不動産会社の月次の売上予測は、「確定分+段階別の見込み(段階ごとの件数×その段階からの月内成約率×1件あたり報酬)+月内に新しく発生して決まる分」を足して作り、仲介は1件ごとに報酬告示の上限を超えていないかで確かめます。管理料は、管理受託契約の積み上げから別に予測します。この記事では、売上の分け方、予測の式、仮の数字による計算例、報酬上限による確認、月の途中での更新と振り返りの手順を説明します。
売上を仲介と管理に分けて予測する
中小の不動産会社の売上は、性質の違う売上が混ざっています。まとめて「先月並み」と置くと、外れたときに原因が分かりません。最初に、次のように分けます。
| 売上の種類 | 決まり方 | 予測の作り方 |
|---|---|---|
| 賃貸仲介の報酬 | 案件ごと。件数が多く、反響から契約までが比較的短い | 段階ごとの件数と成約率から見込む |
| 売買仲介の報酬 | 案件ごと。1件が大きく、契約から決済まで期間がある | 1件ずつ、受け取る月と金額を置く |
| 管理料 | 管理受託契約にもとづき毎月発生 | 契約の一覧から積み上げ、増減を足し引きする |
| その他の手数料など | 契約や依頼の内容による | 過去の実績と、決まっている予定から置く |
もう1つ先に決めるのは、売上をいつの月に入れるかです。契約を結んだ月か、報酬を受け取った月か、会社の会計の方針に合わせて決め、予測と実績で同じ基準を使います。基準がずれていると、予測が当たっていても外れたように見えます。
予測の式と段階別の成約率の出し方
案件ごとに決まる仲介の売上は、次の式で予測します。
月の予測=確定分+Σ(段階ごとの件数×その段階からの月内成約率×1件あたり報酬)+月内に新しく発生して決まる分
- 確定分:すでに契約が済み、その月の売上になることが決まっているもの。
- 段階別の見込み:申込、内見済み、反響のみ、といった段階にいる案件の件数に、その段階から月末までに契約する割合をかけたもの。
- 月内に新しく発生して決まる分:予測を作った時点ではまだ反響も来ていないのに、その月のうちに契約まで進む案件。過去の月の平均から置きます。
段階別の月内成約率は自社の記録から出す
段階別の月内成約率は、「月初にその段階にいた案件のうち、その月の月末までに契約した割合」です。過去6か月分ほど、月初の時点で段階ごとに何件あったかと、そのうち月内に契約した件数を数えて割ります。
他社の数字や一般的な目安を当てはめないことが大切です。物件の種類、地域、反響元、担当者の人数で、段階ごとの成約率は大きく違います。月初の時点の段階を記録していなかった場合は、顧客ごとに段階が変わった日付が残っていれば、さかのぼって数えられます。
月の途中で予測を更新するときは、残りの日数が少ない分、同じ段階でも月内に契約する割合は下がります。月中の更新用には、「15日の時点にその段階にいた案件のうち、月末までに契約した割合」を別に出しておくと、更新の精度が上がります。
賃貸仲介の計算例
仮の数字で計算例を示します
次の数字はすべて説明のための仮の数字で、実在の会社の実績ではありません。月初の時点で、賃貸仲介の案件が次のようにあるとします。1件あたり報酬は、仮に70,000円とします。
| 段階 | 件数(仮) | 月内成約率(仮) | 見込み件数 | 見込み売上 |
|---|---|---|---|---|
| 申込済み(審査中など) | 8件 | 80% | 6.4件 | 448,000円 |
| 内見済み・申込前 | 20件 | 20% | 4.0件 | 280,000円 |
| 反響のみ・内見前 | 40件 | 5% | 2.0件 | 140,000円 |
| 月内に新しく発生して決まる分 | - | 過去6か月の平均3件 | 3.0件 | 210,000円 |
| 合計 | - | - | 15.4件 | 1,078,000円 |
この会社の月初の予測は、約108万円です。売上目標が150万円なら、月初の時点で約42万円、件数にして6件ほど足りないことが分かります。不足を埋める手段は、反響を増やす、内見済みの案件の申込を後押しする、反響のみの案件を内見につなげる、のどれかです。どの段階に手を打つかは、不動産営業のKPI設計で説明している転換率の考え方で選べます。
