業者間ネットワークと業者間流通(BB)を使いこなすには、まず法律で決まっている部分(専任媒介の指定流通機構への登録と取引状況の登録)を守り、そのうえで任意の情報交換のルールを自社で決めることが大切です。売買の専任媒介契約では、契約から7日以内(専属専任媒介契約は5日以内、休業日を除く)にレインズへ登録する義務があり、2025年1月からは取引の申込みの受付状況の登録も求められています。この記事では、法令の義務、広告と個人情報の注意点、地域の業者とのつながりの作り方を順に整理します。
業者間流通とは何か
業者間流通(BB、Business to Business)は、宅地建物取引業者どうしが物件の情報をやりとりし、元付業者(売主や貸主から依頼を受けた業者)と客付業者(買主や借主を探す業者)が協力して取引を成立させる仕組みです。1社だけでは見つけられない相手方を、ほかの業者の顧客の中から探せる点に意味があります。
業者間流通には、大きく2つの層があります。
- 法律に基づく仕組み:宅地建物取引業法34条の2第5項で「指定流通機構」と呼ばれる、国土交通大臣が指定する者への登録です。一般にレインズと呼ばれます。売買・交換の専任媒介契約では登録が義務になっています。
- 任意の情報交換:民間の業者間サイト、地域の業者どうしの連絡、物件資料の送付など。賃貸の募集情報の多くはこちらで流通します。使い方は各社の取り決めと各サービスの規約によります。
2つの層では、守るべきルールの根拠が違います。前者は法令の義務で、守らなければ監督処分の対象になり得ます。後者は法令の一般的な決まり(広告の規制、個人情報の扱い、秘密を守る義務)に加えて、業者どうしの信頼で成り立っています。
専任媒介の指定流通機構への登録義務
宅建業法34条の2第5項は、宅建業者が専任媒介契約を締結したときは、契約の相手方を探索するため、国土交通省令で定める期間内に、物件の所在、規模、形質、売買すべき価額その他国土交通省令で定める事項を、指定流通機構に登録しなければならないと定めています。同条は売買・交換の媒介契約についての規定です。
登録の期限
宅建業法施行規則15条の10は、登録の期間を、専任媒介契約の締結の日から7日(専属専任媒介契約では5日)と定め、期間の計算に休業日数は算入しないとしています。週末や定休日をはさむ場合でも、営業日で数えて期限を管理します。
登録する事項
同規則15条の11は、法律で定める所在・規模・形質・価額のほかに、都市計画法その他の法令に基づく制限で主要なもの、取引の申込みの受付に関する状況、交換の場合の評価額、専属専任媒介契約である場合はその旨を、登録事項として定めています。
登録の後の義務
| 義務 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 専任媒介契約の期間 | 3か月を超えることができない。超える期間を定めても3か月とされる | 宅建業法34条の2第3項 |
| 登録の期限 | 締結の日から7日(専属専任は5日)。休業日は数えない | 同条5項、同法施行規則15条の10 |
| 登録証明書 | 登録をしたときは、遅滞なく、登録を証する書面を依頼者に引き渡す | 同条6項 |
| 成約の通知 | 登録した物件の売買・交換の契約が成立したときは、遅滞なく指定流通機構に通知する | 同条7項 |
| 申込みの報告 | 売買・交換の申込みがあったときは、遅滞なく依頼者に報告する | 同条8項 |
| 業務の処理状況の報告 | 2週間に1回以上(専属専任は1週間に1回以上)依頼者に報告する | 同条9項 |
| 反する特約 | 3項から6項まで、8項・9項に反する特約は無効 | 同条10項 |
一般媒介契約には、この登録の義務はありません。ただし、売主の利益を考えれば、一般媒介でも広く相手方を探す方法を売主と話し合っておくことが望ましいと考えます。
2025年1月からの取引状況の登録
国土交通省は2024年12月24日の報道発表で、2024年6月の宅建業法施行規則の改正により、2025年1月から、宅建業者に対してレインズへの物件の取引状況の登録を義務付けると案内しました。レインズには、売主やほかの業者が申込みの状況などを確認できる「ステータス管理機能」があり、2025年1月4日からは、売主が自分の物件の取引状況を確認しやすいよう、登録証明書に2次元コードを記載するとしています。
