不動産仲介の集客は、ポータルサイト・自社サイト・紹介・SNSなどの経路を並べる前に、どの経路にも共通してかかる広告のルールと、反響を受けた後の対応の仕組みをそろえることが先です。宅建業法32条(誇大広告)・33条(広告開始時期)・34条(取引態様の明示)、不動産の表示に関する公正競争規約、景品表示法のステルスマーケティング規制を軸に、経路ごとの注意点と、詳しく説明したコラムへの案内をまとめました。
どの集客経路にも共通する広告のルール
集客の経路が増えるほど、同じ物件の情報があちこちに載ります。1か所の誤りや放置が、そのまま広告の違反になるおそれがあります。まず、どの経路にも共通するルールを押さえます。
| ルール | 根拠 | 中身 |
|---|---|---|
| 誇大広告の禁止 | 宅建業法32条 | 所在、規模、形質、利用の制限、環境、交通、代金・借賃、支払方法などについて、著しく事実に相違する表示や、実際より著しく優良・有利と誤認させる表示をしない |
| 広告開始時期の制限 | 宅建業法33条、表示規約5条 | 工事完了前の物件は、開発許可や建築確認などの処分の後でなければ広告しない |
| 取引態様の明示 | 宅建業法34条 | 広告をするときと注文を受けたときに、売主・貸主・代理・媒介(仲介)の別を明らかにする |
| 特定用語の使用基準 | 表示規約18条2項 | 「最高」「格安」「完全」「日本一」「厳選」「完売」などは、裏付ける資料がない限り使わない。「最高」「格安」などは根拠となる事実の併記も必要 |
| おとり広告の禁止 | 表示規約21条 | 存在しない物件、取引の対象となり得ない物件、取引する意思がない物件を表示しない |
| ステルスマーケティングの禁止 | 景品表示法5条3号、令和5年内閣府告示第19号(2023年10月1日施行) | 会社が関わった投稿や口コミは、広告であることが分かるように表示する |
| 広告メールの送信ルール | 特定電子メール法3条・4条 | 同意した人などに限って送り、配信停止に応じ、送信者の名称などを表示する |
不動産の表示に関する公正競争規約(以下「表示規約」)は、景品表示法36条にもとづき公正取引委員会と消費者庁長官の認定を受けた業界のルールです。表示規約4条5項は、規約の対象となる「表示」の1つ目にインターネットによるものを挙げています。ポータルサイトだけでなく、自社サイト、SNS、Googleビジネスプロフィールの物件紹介も、同じ基準で確認するのが安全です。
筆者は宅地建物取引士で、自社で賃貸住宅226戸を所有し、約100戸を自主管理しています。この記事では、経路ごとの反響数や成約率の数字は載せていません。会社や地域によって大きく変わり、公的な統計で確かめられないためです。
集客経路ごとの特徴と注意点
ポータルサイト
物件を探す人が最初に使うことの多い経路です。掲載の手続きはポータルサイトごとに決まっていて、各社に独自の掲載基準もあります。注意したいのは、成約後の掲載の放置です。表示規約21条のおとり広告にあたるおそれがあるため、成約や募集停止の連絡を受けた日に掲載を止める運用を決めます。物件情報の鮮度の管理は賃貸のおとり広告を防ぐ物件情報の管理で、募集図面の書き方はマイソクの必須記載事項と物上げにつながる募集情報の書き方で説明しています。
自社サイト(検索からの流入)
自社サイトは、掲載の基準を自社で決められる一方、物件情報の更新も自社の責任です。物件ページを置くなら、取引態様、必要な表示事項、更新日を載せ、成約した物件は速やかに外します。地域名で検索されるページや、地域の暮らしの情報をまとめたページは、効果が出るまで時間がかかります。進め方は不動産会社のSEO対策にまとめています。
Googleビジネスプロフィール
会社名で検索した人や、地図で近くの不動産会社を探した人に、所在地・営業時間・口コミが表示されます。Googleのガイドラインは、ビジネス名にキーワードや地域名を足すことを認めていません。口コミについては、謝礼や割引と引き換えの依頼、社員や家族による投稿、肯定的な口コミだけを選んで募る行為をポリシーで禁じています。詳しくはGoogleビジネスプロフィールの整え方で説明しています。
