賃貸管理 読了 17分

内見の進め方と質問の流れ|成約につなげるために確かめる重要事項説明の時期・広告・鍵の管理・個人情報

内見を成約につなげるには、話し方の工夫より先に、広告と現況が合っているか、鍵と立入りの段取りができているか、重要事項を契約前に説明する準備ができているかを確かめることが大切です。内見の前・当日・後に分けて、聞く順番と法令上の確認事項を整理します。

馬場生悦
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
内見の進め方と質問の流れ|重要事項説明の時期・鍵の管理・個人情報の確認事項
目次

内見を成約につなげるには、話し方の工夫より先に、広告と現況が合っているか、鍵と立入りの段取りができているか、重要事項を契約の前に説明する準備ができているかを確かめておくことが大切です。内見の場で聞くことの順番も、法令上の確認事項と合わせて決めておくと、担当者が替わっても同じ質の案内ができます。この記事では、内見の前・当日・後に分けて、宅建業法35条の説明の時期、広告の決まり、鍵の管理、個人情報の扱いを整理します。

内見の前に確かめること

内見の質は、お客様と会う前の準備でほぼ決まります。準備が足りないと、当日に「この部屋はもう申込みが入っていました」「広告の写真と設備が違う」といったことが起き、物件の説明以前に信頼を失います。予約を受けた時点で、次の点を確かめます。

物件がまだ取引できるか

不動産の表示に関する公正競争規約21条は、物件が存在しないため実際には取引できない物件、物件は存在するが実際には取引の対象となり得ない物件、物件は存在するが実際には取引する意思がない物件の広告表示を「おとり広告」として禁じています。不動産公正取引協議会連合会の「おとり広告ガイドライン」は、掲載後に契約済みとなった物件を削除せずに更新を繰り返すことをおとり広告の例に挙げ、新規掲載時や更新時に取引状況の確認を怠ることが原因になると説明しています。

内見の予約が入ったら、貸主や元付業者に募集が続いているかをその場で確認します。確認した日時と相手を予約の記録に残しておくと、後で問い合わせがあったときに説明できます。成約していた場合は、すぐに広告を取り下げます。

広告と現況が合っているか

宅地建物取引業法32条は、広告をするときに、所在、規模、形質、利用の制限、環境、交通その他の利便、代金や借賃などについて、著しく事実に相違する表示や、実際よりも著しく優良・有利であると誤認させる表示を禁じています。内見はお客様が広告と現物を見比べる場です。設備の有無、日当たり、最寄り駅からの道順など、広告に書いたことが現況と合っているかを、できれば事前に現地で確かめます。違いを見つけたら、内見の前に広告を直し、お客様にも先に伝えます。

取引態様を伝えているか

宅建業法34条2項は、売買や貸借の注文を受けたときに、遅滞なく、自社が当事者なのか、代理なのか、媒介なのか(取引態様の別)を明らかにすることを求めています。内見の予約を受けた段階で、媒介として案内することなどを伝えておきます。仲介手数料の有無や金額の説明もこの時点で済ませておくと、後の行き違いが減ります。

居住中の部屋なら入居者の承諾があるか

国土交通省の賃貸住宅標準契約書16条3項は、契約終了後に借りようとする人などが下見をするときは、貸主と下見をする人は、あらかじめ借主の承諾を得て物件内に立ち入ることができると定めています。退去予定の部屋を案内するときは、契約書の定めを確かめたうえで、入居者に日時と人数を伝えて承諾を得ます。私物や郵便物が見える場所では写真を撮らない、といった約束も先に決めておきます。

鍵の管理と受け渡し

内見で最も事故が起きやすいのが鍵です。紛失や返却忘れは、物件の安全に関わり、交換の費用もかかります。国土交通省の賃貸住宅標準管理受託契約書12条は、鍵の管理(保管・設置、交換及び費用負担を含む)に関する事項は委託者である貸主が行い、管理業者は入居者への鍵の引渡し時のほか、解約や明渡しの業務に付随して鍵を一時的に預かることができる、という形で定めています。実際の取り決めは個々の管理受託契約で異なるため、内見で鍵を誰が保管し、誰が受け渡すのかを、貸主・管理会社と書面で確かめておきます。

