家賃査定 読了 13分

家賃査定をオーナー提案にまとめる型|提案書の構成と、賃貸住宅管理業法・宅建業法で気をつける点

家賃査定の結果は、金額だけでなく、結論と3つの案、比較物件、空室損失を含めた収支、見直す条件をまとめた提案書にするとオーナーが判断しやすくなります。宅建業法47条の2、賃貸住宅管理業法13条・20条を踏まえた書き方の注意も説明します。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
家賃査定をオーナー提案にまとめる型|提案書の構成と管理業法・宅建業法の注意点
目次

家賃査定の結果は、金額だけを伝えるのではなく、「結論と3つの案」「比較物件」「空室損失を含めた収支」「見直す条件」の4つをそろえた提案書にすると、オーナーが自分で判断できるようになります。査定は数字を出す作業で、提案はオーナーに選んでもらうための材料をそろえる作業です。この記事では、提案書の構成、書き方の例、宅地建物取引業法と賃貸住宅管理業法で気をつける点を順に説明します。

査定と提案の違い

査定は「この部屋の家賃はどのくらいか」を出す作業です。提案は「オーナーが何を決めればよいか」を示す作業です。オーナーが決めることは、家賃の金額だけではありません。

  • どの家賃で募集を始めるか
  • 決まらなかったとき、いつ、どう見直すか
  • 設備の追加や内装の手入れに費用をかけるか
  • 礼金・敷金・フリーレントなどの条件をどうするか

家賃の金額は、これらの選択とつながっています。例えば、設備を追加するなら家賃の案は変わりますし、早く埋めることを優先するなら、見直しの時期も早めに置くことになります。

金額だけの査定書では、これらの判断材料がそろいません。オーナーが他社の査定と比べるときも、金額の高い低いしか比べられなくなります。提案書は、判断の材料を順番に並べたものと考えると作りやすくなります。

提案書を作る前に聞いておくこと

同じ査定結果でも、オーナーの考え方によって勧める案は変わります。提案書を作る前に、次のことを聞いておくと、案の並べ方と勧める理由が書きやすくなります。

  • 優先すること:家賃の水準を保ちたいのか、空室の期間を短くしたいのか。
  • 費用をかけられる範囲:設備の追加や内装の手入れに、どこまで費用をかけられるか。
  • 保有の予定:長く持ち続けるのか、売却も考えているのか。家賃の置き方の考え方が変わります。
  • 入居者の条件:ペット、楽器、外国籍の方、高齢の方などの受け入れをどう考えるか。
  • 連絡の方法と頻度:経過報告をどの方法で、どのくらいの間隔で受け取りたいか。

聞いた内容は、物件ごとの記録に残しておきます。次に査定をするときに同じことを聞き直さずに済み、担当者が替わっても考え方を引き継げます。入居者の条件は、決まるまでの期間の見込みにも、募集図面や広告の書き方にも関わるため、理由とあわせて確認してください。

提案書の構成

提案書は、1枚目に結論を置き、2枚目以降に根拠を並べる形が読みやすくなります。構成の例を示します。

結論と3つの案

最初に、どの案を勧めるかと、その理由を1〜2文で書きます。そのうえで、根拠の範囲の上側・中央・下側の3案を並べます。案を1つにしないのは、オーナーの考え(早く埋めたいか、家賃を優先したいか)によって選ぶ案が変わるからです。

比較物件の一覧

比較した物件ごとに、立地、築年数、間取り、設備、家賃、礼金・敷金、募集中か成約済みか、調べた日付を表にします。物件を特定できる情報の扱いには注意し、オーナーへの説明に必要な範囲で示します。

条件の違いと補正の理由

対象の部屋と比較物件の違い(設備、築年数、階数、向きなど)を項目ごとに書き、プラス・マイナスの理由を添えます。金額の補正は、自社の事例などの根拠があるものだけにします。

