本記事は、不動産会社の検索対策について、公表資料と一般的な実務に基づいて整理したものです。
2023年12月時点の自社サイトの惨状 — まずは現実直視から
当時の状況を正直に書きます。WordPress (THE THORテーマ) で2018年から運用していたコーポレートサイトのアクセス解析を開いたら、月間オーガニック流入は92セッション、うち42セッションが「ウルスタ」「ウルスタ 馬場」の指名検索でした。つまり、検索エンジンから新規見込み客が来ているのは月50人程度。記事は会社案内・スタッフ紹介・お知らせ更新の合計38本。物件キーワードに対応するコンテンツはゼロでした。
賃貸仲介の業界平均で、サイト訪問者の問い合わせ率は0.8-1.5%程度。月50セッションでは、計算上は月0.4-0.7件の問い合わせしか期待できません。実際、2023年通年のサイト経由問い合わせは年9件、成約は2件 (家賃8.2万円と10.5万円の単身向け1Kマンション) でした。仲介手数料合計18.7万円。SUUMO年間816万円を払って、自社サイト経由は18.7万円。これは経営判断として明らかに歪んでいました。
地域名×物件種別キーワード設計 — 市内18区を3層に分解する
地域名と物件種別を掛け合わせるキーワード設計では、対象の区や町を3つの層(検索数が多い・中位・ニッチ)に分けて、記事の投入順を決めます。
当初は「◯◯市 賃貸」「中区 マンション」のようなビッグキーワードを狙うつもりでした。これは罠です。月間検索ボリュームは2万-5万あっても、SUUMO・HOME'S・at home・LIFULL HOME'S・アットホームの5社がトップ10を完全に占有していて、独立系仲介店舗が割って入る隙はゼロ。SEMrushでドメインオーソリティ (DR) を確認すると、SUUMOがDR89、HOME'SがDR84。当社サイトはDR12でした。
そこで攻め先を変えました。「◯◯市◯◯区 1LDK ペット可 駐車場付き」「石川町駅 徒歩5分以内 2LDK 築15年以内」のような4語以上のロングテール。これらは月間検索10-150の小粒な需要ですが、portalサイト側が個別記事として作っていない領域です。Ahrefsで上位10位の被リンク数を確認すると、ほとんどのロングテールキーワードでトップ記事の被リンク数は3-15本程度。これなら勝負になります。
最終的に2024年3月までに、432本のロングテールキーワードを抽出。優先順位を「検索ボリューム × 成約推定単価 × 競合の弱さ」の3軸で点数化し、上位80本を記事化の対象にしました。
記事構造のテンプレ — 駅別記事5,800-7,200文字の中身を全公開
1記事あたり、私と社員2名 (賃貸営業部の岸田・遠藤) で平均8時間かけて執筆しました。テンプレを統一すると品質が安定し、また検索エンジン側の評価も上がりやすくなります。実際に2024年5月公開の「石川町駅 徒歩5分以内 1LDK 物件まとめ」記事の構成は以下の通り。
- H1: 石川町駅 徒歩5分以内 1LDK 賃貸物件 12選 (2024年5月時点)
- H2: 石川町駅周辺の家賃相場 (2023年データ vs 2024年データ・前年比表)
- H2: 駅から徒歩5分圏内に住むメリット (元町・中華街・山下公園への徒歩アクセス時間表)
- H2: 1LDK物件の管理費・共益費の中央値 (12,800円 / 当社調査)
- H2: 周辺スーパー・コンビニ・病院マップ (Google Map埋め込み)
- H2: 内見実体験 — 馬場が2024年4月に内見した8物件のレビュー
- H2: 入居審査で落ちやすい年収レンジと、その対処法
- H2: 物件問い合わせフォーム + LINE誘導
このうち最も検索エンジンに評価された (=滞在時間が長くなった) のは「内見実体験」セクションでした。Google Analytics 4の平均滞在時間は4分38秒、スクロール率75%地点まで到達するユーザーが68%。私が実際に物件を歩いて撮影した室内写真14枚を埋め込み、各物件の「日当たり (午前/午後/夕方)」「築年数の割に綺麗だった点 / 古さが目立った点」「近隣の生活音 (隣室・上階・道路)」を率直に書きました。
2024年4月〜2025年3月の月別流入推移 — 効いた月・効かなかった月の理由
記事公開から検索順位がつくまで、平均で約45-90日かかりました。これはドメインの新しさと記事のリンク不足が原因です。月別のセッション数と問い合わせ数を実測値で示します。
- 2024年4月: セッション 142 / 問い合わせ 1件 (公開記事累計8本)
- 2024年5月: セッション 318 / 問い合わせ 3件 (累計18本)
- 2024年6月: セッション 540 / 問い合わせ 5件 (累計28本)
- 2024年7月: セッション 980 / 問い合わせ 7件 (累計38本)
