最終更新: 2026年5月16日
長く付き合っている協力業者からの値上げ要請は、職人の確保が理由であることがほとんどです。判断を先延ばしにすると、繁忙期に自社の案件が後回しにされます。
不動産業務の「最安値で叩く」が招く長期コスト
同業の代表から「相見積で最安業者を選ぶのが正解」という意見をよく聞きます。私はこれに完全反対です。
最安業者を選ぶと短期的にコストは下がる。しかし長期では、1) 業者の利益薄→品質低下、2) 業者の離職→継続性なし、3) 緊急時の対応優先順位が低い、4) スキル蓄積されない、というデメリットが累積。
当社の経験では、最安業者と「適正利益確保業者」のトータルコスト差は、5年スパンで適正利益確保が10-15%安く済むケースが大半。理由は業者継続性と品質安定が、結果的にトラブル対応コストを大幅減らすから。
不動産業務のステップ1 — ベース価格の合理的設定
ベース価格は「業者の原価+適正利益」の合計で設計。叩き買いではなく、業者の事情を理解した価格。
当社の方法: 業者と単価交渉時、原価構成 (材料費、人件費、運搬費) を共有してもらう。これに業者の希望利益率 (15-20%が一般的) を上乗せして合意。
例: クロス張替の場合。材料費 (クロス) m単価400円、職人人件費 m単価200円、運搬・諸経費 m単価100円、合計原価700円。利益率15%を上乗せして当社の発注単価805円。
この透明性が業者との信頼関係の基礎。「適正な利益を払う」という約束が、業者の長期コミットメントを引き出します。
不動産業務のステップ2 — ボリュームインセンティブ
月次取引量に応じた単価インセンティブ。当社では月次100万円超の取引業者には3-5%の単価優遇。
これは業者にとっても win: 大口顧客として安定取引が確保される。当社にとっても win: 業者の優先対応とコスト削減。
例: 主力リフォーム業者A社、月次平均取引額150万円、ボリュームインセンティブ3%適用で当社の年間コスト削減54万円。業者は売上安定で投資余裕。
不動産業務のステップ3 — リスク分担|実務で押さえるべきポイント
工事中のトラブル発生時のリスク分担を事前合意。1) 業者起因 (施工ミス)、2) 当社起因 (指示不備)、3) 不可抗力 (天候、入居者都合)、の3カテゴリで負担割合を決める。
例: 入居者の都合で工事日延期となった場合、業者の遊休時間が発生。これを業者の負担にすると業者は段取り工夫の動機が薄れる。当社は遊休発生時の補償 (1日あたり1万円) を当社負担で設定。
このリスク分担合意により、業者は「責任の所在が明確、不当な負担を強いられない」と安心感を持ち、長期関係に繋がる。
不動産業務のステップ4 — 成長共有|実務で押さえるべきポイント
当社の事業成長と業者の売上成長を連動させる仕組み。当社の管理戸数が増加すれば、業者の発注量も増加。これを業者に事前共有することで、業者の継続投資 (人員拡充、機材更新) を促す。
2024年4月、当社の管理戸数が180室→200室に増加した際、主力業者5社に「今後3年で250室を目指す、発注量も比例増加」と共有。A社は新人職人1名を採用、B社は新車両 (作業用バン) を購入。業者の成長と当社の成長が同期する関係が成立。
ウルスタ — パートナー企業との長期関係設計を支援
業者単価表の整備、ボリュームインセンティブ設計、リスク分担合意書、四半期面談スケジュール。近隣の管理会社40社で業者ネットワーク強化を支援してきた宅建士・馬場生悦が、貴社のパートナー戦略を構築します。
現場メモ — 協力業者からの値上げ要請への向き合い方
長く付き合っている協力業者からの値上げ要請は、職人の確保が理由であることがほとんどです。ここで判断を先延ばしにすると、繁忙期に自社の案件が後回しにされます。
判断の材料は、その業者を失った場合に代わりを育てるのにかかる期間と、値上げによる年間のコスト増の比較です。継続の価値が上回るなら、早く答えを出すこと自体が交渉材料になります。
不動産業務の業者面談の運用|実務で押さえるべきポイント
当社では主力業者10社と四半期面談を実施 (Zoom 30分)。議題: 1) 前四半期の実績振り返り、2) 改善点フィードバック、3) 次四半期の発注見込み共有、4) 単価見直し協議。
面談を継続することで、業者からの本音 (困りごと、希望) を吸い上げられる。年1回の単価交渉ではタイミング遅すぎ、四半期で軌道修正できる体制が必要。
不動産業務の業者のNG行動と即時取引終了|実務で押さえるべきポイント
当社が「即時取引終了」とする業者NG行動は3つ。1) 入居者への不適切対応 (暴言、無断侵入等)、2) 不当な見積請求 (3割超のマージン乗せ)、3) 当社への虚偽報告。これは長期関係構築のルール違反、容赦なく契約終了。