空室損失を含めた収支の比較

3案それぞれについて、決まるまでの期間の見込みと、一定期間の家賃収入を並べます。前提(入居期間、決まるまでの期間)は表にして、前提を変えると結論が変わることも書きます。計算の考え方は家賃査定は相場だけで決めないで説明しています。

見直す時期と条件

「募集開始から○週間で、問い合わせ・内見が○件に届かなければ次の案に移る」というように、見直しの時期と指標を書きます。見直しを最初から組み込んでおくと、後で家賃を下げることになっても「撤回」ではなく予定どおりの手順として説明できます。

オーナーに決めてもらうこと

最後に、オーナーに決めてもらう項目を箇条書きにします。案の選択、見直し条件への同意、設備や条件の変更の有無などです。返事の期限を書く場合も、急がせる書き方は避けます。

提案書の書き方の例

項目書く内容書かないこと
結論勧める案と理由を1〜2文で「確実に決まります」などの言い切り
3つの案金額、決まるまでの見込み期間、その根拠根拠のない期間の見込み
比較物件条件と家賃、募集中か成約済みか、調べた日付都合のよい物件だけを選んだ一覧
補正の理由違う項目と、プラス・マイナスの理由理由のない上乗せや値引き
収支の比較前提の表と、前提を変えたときの結論の変化前提を書かない合計額だけ
見直し条件時期、見る指標、次の案「状況を見て判断」だけの書き方
決めてもらうこと選択する項目の一覧と、相談の窓口返事を急がせる書き方

1枚目の書き方の例を示します。金額は仮の数字です。

おすすめは中央の案(家賃6万円)です。比較した同じ駅・同じ間取りの部屋の募集家賃は5.8万〜6.2万円で、この部屋は設備が多い一方で築年数が古いため、中央が妥当と考えました。募集開始から3週間で内見が少ない場合は、下側の案に移ることをご提案します。どの案にするか、見直し条件でよいかをご相談させてください。

提案で気をつける法令

宅地建物取引業法:断定的判断と不実告知

宅地建物取引業法47条の2第1項は、宅地建物取引業に係る契約の締結の勧誘をするに際し、利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断を提供する行為を禁じています。47条1号ニは、借賃等の対価の額など相手方の判断に重要な影響を及ぼす事項について、故意に事実を告げず、または不実のことを告げる行為を禁じています。賃貸の媒介を任せてもらうための提案でも、「この家賃なら確実に満室」「収入が増えるのは間違いない」といった書き方は避け、見込みは範囲と根拠で示してください。

同法施行規則16条の11第1号ロは、正当な理由なく、契約を締結するかどうかを判断するために必要な時間を与えることを拒む行為を挙げています。提案書に返事の期限を書くときも、オーナーが考える時間を確保してください。

賃貸住宅管理業法:契約前の書面説明

家賃の提案と一緒に管理の受託を提案する場合は、賃貸住宅管理業法も関係します。同法13条は、管理受託契約を締結しようとするとき、契約を締結するまでに、国土交通省令で定める事項について書面を交付して説明することを求めています。同法施行規則31条は、管理業務の内容及び実施方法、報酬の額並びにその支払の時期及び方法、責任及び免責に関する事項、委託者への報告に関する事項などを挙げています。

国土交通省の「解釈・運用の考え方」は、この説明は業務管理者が行うことは必ずしも必要ないものの業務管理者の管理及び監督の下に行う必要があること、説明から契約締結までに1週間程度の期間をおくことが望ましいことを示しています。家賃の提案と管理の契約の話を同じ日にまとめて決めてもらう進め方は、見直したほうがよい場面があります。

入居中の家賃の見直しを含めるとき

入居中の部屋について、更新に合わせて家賃を見直す提案をすることもあります。借地借家法32条1項は、租税その他の負担の増減、土地・建物の価格の上昇・低下その他の経済事情の変動、近傍同種の建物の借賃との比較で借賃が不相当となったときに、当事者が将来に向かって増減を請求できると定めています。一定期間増額しない特約があればそれに従い、定期建物賃貸借で借賃の改定に係る特約がある場合は、38条9項により32条は適用されません。