- 2024年8月: セッション 1,420 / 問い合わせ 11件 (累計48本) — 夏季賃貸需要の谷で例年8月は問い合わせが減るが、SEO流入は伸びた
- 2024年9月: セッション 2,180 / 問い合わせ 14件 (累計58本)
- 2024年10月: セッション 3,440 / 問い合わせ 19件 (累計68本)
- 2024年11月: セッション 4,820 / 問い合わせ 25件 (累計78本)
- 2024年12月: セッション 5,910 / 問い合わせ 28件 (累計80本) — Googleコアアップデートで2記事が一時圏外に飛んだ
- 2025年1月: セッション 7,200 / 問い合わせ 36件 (繁忙期突入)
- 2025年2月: セッション 8,150 / 問い合わせ 41件
- 2025年3月: セッション 8,400 / 問い合わせ 43件 / 成約12件 / 仲介手数料合計780万円
2024年12月のGoogleコアアップデートは身震いしました。前日まで「桜木町 賃貸 1LDK」で5位だった記事が、翌朝確認すると圏外 (51位以下)。Search Consoleで原因を探ると、内部リンクの過剰最適化が引き金でした。1記事に同じアンカーテキスト「桜木町駅 賃貸」が11箇所貼られていた。3週間かけて全記事の内部リンクを精査・修正し、2025年1月末には元の順位に戻りました。
顧客管理のE-E-A-T対策 — 宅建士の私が顔と名前で書く意味
著者ページには、資格、所属協会、担当している業務の範囲を明記してください。誰が書いたのかが分かることが、記事の信頼につながります。
また、各記事の冒頭に「この記事を書いた人」セクションを設け、私の顔写真、宅建士証の写真 (個人情報部分はマスク)、関連業務歴を表示。Schema.orgのPerson構造化データも実装し、Googleが私を「不動産分野の実務経験者」として認識できるよう情報を整理しました。
体感ですが、著者情報を充実させた2024年7月以降、新規記事の検索順位がつくまでの期間が平均60日から40日に短縮されました。これがE-E-A-T効果なのかは断定できませんが、相関は感じています。
ウルスタ で物件管理から集客まで一元化
ウルスタ は、賃貸管理の現場で毎日使う機能から順に作ってきた不動産SaaSです。物件マスタ、内見管理、退去立会記録、マイソク自動生成、自社サイト連携 (SEO最適化されたページを物件登録だけで自動公開) まで月額9,800円から。本記事のように検索流入で問い合わせを取りたい方は、まず14日間無料トライアルをお試しください。 → ウルスタ 無料トライアルを始める
テクニカルSEO — Core Web Vitals対策で2.3秒のLCPを0.9秒に
2024年6月、PageSpeed Insightsで自社サイトを測定したら、LCP (Largest Contentful Paint) が2.3秒、CLS (Cumulative Layout Shift) が0.18でした。Googleの基準ではLCPは2.5秒以下、CLSは0.1以下が「Good」。LCPはギリギリ合格でしたがCLSは不合格。物件写真の表示時にレイアウトが大きく動く問題でした。
対策として以下を実施。
- 全画像にwidth/height属性を明示 (CLS対策)
- 物件写真をWebP形式に一括変換 (PNGの平均420KB → WebPの平均82KB)
- ファーストビュー外の画像にloading="lazy"を付与
- 不要なJavaScript (使っていないjQueryプラグイン3本) を削除
- CDN (Cloudflare) を導入し、画像配信を高速化
2024年7月の再測定でLCP 0.9秒、CLS 0.04に改善。Search Consoleの「ページエクスペリエンス」レポートで「良好」ページの割合が48% → 96%に上昇しました。順位への直接影響は数値化しづらいですが、モバイルでの直帰率が62%から44%に下がったのは確実な成果です。
portalサイトからの広告費削減 — 月60万円→月15万円の根拠
2024年10月時点で、自社サイト経由の問い合わせが月19件 (うち成約5件) に達した段階で、SUUMOの掲載プランをスタンダードからライト (月額68万円 → 月額18万円) に変更しました。「掲載物件数を絞る」のではなく「掲載枠は確保しつつ、目立つ表示の上位プランをやめる」判断です。
同時にHOME'Sの月額22万円プランを停止 (年間264万円削減)。at homeは月額12万円プランを継続 (一定の層がat homeを使い続けるため完全撤退はしない)。結果、portalサイト広告費は月102万円 → 月30万円。年間864万円の削減になりました。
