き家の適切な管理に努めることを求めています。所有者が遠方に住んでいて自分では管理できない場合、誰かに管理を委ねる必要が出てきます。
管理不全空家への指導・勧告
改正で新しく設けられたのが「管理不全空家等」です。空家法13条では、市町村長は、適切な管理が行われず、そのまま放置すれば特定空家等に当たるおそれがある空き家の所有者に対して指導ができ、改善されないときは修繕や立木竹の伐採などの措置を勧告できると定めています。国土交通省の概要資料では、勧告を受けた管理不全空家の敷地は、固定資産税の住宅用地特例が解除されると説明されています。
空家等管理活用支援法人
空家法23条では、市町村長が、NPO法人や一般社団法人などに加え、「空家等の管理若しくは活用を図る活動を行うことを目的とする会社」も、空家等管理活用支援法人として指定できると定めています。支援法人の業務は24条に定められ、所有者への情報提供や相談、委託に基づく定期的な状態の確認や改修、所有者の探索などが含まれます。
どのくらい使われているか
国土交通省が公表した、改正法の施行から2025年3月31日時点までの市区町村の取組状況の調査では、次の数字が示されています。
| 項目 | 件数 |
|---|---|
| 管理不全空家等への指導 | 3,211件(185市区町村) |
| 管理不全空家等への勧告 | 378件(40市区町村) |
| 空家等管理活用支援法人の指定 | 95法人(64市町村) |
| 空家等活用促進区域の指定 | 4区域(4市) |
| 緊急代執行 | 12件(10市町) |
支援法人の指定はまだ一部の市町村にとどまっています。地元の市町村が指定しているか、指定を検討しているかは、市町村の空き家担当の窓口で確かめられます。
不動産業者による空き家管理受託のガイドライン
国土交通省は2024年6月21日に「不動産業による空き家対策推進プログラム」を策定し、その中で「不動産業者による空き家管理受託のガイドライン」を公表しました。受託前の現況確認表と空き家管理委託契約書のひな形も、国土交通省のページで公開されています。ガイドラインの主な内容は次のとおりです。
- 対象:宅地建物取引業者と不動産管理業者が、居住などに使われていない建物や空き室の管理を受託する場面を想定しています。
- 受託の前に:空き家の状況を所有者と双方で確認します。空家法の管理不全空家等や特定空家等として、すでに市町村長の指導・勧告の対象になっている空き家は、ガイドラインの対象として想定されていません。その場合は、管理不全の状態を解消できるよう助言することが求められています。
- 権限の確認:所有者以外の人から相談を受けたときは、委任状で代理権を与えられている、後見人に選ばれているなど、保存行為を行う権限があるかを確かめることが重要とされています。
- 契約の書面:契約を結ぶときに、契約内容を書いた書面を委託者に渡すこと(電磁的方法を含む)が望ましいとされています。
- 作業の例:定期的な巡回による建物の点検や簡易な清掃、電気設備・排水設備などの点検、通風・換気などが挙げられています。
- 報告:作業終了からおおむね1週間程度のうちに、写真や動画など作業内容を容易に確認できる方法で完了報告をすることが考えられるとされています。問題を見つけたときは、完了報告を待たずに委託者へ報告します。
- 報酬:媒介契約とは別に業務内容や報酬を定めた契約を結び、媒介報酬とは別に空き家の管理に係る報酬を受け取ることも可能とされています。
空き家の媒介報酬の特例
価格の低い空き家の取引や、長く使われていない空き家の貸借について、国土交通省の「空き家等に係る媒介報酬規制の見直し」では、報酬告示の改正により、2024年7月1日から次の特例が設けられています。
| 取引 | 対象 | 上限 |
|---|---|---|
| 売買・交換 | 物件価格が800万円以下の宅地建物 | 30万円の1.1倍 |
| 貸借 | 長期の空家等(現に長期間使用されておらず、または将来にわたり使用の見込みがない宅地建物) | 貸主である依頼者から、原則の上限を超えて受領でき、1か月分の2.2倍が上限 |
どちらも、媒介契約を結ぶ際に、あらかじめ上限の範囲内で報酬額を依頼者に説明し、合意しておく必要があります。この点は「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」に明記されています。
相続で生まれる空き家と関係する制度
所有者が亡くなり、相続人が遠方に住んでいるといった事情で空き家になる物件もあります。管理を受託する前後で、次の制度を所有者と確かめておくと、その後の売却や活用の相談につながります。
- 相続登記:2024年4月1日から義務化され、取得を知った日から3年以内、それより前の相続は2027年3月31日までに申請が必要です(不動産登記法76条の2、法務省)。名義が亡くなった人のままだと、売却の前に相続登記が必要です。
- 相続した空き家を売ったときの特例:要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円(2024年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上なら2,000万円)を控除できます。2027年12月31日までの譲渡で、1981年5月31日以前に建築された建物であることなどの要件があります(国税庁 No.3306)。