同じく2025年1月1日施行の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」の改正では、専属専任媒介契約・専任媒介契約に基づき指定流通機構に登録した物件について、取引の申込みの受付に関する状況等の登録内容が事実と異なるときは、法65条1項の指示処分の対象となる、とされました。あわせて、ステータス管理機能で最新の登録内容を確認できることを、依頼者に分かりやすく説明することが望ましいとされています。
実務では、次の点を社内の手順に入れておきます。
- 購入の申込みを受けたら、その日のうちにレインズの取引状況を更新する担当者を決める。
- 売主の事情で紹介を止める場合は、売主の指示の内容を書面やメールで残し、登録内容と一致させる。
- 登録証明書を引き渡すときに、売主が取引状況を確認できることを説明する。
他社からの問い合わせに「申込みが入っています」と答えながら、登録内容は「公開中」のまま、といった食い違いは、指示処分の対象になり得るだけでなく、業者間の信頼を損ねます。
賃貸の業者間流通と広告の決まり
宅建業法34条の2の登録義務は売買・交換の専任媒介契約が対象で、賃貸の媒介には同じ義務はありません。賃貸の業者間流通は任意の情報交換が中心です。そのぶん、各社がルールを守らないと、成約済みの物件が広告に残る、条件の古い情報が出回る、といったことが起きやすくなります。
広告に使うときの確認
業者間で受け取った物件情報を自社の広告に使う場合は、次の決まりを守ります。
- 誇大広告の禁止:宅建業法32条は、所在、規模、形質、環境、交通その他の利便、借賃などについて、著しく事実に相違する表示や、実際よりも著しく優良・有利と誤認させる表示を禁じています。元付業者から受け取った情報が古くないかを確かめます。
- 取引態様の明示:同法34条1項は、広告をするときに、自社が当事者か、代理か、媒介かの別を明示することを求めています。
- おとり広告の禁止:不動産の表示に関する公正競争規約21条は、実際には取引できない物件、取引の対象となり得ない物件、取引する意思がない物件の表示を禁じています。
不動産公正取引協議会連合会の「おとり広告ガイドライン」は、掲載後に契約済みとなった物件を削除せずに更新を繰り返すことをおとり広告の例に挙げ、新規掲載時や更新時に取引状況の確認を怠ることが原因になるとしています。インターネット広告では、情報登録日または直前の更新日と次回の更新予定日を、見やすい位置に表示することも求めています。
元付業者の側でも、成約したらすぐに業者間の情報を更新し、広告の可否や条件(広告料の有無、写真の転載の可否など)を物件情報に明記しておくと、客付業者が誤った広告を出すことを防げます。広告の可否が書かれていない物件は、元付業者に確認してから広告に使います。
業者間でやりとりする個人情報
業者間流通では、物件の情報だけでなく、申込者の氏名、勤務先、収入、家族構成など、個人情報もやりとりします。
個人情報保護法27条1項は、法令で定める場合を除き、あらかじめ本人の同意を得ないで個人データを第三者に提供してはならないと定めています。客付業者が元付業者や貸主に申込者の情報を渡すことは、通常、第三者への提供に当たると考えられます。申込書の書式で、提供先と提供する情報を示して同意を得ておきます。
また、宅建業法45条は、正当な理由がある場合でなければ、業務上取り扱ったことについて知り得た秘密を他に漏らしてはならないと定めています。業者間の連絡で、申込者の事情を必要以上に伝えないこと、断られた申込みの内容をほかの業者に話さないことも、この義務につながります。
連絡の手段も決めておきます。担当者の個人のアカウントで申込書の画像をやりとりすると、退職や異動の後に情報が残り、どこに何を送ったかを会社として把握できません。会社として管理できる連絡手段を使い、送った相手と内容を記録します。
地域の業者とのつながりの作り方
業者間流通の仕組みがあっても、最後は業者どうしの信頼で情報の回り方が変わります。ここで示すのは手順の例で、効果を数字で示すものではありません。
自社が出せるものを整理する
つながりを作るには、相手から情報をもらうことより先に、自社が何を出せるかを考えます。得意なエリア、扱っている物件の種類、管理している物件の空室情報、内見の対応の早さなど、相手の業者にとって役立つ点を1枚にまとめておくと、初めて会う業者にも説明しやすくなります。
問い合わせへの返答のルールを決める
客付業者からの空室確認や内見の申込みに、いつまでに返答するかを社内で決めます。返答が遅いと、客付業者はお客様に物件を紹介しにくくなります。担当者が不在のときに誰が答えるか、休業日の問い合わせにはいつ答えるかも決めておきます。