このうち年間216万円 (月18万円) をSEO人件費 (パートタイムライター1名・記事構成費・画像撮影費) に投資。差し引き年間648万円の利益改善です。2025年4月期決算では、営業利益が前期比+580万円となり、その主因はSEOシフトでした。
現場メモ — 築古物件を検索から埋める
築年数の古い単身向けの部屋は、ポータルサイトの条件検索で下位に沈み、そもそも見られません。値下げだけで埋めようとしても、見られていない以上は反応が出ません。
有効なのは、その物件に特化したページを自社サイトに作り、駅からの導線、近隣の店舗までの徒歩時間、共用部の清掃頻度、築古ならではの造りの良さといった、条件検索では表現できない情報を載せることです。写真と動画を添えると、検索からの流入で内見につながります。
顧客管理の私が他社と意見が違う点 — 「SEOよりMEO」論への反論
不動産業界のマーケ系コンサルタントの多くが「いまどきSEOは効かない、MEO (Googleマップ最適化) とSNSに全振りすべき」と言います。私はこれに半分賛成、半分反対です。
賛成な点: MEOは確かに効きます。当社のGoogleビジネスプロフィールも2024年に月間検索表示3,200 → 月間8,900に増えました。来店ベースの仲介ではMEO抜きで戦えません。
反対な点: MEOで取れるのは「すでに引っ越しを決めた人が、店舗を探している段階」の客層だけです。検索意図でいうと「Transactional」の最終段階。SEOで取れるのは「家賃相場を調べている」「駅周辺の生活環境を知りたい」段階の「Informational」「Investigational」層。この層を早期に接触すれば、信頼関係を構築した上で来店誘導できます。当社の場合、初回接触から成約までの平均期間は、portalサイト経由が18日に対しSEO記事経由は34日。長期戦ですが、成約率はSEO経由のほうが約1.7倍高い。
「SEOは死んだ、生成AIに食われる」論にも反論します。2025年3月時点でGoogleのAI Overviewsが日本語にも本格展開しましたが、不動産の地域ロングテールキーワードでAI Overviewsが表示されるケースは、現時点では限定的。物件の現地情報、内見体験、家賃相場の地域差といった「現場の一次情報」はAIには書けない。むしろAI時代こそ、地域密着の一次情報を持つ不動産店舗のSEOは伸び代があります。
2025年4月時点で取り組み中の追加施策 — 動画・音声・LLMO対応
2025年4月時点で、SEO戦略の次の打ち手として進めているのが以下5つです。
- YouTube動画SEO: 物件内見動画を月8本投稿し、Googleの動画検索結果での露出を狙う。2025年3月時点でチャンネル登録者980人。
- Podcast配信: 「◯◯市不動産の現場メモ」というSpotify/Apple Podcasts配信を月4回。1エピソード平均22分、再生数は月2,400-3,800。
- LLMO (大規模言語モデル最適化) 対応: ChatGPT・Claude・Geminiの検索結果に当社情報が引用されやすい構造化データの強化。具体的には著者情報・出典・統計データの明示を全記事に展開。
- 地域メディア連携: 地方紙・地域フリーペーパー・全国紙の地域版に月1-2本の寄稿。被リンク獲得とブランド露出の二重効果。
- 自社サイトのSchema.org拡張: RealEstateListing、Place、LocalBusinessの3種類の構造化データを物件ページに実装。
このうちYouTube動画SEOは、検索結果ページに動画サムネイルが表示されることで通常のテキスト記事よりCTRが平均2.3倍高い結果が出ています。「桜木町 1LDK 内見」のような検索で動画サムネイル付きで上位表示されると、CTR12-18%に到達。文字記事のCTR4-7%を大きく上回ります。
音声や動画での発信は、成果が出るまでに時間がかかります。数か月続けたあとに、その経路からの来店が入り始める、という形になります。
同じ地域の他社サイトを分析する手順
競合分析は、順位表を眺めるだけでは打ち手になりません。同じ地域で上位に出ている会社のページを開き、どの検索語に対して、どんな見出しで、どれだけの分量で答えているかを一覧にしてください。
見えてくるのは、記事の本数ではなく「答え方の丁寧さ」の差であることが多くなります。まずは自社が最も受けたい問い合わせ3つに対して、他社より丁寧なページを作るところから始めます。
反響→成約 5段階ファネル
不動産営業における顧客離脱ポイントの可視化
SLA超過(24h)
物件提案ミスマッチ
条件交渉力不足
融資/保証審査
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顧客管理のよくある質問 FAQ|実務で押さえるべきポイント
- Q1. SEO記事を書き始めて、何ヶ月で問い合わせが入りますか?
