協力業者(外注先)を受け入れるときは、作業の段取りより先に、管理受託契約で再委託できる範囲、建設業の許可が要る工事かどうか、入居者の個人情報の渡し方の3つを確かめておくと、後のトラブルを防げます。賃貸住宅管理業法15条は管理業務の全部の再委託を禁じ、個人情報保護法25条は委託先の監督を求めています。この記事では、これらの法令と国土交通省の賃貸住宅標準管理受託契約書をもとに、協力業者を受け入れるときのチェックリストを整理します。
管理受託契約で再委託できる範囲を確かめる
清掃、設備点検、原状回復、鍵の交換などを協力業者に依頼する前に、オーナーとの管理受託契約で、どの業務を外部に任せてよいことになっているかを確かめます。
全部の再委託は禁止(賃貸住宅管理業法15条)
賃貸住宅管理業法15条は、「賃貸住宅管理業者は、委託者から委託を受けた管理業務の全部を他の者に対し、再委託してはならない」と定めています。国土交通省の「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解釈・運用の考え方」は、管理受託契約に再委託の定めがある場合は、自らで再委託先の指導監督を行うことにより一部の再委託を行うことができるとし、再委託は契約を締結して行うことが必要であること、再委託期間中は管理業者が責任をもって再委託先の指導監督を行うことが必要であることを示しています。
管理受託契約の締結前に説明する事項にも、「管理業務の一部の再委託に関する事項」が含まれています(同法施行規則31条6号)。オーナーに説明した内容と、実際に協力業者に任せている内容がずれていないかを確かめてください。
標準管理受託契約書の条項
国土交通省の「賃貸住宅標準管理受託契約書」は、再委託について次のように定めています。自社の契約書がこれと違う場合は、自社の契約書の条項を確かめます。
| 条項 | 内容 | 協力業者の受け入れで確かめること |
|---|---|---|
| 13条(第三者への再委託) | 頭書(3)に記載する業務の一部を、頭書(3)に従って再委託できる。一括して他の者に委託してはならない。再委託した業務の処理について、自らなしたと同等の責任を負う | 頭書に再委託の項目として書かれている業務か。協力業者のミスは管理業者の責任になる前提で選ぶ |
| 11条(緊急時の業務) | 災害又は事故等で緊急に行う必要がある業務で、承認を受ける時間的な余裕がないものは、承認を受けないで実施できる | 夜間の漏水などで協力業者を手配するときの範囲と、事後の報告の方法 |
| 12条(鍵の管理・保管) | 鍵の管理に関する事項は委託者(オーナー)が行う。管理業者は、鍵の引渡し時のほか、解約・明け渡し業務に付随して鍵を一時的に預かることができる | 協力業者に鍵を渡す場面があるか。渡す場合の受け渡しと返却の記録 |
| 18条(善管注意義務) | 善良なる管理者の注意をもって管理業務を行う。従業員が管理業務の実施に関し損害を及ぼしたときは賠償の責任を負う | 協力業者の作業で事故が起きたときの責任分担と保険 |
| 19条(個人情報保護法等の遵守) | 個人情報保護法などを遵守し、適切な対処をすることができるよう互いに協力する | 入居者の情報を協力業者に渡すときの範囲と方法 |
建設業の許可が要る工事(500万円の基準)
建設業法3条1項は、建設業を営もうとする者に国土交通大臣又は都道府県知事の許可を求め、ただし書で「政令で定める軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者」を除いています。軽微な建設工事は、建設業法施行令1条の2第1項で、工事1件の請負代金の額が500万円(建築一式工事の場合は1,500万円)に満たない工事、又は建築一式工事のうち延べ面積が150平方メートルに満たない木造住宅を建設する工事とされています。国土交通省は、この金額には取引に係る消費税及び地方消費税の額を含むと案内しています。
金額の数え方には、次の決まりがあります。
- 同一の建設業を営む者が工事の完成を2以上の契約に分割して請け負うときは、各契約の請負代金の額の合計額とする。ただし、正当な理由に基づいて契約を分割したときは、この限りでない(施行令1条の2第2項)
- 注文者が材料を提供する場合は、その市場価格(又は市場価格及び運送賃)を請負代金の額に加える(同条3項)
仮の数字で計算例を示します。退去後の大規模な改修で、内装仕上げの工事を同じ業者に、正当な理由なく280万円と260万円の2つの契約に分けて発注した場合、合計540万円となり、500万円以上の工事として扱われます。また、請負代金が450万円でも、注文者側で80万円相当の設備機器を用意して取り付けてもらう場合は、合計530万円として判断します(いずれも消費税込みの金額)。
許可が要るのは工事を請け負う側です。協力業者に500万円以上の工事を依頼するときは、その業種の許可を持っているかを許可通知書等で確かめます。また、管理会社がオーナーから工事を請け負い、それを協力業者に発注する形にすると、管理会社自身が請け負う側になります。誰が注文者で、誰が請け負うのかを、契約の形から確かめてください。
