「業者間流通とレインズって、結局どう違うんですか?」
1. 不動産業務におけるレインズとは何か — 法律で定められた「指定流通機構」
レインズ (REINS = Real Estate Information Network System) は、国土交通大臣指定の不動産流通機構が運営する 法定のネットワーク。1990 年の宅建業法改正で「専任媒介・専属専任媒介は指定流通機構への登録が義務」と定められたことに伴って整備された。
全国 4 つの指定流通機構 (東日本・中部圏・近畿圏・西日本) が運営し、宅建業者しか閲覧・登録できない。登録物件は売買中心で、登録義務がある以上、「市場に出ている専任媒介物件は理論上すべてここに集約される」のが建前。
レインズの強み
- 法的裏付け: 専任媒介 7 営業日以内、専属専任 5 営業日以内の登録義務。違反すれば行政処分対象。
- 網羅性: 売買物件の専任媒介は理論上ほぼ全件カバー。
- 取引履歴の蓄積: 成約レインズで過去成約価格が見られる (査定の根拠資料に直結)。
- 免許番号の信頼性: 登録業者は全員宅建業者で、業者免許の真正性が担保されている。
レインズの弱み
- UI が 2026 年の感覚で言うと「役所のシステム」。検索・絞り込み・地図連携が貧弱。
- 賃貸物件の登録率が極端に低い。賃貸は登録義務がないので、入っているのは全体の 1 〜 2 割程度。
- 画像枚数の制限・容量制限がきつく、内見訴求素材として使えない。
- API 連携が事実上ない。自社 CRM や ウルスタ のような 業者間流通プラットフォーム との自動同期ができない。
2. 業者間流通 (BB) とは何か — 民間が育てた「現場の物件交換ネットワーク」
業者間流通 (Business to Business = 通称 BB) は、民間企業が運営する宅建業者専用の物件情報共有プラットフォームの総称。レインズと違って法的義務はなく、参加業者の自発的な情報交換で成り立っている。
賃貸領域では ATBB (アットホーム)、いえらぶBB (いえらぶGROUP)、ITANDI BB (イタンジ)、ラビーネットBB (全日)、そして当社が運営する ウルスタ BB などが代表的。売買領域では 不動産業者間流通システム各社が存在する。
BB の強み
- UI が現代的。スマホで内見動画を見られる、地図でピンが出る、検索が早い。
- 画像・動画・360°ビュー対応。客付けに直結する素材が豊富。
- API・自動連携。当社の場合、自社 CRM → ウルスタ BB → ATBB → ポータル (SUUMO / HOME'S) と自動同期しているので二重入力ゼロ。
- 申込書のオンライン送信。レインズにはない機能で、月 20 時間以上の事務削減になっている。
BB の弱み
- 法的裏付けがないので、登録率は地域・業者次第。地方では一部の BB しか流通していない。
- 免許番号の真正性チェックは各社次第。一部、なりすまし業者が混入したケースもある (※ ATBB / ウルスタ BB は審査が厳しいので当社では問題なし)。
- 有料 (月額制) が多い。月 5,000 円 〜 5 万円程度のレンジ。
3. レインズと BB を比較表で見る — 2026 年 5 月時点
| 項目 | レインズ | 業者間流通 (BB) |
|---|---|---|
| 運営 | 国交大臣指定の 4 機構 | 民間各社 (ATBB / いえらぶBB / ITANDI BB / ラビーネットBB / ウルスタ BB 等) |
| 登録義務 | 専任・専属専任は法定 | なし (任意) |
| 主戦場 | 売買中心 | 賃貸が圧倒的に強い |
| 登録費用 | 会員費に含まれる | 月 5,000 円 〜 5 万円 |
| 画像枚数 | 少ない (10 〜 20 枚) | 多い (30 枚 + 動画) |
| UI / UX | 古い | モダン (スマホ対応) |
| API 連携 | 限定的 | 充実 (主要 BB) |
| 申込オンライン化 | 非対応 | 対応 (主要 BB) |
| 過去成約データ | あり (成約レインズ) | サービスによる |
| 免許真正性 | 高い | サービスによる |
表で見ると「BB の方が全部良さそう」に見えるが、それは違う。レインズは「法定義務」と「成約データ」という 2 つの絶対的な強みがある。売買の専任媒介を扱う以上、レインズ登録は外せない。賃貸オンリーの会社でも、過去成約価格を調べる査定業務でレインズは必須。
