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管理戸数200戸の壁とは|賃貸住宅管理業法の登録義務と、200戸以上で求められる業務・準備の手順

管理受託している賃貸住宅が200戸以上になると、賃貸住宅管理業法により国土交通大臣の登録が必要です。登録後は業務管理者の選任、契約前の重要事項説明、契約時の書面、家賃等の分別管理、オーナーへの定期報告などが求められます。条文を示しながら、200戸に近づいた会社の準備を整理します。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
管理戸数200戸の壁|賃貸住宅管理業の登録義務と、200戸で増える業務・準備の手順
目次

管理戸数の「200戸の壁」は、賃貸住宅管理業法で国土交通大臣の登録が必要になる境目です。管理受託している賃貸住宅が200戸以上になると、登録を受けずに賃貸住宅管理業を営むことはできません。登録した会社には、業務管理者の選任、契約前の重要事項説明、契約時の書面、家賃等の分別管理、オーナーへの定期報告などの義務がかかります。条文を示しながら、200戸に近づいた会社が何を準備するかを整理します。

200戸の壁の根拠になる条文

賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(以下、賃貸住宅管理業法)3条1項は、「賃貸住宅管理業を営もうとする者は、国土交通大臣の登録を受けなければならない」と定めています。ただし、事業の規模が国土交通省令で定める規模未満であるときは、この限りでないとされています。

その規模を定めているのが、同法の施行規則3条です。「賃貸住宅管理業に係る賃貸住宅の戸数が二百戸であること」とされています。つまり、管理戸数が200戸未満なら登録は義務ではなく、200戸以上になると登録が必要です。

経営の話として「200戸を超えると人手が回らなくなる」といった言い方を見かけることがあります。ただ、管理戸数と利益率や離職率の関係を示す公的な統計は確かめられませんでした。この記事では、根拠がはっきりしている法律上の境目として200戸を扱います。

登録を受けずに賃貸住宅管理業を営んだ場合は、41条1号により、1年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金、又はその両方の対象になります。11条に違反して他人に賃貸住宅管理業を営ませた場合(いわゆる名義貸し)も、同条3号の対象です。

登録の有無と義務の関係

状況登録12条〜21条などの義務
管理戸数200戸未満で、登録していない義務ではないかからない(義務の対象は登録を受けた「賃貸住宅管理業者」)
管理戸数200戸未満で、任意に登録した任意かかる(他の登録業者と同じ)
管理戸数200戸以上必要かかる

2条3項で、「賃貸住宅管理業者」は登録を受けて賃貸住宅管理業を営む者と定義されています。12条以下の義務は、この「賃貸住宅管理業者」に向けたものです。国土交通省の「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解釈・運用の考え方」(以下、解釈・運用の考え方)は、登録を受けた場合は管理戸数が200戸未満であっても、他の登録業者と同様に規制に服するとしています。なお、サブリースに関する誇大広告等の禁止(28条)や不当な勧誘等の禁止(29条)は「特定転貸事業者等」に向けた規定で、管理業の登録とは別にかかります。

200戸の数え方と「管理業務」の範囲

数え方は入居者との賃貸借契約の数が基準

解釈・運用の考え方では、戸数は「入居者との間で締結されることが想定される賃貸借契約の数をベースとして数える」とされています。空室も数えます。例として、10部屋のシェアハウスで4部屋に入居者がいて6部屋が空室の場合も、管理戸数は10戸と数えると示されています。

また、管理戸数が一時的にでも200戸以上になった場合、その時点で登録を受けていなければ賃貸住宅管理業を営めないため、一時的にでも200戸以上になる見込みがあれば登録を受けることが適当とされています。新しいオーナーからまとまった棟数を受託する予定がある場合は、受託の前に登録を済ませておく必要があります。