ここで「1件あたり報酬70,000円」は平均として置いています。家賃の高い物件が申込段階に偏っているときは、平均ではなく、申込済みの案件は1件ずつ報酬を積み上げるほうが正確です。
報酬告示の上限で予測を確かめる
仲介の売上には、法律で上限があります。予測表の1件ごとの金額が上限を超えていれば、その予測は実現しません。
宅地建物取引業法46条1項は、売買・交換・貸借の代理や媒介で受け取れる報酬の額を国土交通大臣が定めるとし、2項で、その額をこえて報酬を受けてはならないとしています。この額を定めているのが、国土交通省の報酬告示(昭和45年建設省告示第1552号、令和6年7月1日施行)です。以下の金額は、消費税等相当額を含む上限です(課税事業者の場合)。
貸借の媒介(告示第四・第九)
貸主・借主の双方から受け取る報酬の合計は、借賃1か月分の1.1倍以内です。居住用の建物では、依頼を受けるときに依頼者の承諾を得ている場合を除き、一方から受け取れるのは借賃1か月分の0.55倍以内です。
長期間使われていない空家等の貸借の媒介では、媒介に要する費用を勘案して、上の上限を超えて受け取れる特例があり、貸主と借主から受け取る合計の上限は借賃1か月分の2.2倍です(借主から受け取る額は1.1倍まで、居住用で承諾がなければ0.55倍まで)。国土交通省は、特例を使うには媒介契約の締結に際してあらかじめ、上限の範囲内で報酬額を依頼者に説明し、合意しておく必要があるとしています。
売買・交換の媒介(告示第二・第七)
依頼者の一方から受け取れる報酬は、代金(消費税等相当額を含まない額)のうち、200万円以下の部分に5.5%、200万円を超え400万円以下の部分に4.4%、400万円を超える部分に3.3%をかけて合計した額以内です。代金が400万円を超えるときは、「代金×3.3%+66,000円」と同じ額になります。
代金が800万円以下の宅地・建物(低廉な空家等)の売買・交換の媒介では、媒介に要する費用を勘案して、上の計算額を超えて受け取れる特例があります。依頼者から受け取れる額の上限は、30万円の1.1倍(330,000円)です。こちらも、媒介契約の締結に際してあらかじめ、報酬額を説明して合意しておく必要があります。
予測表に「上限額」の列を作る
予測表には、案件ごとに「見込み報酬」と並べて「上限額」の列を作り、見込みが上限を超えていないかを確かめます。仮の数字で計算例を示します。代金700万円の売買で売主から受け取る報酬を330,000円と見込んでいても、低廉な空家等の特例について媒介契約の締結時に合意していなければ、上限は2,000,000円×5.5%+2,000,000円×4.4%+3,000,000円×3.3%=110,000円+88,000円+99,000円=297,000円です。予測は297,000円に直します。
なお、告示第十一は、依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額を、報酬とは別に受け取れる例外としています。名目だけで上限の外に置ける売上ではないため、予測に入れるときは、どの広告の費用かが依頼者との間で確認できているものに限ります。
売買仲介と管理料の予測
売買仲介:1件ずつ受け取る月と金額を置く
売買は件数が少なく、1件の金額が大きいため、成約率をかけた平均で予測すると、外れたときの幅が大きくなります。案件ごとに、売買契約の予定日、決済の予定日、受け取る予定の報酬と受け取る月を1行ずつ置きます。
報酬をいつ、どう受け取るかは、媒介契約で決めた内容に従います。売買・交換の媒介契約の書面には「報酬に関する事項」を記載することになっています(宅地建物取引業法34条の2第1項7号)。予測表を作るときは、その記載を確認して、受け取る月を置きます。
仮の数字で計算例を示します。代金3,000万円の物件で売主から報酬を受け取る場合、上限は3,000万円×3.3%+66,000円=1,056,000円です。決済が月をまたぐ可能性があるなら、予測表では「今月」と「来月」の両方の欄に可能性を書き、確率の高いほうに金額を置きます。
売主から専任媒介を受けている物件は、有効期間が3か月を超えられません(同法34条の2第3項)。期間の満了が予測の対象月に入る物件は、更新されない可能性も含めて見込みます。
管理料:契約の一覧から積み上げる