そのうえで、社内の手順を決めます。次は手順の例です。

  • 鍵を借りるときと返すときに、物件名、鍵の番号、日時、担当者を台帳に書く。
  • 鍵はその日のうちに返す。持ち帰らない。
  • キーボックスや暗証番号を使う物件では、暗証番号をお客様や広告に出さない。定期的に番号を変える運用を貸主と決める。
  • お客様だけで内見させない。案内の担当者が最初に入り、最後に施錠と窓の閉め忘れを確かめる。
  • 紛失に気づいたら、すぐに貸主・管理会社に連絡する。誰に連絡するかを一覧にしておく。

また、宅建業法48条は、従業者に従業者証明書を携帯させなければ業務に従事させてはならないこと、取引の関係者から請求があれば提示しなければならないことを定めています。居住中の部屋や管理会社の担当者と現地で会う場面では、証明書を提示できるようにしておきます。

内見当日の流れと聞く順番

内見で聞くことの順番を決めておくと、担当者ごとの差が小さくなります。ここで示すのは筆者が考える手順の例で、効果を数字で示すものではありません。

集合したら最初に確かめること

物件に入る前に、短く次の3点を聞きます。

  • いまの住まいで困っていること:「いまのお住まいで、変えたいところはどこですか」。不満が分かると、見るべきところが決まります。
  • 家賃の上限と、譲れる条件:「月々の上限はいくらですか。上限を少し超えても検討したい条件はありますか」。
  • 誰が決めるか:「ほかに一緒に決める方はいらっしゃいますか」。同居予定の家族が来ていない場合、その方に見せる資料や写真の撮り方を考えておけます。

部屋に入る前に、見てほしい点を伝える

「この部屋では、収納の広さ、窓からの明るさ、浴室の設備を見ていただきたいです」のように、見る点を先に2つか3つ伝えます。お客様が何を見ればよいか分かり、案内の時間を有効に使えます。伝える点は、最初に聞いた困りごとに合わせて選びます。

部屋の中では暮らし方を聞く

「朝はどの順番で支度をしますか」「在宅で仕事をする日はありますか」など、暮らし方を聞くと、動線やコンセントの位置、通信環境など、お客様が気にする点が分かります。物件の説明を一方的に続けるより、聞いた内容に合わせて説明するほうが、お客様に必要な情報を絞って伝えられます。

水回りと設備では優先順位を聞く

「これがないと困る設備」「あればうれしい設備」「なくてもかまわない設備」を分けて聞きます。ほかの物件と比べるときの基準になり、条件に合わない場合に別の物件を提案する材料にもなります。

終わったら次の予定を決める

内見の最後に、この物件をどう感じたか、ほかに検討している物件があるか、いつまでに決めたいかを聞き、次に連絡する日を決めます。返事を急がせる必要はありません。後で触れるとおり、判断に必要な時間を与えないことは法令で禁じられています。

内見の場の説明と重要事項説明の時期

宅建業法35条1項は、宅建業者が、契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士に、重要事項を記載した書面を交付して説明をさせなければならないと定めています。説明するときは、宅建士は相手方に宅建士証を提示しなければなりません(同条4項)。内見はこの説明の場ではありませんが、お客様が契約するかどうかを考える材料の多くは内見で得られます。

国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」は、重要事項の説明は説明を受ける者が理解しやすい場面で分かりやすく行うことが望ましく、取引物件を見ながら説明するほうが理解を深められる事項は、重要事項の全体像を示しながら物件の現場で説明することが望ましい、としています。そのうえで、この場合にも、契約の締結までの間に、改めて宅建士が重要事項全体を説明することとしています。