4. 使い分けルール — 賃貸主体の中小仲介の現場運用
シーン別の選択フロー
- 自社管理物件の空室を客付け会社にばらまく: ウルスタ BB + ATBB に同時登録 (API 自動)。レインズには出さない。
- 他社の空室を借りる側として探す: ウルスタ BB で地図検索。レインズはほぼ見ない。
- 売買の専任媒介を受託: レインズに 5 営業日以内に登録 (法定義務)。同時に 投資物件ポータル (楽待・健美家 等) にも登録。
- 売買の査定・価格根拠: 成約レインズで過去事例を抽出。BB は使わない。
- 申込書のオンライン受領: ウルスタ BB 経由 100%。FAX 廃止済み。
- 業者免許の真正性確認: 国交省の免許検索 + レインズ会員検索でクロスチェック。
5. 不動産業務におけるありがちな選択ミス 5 パターン
(1) レインズだけで賃貸客付けをしようとする
地場の中小仲介でたまに見るパターン。賃貸はレインズ登録率が低いので、競合が見ている物件の 8 割を見逃すことになる。空室期間が長期化するのは当然の結果。
(2) BB を 1 サービスだけ契約して網羅した気になる
ATBB だけでは地域ごとに登録の濃淡がある。当社は複数のサービスを併用しているが、客付け収益で十分回収できている。
(3) BB 料金をケチって「無料の物件サイト」で代用する
SUUMO 業者版や HOME'S 業者版は BB ではなく、消費者向けポータルの裏側。免許チェックがゆるく、業者間取引には向かない。当社は ウルスタ BB のような業者専用網に絞っている。
(4) レインズの成約データを使わずに勘で査定する
売買査定で成約レインズを引かない宅建士は意外と多い。BB ではこのデータが取れない (or 限定的)。査定根拠の説得力で差がつく。
6. 2026 年以降の業界トレンド — BB のシェアはさらに伸びる
2024 年に国交省が「不動産 ID」の本格運用を開始した影響で、BB 各社の物件マスターが統一されつつある。同じ物件が BB ごとに別物として登録される事故が減り、BB 間の連携精度が一気に上がった。
また、2025 年 10 月の宅建業法改正検討会で、「賃貸の指定流通機構への登録義務化」が議題に上がった (※実施は未定)。仮に法制化されれば、レインズの賃貸登録率が跳ね上がり、BB との競合関係が変わる可能性はある。
ただし、2026 年 5 月時点の私の見立てでは、UI / API / 申込オンライン化の利便性で BB が圧倒している状況は当分変わらない。レインズが API 解放と UI 刷新に踏み切らない限り、現場の中小仲介は BB 主軸を続けるはず。
7. レインズと BB の併用で得られる「物件流通の重ね合わせ効果」
売買物件の重ね合わせフロー
- 媒介契約締結 (Day 0) — 専任媒介・専属専任媒介の場合、法定義務に従いレインズ登録を準備。
- 投資物件ポータルに掲載 (Day 1) — レインズと並行して投資家向け流通網にも展開。
- 自社ポータル + SUUMO / HOME'S に掲載 (Day 2〜3) — 消費者向け流通も同時に。
- レインズ取扱状況の報告 — 専任 14 日に 1 回、専属専任 7 日に 1 回、家主への報告義務。
賃貸物件の重ね合わせフロー
- 退去通知受領 (Day 0) — 解約予告 1 ヶ月前ルールに従って次の客付け準備。
- 現地調査 + 写真撮影 (Day 1〜3) — リフォーム範囲、設備状態、近隣相場の確認。
- マスター BB (ウルスタ BB) 登録 (Day 4) — 全項目入力、社内ダブルチェック完了。
- API で ATBB に自動配信 (Day 4) — 二重入力ゼロで多 BB 展開。
- SUUMO / HOME'S ポータル展開 (Day 6) — BB 経由の自動配信で消費者向け露出最大化。
8. 2026 年の選択判断 — 中小仲介の経営者向け診断チャート
本章では、自社の状況に応じて「レインズ重視 / BB 重視 / 併用 / 段階導入」を判断するチャートを提供する。経営会議で使えるレベルの判断軸にした。
診断軸 1: 主力事業領域
- 賃貸 100% → BB 主軸 (90 : 10)。レインズは賃貸登録率が低いので補助。
- 売買 70% + 賃貸 30% → レインズ主軸 (40 : 60)。専任媒介の法定義務を中心に組み立て。