賃貸管理の管理料は報酬告示の対象ではなく、オーナーとの管理受託契約で決まります。予測は、次の式で積み上げます。
管理料の予測=前月の管理料+新しく受託する契約の分−解約される契約の分±空室の増減による変動
管理料を家賃の一定割合で受け取る契約では、空室が増えると管理料も減ります。定額で受け取る契約なら、空室の影響は受けません。契約ごとに、どちらの方式かを予測表の列に入れておきます。
仮の数字で計算例を示します。家賃の5%を管理料とする契約で、前月に集めた家賃の合計が12,000,000円なら、管理料は600,000円です。今月、家賃80,000円の部屋が3室退去予定なら、240,000円×5%=12,000円の減少を見込みます。ここでの料率は計算のための仮の数字で、相場を示すものではありません。
月初・月中・月末の運用
- 月初:予測を作る。段階ごとの件数を数え、段階別の月内成約率と1件あたり報酬で見込みを出します。売買は1件ずつ、管理料は契約の一覧から積み上げます。
- 月中:予測を更新する。15日前後に、確定分を入れ替え、残りの案件に月中用の成約率をかけ直します。不足が見えたら、どの段階に手を打つかをここで決めます。
- 月末:予測と実績を比べる。差は「件数のずれ」「成約率のずれ」「1件あたり報酬のずれ」に分けて記録します。毎月の誤差の率は「(実績−予測)÷予測」で出します。
- 四半期ごと:成約率を出し直す。直近6か月の記録で段階別の成約率を出し直し、季節による違いは、前年の同じ月の記録と比べて確かめます。
仮の数字で計算例を示します。先ほどの月初の予測1,078,000円に対して、実績が14件・980,000円だったとします。誤差の率は(980,000円−1,078,000円)÷1,078,000円=−9.1%です。1件あたり報酬は70,000円で予測どおりなので、ずれの原因は件数です。段階ごとに見ると、申込済みの8件からの契約が、見込みの6.4件に対して5件だったとすれば、審査の否決や申込の取り下げが多くなかったかを確かめます。こうして、ずれた段階を特定してから成約率を直します。
予測の元になるのは、顧客ごとの段階と、段階が変わった日付の記録です。ウルスタくんの顧客管理のような顧客の一覧に段階と日付を残しておくと、月初の件数を数え直す手間が減ります。管理料の側は、物件・入居者の管理と入金の記録から、退去予定や更新が近い契約を拾えます。段階の定義と記録のしかたは営業パイプラインの段階管理で、案件ごとの利益まで見る方法は案件別の採算管理で説明しています。
このテーマの全体像は「不動産の業務効率化ガイド2026|5段階の進め方と法令チェックポイント・関連記事一覧」にまとめています。
よくある質問
Q1. 過去の記録がほとんどありません。どう始めればよいですか?
今月から、顧客ごとに段階と日付を記録し始めます。最初の数か月は、段階別の成約率を担当者の見立てで仮に置き、記録がたまったら実績の数字に置き換えます。仮に置いた数字は、予測表にその旨を書いておきます。
Q2. 予測はどのくらい当たれば十分ですか?
一律の基準はありません。予測の目的は、月の途中で不足に気づき、手を打つことです。外れた月は、件数・成約率・単価のどこがずれたかを記録し、次の予測に反映させることのほうが大切です。
Q3. 借主から借賃1か月分の1.1倍を受け取る前提で予測してもよいですか?
居住用の建物の貸借の媒介では、依頼を受けるときに依頼者の承諾を得ている場合を除き、一方から受け取れるのは借賃1か月分の0.55倍以内です。承諾を得ている案件だけを1.1倍で置き、それ以外は0.55倍で置きます。
Q4. 売上予測と資金繰りの予測は同じでよいですか?
分けて作ります。売上を契約の月に計上していても、入金が翌月になることがあります。資金繰りの予測には、入金の予定月で金額を置き直したものを使います。
出典(本文で参照している資料)
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第34条の2・第46条)
- 国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(昭和45年建設省告示第1552号、令和6年7月1日施行)
- 国土交通省「空き家等に係る媒介報酬規制の見直し」
この記事は2026年10月7日時点の情報です。