内見の場では、たとえば次のような事項を、現物を見せながら説明しておくと、後の重要事項説明が分かりやすくなります。

  • 設備の有無と、故障したときの連絡先
  • 共用部の使い方(ごみ置き場、駐輪場など)
  • 修繕の負担区分のうち、現地で見て分かるもの

ここでの説明はあくまで事前の案内です。契約の前に、宅建士が書面を交付し、宅建士証を示して全体を説明する手順は省けません。内見で話した内容と重要事項説明書の記載が食い違わないよう、内見で聞かれたことと答えた内容をメモに残し、説明を担当する宅建士に渡します。

内見の場で避ける言い方

内見の場では、お客様に前向きになってもらいたい気持ちから、言い過ぎになることがあります。宅建業法と同法施行規則は、次のような行為を禁じています。

禁じられている行為根拠内見で起きやすい場面
判断に重要な影響を及ぼす事項について、故意に事実を告げない、または事実でないことを告げる宅建業法47条1号知っている騒音や設備の不具合を聞かれて「問題ありません」と答える
将来の環境や交通の利便について、誤解させるような断定的判断を示す同法施行規則16条の11第1号イ「近くに駅ができるので便利になります」と確かでない計画を言い切る
正当な理由なく、契約するかどうかを判断する時間を与えない同号ロ「今日決めないとほかの方に決まります」と即決を迫る
契約しない意思を示した相手に勧誘を続ける同号ニ断られた後も何度も電話をかける
迷惑を覚えさせるような時間に電話し、または訪問する同号ホ夜遅くに内見の感想を聞く電話をかける

分からないことを聞かれたときは、その場で推測で答えず、「確認して何日までにご連絡します」と答えるのが安全です。ほかにも申込みを検討している人がいる場合は、事実として伝えるのはかまいませんが、事実でない競合をつくって急がせることはしません。

内見で扱う個人情報

内見の予約では、氏名、連絡先、勤務先、家族構成、収入の目安など、多くの個人情報を受け取ります。個人情報保護法21条1項は、個人情報を取得したときは、あらかじめ利用目的を公表している場合を除き、速やかに利用目的を本人に通知するか公表することを求めています。予約フォームや申込書のように本人から直接書面(電磁的記録を含む)で取得する場合は、同条2項により、あらかじめ本人に利用目的を明示する必要があります。

予約フォームの近くに、たとえば「ご記入いただいた情報は、物件のご案内、ご連絡、入居審査の手続きに使います」といった利用目的を示しておきます。利用目的は、同法17条1項により、できる限り特定する必要があります。示した利用目的を超えて使う場合は、同法18条1項により、あらかじめ本人の同意が必要です。たとえば、内見の予約で得た連絡先を、本人の同意なく別の商品の案内に使うことは避けます。

申込みの段階では、貸主、管理会社、家賃債務保証会社などに申込者の情報を渡すことがあります。個人情報保護法27条1項は、法令で定める場合を除き、あらかじめ本人の同意を得ないで個人データを第三者に提供してはならないと定めています。申込書の書式に、提供先と提供する情報を示した同意欄を設けておきます。

あわせて、宅建業法45条は、宅建業者は正当な理由がある場合でなければ、業務上取り扱ったことについて知り得た秘密を他に漏らしてはならないと定めています。居住中の部屋の内見で見聞きした入居者の生活の様子や、お客様から聞いた家庭の事情を、ほかのお客様との雑談で話さないよう、社内で共有しておきます。運転免許証などの本人確認書類は、必要な場面でだけ受け取り、写しを取る場合は保管場所と廃棄の時期を決めておきます。

内見の後の連絡と記録

内見の後は、約束した日に連絡します。連絡では、内見で聞いた困りごとや優先順位を踏まえて、物件の合う点と合わない点を両方伝えます。合わない点があれば、条件に近い別の物件を提案します。