空き家管理を受託するときの手順の例
ここからは、ガイドラインと法令をもとにした手順の例です。料金や巡回の頻度は地域や物件によって違うので、自社で決めてください。
手順1 相談の窓口を決める
空き家の相談は、賃貸管理の顧客や売却の相談者の家族から来ることが多いです。相談を受けたら、物件の所在地、所有者、相続の状況、今後の希望(保有・賃貸・売却)を聞き取ります。
手順2 所有者と権限を確かめる
登記事項証明書で名義を確かめ、相談者が所有者でなければ、委任状などで権限を確かめます。名義が亡くなった人のままなら、相続登記の期限も案内します。
手順3 現地で状態を確かめる
国土交通省の受託前現況確認表を使い、所有者と一緒に建物の状態を確かめます。市町村から指導や勧告を受けていないかも聞き取ります。指導・勧告の対象になっている場合は、ガイドラインの想定外なので、まず状態の解消について助言します。
手順4 契約を結ぶ
作業の内容と頻度、責任の範囲、家財の扱い、電気・水道などの契約状況、報告の方法を書面にします。国土交通省の空き家管理委託契約書のひな形を土台にすると、項目の漏れを防げます。
手順5 巡回と報告を続ける
巡回のたびに写真を残し、おおむね1週間程度のうちに報告します。雨漏りや設備の不具合を見つけたら、すぐに連絡します。
手順6 活用や売却の相談につなげる
管理を続けるうちに、所有者の考えが変わることがあります。賃貸に出す、売却するといった相談が出たときは、媒介報酬の特例や相続空き家の特例の期限も含めて説明します。
| 段階 | 確認すること | 根拠・参考 |
|---|---|---|
| 受託前 | 所有者・権限、市町村の指導・勧告の有無、建物の現況 | 国交省ガイドライン、空家法13条 |
| 契約 | 作業内容と頻度、責任の範囲、家財、ライフライン、報告方法を書面にしたか | 国交省ガイドライン、空き家管理委託契約書 |
| 管理中 | 巡回記録と写真、おおむね1週間程度での報告、異常時の即時連絡 | 国交省ガイドライン |
| 売却・賃貸 | 相続登記、媒介報酬の特例の事前説明と合意、相続空き家の特例の期限 | 不動産登記法76条の2、報酬告示、国税庁 No.3306 |
ウルスタくんでは、物件と所有者の情報、相談の経緯を顧客管理でまとめておけます。空き家の管理から賃貸や売却の相談に移ったときに、同じ物件の情報を使って募集図面(マイソク)や書類を作れるので、記録を何度も入力し直す手間を減らせます。
相続登記の期限と相続人申告登記の使い方は相続登記の義務化から2年の実務で、中古住宅の流通の動きは建築費の上昇と中古仲介への移り方で整理しています。
よくある質問
Q1. 空き家が3,000万戸あるというのは本当ですか。
総務省の令和5年住宅・土地統計調査では、空き家は900万戸です。そのうち、使う予定がはっきりしない「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」は385万戸です。
Q2. 株式会社でも空家等管理活用支援法人になれますか。
空家法23条では、空き家の管理や活用を図る活動を行うことを目的とする会社も指定の対象とされています。指定するのは市町村長なので、地元の市町村に要件を確かめてください。
Q3. 空き家の管理料は、売却の媒介報酬とは別に受け取れますか。
国土交通省のガイドラインでは、媒介契約とは別に業務内容や報酬を定めた契約を結び、媒介報酬とは別に空き家の管理に係る報酬を受け取ることも可能とされています。契約の書面で作業内容と報酬をはっきりさせておきます。
Q4. 市町村から指導を受けている空き家の管理を頼まれたらどうしますか。
ガイドラインでは、すでに指導・勧告の対象になっている空き家は想定されておらず、管理不全の状態を解消できるよう助言することが求められています。まずは修繕や片付けなど、状態を改善する相談から始めます。
出典(本文で参照している資料)
- 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果」
- 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」
- 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律 概要」
- 国土交通省「令和5年改正空家法に基づく取組が広がる(令和7年3月31日時点調査)」
- e-Gov法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法」(5条、13条、23条、24条)
- 国土交通省「不動産業による空き家対策推進プログラムについて」
- 国土交通省「不動産業者による空き家管理受託のガイドライン」
- 国土交通省「空き家等に係る媒介報酬規制の見直し」
- 法務省「相続登記の申請義務化について」
- 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
この記事は2026年10月7日時点の情報です。