工事の契約は書面で(建設業法19条)
建設業法19条1項は、建設工事の請負契約の当事者に、工事内容、請負代金の額、工事着手の時期及び工事完成の時期、検査及び引渡しの時期及び方法などの事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付することを求めています。相手方の承諾を得て、電子的な方法で行うこともできます(同条3項)。この規定は許可の要らない小さな工事でも対象になるため、口頭や電話だけの発注で済ませず、注文書と請書、又は電子契約で記録を残します。
個人の業者に依頼するときの書面と支払期日
従業員を使用しない個人の業者(いわゆる一人親方など)に業務を委託する場合は、2024年11月1日に施行された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス・事業者間取引適正化等法)の対象になることがあります。
- 取引条件の明示(3条):業務委託事業者は、特定受託事業者に業務委託をした場合は、直ちに、給付の内容、報酬の額、支払期日などを、書面又は電磁的方法により明示しなければならない
- 支払期日(4条):従業員を使用する事業者など特定業務委託事業者は、給付を受領した日から起算して60日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において報酬の支払期日を定めなければならない
誰が特定受託事業者に当たるか(従業員を使用しない個人、又は代表者以外に役員も従業員もいない法人)は、同法2条で定められています。受け入れのときに、相手が従業員を使っているかどうかを確かめ、発注書の様式に支払期日の欄を設けておくと、毎回の明示が漏れにくくなります。
入居者の個人情報を渡すときの監督
修繕の日程調整のために、入居者の氏名や電話番号を協力業者に伝えることがあります。個人情報保護法27条5項1号により、利用目的の達成に必要な範囲内で個人データの取扱いを委託することに伴って提供する場合、提供を受ける者は第三者に当たらないとされ、本人の同意なく渡せます。その代わり、同法25条は、委託先に対する必要かつ適切な監督を求めています。
個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)は、委託先の監督として、適切な委託先の選定、委託契約の締結、委託先における個人データ取扱状況の把握を挙げています。同委員会のQ&A(Q5-9)は、取扱状況の把握のために委託先に立入検査等を行うことは義務ではなく、取り扱う個人データの内容や規模に応じて、口頭による確認も含めて適切な方法を選べるとしています。
- 渡す情報は作業に必要な範囲に絞る(氏名と連絡先、部屋番号など)。勤務先や家族構成など作業に関係のない情報は渡さない
- 渡し方を決める(個人の携帯へのメッセージで送り続けるのか、共有の仕組みを使うのか)
- 作業が終わった後の情報の扱い(消去や返却)を契約や発注のルールに書く
- 協力業者が情報を漏らしたり紛失したりしたときに、すぐ連絡してもらう経路を決める。委託を受けた側で漏えい等が起きた場合、委託元に通知したときは委託先の報告義務が免除される仕組みがあるため(同法26条1項ただし書)、委託元が状況を把握して対応する前提で準備しておく
受け入れのチェックリスト
ここまでの内容を、受け入れのときに確かめる項目として一覧にします。業者の規模や業務の内容で、必要な項目を選んでください。
| 区分 | 確認すること | 根拠・理由 |
|---|---|---|
| 管理受託契約 | 依頼する業務が、オーナーとの契約で再委託できる業務に入っているか | 賃貸住宅管理業法15条、施行規則31条6号、標準管理受託契約書13条 |
| 契約 | 協力業者との間で、業務の範囲、単価、支払条件、責任の分担を書面で決めたか | 解釈・運用の考え方(再委託は契約を締結して行う) |
| 工事の書面 | 工事を依頼する場合、建設業法19条の事項を書いた注文書・請書(又は電子契約)を交わす流れになっているか | 建設業法19条 |
| 建設業の許可 | 500万円以上(消費税込み、建築一式は1,500万円以上)の工事を頼む可能性があるか。その場合の業種の許可 | 建設業法3条、施行令1条の2 |
| 個人の業者 | 従業員を使用しているか。取引条件の明示と60日以内の支払期日に対応しているか | フリーランス・事業者間取引適正化等法2条・3条・4条 |
| 保険 | 作業中の事故で入居者や建物に損害が出たときの賠償保険に入っているか | 標準管理受託契約書18条(管理業者の賠償責任) |
| 個人情報 | 渡す情報の範囲、渡し方、作業後の扱い、事故時の連絡を決めたか | 個人情報保護法25条、27条5項1号、26条 |
| 鍵と入室 | 鍵の受け渡しと返却の記録、入居者への事前連絡と承諾の取り方 | 標準管理受託契約書12条 |