国土交通省の賃貸住宅標準契約書(平成30年3月版・連帯保証人型)の第4条3項も、同じ3つの場面で、協議の上で賃料を改定できるとしています。提案書には、どの事情にあたるのか、入居者との協議をどう進めるのか、合意できなかったときにどうするのかを分けて書きます。複数の部屋を一度に見直す場合は、退去が重なったときの空室損失も収支の比較に入れてください。

提案した後の報告

提案が通った後は、見直し条件に沿って経過を報告します。賃貸住宅管理業法20条は委託者への定期報告を求め、同法施行規則40条1項は、管理受託契約を締結した日から1年を超えない期間ごとに、報告の対象となる期間、管理業務の実施状況、入居者からの苦情の発生状況及び対応状況を記載した管理業務報告書を交付して説明することを定めています。法定の報告とは別に、募集中の部屋については、問い合わせ・内見・申込みの件数を、見直し条件で決めた時期に共有すると、次の判断がしやすくなります。

見直し条件にあたったときの連絡は、短く、事実と次の案だけを書きます。例えば「募集開始から3週間で、問い合わせ2件、内見0件でした。最初にご相談した条件にあたるため、2案目(家賃5.8万円)への変更をご検討ください。周辺で同じ間取りの募集が2件増えています。」のように、数字、決めていた条件、変化の理由、次の案の順に書くと、オーナーが判断しやすくなります。文中の数字は書き方の例です。

筆者は自社で賃貸住宅226戸を所有し、そのうち約100戸を自主管理しています。オーナーとして提案書を見るときに知りたいのは、勧める理由、選ばなかった案との違い、うまくいかなかったときの次の手です。この3つが1枚目で分かる提案書を目標にしてください。

ウルスタくんでは、物件・入居者の管理、更新が近い契約の一覧、オーナーへの送金明細、賃貸借契約書・重要事項説明書など24種の書類と電子サインを扱えます。賃料査定の機能で比較物件をそろえ、提案書の根拠の表を作る材料にすることもできます。数字の確認と補正の理由は、担当者が書き添えてください。

説明の言葉づかいは家賃査定でオーナーの信頼を失う説明で、提案の準備を早める方法は家賃提案に時間がかかる理由と短くする手順で説明しています。

よくある質問

Q1. 提案書は何ページくらいがよいですか?

決まった量はありません。1枚目で結論と3案、見直し条件が分かり、2枚目以降で根拠を確認できる形にすると、短い時間でも判断しやすくなります。

Q2. 3案ではなく1案だけを出してはいけませんか?

1案でも構いませんが、オーナーが選べる余地がないと、他社の金額と比べたときに説明が難しくなります。1案にする場合も、見直したときの次の案は書いておくと安心です。

Q3. 管理の受託と家賃の提案を同じ日に済ませてもよいですか?

家賃の提案自体はいつでもできますが、管理受託契約の重要事項説明について、国土交通省は説明から契約締結までに1週間程度の期間をおくことが望ましいとしています。契約の締結は、説明の後に日を改めて行う段取りを検討してください。

Q4. 収支の比較で見込みが外れた場合、責任を問われますか?

見込みを言い切らず、前提と根拠を書いておくことが大切です。個別の責任の判断は契約内容や事情によるため、心配な場合は弁護士などの専門家に相談してください。

Q5. 他社の提案書と比べられたときはどうしますか?

金額の高い低いではなく、比較物件の選び方、補正の理由、見直し条件の有無を並べて比べてもらうよう伝えます。他社の内容を否定するより、自社の提案書のどこに根拠が書いてあるかを示すほうが、オーナーは判断しやすくなります。

出典(本文で参照している資料)

この記事は2026年10月7日時点の情報です。

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