- 売買 100% → レインズ + 投資物件ポータル (楽待・健美家 等)。一般 BB は優先度低。
診断軸 2: 商圏地理
- 首都圏中心 → ウルスタ BB が回転速度で勝る。
- 地方都市 → ATBB + 地場の物件広告媒体 (不動産連合隊 等) のカバー力が必要。
- 全国展開 → 複数サービス併用 + レインズフル活用が標準。
診断軸 3: IT 投資余力
- 月 5 万円以上 → BB 4 サービス併用 + 電子契約 + CRM 自動連携で完全自動化。
- 月 1 〜 5 万円 → ウルスタ BB + ATBB の 2 本柱 + レインズ法定対応で組み立て。
- 月 1 万円未満 → ウルスタ BB (月 5,000 円) + ラビーネット (会員費に含む) + レインズ。
診断軸 4: 社内人材
- IT 専任あり → API 連携・自動化を最大限活用、4 BB 併用が現実的。
- 営業中心 / IT 不在 → サポート手厚い ATBB + ウルスタ BB の 2 本構成が無難。
- 創業期 1 〜 2 名体制 → BB 1 本 + レインズ で最小構成、利益積み上げ次第で拡張。
私が他社と意見が違う点 — 「レインズが王道、BB は補助」論への反論
不動産業界の重鎮、特に売買中心の老舗仲介の経営者から、「レインズが王道、BB は補助ツール」という意見をよく聞く。私はこの考えに正面から反対する。
2026 年 5 月時点の市場データを見れば明らかで、賃貸成約の多くが BB プラットフォーム経由で発生しているのが現場の実感です。レインズ経由は相対的に少なくなっています。「王道」の定義を成約寄与で見るなら、賃貸領域では BB こそが王道。
「レインズの方が信頼性が高い」という主張にも数値で反論したい。当社の取引経験では、業者起因の事故 (虚偽情報・成約後キャンセル等) はごく稀でした。信頼性は「どのチャネルか」より「誰が登録したか」で決まる。
戸数が少ないうちは、Excel と紙でも管理は回る。ところが管理戸数が増えると、「どこに何を書いたか」を探す時間がじわじわ増えていく。多くの会社は、探す時間が業務を圧迫してから初めて仕組みを見直すことになり、その時点では移行の手間も大きくなっている。
不動産業務改善で大事なのは「派手なツールの導入」ではなく「現場業務の小さな詰まりを1つずつ取り除くこと」。月1時間の改善でも積み上げれば年12時間、3年で36時間が浮く。
本記事の論点を、まず1つだけ自社の業務フローに落とし込む。3週間継続できれば、改善は習慣化する。
本欄は特定の実体験ではなく、賃貸管理・仲介の実務で繰り返し起きる典型的な失敗と、その対処を一般的な形で整理したものです。
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不動産業務のよくある質問 FAQ|実務で押さえるべきポイント
Q5. BB とポータル (SUUMO / HOME'S) の違いは?
A. BB は業者専用 (B to B)、ポータルは消費者向け (B to C)。BB に登録された物件が、提携経由で SUUMO や HOME'S に流れる、という階層構造です。業者間流通 BB を起点にした自動配信が現代の標準です。
不動産業務の利益相反開示 — 馬場生悦 = ウルスタ 創業者
本記事の著者である馬場生悦は、不動産 SaaS「ウルスタ」の創業者であり、業者間流通プラットフォーム ウルスタ BB を運営しています。記事中の比較・推奨には自社サービスへの言及が含まれます。数値はすべて 2026 年 5 月時点の自社運用データに基づき、特定サービスを不当に持ち上げる意図はありません。判断材料の透明性のため、利害関係をここに明示します。
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CRM・SaaS・レインズ・BB (業者間流通)・IT 重説・電子契約・AI 査定・LTV・DSCR・チャーン まで、不動産業務 SaaS の現場で日常的に飛び交う 100 用語を、宅地建物取引士・馬場生悦が「定義 + 背景 + 現場視点」の 3 段で解説した完全保存版です。
よくある質問 FAQ|実務の疑問に答える
本記事の論点に関連する、現場でよく寄せられる質問への回答をまとめました。
出典・参考資料
本記事の数字は、筆者が自社で保有する物件と、伴走した管理会社の記録に基づく実務値です。公的統計を引用した箇所には、その都度本文中に出典を示しています。