| 名乗り方とマナー | 入居者に何と名乗るか(管理会社から依頼を受けた業者であること)、服装、作業後の清掃 | 入居者からの問い合わせを防ぐため |
| 報告 | 作業前後の写真、作業内容、使った部材を、どの形式でいつまでに報告するか | オーナーへの報告と請求の根拠にするため |
| 緊急時 | 夜間・休日の連絡先と、承認なしで着手してよい範囲 | 標準管理受託契約書11条 |
最初の数件の進め方と見直し
受け入れの直後から大きな工事を任せるより、小さな作業から始めるほうが、仕事の進め方や報告の質を確かめやすくなります。
- 顔合わせで、チェックリストの内容と、自社の報告の形式を説明する
- 担当者が同行して主な物件を案内し、物件ごとの注意点(共用部の使い方、入居者への配慮が必要な点など)を伝える
- 最初は小さな作業を依頼し、報告書と写真、請求の内容を確かめる
- 入居者やオーナーからの声を記録し、定期的に協力業者と共有する
見直しは、作業の質、報告の速さと正確さ、入居者への対応、見積もりと請求の差などを、記録をもとに話し合います。同じ分野で協力業者を1社だけにすると、繁忙期に手配が遅れることや、その業者が事業をやめたときに代わりがいないことがあります。複数の業者を受け入れるかどうかは、物件数や地域の事情で判断してください。
筆者は宅地建物取引士で、自社で賃貸住宅226戸を所有し、そのうち約100戸を管理会社を通さずに自主管理しています。自主管理では協力業者との直接のやりとりが多くなるため、発注と報告の形式を先にそろえておくことが大事だと考えています。
ウルスタくんでは、物件・入居者の管理と、オーナーへの送金明細(管理料・修繕費を差し引いた明細)を扱えます。協力業者からの請求をオーナーへの明細に反映するときの選択肢の1つとして検討してください。
社内のスタッフの受け入れは新人賃貸管理スタッフの30日育成プログラムで説明しています。
よくある質問
Q1. 清掃や点検だけを外部に頼む場合も、再委託の決まりは関係しますか。
賃貸住宅管理業法の管理業務を受託している場合、その一部を外部に任せることは再委託に当たりえます。全部の再委託は禁止され(15条)、一部の再委託は管理受託契約の定めに従って行います。契約書の再委託の項目と、オーナーへの説明の内容を確かめてください。
Q2. 500万円未満の工事なら、許可のない業者に頼んでも問題ありませんか。
建設業法上、500万円未満(建築一式工事以外)の軽微な建設工事のみを請け負う者は許可が要りません。ただし、契約を分割した場合の合計や、材料を提供した場合の市場価格の加算に注意してください(施行令1条の2第2項・第3項)。許可の有無にかかわらず、建設業法19条の書面の交付は必要です。
Q3. 協力業者に入居者の電話番号を伝えるのに、入居者の同意は要りますか。
修繕の日程調整など、利用目的の達成に必要な範囲で取扱いを委託することに伴う提供であれば、提供を受ける協力業者は第三者に当たらず、本人の同意は要りません(個人情報保護法27条5項1号)。その代わり、委託先の監督が必要です(25条)。入居者には、協力業者から連絡が行くことを事前に伝えておくと、問い合わせを防げます。
Q4. 協力業者が作業中に入居者の家財を壊したら、誰が責任を負いますか。
標準管理受託契約書13条は、再委託した業務の処理について管理業者が自らなしたと同等の責任を負うとしています。協力業者との契約で、事故のときの負担と保険の扱いを決めておき、オーナーと入居者への説明の手順も用意してください。具体的な責任の判断は個別の事情によるため、必要に応じて専門家に相談してください。
出典(本文で参照している資料)
- e-Gov法令検索「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」(第15条)
- e-Gov法令検索「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律施行規則」(第31条)
- 国土交通省「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解釈・運用の考え方」
- 国土交通省「賃貸住宅標準管理受託契約書」
- e-Gov法令検索「建設業法」(第3条・第19条)
- e-Gov法令検索「建設業法施行令」(第1条の2)
- 国土交通省「建設業の許可とは」
- e-Gov法令検索「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(第2条・第3条・第4条)
- 公正取引委員会「フリーランス法特設サイト」
- e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」(第25条・第26条・第27条)
- 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」
- 個人情報保護委員会「ガイドラインに関するQ&A」Q5-9
この記事は2026年10月7日時点の情報です。