内見の後の感想を返す
客付業者として内見した後は、お客様の感想や見送った理由を、個人が分からない範囲で元付業者に返します。元付業者にとっては募集条件を見直す材料になり、次の物件情報を早く回してもらうきっかけにもなります。
情報を最新に保つ
元付業者としては、空室状況や条件の変更をすぐに業者間の情報に反映させることが、何よりの信頼につながります。成約した物件の情報が残っていると、客付業者がお客様に案内してから断ることになり、双方の信用を損ねます。
地域の会合や勉強会に参加する
業界団体の支部の会合や地域の勉強会は、顔の見える関係を作る場です。参加するときは、自社の宣伝より、法改正の情報や実務の工夫を共有する姿勢のほうが、長く続く関係につながりやすいと考えます。
業者間流通の仕組みを選ぶとき
民間の業者間サイトや業務システムの業者間流通の機能を使う場合は、物件情報の更新が手間なくできるか、広告の可否や条件を物件ごとに示せるか、申込みや内見の受付をどのように記録できるかを確かめます。料金や機能は各社で異なるため、自社の業務の流れに合うかで判断します。ウルスタくんにも業者間流通の機能(ウルスタBB)があり、物件・入居者の管理や募集図面(マイソク)と同じデータから物件情報を出せます。どの仕組みを使う場合も、レインズへの登録義務や広告の決まりは別に守る必要があります。
筆者は宅地建物取引士で、自社で賃貸住宅226戸を所有し、そのうち約100戸を自主管理しています。貸主の立場から見ても、空室情報を早く正確に回してくれる業者との関係は、募集の期間に影響すると感じています。
レインズと民間の業者間サイトの違いは業者間流通とレインズの違い、業者間流通の全体像は業者間流通の完全ガイド、申込みの受付の流れは業者間流通での申込みの流れも参考にしてください。
このテーマの全体像は「不動産の業務効率化ガイド2026|5段階の進め方と法令チェックポイント・関連記事一覧」にまとめています。
よくある質問
Q1. レインズへの登録の期限は土日を含めて数えますか。
宅建業法施行規則15条の10第2項は、期間の計算に休業日数は算入しないと定めています。自社の休業日は数えずに、専任媒介契約は締結の日から7日、専属専任媒介契約は5日以内に登録します。休業日の定めは社内で明確にしておきます。
Q2. 賃貸の物件もレインズに登録しなければなりませんか。
宅建業法34条の2の登録義務は、売買・交換の専任媒介契約が対象です。賃貸の媒介には同じ登録義務はありません。賃貸の物件情報をどこに出すかは、貸主との取り決めと各サービスの規約によります。
Q3. 売主から「しばらく紹介を止めてほしい」と言われたらどうしますか。
売主の指示の内容と日付を書面やメールで残し、レインズの取引状況の登録をその内容と一致させます。国土交通省の「解釈・運用の考え方」では、取引の申込みの受付に関する状況等の登録内容が事実と異なるときは、指示処分の対象になるとされています。
Q4. ほかの業者の物件を自社のサイトに載せるときに気をつけることは何ですか。
元付業者が広告を認めているかと、その条件を確かめます。そのうえで、取引態様(媒介など)を明示し、最新の取引状況を確認してから掲載し、成約したらすぐに取り下げます。誇大広告の禁止(宅建業法32条)と、おとり広告の禁止(表示規約21条)が根拠になります。
出典(本文で参照している資料)
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第32条・第34条・第34条の2・第45条)
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行規則」(第15条の10・第15条の11)
- e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」(第27条)
- 国土交通省 報道発表「レインズの機能強化について、物件の売主向けのリーフレットを作成しました!」(2024年12月24日)
- 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 新旧対照条文」(令和7年1月1日施行)
- 不動産公正取引協議会連合会「不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則」
- 不動産公正取引協議会連合会「おとり広告ガイドライン」(2019年11月1日)
この記事は2026年10月7日時点の情報です。