紹介
過去のお客様、オーナー、取引先からの紹介です。紹介を受け付ける窓口、紹介者へのお礼の決め方、紹介された人の情報の扱いを決めておきます。紹介された人の個人情報は、本人に利用目的を伝えて扱います(個人情報保護法21条)。お礼に物品や金銭を渡す場合、条件によっては不動産業の景品規約の対象になりうるため、金額を決める前に確かめます。制度の作り方は不動産の紹介制度の作り方にまとめています。
SNS(Instagramなど)
物件の紹介投稿は、取引態様の明示と誇大表現の確認がポータルサイトと同じように必要です。社員が個人アカウントで担当物件を紹介する場合や、入居者に投稿を依頼する場合は、ステルスマーケティング告示との関係を確認します。消費者庁のQ&Aは、所属を書くだけでは、事業者の表示であることが明瞭とは必ずしもいえないとしています。運用の手順はInstagramで物件を紹介するときのルールと運用で説明しています。
メール・LINE
広告や宣伝のメールは特定電子メール法の対象で、あらかじめ同意した人などに限って送れます(3条1項)。同意の記録の保存(3条2項)、配信停止への対応(3条3項)、送信者の名称などの表示(4条)も必要です。LINEのメッセージが同法の対象になるかは、同法2条1号の「総務省令で定める通信方式」の解釈によるため、この記事では確認できていないため断定しません。運用を決める前に、総務省・消費者庁の資料や専門家に確認してください。いずれの経路でも、同意を得た人に送り、配信停止やブロックの意思を尊重する運用にそろえておくと安全です。
セミナー
投資用不動産の売買では、セミナーから個別相談につなげる方法があります。セミナーや個別相談は契約の勧誘の場面にあたるため、利益が確実と誤解させる断定的判断の提供(宅建業法47条の2第1項)や、勧誘目的を告げない勧誘(施行規則16条の11第1号ハ)に注意します。詳しくは投資用不動産セミナーの集客と注意点で説明しています。
反響を受けた後の対応の仕組み
集客の経路をいくら増やしても、問い合わせへの返信が遅れたり、担当者の記憶だけで追いかけたりすると、機会を逃します。経路が違っても、受けた後の流れは1つにそろえます。
- 受付を1か所に集める。ポータルサイト、自社サイトのフォーム、電話、SNSのDMなど、どこから来た問い合わせも同じ顧客管理の記録に入れ、経路を記録します。
- 最初の返信の期限を決める。営業時間内と時間外で期限を分け、担当者が不在のときの代わりを決めます。期限の決め方は反響への返信時間の決め方と初動の遅れが招く損失で説明しています。
- 最初の返信で取引態様を伝える。宅建業法34条2項は、注文を受けたときに遅滞なく取引態様を明らかにするよう求めています。
- 募集状況を確かめてから案内する。問い合わせのあった物件がすでに成約していたら、そのことを正直に伝えます。成約済みの物件を入口にほかの物件へ誘導する運用は、おとり広告の問題につながります。
- 断られたら記録して止める。メールの配信停止や、勧誘を断られた日を記録し、担当者が替わっても連絡しない仕組みにします。
顧客管理の仕組みの選び方は不動産CRMの導入ガイドで、顧客データの扱いは改正個人情報保護法と顧客データ管理で説明しています。
経路ごとの効果の測り方
経路の良し悪しは、問い合わせの数だけでなく、来店、申込み、契約まで進んだ数と、かかった費用・時間で比べます。仮の数字で計算例を示します。
| 経路(仮の例) | 月の費用 | 月の作業時間 | 契約数 | 契約1件あたり |
|---|---|---|---|---|
| 経路A | 20万円 | 10時間 | 4件 | 5万円・2.5時間 |
| 経路B | 2万円 | 20時間 | 2件 | 1万円・10時間 |
この例では、経路Aは費用がかかる一方で時間は少なく、経路Bは費用は少ない一方で時間がかかります。どちらがよいかは、社内の人手と、1時間あたりの人件費で変わります。比べるためには、問い合わせを受けた時点で経路を記録しておくことが欠かせません。計算の考え方は顧客獲得コストの計算にまとめています。
小さな会社が取り組む順番の例
決まった正解はありませんが、少人数の会社で無理なく進める順番の例を示します。