2023年に1社、不当な見積請求 (相場の1.5倍を当社経由でオーナー請求) で即時取引終了。15年取引業者でしたが、信頼を失った段階で関係は終わり。「適正利益確保」は業者と当社の両方が守るルール。
私が他社と意見が違う点 — 「業者は競争させて単価を下げる」論への反論
業界誌で「業者は3社相見積で競争させ、単価を下げ続けるのが経営の鉄則」という主張をよく見ます。私はこれに完全反対です。
業者を競争させ続けると、業者の利益が削られ、結局のところ品質低下・離職・継続性喪失というコストが当社に跳ね返ってきます。当社の経験では、業者と長期関係 (10年以上) を築いたほうが、トータルコストは10-20%低い。
「相見積で叩く」は短期視点の戦術。中小不動産会社が10年20年事業を続けるなら、業者との共存共栄の方が圧倒的に合理的。これが210室を15年回してきた経験則です。
- 物件管理35%
- 入金管理20%
- 顧客対応20%
- オーナー対応15%
- 営業活動10%
再配分
- 物件管理10%
- 入金管理5%
- 顧客対応35%
- オーナー対応10%
- 営業活動40%
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不動産業務のよくある質問 FAQ|実務で押さえるべきポイント
Q1. 業者の利益率はどう調べますか?
A. 業者との信頼関係構築後、率直に質問。誠実な業者は原価構成を共有してくれます。一般的な利益率は内装10-20%、水回り15-25%、外壁15-25%。
Q2. ボリュームインセンティブの設計は?
A. 月次取引額の閾値を設定 (例: 100万円超で3%、200万円超で5%)。明確な数字で業者にメリットを見える化。
Q3. リスク分担で揉めることはありませんか?
A. 事前合意なしで揉めるケース多発。当社は契約時に書面合意、運用中の判断もこの基準で機械的処理。
Q4. 業者の値上げ要請はどう対応?
A. 即座に検討、合理的根拠 (人件費・原材料費の上昇) があれば原則承諾。長期関係の維持を優先。
Q5. 業者との関係が悪化した場合の修復は?
A. 双方向の信頼が損なわれた場合、修復より新規業者開拓を選択。15年取引でも信頼喪失したら別離。
不動産業務の利益相反開示 — 馬場生悦 = ウルスタ 創業者
本記事の著者・馬場生悦は不動産管理SaaS「ウルスタ」の創業者です。記事中段にウルスタへの誘導CTAを掲載しています。記事内のA社等の業者名は仮名化していますが、実際の取引経験に基づく内容です。自社で15年間業者ネットワークを構築・維持する管理会社の実体験に基づく記述です。
不動産業務 SaaS 用語集 2026|100 用語を宅建士・馬場が解説
CRM・SaaS・レインズ・BB (業者間流通)・IT 重説・電子契約・AI 査定・LTV・DSCR・チャーン まで、不動産業務 SaaS の現場で日常的に飛び交う 100 用語を、宅地建物取引士・馬場生悦が「定義 + 背景 + 現場視点」の 3 段で解説した完全保存版です。
DX 投資の効果 早見表
| 投資領域 | 月額投資 | 時間削減 |
|---|---|---|
| 経費精算自動化 | 5,000-15,000円 | 月8時間 |
| 電子契約 | 10,000円 | 案件あたり15分 |
| CRM導入 | 30,000-100,000円 | 月20-40時間 |
よくある質問 FAQ|実務の疑問に答える
本記事の論点に関連する、現場でよく寄せられる質問への回答をまとめました。
Excel 管理から SaaS への移行でいちばん多い失敗が、「全部を一度に切り替える」やり方だ。切替直後は現場から「Excel のほうが早い」「新しい画面が分からない」「データが見つからない」という声が集中し、数か月で元の Excel 運用に戻ってしまう。残るのは移行にかけた時間と、現場の徒労感だけになる。
業務改善の失敗の9割は「全部一気に切り替える」ことが原因。現場は「現状の業務」と「新しい業務」を同時に覚えることに耐えられない。
SaaS導入は「1機能ずつ」「1部署ずつ」段階的に切り替える。最初の3ヶ月は旧Excelと並行運用し、新システムが業務効率を上回ったタイミングで旧Excelを廃止する。
本欄は特定の実体験ではなく、賃貸管理・仲介の実務で繰り返し起きる典型的な失敗と、その対処を一般的な形で整理したものです。
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出典・参考資料
本記事の数字は、筆者が自社で保有する物件と、伴走した管理会社の記録に基づく実務値です。公的統計を引用した箇所には、その都度本文中に出典を示しています。