「管理業務」に当たるもの、当たらないもの

数える対象は、賃貸住宅管理業に係る賃貸住宅です。2条2項は、賃貸住宅管理業を「賃貸住宅の賃貸人から委託を受けて」次の業務を行う事業と定めています。

  • 1号:賃貸住宅の維持保全(点検、清掃その他の維持を行い、及び必要な修繕を行うこと)を行う業務。維持保全に係る契約の締結の媒介、取次ぎ又は代理を行う業務を含みます。
  • 2号:家賃、敷金、共益費その他の金銭の管理を行う業務。ただし、1号の業務と併せて行うものに限られます。

解釈・運用の考え方は、定期清掃業者、警備業者、リフォーム工事業者等が維持又は修繕のいずれか一方のみを行う場合や、入居者からの苦情対応のみを行い維持及び修繕を行っていない場合は、賃貸住宅の維持保全に当たらないとしています。受託している契約ごとに、維持と修繕の両方を受けているか、金銭の管理をしているかを確かめると、数えるべき戸数がはっきりします。判断に迷う契約があれば、申請先の地方整備局等に相談しておくと安心です。

登録の手続きと要件

国土交通省の賃貸住宅管理業法ポータルサイトの「よくある質問」では、次のように案内されています。

  • 申請は、原則として「賃貸住宅管理業登録等電子申請システム」で行う。
  • 登録までの期間は、原則として申請が地方整備局長等に到達した日の翌日から起算して90日。
  • 登録免許税は、申請1件あたり9万円。

登録の有効期間は5年で、5年ごとに更新を受けなければ効力を失います(3条2項)。更新を受けるときは、政令で定める額の手数料を納めます(3条5項)。

登録を拒否される主な場合

6条1項は、登録を拒否しなければならない場合を挙げています。200戸に近づいた会社が前もって準備したいのは、次の2つです。

  • 10号:賃貸住宅管理業を遂行するために必要な財産的基礎を有しない者。基準は施行規則10条で「財産及び損益の状況が良好であること」とされています。財産的基礎の考え方は、国土交通省が令和4年2月25日付の通知(国不参第90号)で明確化しています。
  • 11号:営業所又は事務所ごとに業務管理者を確実に選任すると認められない者。

このほか、破産して復権を得ない者、登録を取り消されてから5年を経過しない者、暴力団員等、役員にこれらに当たる者がいる法人なども、同項の各号で拒否の対象とされています。

登録後にかかる義務の一覧

条文内容準備するもの
12条 業務管理者営業所又は事務所ごとに1人以上選任。他の営業所等の業務管理者を兼ねられない要件を満たす人の確保
13条 契約前の書面と説明管理受託契約を結ぶまでに、施行規則31条の事項を書面で説明重要事項説明書の様式と説明の段取り
14条 契約時の書面結んだら遅滞なく、対象の賃貸住宅、実施方法、契約期間、報酬などを記載した書面を交付管理受託契約書(記載事項がそろえば兼ねられる)
15条 再委託管理業務の全部を他の者に再委託してはならない外注先との契約範囲の整理
16条 分別管理家賃等を自己の固有財産などと分けて管理家賃等の口座と帳簿
17条 従業者証明書従業者に携帯させ、請求があれば提示証明書の発行
18条 帳簿営業所等ごとに、委託者ごとの契約内容を記載して保存帳簿(電子でも可)
19条 標識営業所等ごとに公衆の見やすい場所に掲示標識
20条 定期報告管理業務の実施状況などを定期的に委託者へ報告報告の様式と期限の一覧
21条 秘密保持業務上知り得た秘密を正当な理由なく漏らさない。やめた後も同じ社内規程と従業者への周知

準備に時間がかかる4つの義務

業務管理者(12条)

業務管理者は、営業所又は事務所ごとに1人以上選任し、管理受託契約の内容の明確性や維持保全の実施方法の妥当性など、国土交通省令で定める事項について管理及び監督の事務を行わせます(12条1項)。施行規則13条が挙げる事項は、13条の説明と書面、14条の書面、維持保全の実施と家賃等の金銭の管理、18条の帳簿、20条の定期報告、21条の秘密保持、入居者からの苦情の処理などです。