記録には、少なくとも次の項目を残します。

  • 内見した物件と日時、同行した担当者
  • お客様の困りごと、家賃の上限、決める人、譲れない設備
  • 内見で聞かれたことと答えた内容、確認を約束した事項と期限
  • 次に連絡する日と方法
  • 鍵を借りた時刻と返した時刻

担当者の記憶に頼らず、誰が見ても次の対応が分かる形で残すことが大切です。表計算ソフトでも始められます。ウルスタくんの顧客管理では、お客様ごとの対応の履歴を物件の情報とあわせて残せます。どの道具を使う場合も、空欄にしない項目を最初に決めておくことが続けるための前提です。

筆者は宅地建物取引士で、自社で賃貸住宅226戸を所有し、そのうち約100戸を管理会社を通さずに自主管理しています。物件を持つ側から見ても、鍵の受け渡しと居住中の部屋の承諾の取り方が整っている仲介会社には、安心して案内を任せやすいと感じます。

内見の確認表

ここまでの内容を、内見の前・当日・後の確認表にまとめます。社内の手順書の下書きとして使ってください。

時期確認すること根拠・参考
予約を受けたとき募集が続いているかを貸主・元付業者に確認し、記録する表示規約21条、おとり広告ガイドライン
予約を受けたとき取引態様(媒介など)を伝える宅建業法34条2項
予約を受けたとき利用目的を示して個人情報を受け取る個人情報保護法17条・21条
前日まで広告と現況が合っているかを確かめ、違いは直す宅建業法32条
前日まで居住中なら入居者の承諾を得る賃貸住宅標準契約書16条3項(個別の契約書を確認)
前日まで鍵の保管者と受け渡し方法を確かめる賃貸住宅標準管理受託契約書12条(個別の契約を確認)
当日従業者証明書を携帯する宅建業法48条
当日分からないことは推測で答えず、確認して連絡する宅建業法47条1号
当日即決を迫らない、断定的な将来予測をしない同法施行規則16条の11
内見後聞かれたことと答えを記録し、重要事項説明の担当者に渡す宅建業法35条、解釈・運用の考え方
内見後鍵の返却を台帳で確かめる社内手順

反響から内見の予約までの対応は反響への返信時間の決め方、重要事項説明の進め方は重要事項説明書の作り方とIT重説の進め方も参考にしてください。

このテーマの全体像は「不動産の業務効率化ガイド2026|5段階の進め方と法令チェックポイント・関連記事一覧」にまとめています。

よくある質問

Q1. 内見の場で重要事項説明をしてもよいですか。

国土交通省の「解釈・運用の考え方」では、物件を見ながら説明するほうが理解を深められる事項は、現場で説明することが望ましいとされています。ただし、その場合も契約の締結までの間に、改めて宅建士が重要事項全体を説明することとされています。内見での説明は事前の案内と考え、宅建士による書面の交付と説明、宅建士証の提示は別に行います。

Q2. お客様だけで内見してもらうことはできますか。

法令で一律に禁じられているわけではありませんが、鍵の管理は貸主との取り決めによります。無人で内見させる場合は、貸主の了解、鍵の受け渡し方法、本人確認、施錠の確認方法、事故があったときの責任の分担を、事前に書面で決めておく必要があります。決められない場合は、担当者が同行するほうが安全です。

Q3. 居住中の部屋の写真を撮ってよいですか。

入居者の承諾が前提です。承諾を得る際に、撮影の可否と範囲も確かめます。私物や郵便物、表札が写り込むと、入居者の情報が広がるおそれがあります。撮影を認める場合も、写り込みのない範囲に限るよう、お客様にお願いします。

Q4. 内見の後、何日以内に連絡すればよいですか。

法令で決まった日数はありません。大切なのは、内見の最後にお客様と次の連絡日を決め、その日を守ることです。お客様が断った後に勧誘を続けることや、迷惑を覚えさせるような時間の電話は、宅建業法施行規則16条の11で禁じられています。

出典(本文で参照している資料)

この記事は2026年10月7日時点の情報です。

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