- 受け皿を整える。問い合わせの記録と返信の期限を先に決めます。集客を増やしても、受けきれなければ意味がありません。
- 広告のチェック表を作る。この記事の最初の表を、社内のチェック表にします。どの経路の広告も同じ表で確かめます。
- 会社の基本情報をそろえる。自社サイト、Googleビジネスプロフィール、SNSのプロフィールで、会社名、所在地、電話番号、営業時間、免許番号の表記をそろえます。
- 今の主な経路の運用を見直す。多くの会社ではポータルサイトです。成約後の掲載の止め方と、募集図面の正確さを点検します。
- 1つずつ経路を足す。紹介、自社サイト、SNSなどを、記録できる範囲で1つずつ増やし、数か月ごとに費用と時間を比べます。
ウルスタくんでは、物件・入居者の管理に登録したデータから募集図面(マイソク)を作り、業者間流通(ウルスタBB)やお部屋探しサイト(ヘヤスタ)に同じ物件情報を使えます。問い合わせは顧客管理で経路ごとに記録できます。1つの物件データを使い回すと、経路ごとの転記の誤りや、成約後の消し忘れを減らせます。
経路別の詳しい解説記事
| テーマ | 記事 |
|---|---|
| SNS | Instagramで物件を紹介するときのルールと運用 |
| 地図・口コミ | Googleビジネスプロフィールの整え方 |
| セミナー | 投資用不動産セミナーの集客と注意点 |
| 自社サイト | 不動産会社のSEO対策 |
| 紹介 | 不動産の紹介制度の作り方 |
| 広告の管理 | 賃貸のおとり広告を防ぐ物件情報の管理 |
| 反響対応 | 反響への返信時間の決め方 |
| 法令全般 | 不動産会社のコンプライアンスガイド |
よくある質問
Q1. 集客の経路はいくつ持てばよいですか?
決まった数はありません。問い合わせに期限内で返信でき、広告の点検が回る範囲で持つのが現実的です。経路を増やすと、成約後の掲載の止め忘れなど管理の手間も増えます。
Q2. ポータルサイトとSNSで物件の説明を変えてもよいですか?
書き方を変えるのはかまいませんが、賃料、面積、所在地、交通、取引態様などの事実は同じにします。媒体によって内容が違うと、どちらかが事実に相違する表示になるおそれがあります。
Q3. 成約済みの物件を「参考物件」として載せてもよいですか?
募集中と誤解されると、表示規約21条のおとり広告にあたるおそれがあります。載せるなら成約済みであることをはっきり書き、問い合わせの入口にしない運用にします。
Q4. 社員に会社の口コミを書いてもらってもよいですか?
Googleのポリシーは、雇用関係などの利益相反がある人による口コミを禁じています。会社が関わった口コミは、ステルスマーケティング告示との関係でも問題になりうるため、依頼しません。
Q5. 広告のルールに迷ったときはどこに相談できますか?
表示規約や景品規約については、各地区の不動産公正取引協議会に問い合わせる方法があります(不動産公正取引協議会連合会のサイトに各地区の協議会の案内があります)。宅建業法については免許を受けた行政庁、景品表示法については消費者庁の資料も確認できます。
出典(本文で参照している資料)
- 宅地建物取引業法(e-Gov法令検索)32条・33条・34条・47条の2
- 宅地建物取引業法施行規則(e-Gov法令検索)16条の11
- 不動産公正取引協議会連合会「公正競争規約の紹介」
- 不動産公正取引協議会連合会「規約集」(表示規約4条・5条・18条・21条、景品規約)
- 消費者庁「公正競争規約」
- 消費者庁「ステルスマーケティングに関する景品表示法の規制」
- 消費者庁「ステルスマーケティングに関するQ&A」
- 特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(e-Gov法令検索)2条・3条・4条
- 個人情報の保護に関する法律(e-Gov法令検索)21条
- Googleビジネスプロフィール ヘルプ「Googleに掲載するビジネス情報のガイドライン」
- マップユーザーの投稿コンテンツに関するポリシー ヘルプ「禁止または制限されているコンテンツ」
この記事は2026年10月7日時点の情報です。