要件は施行規則14条で定められています。管理業務に関し2年以上の実務の経験を有する者(又は国土交通大臣が同等以上の能力を有すると認めた者)で、次のどちらかに当たる人です。

  • 登録証明事業による証明を受けている者
  • 宅地建物取引士で、国土交通大臣が指定する管理業務に関する実務についての講習を修了した者

解釈・運用の考え方は、業務管理者が宅地建物取引士を兼ねるなど他の業務を兼ねること自体は法違反ではないとしたうえで、従業員の管理業務等について必要な指導、管理、監督の業務に従事できる必要があるとしています。選任した業務管理者の全員が欠けたときは、新たに選任するまで、その営業所等で管理受託契約を結べません(12条2項)。1人しかいない営業所では、退職や長期の休みに備えて、要件を満たす人をもう1人育てておくと安心です。

契約前の重要事項説明と契約時の書面(13条・14条)

管理受託契約を結ぶまでに、オーナーに書面を交付して説明します(13条1項)。説明事項は施行規則31条で、次の11項目です。

  1. 管理業者の商号、名称又は氏名、登録年月日と登録番号
  2. 管理業務の対象となる賃貸住宅
  3. 管理業務の内容及び実施方法
  4. 報酬の額並びにその支払の時期及び方法
  5. 報酬に含まれていない管理業務に関する費用で、通常必要とするもの
  6. 管理業務の一部の再委託に関する事項
  7. 責任及び免責に関する事項
  8. 委託者への定期報告に関する事項
  9. 契約期間に関する事項
  10. 入居者に対する管理業務の内容・実施方法の周知に関する事項
  11. 契約の更新及び解除に関する事項

解釈・運用の考え方は、説明を業務管理者本人が行うことまでは求めていませんが、業務管理者の管理及び監督の下に行う必要があり、業務管理者や一定の実務経験を有する者など、専門的な知識及び経験を有する者が行うことが望ましいとしています。説明から契約締結までは1週間程度の期間をおくことが望ましいとされ、契約を変更する場合は、変更のあった事項について書面を交付して説明すれば足りるとされています。テレビ会議等のITを使う説明は、示された事項をすべて満たす場合に限り、対面と同様に扱われます。

契約を結んだら、遅滞なく14条の書面を交付します。記載事項は、対象の賃貸住宅、管理業務の実施方法、契約期間、報酬、契約の更新又は解除の定めがあるときはその内容などです。必要な事項が書かれた契約書であれば、その契約書で14条の書面を兼ねられるとされています。13条と14条の書面は、オーナーの承諾を得て電磁的方法で提供することもできます(13条2項、14条2項)。

家賃等の分別管理(16条)

受け取った家賃、敷金、共益費などは、自己の固有財産や他の管理受託契約の金銭と分けて管理します(16条)。方法は施行規則36条で、家賃等を管理する口座を自己の固有財産を管理する口座と明確に区分し、かつ、どの管理受託契約に係る金銭かが帳簿(電磁的記録を含む)で直ちに判別できる状態で管理すること、とされています。

解釈・運用の考え方によると、家賃等を管理する口座は、固有財産の口座と分けていれば、複数の契約分を同じ口座にまとめても足ります。その場合でも、管理受託契約ごとに金銭の出入りを区別した帳簿を作るなど、勘定の上でも分けて管理する必要があります。会社の運転資金と家賃を同じ口座で動かしている場合は、200戸に届く前に口座を分け、オーナーごとの入出金を帳簿で追える形にしておきます。

オーナーへの定期報告(20条)

施行規則40条により、管理受託契約を結んだ日から1年を超えない期間ごとに、及び契約期間の満了後遅滞なく、その期間の管理業務の状況について、次の事項をオーナーに報告します。

  • 報告の対象となる期間
  • 管理業務の実施状況
  • 入居者からの苦情の発生状況及び対応状況

オーナーの承諾を得れば、電磁的方法で報告することもできます。報告の期限は契約の締結日から数えるため、契約ごとにずれます。契約の一覧に締結日と次の報告期限を並べておくと、漏れを防げます。苦情の発生状況と対応状況を書くには、日々の問い合わせや修繕の受付を記録しておく必要があります。オーナーへの報告の作り方は、オーナーへの月次報告の記事も参考にしてください。