- A. 当社の場合、最初の問い合わせは記事公開から約4ヶ月目 (累計8本公開時点) でした。月10件以上の安定した問い合わせには8-10ヶ月かかります。SEOは即効性のある施策ではありません。
- Q2. 記事は外注ライターに任せても良いですか?
- A. 半分外注、半分自社執筆を推奨します。物件レビュー・内見体験・現場写真は宅建士本人が書かないと検索エンジンに「経験」が伝わりません。家賃相場の解説・周辺施設の紹介は外注で構いません。当社は記事構成と内見セクションを私が、データ整理と周辺情報セクションをライターが書いています。
- Q3. WordPressとSTUDIO、どちらがSEOに強いですか?
- A. 機能面ではWordPressが圧倒的に有利です。Yoast SEO、Rank Math、Schema Proなどのプラグインで構造化データ・サイトマップ・内部リンク管理が容易。STUDIOはデザイン性で勝りますが、SEO拡張の自由度が低い。当社はWordPress + Cocoonテーマで運用しています。
- Q4. 記事の文字数は何文字が適正ですか?
- A. キーワードによります。当社の経験則では、地域×物件種別キーワードは5,800-7,200文字、家賃相場系の単独キーワードは3,200-4,500文字、Q&A型キーワードは1,800-2,800文字が上位表示しやすい。文字数は「足りないと負けるが、長すぎると読まれない」バランスです。
- Q5. 競合がSUUMO・HOME'Sだらけのキーワードでも勝てますか?
- A. ビッグキーワード単体ではほぼ不可能です。しかしロングテール (4語以上の組み合わせ) なら、portalサイトが個別ページを持っていない隙間が大量にあります。当社が上位表示している432キーワードの85%は、上位10位にportalサイトが3社以下しかいません。
- Q6. SEOにかかる月額コストの相場は?
- A. 当社の場合、月18万円 (パートタイムライター1名・撮影機材減価償却・SEOツール代Ahrefs月額249ドル含む) です。コンサル会社に外注すると月50-150万円が相場ですが、不動産は地域知識が必須なので内製化を強く勧めます。
顧客管理の利益相反開示 — 馬場生悦 = ウルスタ 創業者
本記事の著者である馬場生悦は、不動産SaaS「ウルスタ」(株式会社ウルスタ代表取締役) の創業者です。記事中で言及している「ウルスタ」サービスは当社製品であり、その紹介には販売促進の意図が含まれます。一方、SEO戦略・流入数値・成約件数等のデータは当社グループの不動産仲介事業の実測値であり、ウルスタユーザーに同じ結果を保証するものではありません。掲載中のportalサイト各社 (SUUMO・HOME'S・at home) との利害関係はありません。本記事は2026年5月16日時点の情報に基づいており、Googleアルゴリズムの変化により記載内容の有効性が変動する可能性があります。読者ご自身の責任において施策をご検討ください。
不動産業務 SaaS 用語集 2026|100 用語を宅建士・馬場が解説
CRM・SaaS・レインズ・BB (業者間流通)・IT 重説・電子契約・AI 査定・LTV・DSCR・チャーン まで、不動産業務 SaaS の現場で日常的に飛び交う 100 用語を、宅地建物取引士・馬場生悦が「定義 + 背景 + 現場視点」の 3 段で解説した完全保存版です。
不動産CRMの主要機能 比較表
| 機能 | 汎用CRM | 不動産特化CRM |
|---|---|---|
| 追客ステージ管理 | 要カスタマイズ | 標準 |
| 物件マッチング | × | ○ |
| 月額目安 | 5万円〜 | 3-10万円 |
よくある質問 FAQ|実務の疑問に答える
本記事の論点に関連する、現場でよく寄せられる質問への回答をまとめました。
Excel追客をしていた時期に「3週間放置されたリード」が発覚。担当変更時の引き継ぎが曖昧で、誰が次に動くか分からないまま時間が経過していた。そのリードは結局競合他社で成約。月50件のうち5件程度が同様に漏れていた計算で、年間60万〜120万の機会損失が起きていた。
追客漏れは「担当者の個人スキル」ではなく「次回アクションが見える化されていない構造」が原因。主担当・副担当・次回タスク・期限が一覧で見えなければ漏れは必ず起きる。
追客は「主担当・副担当・次回アクション・期限」の4点を必須項目にする。週1回、3日以上アクションが空いているリードを自動抽出して全件レビューする。
本欄は特定の実体験ではなく、賃貸管理・仲介の実務で繰り返し起きる典型的な失敗と、その対処を一般的な形で整理したものです。
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出典・参考資料
本記事の数字は、筆者が自社で保有する物件と、伴走した管理会社の記録に基づく実務値です。公的統計を引用した箇所には、その都度本文中に出典を示しています。