200戸に近づいたときの準備の手順

登録までの期間が原則90日とされていることを考えると、200戸に届く見込みの時期より数か月前には準備を始めたいところです。以下は手順の例です。

手順1. 管理戸数を契約単位で数え直す

受託契約ごとに、対象の建物と部屋数、維持と修繕の両方を受けているか、家賃等の金銭を扱っているかを一覧にします。空室も含めて数えます。受託の予定がある物件も加えて、200戸に届く時期の見込みを出します。

手順2. 業務管理者の候補を決める

営業所ごとに、2年以上の実務経験があり、登録証明事業の証明を受けているか、宅建士で指定の講習を修了しているかを確かめます。講習や試験の日程は、申請の予定日から逆算します。

手順3. 重要事項説明書と管理受託契約書をそろえる

施行規則31条の11項目と、14条の記載事項が入っているかを点検します。報酬に含まれない費用、再委託の範囲、責任と免責は、オーナーとの行き違いが起きやすい項目です。説明から締結までの期間をおく段取りも決めておきます。

手順4. 口座と帳簿を分ける

家賃等の口座を固有財産の口座と分け、契約ごとに入出金を区別できる帳簿を作ります。18条の帳簿には、施行規則38条により、委託者の名称、契約年月日、対象の賃貸住宅、受託した業務の内容、報酬の額、特約その他参考となる事項を記載します。帳簿は各事業年度の末日で閉鎖し、閉鎖後5年間保存します。パソコンのファイル等に記録し、必要に応じて紙面に表示できるときは、その記録で帳簿に代えられます。

手順5. 定期報告の様式と期限を決める

報告の対象期間、実施状況、苦情の発生状況と対応状況を書く様式を作り、契約ごとの報告期限を一覧にします。電磁的方法で送る場合は、オーナーの承諾を取る手順も決めます。

手順6. 社内の書類と掲示物を用意して申請する

従業者証明書(17条)、営業所等の標識(19条)、秘密保持の社内規程(21条)を用意し、電子申請システムで申請します。財産的基礎の基準に当てはまるか不安がある場合は、決算書をもとに申請先へ事前に相談しておくと、手戻りを防げます。

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このテーマの全体像は「不動産の業務効率化ガイド2026|5段階の進め方と法令チェックポイント・関連記事一覧」にまとめています。

よくある質問

Q1. 200戸未満でも登録したほうがよいですか

200戸未満の登録は任意です。登録すると、200戸未満でも他の登録業者と同じく12条以下の義務がかかります。重要事項説明や定期報告を法に沿って行う体制を整えられるか、今後の受託の見込みはどうかを合わせて判断するのが現実的です。

Q2. 一時的に200戸を超えそうなときはどうしますか

解釈・運用の考え方は、一時的にでも200戸以上になる見込みがあれば登録を受けることが適当としています。登録まで原則90日かかるため、まとまった受託の話が出た時点で準備を始めます。

Q3. 業務管理者は宅建士の仕事と兼ねられますか

兼ねること自体は法違反ではないとされています。ただし、従業員が行う管理業務等について必要な指導、管理、監督の業務に従事できる必要があります。また、業務管理者は他の営業所又は事務所の業務管理者を兼ねることはできません(12条3項)。

Q4. 重要事項説明はオンラインでもできますか

テレビ会議等のITを使う説明は、解釈・運用の考え方に示された事項をすべて満たす場合に限り、対面による説明と同様に扱われます。書面は、オーナーの承諾を得て電磁的方法で提供できます(13条2項)。

Q5. 登録しないまま200戸以上を管理するとどうなりますか

3条1項に違反して賃貸住宅管理業を営んだ場合、41条1号により、1年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金、又はその両方の対象になります。

出典(本文で参照している資料)

この記事は2026年10月7日時点の情報です。

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